「みつけた。私、結婚するの。やっと白馬の王子様を見つけた」
学生時代から交際していた建築家。
彼が今度イタリアに向かうため、プロポーズされて迷っていたものの、受け入れたのです。
「この作品をやって、やっと区切りがついた」
「それって、アニメーターをやめるってことですか。それはないですよ、マコさん!」
なつが愕然としてそう言います。
「成功させた。私にはこれしかない。そう仕事に満足したから、結婚してもいいと思えた……」
なつは訴えかけます。
「マコさんのようには描けません!」
「私は楽しめない。あなたのようにはまだ……それがどうしてなのか。才能か、迷いか。一度立ち止まって考えたい」
マコははっきりとそう告げるのでした。
ここで坂場がこう言います。
「あなたはいいアニメーターです。少なくとも、日本にはまだあなたのような人はいない」
なんでそんなに冷静なんだ。
そう突っ込みたくなりますが、マコはふっと笑います。
「そうやって冷静に言われると、かえって嬉しい」
坂場は美辞麗句、おべんちゃらがないのです。
そこは夕見子と同じ。いつでも素直。いつでもまっすぐ。
そういう相手からの評価は、一番クリアであてになるものです。
なつは訴えかけます。
「マコさん、また必ず、戻って来てください!」
「また戻りたくなるような、すごい漫画映画を作ってよね、なっちゃん」
マコはそう返すのでした。
「俺もがんばります!」
神地がそう張り切ると、茜が止めます。
「嫌味に感じるから……」
うーん、この残酷さよ。
あいつが頑張ると周囲は辛い。それもあるってことでしょう。
マコは晴れやかな顔です。
「私は幸せになる。安月給のアニメーターともおさらばよ!」
そう言うと、モモッチがこう叫ぶのです。
「うらやましーーーー!!」
まぁ、それもそうですね。
建築家というクリエイターとイタリアで新婚生活です。
****教団員ならば、踊りながら奇声絶叫して喜びそうではあります……。
ただ、マコは納得していないでしょう。
「白馬の王子様」という言葉も、自嘲か嫌味にすら聞こえるわけでして。
下山は、そんなメンバーの姿を忘れないようにスケッチしていました。
父がこう語ります。
木漏れ日の降り注ぐ平和な森で、なつは新たな誓いを立てる。
自分は一生、アニメーターを続けていく。
ああ、なつよ。
これからも好きな仲間たちと思いのままに生きよ。
と、ここで【完】が出て、終わりそうになります。
こらこら、終わらせるな。
来週に続けよ――。
最近の父ナレーションはキレッキレです。
進行にまで突っ込みおった!
今週からやけに弾けてますよね。
恋の季節はビタースイート
「なつよ、恋の季節が来た」
そんなサブタイトルからすれば、いよいよなつが恋をするのかと思うわけじゃないですか。
坂場との恋愛フラグは不成立。
そしておにぎりとパンのやりとりで、やっぱりこいつはダメだ感が満載でした。
夕見子はむしろ【抹殺の季節】でした。おいっ!
雪次郎と蘭子の関係は、好きですよ。
恋に狂う騎士と女王様ですね。朝ドラなのに濃厚だぁ!
神地と茜は、いい感じじゃないですかね〜。
なんだ、フェイクで誰も結婚しないのかと思っていたら、マコの結婚でした。
これも実は、伏線はありましたね。
丁寧な作りです。
・お煮しめを美味しく作る。お見合いが来ている
なつぞら78話 感想あらすじ視聴率(6/29)本物と見せかけは表裏一体・坂場、神地、なつに焦りを感じていたが、ふっきれた
なつぞら90話 感想あらすじ視聴率(7/13)起点は夕見子思えば、このセリフの頃からマコは悩んでいたのでしょう。
なつぞら91話 感想あらすじ視聴率(7/15)漫画映画は子供のためか?「結婚か、仕事か? どちらを選んでも、責められるなんてないってことよ……」
そんなマコの心の揺れ、喜怒哀楽を表現しきった貫地谷しほりさん。
お見事でした!
表情を見ているだけで、圧倒されました。
したら結婚ってそもそも何さ?
このマコを見ていると、恋の季節はよいものかどうか、悩ましくなるものではあります。
恋の季節は男女双方に訪れるはず。
それなのに、ナゼ、女ばかりがこうも負担が大きいのでしょうか。
男性だって大黒柱になって、妻子を支えるというプレッシャーがあるものです。
それはメンズリブの役割。
まぁ、そこまで話を広げると混乱しますので、マコやなつを通して描かれた困難につきまして確認しておきますと。
・退職を迫られる
・その結果、夢の断念を迫られる
・人間関係が崩れる
※「女の友情は脆い」という偏見もあるが、これはライフサイクルの問題でもある
本作における結婚は、なかなか厳しいものがありました。
家族との絶縁を迫られた千遥からして、そうでしたね。
なつぞら83話 感想あらすじ視聴率(7/5)戦災孤児の境遇を浮き彫りにあれは戦災孤児という事情もあるとはいえ、それだけではないでしょう。
マコとなつの関係を通して、それだけではなく女性が直面すると描いたと思えるのです。
何かを捨てねば結婚できない。
それは男女双方そうでしょうが。
男性の失うものが、
「自由時間」
「深夜までの飲み会」
「フィギュアを捨てること」
あたりだとしたら女性は何でしょうか?
◆家が散らかっているのは妻のせい? 浮き彫りになった『家庭内男女格差』|ライフハッカー[日本版]
今、争点となっている選択的夫婦別姓を求めるかどうか。
これも結婚を通して捨てるものではありませんか?
