「亜矢美さん、はじめまして、富士子です!」
亜矢美vsマダムでも感じたことですが、やはりアベンジャーズ枠対決は盛り上がりますね。
なつぞら52話 感想あらすじ視聴率(5/30)噛み合わない兄妹富士子は、夕見子が世話になっていること、なつのことも感謝しています。
ここでのアベンジャーズが、昭和ぽい電話しぐさでいいんですよね。
ペコペコお辞儀、手をパタパタさせてしまうという。
コードレスフォンやスマホでは、こんなことはなかなかしません。
お辞儀をしてどうなのかとなりますし、ハンズフリー通話なら、ごろ寝して足の爪を切りながらだってできてしまう。
昭和はそうじゃないんだな。
相手が目の前にいるような仕草が出てしまうのです。
本作は、動作や演技指導がかなりきっちりしています。若手俳優さんも、昭和ぽい所作をこなしております。
「他人行儀なことを〜」
そう亜矢美がフランクに言うところで、富士子は真剣に夕見子の様子を尋ねます。
「だいぶ冷静になってきましたよ……今がチャンスかもしれない」
「そうなんですか。したらね」
通話を終えると、剛男と泰樹もその背後に来ておりました。
「夕見子はどうしたんだ!」
剛男が迫ります。
まぁ、そうなりますわな。
「今が何のチャンスなんだ!」
夕見子のことをナゼ黙っていたのか。そう迫られるのです。
抹殺……それもそうじゃ←は????
富士子はなだめにかかります。
あの夕見子の性格ですから、クールダウン前に何かをすれば、火に油を注ぐだけ。意固地になるだけ。とにかく落ち着かねばならないのです。
そしてここから強烈なやりとりが始まります。
「男親は、娘のこととなると、相手を抹殺しかねないから」
富士子、おいっ、抹殺って!
「忍者じゃないんだから!」
剛男もこう突っ込むのですが。
「抹殺……それもそうじゃ」
前世・真田昌幸の泰樹がそう言うとシャレになってないから、やめてください!
※前世で抹殺された被害者代表・室賀正武さん
不穏な泰樹ジジイはさておき。
同志・高山は老舗デパートの長男だそうです。両者ともに、大学には休学届けを出していたとか。
結婚するつもりかどうかは、内心のことなので不明だってさ。
とはいえ、なつの話ではまだ結婚しそうにもない、と。
ん? 富士子さん……いつのまにそこまで調べていたなんて、なかなかの知略ですね。
亜矢美の話からすると、今は落ち着いてきている。チャンスかも。
そう察知しているのでした。
「ゆるせん! その男が悪い、悪い、悪いんだぞーッ!」
普段は温厚な剛男も、興奮しております。
こんなに怒る剛男は初めてですね。
一方の富士子は冷静に諭します。
頭に血が上って、いつものように振る舞えなくなる。
親が出馬したらしたで、困ったことになりそう。とても冷静には対処できそうにないから。
しかし、剛男には通じません。
「夕見子が何と言おうと、親として取り戻す!」
「それで傷つけるのは夕見子なのよ」
※とりもどーせー
そして富士子は、ハッと策を思いつきました。
「なつが言ってた。ここは慣れていない人を敢えて使うべきだと! じいちゃんに優しくされたら、夕見子も素直になるかもしれない……甘えさせてやって、夕見子を」
うぉい、どういう策だよ!
「いや、無理じゃ」
泰樹はそう言うわけですが、この顔は絶対に出馬する表情ですよね。
まぁ、予告編でもありましたし。
「大博打の始まりじゃあああああああ!」
こうなるんでしょ。
期待を裏切らないでくださいよ!
この裏切り者めがーッ!
それから数日後――。
ザッザッと夕見子が新宿の街を歩いています。行先は風車。
「夕見子、いかがした?」
なつがそうで迎えると、こうです。
「おのれ、よくも謀りおったな……なつめ、こやつ家族に喋りおった、この裏切り者めがーッ!」
父も、こう言うしかない剣幕です。
なつよ、どうするーー。
ここは総大将が来ないことには収まらんのじゃああああ!
創造性の問題
はい、坂場が今朝も執拗でした。
この【指示がざっくりしすぎ問題】は、何度も指摘する通り、演劇部顧問の倉田先生が最初のように思えます。
なつぞら21話 感想あらすじ視聴率(4/24)魂とは訓練や理屈じゃないたとえば泰樹の酪農指導は、わかりやすいと言えばそうです。数えるように、指を折って搾れ。
ただ、そんな泰樹も実はかなりざっくりな指導を最初からやっていますよね。
学校に行かなくていいから、まずは酪農。
それからアイスクリーム。
そして怒っていい発言。
なつの感情を開かせるように、セラピーをしていたと言えなくもありません。
なつぞら2話 感想あらすじ視聴率(4/2)大人が守り、育ててゆくものそこを踏まえると、本作の狙いもわかってきます。
成果として目に見えるもの。
それはあくまで具体性のあるはっきりとしたものだけれども、氷山の一角に過ぎない。
人生経験。
魂で感じたこと。
伝わってくること。
創造性がそこにあるのかどうか?
ありのままに感じられるかどうか?
