個人的な話ですが。
あれほど受信料で宣伝するなと言いつつ、『なつぞら』ポテトチップスを買ってしまいました。
しかし、罪悪感は薄れました。
十勝、そして北海道の高校生を支援するんだって!
一企業の露骨な利益誘導じゃないんだね! 安心です。
はい、そんなわけで本編へ。
昭和31年(1956年)、新宿。
奥原なつは、アニメーターになる夢のため、川村屋で皿洗いを続けています。合間に、独学で絵を描いていたのですね。
「じいちゃん、さあ行くべ」
そう泰樹に心で誓い、東洋動画アニメーター採用試験の当日を迎えます。
そのころ、その泰樹は――。
十勝の牧場で、時計を見ながら呟くのでした。
「やれ、なつ」
遠くから見守る。
究極の白の魔導師として、彼は見守るのじゃああ!
視聴者の多くが、こんなマイじいちゃんが欲しくなるでしょ!
馬の絵を通して通じ合う世界
さて、試験会場です。
スーツや学生服の受験生も多い中、おさげにスカートのなつはちょっと浮いています。
実技試験の課題は、三時間と六枚の中、馬が柵を超える絵を描くことでした。
天陽とのことを思い出すなつ。
あの日、彼の馬の絵は、まるで動き出すかのようだった。
嘶きまで聞こえるほどだった。
なつの鉛筆が動き始めます。
十勝では、天陽もキャンバスに向かっています。
真剣なまなざしで絵筆を握る天陽。神々しいほどに美しく見えます。
広いキャンバスの中で繋がる思い――。
こういう同じ思いで繋がる仲も素晴らしい。
そう感じさせる演出です。BGMとSEの使い方もお見事。
北海道編は終わったけれども、どこかで繋がっていると感じさせるんですね。
舞台が移動すると、ぶつ切りになって思い出さない駄作もあるものです。
散々たかったラーメン屋や恩人を忘れ去る前作****とか。
なつの中には、きちんと北海道がある。
彼女にとって大事な人がいる。そう感じさせます。
なつは自分の絵を見直し、頷いています。
なつの動きは他の受験生より大きく、ちょっと浮いているとハッキリ見てわかります。
面接は大丈夫なのだろうか
さて、実技試験の後は面接です。
ご両親が健在か、そんな質問があるのですが……これも辛い&キツい。
なつの年代といえば、戦災孤児が多かったものです。
そこを聞いてくるのか。
なつは、戦争で両親を亡くしたものの、北海道に義理の両親がいると言います。
「いわゆる戦災孤児……」
そう面接官は言います。
気になるのが、大杉社長もいることです。
9才の頃から北海道育ちで、兄は咲太郎だとなつはハキハキと答えます。
ここでの大杉の顔がなんとなく怖いのさ。
なつは絵の経験を尋ねられ、絵の上手い友人に習ったと答えます。
農業高校の友でもなく、牛飼いをしている友人なのだと。
「あーたの絵は、実に面白い」
大杉はそう言います。
あんなに高く跳ぶ絵はなかなかない。すごく面白かった、と。
なつはここで、ちょっと気が抜けたのでしょうか。
「社長の宣伝もすごく面白かったです! あんなの初めて見ました」
映画館で見た広告のことを口走ってしまうんですね。
「あんなの?」
あわてて謝るなつです。
「結構です、もう結構です」
大杉がそう言い、面接終了です。
出た。大森氏得意の、不穏な空気、出たわ。
朝から心臓に悪いよ!
野上はそのまま執事になれる!
さて、なつは川村屋に報告します。
野上は険しい顔でピシャリと注意。店の方から従業員が入ってはいけませんからね。
従業員関係者が教団支部にして乗っ取った、そんな前作****の喫茶店とは違うのだ。
んー、野上、いいぞぉ!
なつが可愛い女の子だからと、鼻の下を伸ばすほどチャラついていない。
まずは従業員として注意する。そしてマダムには忠誠心の塊。
あ、これはアレですね!
理想の執事だ。
日本のフィクションの執事って、異常に若かったり(20代以下はありえないから!)、従者と混同していたり、主人にぞんざいな口を利いたり、設定的におかしいものが多くてちょっとウンザリさせられるものですが。
朝ドラで、こんなほぼ理想の執事を見ることができるなんて、まさか思いませんでした。
経歴的にも、若年から奉公している。先代も知っている。マダムを幼い頃からそっと見守っている。んー、執事、これぞ執事だよぉ!
※『ダウントンアビー』のカーソンが典型例です
絵を描くのは怠け者なの?
報告だけしたいと言うなつ。
ここへマダムが登場すると、野上がちょっと緩むところがこれまたお見事です。
マダムが「終わったの?」と尋ねます。
「決まったわけじゃありません。ありがとうございます」
受かるか、まだわからない。そう不安そうななつを、励ますどころではないのが、野上です。
大きな会社に、絵を描くだけで入れるのであれば、怠け者が殺到すると言うのです。
野上に苛立つ気持ちもわかるんですけれども、彼のように、幼い頃から肉体や神経を使う接客業をしていた者からすれば。
掟にがんじがらめにされてきた者からすれば。
そりゃ、絵を描くなんて怠け者にも思えるでしょうよ。そこは、仕方ない。
むしろ、そういう厳しい育ちながら、絵を描くことだって開拓だと言い切る。
そういう泰樹がレジェンドだからねっ!
