昭和32年(1957)年秋。
なつはめんどくさすぎる新人・坂場により激動の予感を覚えています。
そしてやはり【鵯越の逆落とし】を知らなかったようで、モモッチに確認するのでした。
謀反の予感と微笑
今日は、それどころではありません。
なんと雪次郎が、赤い星座のオーディションに挑戦していたのです。
オーディションではピアノの音に合わせて、自分を表現するという課題。
演劇部での発声練習をすると審査員も苦い顔をしています。
しかし――。
『白蛇伝説』の主役になりきると、雰囲気が変わります。
「ペチカ!」
自らの過ちのせいで、失われてゆく恋人・ペチカ。
その名を呼ぶ演技の真剣さに、審査員の顔色も変わります。
亀山蘭子の唇にも、面白がるような笑みがニッと浮かぶのです。本作の演技指導が乱世を意識しているのかわかりませんが、策謀を感じます。
いや、乱世じゃないな。作り笑いじゃない、わざとらしくない。感情をそのまま出す。
そういうプランがあるんですかね。自然ですごくよい表情です。
鈴木杏樹さんは悪女というわけでもない。
ただし、雪次郎を演劇に誘ったところはある。誘惑する妖しさが、演技に出ていると思います。
そう、まるで仲作画の常盤のような笑みなのです。
美意識のある咲太郎も、納得の表情です。
これはますます不穏だ!
ここにも何処に向かっているのかわからないものが一人――。
【雪次郎の乱】が、密かに始まっていました――。
謀反の気配といいますか。
ナレーションも不穏を増大させます。
大博打の始まりじゃああー!
※朝ドラなのに乱世……!
げえっ、坂場!
なつは、むしゃくしゃしているからと、モモッチを誘い、川村屋でバターカリーを食べることにしました。
新宿で発散と言えば、そりゃお酒も出る踊れる店じゃないの?
そう言いたそうなモモッチ。
そこでなつたちが川村屋に入ると、野上がそっけない態度を取ります。
客だとアピールしてもこうです。
「また派手な格好をして。目がチカチカします」
口の悪いおじいちゃん気分なのかな?
彼なりの心配でしょう。退職時に泣いてたもんね。
ここで、ウェイトレスのさっちゃんがお出迎え。嬉しそうにしています。いい子ですね。
するとモモッチが、お店の奥の方に誰かいることに気が付きました。
「なっちゃん、あれ、あれじゃない?」
げえっ、坂場!
動揺するなつは、彼はよくいるのか? と確認します。
知り合いかどうか確認し、同じ職場の人ならば相席にしようかとなるわけですが。
なつは戸惑い、モモッチは乗り気です。
「いやぁ……」
「そうしましょうよ!」
モモッチは気づいていなかった……奴がめんどうくさくて、ちょっとキモいことに。
顔はいいもんね、東大卒だもんね、むしろ憧れちゃうもんね!
けれども、そこはちょっと気をつけた方がよろしいでしょう。
彼と似たタイプと結ばれたあとで、難点に気づく。
そんな萩尾律の元妻・より子というバッドエンド例もありました。
相席となったモモッチは、仕上課にいると早速自己紹介します。
仕上課は男性社員が花嫁候補選びをする場ですし、慣れたものかも。
しかし、坂場は反応が鈍い。
それどころか読書を止めようとしません。
人が話しかけてくるとき、本を読むのはやめろって、お母さんが何度も注意したでしょ!
どうしてこの子はそうなの!
食べる時は読んじゃダメなの!
と、思わず突っ込んだ方。そういう幼少期を思い出した方。
いるでしょうねぇ。
とりあえず、なつたちはバターカリー二人前を注文します。
坂場と雑談するだけで辛い
モモッチは、なつが聞きたいことがあるはずだと促します。
「何ですか?」
「どうしてここにいるんですか?」
ここで坂場、愛想笑いも何もない。新宿で本を買った帰りだと言います。
きっと茂木社長のお店ですね。買ってすぐに読みたくて、ここで読んでいるそうです。
なつはここで働いていたと言うわけですが。
「それは単なる偶然ですね。驚くことではない」
そしてモモッチに「こういう人なの……」とヒソヒソ伝えるなつです。
坂場はカレーパンを食べています。
その理由を問われると、
「名物なので。ただ、ちょっと高すぎる」
だそうです。好きとか、美味しいとか、一切ない。なんなんだよ!