そこを求めると、きっとなにかが見えてくる。得られるものがある。
そんな風に描いています。
『半分、青い。』の創作過程も、これができておりまして、秋風塾では、かけあみや時間制限ありのスケッチをこなす一方で、ディスカッションを通したプロットを練ることをしておりました。
あのドラマは、主人公がいきあたりばったりと批判されておりました。が、それはどうでしょうか。
鈴愛と律が、創造性を生かした道を歩むという点では、ブレがなかったと思います。
一方で、ブレまくっていた作品が****です。
ブレるというか、そもそも存在していない。
努力や創造性描写がデタラメでした。
・努力しない、試行錯誤過程が描かれない
→図書館にすらろくにいかない。ただ単に行き当たりばったりで、ボタンタップするように作業をするばかり。
・知性を描かない
→勉強をする場面すらないのに、いきなり難関大学に合格する。どういう思考ルーティンなのかわからない雑な描写を、怒鳴り散らす、奇声で叫ぶ、身振り手振り、顔芸でごまかすばかり。
・権威主義
→「大学の先生が言っていた!」「政治家が後ろ盾にいる!」「画伯の絵はいくらで売れる!」そういう社会が認めた価値観ベースでないと、ものの真価すら判断できない。
どうしてこうなった?
と、考えると、プロット作りのグダグダさ、杜撰さもあるでしょう。
根底にある問題は、モデルの人物が実は発明家ではなく実業家であったということ。
その史実を歪めたせいではないでしょうか。神話そのものが最初から破綻していたのです。
モデルの人物は、実業家としての実力と適性は持ち合わせていたのですが、創造性がなかったのでしょう。
ですから、企業神話創作の時点でボロが出てしまった。
そんな神話を基にしたら、フィクションとしても破綻しますってば。
本作はこの点かなり緻密で、そういう【創造性】の有無や強弱をキャラクターごとに振り分けています。
強弱チャートや何やら、メモ用紙にざざっと走り書きをすることもあります。
んで、結構、楽しいんだな。
そういう分類的な意味で、坂場と天陽を結びつけることで、坂場も明確にそれを持つ側だと分類してきました。
そしてここも重要なのですが。
・【創造性】が強烈である人物ほど、コミュニケーション能力に問題が生じる傾向もある。誤解を受けやすい
・【創造性】が強烈なものが上位ということではない。そうではないタイプも優れている
・【創造性】が強烈なものだけでチーム編成をすると、現場崩壊しかねない。バランスを考えて!
坂場は天才です。
とはいえ、そんな天才と仕事をするということは、バラ色なことだらけでもないと描かれています。
坂場は悪い奴でもありません。
怒鳴らないし、威圧的でもない。ざっくりしているけれども、要望は伝えてくる。勉強熱心でもあります。
それでも明らかに問題はあるわけでして、そういう描き方が細かいと思えるのです。
怒鳴り散らして、俺のいうことがわからねえのか、俺の決めたことに逆らうなとハラスメントをしていた、****の**さぁんとは違うのです。
恋のほころび
亜矢美はどうやら、夕見子に恋のほころびを見出しているようです。
夕見子は、モダンジャズに合わせるつもりはないと、きっぱりと言い切りました。
そんな夕見子と正反対な女性像は、演歌やJ-POPの世界には出てきます。
相手が黙っていても、好みの酒とつまみをそっと出してくるとか。
彼氏の好みにあわせて化粧をやめて、サッカーや車に詳しくなるとか。
会いたくてふるえてるとか。
夕見子はそういうタイプじゃないですよね。
冷静です。
相手をおぼっちゃまだと言い切るし、原稿が採用されないから挫折に弱いと分析しております。
あくまで尽くして守る女ではなく、対等に歩いていくと見ている。
しかも、どうやら冷めつつある。
夕見子の恋は本物なのか?
恋する自分に酔っていないか?
騙されていないか?
この描き方がなかなかおもしろくて、他の人物の恋愛とはちょっと違うんですね。
そこは【表裏比興】ですので、それを悟ったら相手を崖から容赦なく蹴落とす気配もあると……まぁ、高山くんも甘かったんだな。
やっぱり雪次郎はその点いいと思うんだなぁ。
夕見子は、それまで彼を家を継ぐつまらない奴と思っていたところがある。
それが役者という道へ大胆にはみ出して、おもしろいと認めるようになった。
「気に入ったぁーッ!」
というのも、ありなんじゃないですかね。夕見子は夕見子なんだから。
朝ドラで抹殺宣言
朝ドラで「抹殺」はないだろう。
そう突っ込みどころがありすぎる、そんなやりとりがありました。
『半分、青い。』では鈴愛の「死んでくれ」が大騒動になりましたが、それどころじゃない!
「男親はこういうとき、相手を抹殺したがる」
って、どういうことだ、おいっ!
これも作劇上の都合っちゃそうです。
何がなんでもじいちゃんを新宿に駆けつけさせる。そういう情熱はわかりました。
なんといってもあの草刈正雄さんですからね。
やる気満々で演出し、ついに物騒な単語を入れてきて、視聴者の狙いを受け止めているように思えます。
高山に重ねて新宿の泰樹をチラ見せする。
受話器を握った深刻な顔を見せる。
そして抹殺!
準備は全て整いました。
といっても、昭和で物理的抹殺は無理ですからね。
精神的抹殺でいきましょう!!
いや、高山に恨みはないのですが、見たいじゃないですか、朝ドラで抹殺!!
本作スタッフさんよ……大森氏以下、本当は乱世を描きたいのではありませんか?
いいですね、そのままやりましょう、いざ!
ということで、泰樹の存在感が渋すぎる抹殺当日のレビューは以下にございます。
よろしければ併せてご覧ください。
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
夕美子と雪次郎は、お似合いですよね。雪次郎が夕美子と同じ地平線に上がってきた観があります。
一方で咲太郎も少し面白い感じなんですよね。長男気質で女性に優しい咲太郎ですが、夕美子に対しては距離が測りづらいように思えます。夕美子も、一見咲太郎とは相性悪そう。そこが逆に面白いなあと。
それにしても、夕見子は面白いですね。素直で一途でかわいいです。