なつはムッとして、漫画映画を見れば怠け者にはできないことがわかる――そう言い張ります。
「結構です」
「あっ、嫌な言い方……」
なつはそうこぼします。
いやいや、なっちゃん。こういう野上タイプこそ、先が楽しみかもしれませんよ。
いやいやながら、小馬鹿にしながら見て、目を丸くする、そういう瞬間が来るかもしれません。楽しみにしましょうよ!
こういう、クリエイターへの無理解を描くところも、誠実だと思いました。
印籠のように【クリエイターである】とかざせば、セクハラパワハラサボり上等だった****にはない世界観ですね。
クリエイターが戦うこと。
それは創作だけじゃありません。無理解とも、向き合わねばならない。
だらだらしてサボっているわけじゃないんだ。
怠けてボケーっとして、なんか意味のわからん行動をするあいつら。締め切り守れ、結論出せ、一人で引きこもってんじゃねえぞ!
……と、言わないであげてください。
頭の中で考えやアイデアが、ぐーるぐるしているだけかもしれない。
そっとしておいてくれ。一人にしてあげて……。
そういうことを、鈴愛や秋風羽織先生の無茶苦茶な行動で描いた『半分、青い。』は偉かった……本作もそこにたどり着いています。
天陽だって、絵心を理解できない側からすれば、農業サボって絵を描いているわけわからん奴でしょう。
そうじゃない!
それだけじじゃないんだ!
雪次郎が励ましてくれるよ
そんななつを、仕事の合間に励ます雪次郎。
もう、いい奴だなぁ。北海道時代からなつの周辺って、いい人ばかりで羨ましい。
なつは、本音をさらけ出すことのできる雪次郎に告げます。
絵の手応えはあったけれども、面接で緊張したって。
雪次郎はこう言います。
「FFJを歌ってねえべ?」
それは門倉番長だから!
でもいいなぁ、わかります。こういう学生時代の友達と、その頃のことをふっと話題にするだけで、何か落ち着くことってありますもんね。
なつは笑ったあと、こう言います。
「もしも受からんなかったら、戦災孤児だから……」
「そんなことあるか!」
そんな弱気ななつの言葉に、間髪入れずに怒り出す雪次郎。
なつではなく、世界の理不尽に怒っています。そうなったら泰樹、富士子、剛男が怒ると励まします。
雪次郎。
本当にいい奴だなぁ〜。
怒って何が悪い
こうしていきなり怒ってくれることって、とても大事です。
戦災孤児が受け入れられない――悲しくて辛い歴史ですが、それは事実です。
行き場所がない。まともな就職口もない。結婚すら阻まれる。
そんな戦災孤児たちが、浅草ロック座に流れ着いて、舞台で脱いでいても、おかしくはない。
川村屋でウェイトレスになれた佐知子は、運がよいのですよ……。
本人に責任がない生まれや育ちで起こる差別。
それは今だってあります。
日本にルーツがないとか。貧しいとか。そういうことをどうしたって考えてしまう。
なつたちの直面した不条理は、まだ終わってはいません。
◆「生活保護で大学進学なんてゼイタク」本音を包み隠す厚労官僚の“良識” | ダイヤモンド・オンライン
雪次郎が想いを寄せる夕見子にも、そういうところがある。
怒りを受け止めないでどうする。
そう言い切る泰樹。
本作は、世の中の理不尽に怒る大切さを、描いていると感じるのです。
「そんなに目くじらを立てなくても」
「怒ってばかりだと人生つまらないよ」
「カリカリしてどうするの」
そんな、なだめる言葉に溢れているこの時代。
けれど、それでよいのでしょうか?
そこへきっちりと違うと言い切る。そんな清々しさがあります。
なんども指摘しましたが、#MeTooやイエローベスト運動により、世界を変える怒りがあると近年示されています。
本作はそういう流れを、うまく取り入れていると感じるのです。
※アメリカ・ウォール街を占拠せよ運動
「んもぉ〜お母さんてばぁ〜」
そんなくねくねした気持ち悪い声で、母の怒りすら丸め込もうとしていた、****の*ちゃんとは真逆のスタンスを感じます。
※続きは次ページへ
不採用を知ったら、咲太郎が暴発しそうだなぁ…
なつは高校を出て職を得ようとする、この時代なら立派に一人前の存在。
でも、咲太郎にとっては小さな守るべき妹のままでしょうし。
就職の場面では自分自身が戦災孤児であることに加えて、この魔性の兄はマイナス要素としか思えない。
社長に図々しくも売り込むし、釈放されたとはいえ警察のご厄介にもなってるし。兄ちゃんに任せたら大変なことになっちゃう。
朝から色々凄いです。
社長も純粋に面白いと感じた作画、天陽と繋がっている世界がちゃんと評価されて欲しい。
どんな逆転劇が観られるのでしょうか。
何の根拠もないのですが、
この事態の打開には、あの亀山蘭子が一役買うのでは?
と、勝手に期待しています。
でないと、先週唐突に登場した意味が…
それもまた勝手な感覚ではありますが。
両親に兄弟に、更には「戦災孤児ですか?」とまで。現代なら面接の絶対NGワードのオンパレード!
さすがに「逃げない」作品。この面接シーンは正に今昔の感に絶えません。
そして、まさかの「不採用!!」
一体何が作用したんでしょうね。
結構です、って言葉、難しいですよね、
退出を促す時にも、誉める時にも使う。
漫画映画は結構です、
どちらにも取れます。
態度で読むしかない、難しい。
だんだん意味と使い方が変わった言葉でしょうか。
もう結構です、とか
結構好きです、
結構なお点前で、は言いますね。笑
なつが困るのはわかるなあ。
なつの馬は私は子馬に見えました、
元気いっぱい。
天陽君の馬、美しかった~。