モモッチが、バターカリーを半分あげましょうかとアピールをしますが。
「パンで十分です」
と、とにかく付け入る隙がない。なさすぎる。
そうかと思ったらパンのカレーを本にこぼして拭いて、広げてしまいます。
不注意で不器用。カチンコのときと同じですね。
せっかくの本を汚してしまい、ちょっとうろたえております。
ぶきっちょ坂場には夢がある
「ほんとにぶきっちょなんですね」
少しホッとしたように話かけるなつ。
「はい……不器用なのを、よいと思ったことはありません。絵が描けません。絵を描けることは素晴らしい」
ここで素直になる坂場。
自分ができないこと。相手の長所は素直に褒めるのです。
マウンティングをしようとか、そういう気持ちはサラサラないのでしょう。
ここでなつは、好奇心が湧いてきます。
なつは坂場に質問を投げかけました。
「どうしてアニメーションを選んだんですか? 映画でもない。絵も描けないのに」
確かに不思議なところです。
東大出であれば、周囲は官僚でも大手出版社勤務でも、もっとステータスの高い職業を望んだことでしょう。
「思ったんです。アニメーションは子供に夢を与えるだけのものではない。大人にも与える」
アンデルセン原作、フランスのアニメーション映画。
ナチスドイツへの抵抗を、描いた作品。そういう歴史や政治的な要素を、まるで子供の夢のように描く。
そのことに感銘を受け、アニメの奥深さに目覚めた。
坂場にとって納得できないことがあるのです。
「ただ、世の中にはそう思われていない」
「アニメにしかできない表現とは?」
そうなつが興味津々で問いかけます。
「自分の考えしか言えませんが……」
と、坂場の哲学は良いところで御仕舞い。
マダムが深刻そうな顔でやってきて、なつを呼びにくるのでした。
モモッチはにっこりして、熱い視線を坂場に送りますが、気づいていないと思います。
※続きは次ページへ
めっきり少なくなったコメント投稿。私自身もあまり投稿しなくなったな、という自覚はあります。
もちろん『なつぞら』自体は見続けていますし、つまらなくなったなどという状況は全くない。むしろ重要な展開が続いて目が離せないほど。
あれこれ考えても追いつかない感じ。
また初期のように、「考えるな。感じろ」という具合になったのかも。
エースの二人に下山班の個性的な面々に加えて坂場くん登場。アニメーター編のキャラクター造形が深くて面白さが加速してきてますね。ここで一旦北海道に焦点を戻して原点回帰するのが心憎いです。近年にない深みのある朝ドラですね~。
そして宮崎駿をモデルにしたキャラが登場して、彼となつを坂場くんが引き連れて東洋を辞めてハイジ?、いやもしかすると幻の長くつ下のピッピルートなんてことになったらお祭りです。泰樹じいじモチーフのアルムおんじにも期待。その前に坂場くん監督の大作映画を東洋でやるのかな。もう、盛り上がる展開しか想像出来ない。
意見を言うこと=素直じゃない、世間の認識ルールにしばらく気づかなかった人間です。
尖った人物が出てくる本作と、彼らを愛でる本レビューには、癒されたり考えさせられたり、いつもお世話になっています。
坂場は特に身をつまされます。私もやや同タイプです。あんなに突き抜けてはいませんが、、、
中川さん、ピュアでいたいけな印象で坂場を演じてくださってると思うのですが、それも、同タイプの身びいきなのか。
登場人物が増えるたび、それぞれ個性的で、ますます楽しみです!
なつのイラストがかわった!
半分、青い。(下山評)のコーデのなつだ、かわいい!