男性が改姓する場合もありますが、数はかなり少ないものです。
本作の剛男は、その少数派です。
屈辱的という印象があるためか、モデルと異なる選択をさせた朝ドラもありましたっけね。
前作****の主人公夫妻です。
「愛する夫の姓になるなんて素敵ぃ〜」
とロマンに収斂するのは別の話です。
そもそも夫婦同姓は西洋由来で、江戸時代以前は別姓であってこそ日本の伝統です。
それはさておきまして。
論文執筆をする研究者は、旧姓の論文はカウントされなくなる。
そういう明らかな不利益もあるわけです。
「マコさん、必ず戻ってきてください!」
なつはそう訴えかけるわけですが……それは茨の道なのです。
マコのせいではありません。社会制度のせいです。
◆“マミートラック” 働くママの落とし穴|けさのクローズアップ|NHK おはよう日本
こうした女性アニメーターの労働環境問題に取り組んでいたのが、京都アニメーションです。
それがあんな悲劇に襲われて、言葉もありません。
何かできることがないか、考えていきたいと思います。
◆京アニ火災、アメリカのアニメ配給会社がクラウドファンディングを開始。「私たちの友人である京アニを助けて」
本作のよいところは、そんな女性の直面する辛い状況へのヒントも見せているところです。
『アナと雪の女王』のような、女同士のタッグ。
それを助ける、荒野から来た総大将・泰樹。
男も女もない。
みんなで助け合えばきっと希望はある。
そういう強さが、本作の魅力です。
天才と職場が同じ それは地獄か!
「恋の季節」と言いますと、どうしたって男女間のときめきだと思うものですが。
これもひねっておりまして、むしろ同性同士のケミストリー(※相性関係)がバチバチと弾けました。
まずはなつと夕見子による女同士の絆。シスターフッド。
そして坂場と神地による男同士の絆。ブラザーフッド。
坂場がどれだけ面倒くさいか、それを丁寧に描いてきたからこそ、そんな坂場に認められる神地は何者か?ということになる。
茜はそれを見抜いているようで、
「末恐ろしい」
とつぶやいています。
実際に、末恐ろしいのです。
このコンビの描写が秀逸なのは、同じ職場にこういうタイプがいると、困ることもあると描いているところでしょう。
デメリットも多いのです。
・空気を読まない
・距離感の取り方がおかしい
・締め切りを守らない
・独走して上層部と対立、ハードルをあげる
・理解しにくいこだわりがある、よくわからない世界観や価値観がある
・ダメ出しがしつこい
・周囲は意図を読み取りたいのだが、何を考えているかすらわからない
・指示がざっくりしすぎている
・社会常識や暗黙のルールに従わない。マイペース
・劣等感を刺激してくる
・周囲の自信喪失を招く
これは辛くはありませんか?
しかもコンビになることで悪化している感もある。
「ともかくすごい天才がいるといいんだ! 天才の指示通りにやればうまくいく!」
というのは完全に勘違い。
「天才が何か?」というのを理解しないまま、イメージでざっくり描くからそうなるのです。前作****ワールドの設定が破綻しきっていた世界がその代表的な例ですね。
**さぁんは困りもんでした。
あれは才能とかそういう話じゃない。
ゲスなハラスメント体質だった。ただ、それだけのことです。
もう一度聞きます。
本当に、天才と仕事をしたいですか?
※このアホ映画ではあの天才が、独裁者一味に入っているわけでして……
****の総評でも注目した、あのドラマが排除し続けた――空気を読めない枠が、本作では大暴れです。
社会や職場は、そういうタイプも受け入れるべき。
私はそう言ってきました。
それが次の朝ドラでいきなり問いかけてくるとは想像すらできませんでした。
いいですね!
『半分、青い。』と同じく突っ切ってください。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
NHK踏み込んで来ましたね~
手塚治虫さんと鉄腕アトムを実名登場させて「あれをアニメーションと呼んでいいのか」と坂場くんが疑問を呈する。予想通り、アニメーション制作現場のブラック化をきちんと描いてくれる期待が高まりました。その上で、未来への提言になるような良質のドラマになれば、歴史に残る名作にまで上り詰めるのではないでしょうか。
匿名さん
月曜のなつぞら、坂場さんが鉄腕アトムに疑問を呈していましたね!
神地さんのモデルが手塚アニメに疑問を呈した発言を読んだことがあります。
やはりなつぞら、一筋縄ではないですね
手塚治虫氏が先駆者的な役割を果たした面は確かにありますが、今日のアニメーション業界の劣悪な労働環境の最大要因である「不当に安い制作費」を構造的に定着させてしまったのも、他ならぬ手塚氏のビジネス手法が原因ともされています。
ですので、手塚治虫氏を「開拓者」と手放しで賞揚するのには、いささか違和感を覚えます。
本日、朝日新聞の読者投稿川柳に、「大勢の『なつ』よ…」と語りかける作品が投稿されてました。
今回の事件には限らずですが、失われた1人ひとりの方の無念には言葉がありません。ご冥福を心から祈ります。。。
同じく朝日新聞の天声人語で知ったのですが、手塚治虫が週1のテレビアニメ制作への挑戦を振り返った著作には、自分たちは開拓者だという思いが支えてくれたいう言葉があったそうです。
挑戦を開拓になぞらえるのはよくある表現ではありますが、ひょっとしたら「なつぞら」の開拓者プロットのルーツかもしれませんね
『わ*て*か』のモデル企業の暗部・不祥事が止まりません。
『****』のモデル企業のほうは、来年の今ごろ大丈夫でしょうか。