ちょっと離れた席では、咲太郎の両脇に亜矢美とマダムが座るのでした。
二人ともバッチリと決めた姿です。
亜矢美の帽子よ!
夫人の正装における帽子って、当時にしたって、かなり時代がかったものです。それをきっちりと被っている彼女のかぶき者っぷり。
※戦前の正装という感じ。なつ世代では流石にない
彼女はマダム相手となると、全力で着飾ります。
男の気をひくためじゃない。同性のおしゃれ名人に全力で挑むわけです。粋だねぇ。
マダムは、北海道の家族に代わって見届けたいと語ります。
文化パトロンのプライドもありますね。
ここで亜矢美はこう言います。
「新宿の母ですから。私は友」
「俺は社長」
咲太郎も続けます。
母と言われて、マダムはちょっと動揺しています。冷静でクールなマダムですが、亜矢美相手だとちょっと弱いんですね。
「地名+母」が占い師となるのは、なつより一回りちょっと上の栗原すみ子さんからのようです。
劇中の時系列だと、評判になり始めたあたりですかね。
なつよ、雪次郎君の成長を見届けよ――。
そう父が促す中、明日へ。
桜隊の悲劇
今日は、雪次郎と蘭子の運命に熱いものがありました。
蘭子が年上とはわかっておりました。
雪次郎が夕見子に初恋をしていた当時から現役女優ということは、一回りほど年上ということでしょう。
あの初対面の会話が生きてきて、すごいものを見たと驚かされます。
蘭子の先輩がいた劇団のモデルは「桜隊」と思われます。
ここまでやるか……気合が入っていますね。
ちなみに本作の豊富遊声のモデル・徳川夢声は、桜隊のメンバーでしたが、この時は参加しておりませんでした。
彼は桜隊の慰霊を熱心に行っております。
そういう意味でも、蘭子と彼にも縁があるといえます。
本来、タカラジェンヌも巻き込まれたこの悲劇は、NHK大阪の範疇のような気がします。
『わろてんか』は、宝塚創始者の小林一三がモデルの人物(=伊能栞)が登場していたのですから、そこらへんを描けたはずです。
ところが、どういうわけか一切触れませんでした。
それどころか、戦争被害全体がミニマムかつ無茶苦茶なものでした。
結局あれは関西のエンタメ、伝統、歴史を描くというよりは、吉本興業の宣伝ドラマだったということでしょう。
小林一三の経歴から宝塚設立を削除って……今思い出しても意味がわかりません。
労働組合を作ろう
さて本作ですが、あの不幸な放火事件と重なったためか、不吉なものとされることもあるようです。
このことについては、後述します。
もうひとつ、現実世界とリンクしていること。
それは「労働組合」です。
『わろてんか』のモチーフである吉本興業問題は、芸能界の労働問題をもあらわにしています。
偶然か、必然か。
吉本興業だけではなく、『あまちゃん』主演・のんさん、ジャニーズ事務所の対応からも、その不条理が明らかになっています。
◆〝干され女優〟のん「オファーつぶされた!」マネジメント会社が衝撃告白(2019年7月23日)|BIGLOBEニュース
◆ジャニーズの暗部に触れないメディアの罪 少年たちへの”性的虐待”という事実:PRESIDENT Online – プレジデント
◆吉本とジャニーズの激震で破れる芸能界の均衡 テレビと芸能は共同体のままでいいのか | テレビ – 東洋経済オンライン
◆町山智浩 加藤浩次の吉本興業告発と韓国映画『共犯者たち』を語る
◆芸能人も<労働組合>をつくった方がよい(佐々木亮) – Y!ニュース
芸能界のような特殊な業界は、労働組合とは無縁のはず。
そういう神話がありました。
まだ消えたと認識していない姿勢も見られます。
◆ORICON NEWS:松本人志“芸人仲間”に呼びかけ「プロ根性で乗り越えましょう」 – 毎日新聞
プロ根性とは何でしょうか?
どんな理不尽でも、黙って耐えろということでしょうか?
それは奴隷根性と何が違うのか。
そこまで事態は進んでいるのではありませんか。
◆「闇営業」芸人とメディアに伝えたい「オレオレ詐欺」被害者家族のホンネ
「騙されていたと見抜けなかった」
「プロ意識が足りない自分たちが悪い」
と、泣き寝入りする時代は終わりにしましょう。
そのヒントが、今後本作でも出てくるはずです。
坂場と神地のモデルは、労働条件を守り抜いた人物として知られています。
なつのモデルも、女性アニメーター特有の労働問題に反旗を翻したのです。
労働者の権利を守ってこそ、エンタメもあるのだ。
本作はそこまで踏み込むのでしょう。
膿が溜まっている
もう「エンタメに政治を持ち込むな」どころか、「エンタメは政治とズブズブ」になっている。
そんな報道も始まっています。
◆「素直に笑えない雰囲気」 松井・大阪市長、吉本興業に体質改善求める – 毎日新聞
ナゼ、政治家がわざわざそんなことを言いますかね?
まぁ、理由は想像つきますが。
◆プチ鹿島 吉本興業・岡本社長会見と普天間基地跡地利用を語る
◆吉本興業の「理屈」は、まっとうな世の中には通用しない(郷原信郎) – Y!ニュース
◆“吉本興業下請法違反”が、テレビ局、政府に与える重大な影響(郷原信郎) – Y!ニュース
ここまで黒い企業と、受信料で作られたNHK朝ドラが結びついていた――これがスルーされるべきでしょうか?
一部のファンにしたって問題です。
本作を貶めるために、NHK大阪ドラマ、よりにもよって今週になってまで『わろてんか』を褒めている投稿を見かけました。時代から取り残され過ぎですよ。
お蔵入り候補の問題作と比較する意味がわかりません。
朝ドラが10年後も、今のフォーマットであるかどうか。
見通しは暗いと言わざるを得ません。NHKそのものがあるのかどうか……。
最後に本作と、あの事件についてです。
◆京アニが支援金受け付け口座開設 詳細はホームページに掲載 – 毎日新聞
どうにも引っかかることもあります。
上記記事の中から、一部引用させていただきますと……。
普段は専用カードがなければ第1スタジオ内に出入りすることはできないが、事件当日(18日)は午前11時からNHKの取材が入っていたため、システムを解除していた。
(中略)
「SNSとか、何らかの方法で情報を入手していたのではないかと考えてしまう」(テレビ局関係者)
「何から何まで謎だらけ」という記事タイトルにもありますように、情報が入り乱れております。
◆出勤のために解錠するということは適切なのか?
私が見たNHKのニュースですと、
【朝の出勤時間帯であるために施錠をしていなかった】
ということになっておりました。
入館証のある会社勤務経験がある方ならば、この時点でひっかかりませんか。
普通は各従業員が持っているもので、それで解錠すれば済むはず。パスワードや生体認証式もあるでしょう。
◆従業員入場口と来客用玄関は同じなのか?
通常は分かれているはずではありませんか。
◆NHKには取材する動機がある
言うまでもありません。
女性アニメーターが主人公の本作です。
なつのモデルと同じく、女性アニメーターの就労環境整備に熱心であった京都アニメーションこそ、取材には最適と言えます。
その動機まで報道されたら、朝ドラに傷がつきかねません。
報道を様々な媒体で見ていると、本当にバラバラです。
・NHKが来客する予定だった
・来客がいたとするものの、どの団体であるかは書かない
・出勤時であった等、その他の理由
私は朝ドラ枠そのものには思い入れはありません。
もしもそこに管理体制の不備、不正という膿があるのであれば、もはや崩壊を免れないかもしれません。
万が一、取材の情報が漏れていて、そこを狙われたんだとしたらトンデモナイことです。
余計なお世話ですけど、NHKさんも何か本気で刷新する必要があるのではないでしょうか。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
「NHKの取材」とは、「NHKが制作を依頼していた、パラリンピックを扱ったアニメ作品に関連しての取材」だった、というニュースが、昨日の夕方7時頃流れていました。NHKが認めた、ということだったと記憶します。
なつぞらは9月末までだから、作品のための取材というのでは、脚本と撮影をいれたら、遅すぎる気もするのだが。
武者氏の筆致の変化。
放送回の内容自体についての記述はあっさりした感じで思い入れのようなものは少なくなり。
関連事項の記述の方が増え。
そして、「朝ドラ枠への思い入れなどない。無くなってしまってかまわない」という宣言。
『いだてん』の時と酷似しています。
『いだてん』でも、当初は熱く思い入れを込めて書かれていたのが、やはり、「思い入れの消失」「関連事項の記述の増加」「大河ドラマの枠が無くなっても構わない宣言」があった後、掌を返したような「叩き記事」への変貌。
以来私は、『いだてん』レビューは見ていません。私は今も『いだてん』を、「『日本のオリンピック参加史』を扱った珍しい視点のドラマ」として楽しく見ている立場ですし、武者氏とは立場が違いすぎて、レビューから有益な話は得られそうにありませんので。
武者氏にも言い分はあるのでしょうが、私には「それは貴方の興味・関心の対象が他に移っただけではないのか」としか感じられない部分も多いですし。
『なつぞら』そのものは、良くできた面白い作品です。
レビューも楽しく読み続けたいのです。『いだてん』レビューのようなことにはなってほしくはないです。
噴水の池が埋め立てられていたのは、東洋動画という会社の変化の暗示だったのかもしれません。
第98話では、あえてなつと坂場の足元の地面をクローズアップし、埋め立てられた池の跡にベンチが置かれているところを映す。どこか潤いのない、乾いた感じ。
中庭自体も、以前のような活気もなくがらんとして温かみが抜けたような印象。
会社自体が変革期を迎え、潤いや温かみを失っていっているかのような。仲さんの物腰も、心なしかそんな雰囲気を感じないでもない。
今後どんな展開が待っているでしょうか。