なつぞら140話 感想あらすじ視聴率(9/10)圧巻の北海道開拓史

昭和49年(1974年)春ーー。

十勝の大地に、マコプロが降り立ちます。

霧の中、早朝の新緑の中で、彼らが動き始めました。

しぼりたての牛乳だべさ

十勝の柴田牧場では、早速しぼりたての牛乳が出迎えてくれます。

しぼりたての牛乳か。

◆愛情を込められて育った牛から搾乳された牛乳の味

これも、ちょっと時間をおいたほうが美味しいとか。
いろいろな要素はありますが、冷たくするまでもないしぼりたての味は、特別しょ!

夕見子達ががんばって東京での販売ルートを確保しようと、しぼりたてには特別の味があります。

マコも驚いています。

「ほんとうに新鮮!」

ここで、マコプロはこの味をどうやってアニメで再現するか悩み始めるのです。

視覚と聴覚はともかく、味をどうするか?
そこは悩ましいわけですが、そうはいっても皆さんもご経験ありませんか?

「あのアニメで見たあの料理がうまそうだった! 食べたい!!」

あるいは、『はじめ人間ギャートルズ』のお肉とか、アニメにはそういう力がありますね。

下山とモモッチは、グラスの中を熱心に覗き込みます。
色彩の専門家であるモモッチは、白だけでなくうっすらと黄色があるのではないか……と観察するわけですが。

「おいしさを描けばいい」

ドヤァ……えらそうにドヤァ……って、神っちだよ!

これは天才とカッコつけてまとめれば、それはそうですが。
文句のつけようはいくらでもありますし、うっすらとムカつく態度ではあります。

職場で、彼が隣にいて欲しい?

・だからそのおいしさをどう描けばいいんだよ!

 

・思いついた案を言えよ!

 

・もっと普通に言えんの、なんでドヤ顔なんだよ!

倉田先生以来の「指示が大雑把すぎぃ!」問題と同じですね。

でもって、何が驚きかって言うと、ドヤ顔で紙に向かえばサササーッとと描き始めるところなのです。
しかもうまい。そういう奴なのよ。

泰樹の開拓物語

ここで、曽孫を抱いた泰樹の開拓者体験を聞き取ることになります。

明治時代――富山に生まれた泰樹は、幼くして両親をはやり病で失いました。

親戚農家の養子となるも、そこでは働かなければただの厄介者。

彼の環境が特別に悪かったとも言えません。
明治時代は、格差社会であった上に自己責任も問われるという、厳しい時代でした。

明治時代って実は過酷「通俗道徳」という自己責任論が広まり、安易なノスタルジーは危険です

文明開化だ、鹿鳴館だ、そう浮かれさわぐ人々がいる一方。地方には江戸時代と大差ないままの生活を送る人が多かったものでした。

その生活に疲れたのか。
自由を求めたのか。

泰樹は18歳で、北海道に移り住むのです。

これも、なかなか厳しい話であります。
というのも、新しい土地をものにできるという明治政府の言いぶんには、かなりの無理があったのです。

本家のアメリカ開拓者もそうですね。
スコットランドやアイルランド系の人々は、迫害されたうえで母国を追われ、新天地で苦しむこととなりました。

なぜアイルランドとイギリスは不仲? 日本人には理解しにくいお国事情をスッキリ解説

土地清掃とは? スコットランドの伝統や生活を破壊した強欲領主たちの罪

現在に至るまで、「レッドネック」とも呼ばれるプアホワイト(貧困白人層)は、彼らの子孫が多いとされています。

※『ウィンターズ・ボーン』の背景にある歴史でもある

イッキュウさんが言っていたように、世界中で理解しあえるというのは、そういう歴史があるから。

「私たちの先祖も、開拓者として、移民として、苦労してきた。それが今、完全に解消されたのかどうか?」

そこまで踏み込めば、心を揺さぶるのです。

新政府の与えるという土地は、原生林です。北海道は火山地帯でもあり、土壌や気候が農業に向いていたとも限りません。

泰樹の入植したてのころは、米や味噌すら食べられたかどうか。

北海道は「食の歴史」も過酷そのもの~米豆の育たぬ地域で何を食う?

そんなところを耕して、国の検査を合格しなければ、土地すらもらえない。

しかも、ヒグマもいるべさ……。

三毛別羆事件には震えるしかない ヒグマに襲われ死者7名・重傷3名

※ババアvsヒグマ!『デンデラ』が熱い!

 

洪水で流されて

そう語る泰樹の姿を、下山はスケッチしながら聞き入っています。

「それで、音問別に?」

そう促され、そうではなく移住だと泰樹は語ります。
十勝川のほとりで酪農家になったものの、大正11年(1922年)、富士子8歳のときに、洪水で何もかもが流されてしまったのだと。

◆十勝川洪水年表(大正11年の大洪水)

家も畑も流された。牛舎も。
家族と馬だけが助かって、まだよかった。

泰樹はそう語りますが、そう言えるのかどうか。
泰樹の妻にして、富士子の母は、それから一年もしないうちに病死してしまったのです。

じいちゃんは苦労した。
なつがしみじみとそう言えば、
「義母さんも……」
と砂良もしみじみと続きます。

ここで、ドヤ顔であいつがこう言い出します。

「その洪水は使える!」

マコはムッとしつつ、たしなめます。

「使えるって?」

神っちは、ここでやっと自分の失言に気づきます。

「無駄にしたらいかんと思って……」

神っちは、失礼で無神経だけど、心の底から悪人というわけじゃないんだな。

ちょっと空気を読めない。
自分の言動の与える影響に無神経なのです。

それをマコはフォローできるのです。

支え合う開拓者たち

イッキュウさんは、ここでこう尋ねます。

「開拓者にとって、一番の心の支えとは家族ですか?」

「家族だけでない。家族以外も、ここで支え合って、開拓して、強くなった……」

これも、北海道開拓の歴史です。

開拓によって、ルーツから切り離されてしまう。
しかも、日露戦争でダントツに死傷率が高かったのが、第七師団(北海道・旭川)。

泰樹と同年代には、そういう人やその家族が多い。

第七師団はなぜゴールデンカムイで敵役なのか?屯田兵時代から続く過酷な環境

そんな環境だから、困ったからって親戚に頼るということができない。
あの家の息子だから偉いんだべ、そういうことも開拓者一世では関係ない。

だからこそ泰樹は、ボンボン高山を【抹殺パンチ】で倒したのかもしれませんね。

何がデパートの跡取りじゃ!
お前とわしの、どこが似ているんじゃああああ!

高山よ……相手が悪かったな。

なつぞら95話 感想あらすじ視聴率(7/19)夕見子となつのレリゴー♪

こんなリアルに血と涙のにじんだ物語を、軽々しく扱ってよいものかどうか。

アニメを開拓する彼らは悩むわけです。
本作スタッフもそうでしょう。

牧場でアイスクリームを

なつは、部屋まで用意してくれた富士子にお礼を言います。

「なんもー」

そう言う富士子。
放送当初は「ちょっと大げさでは?」と突っ込まれた北海道弁のイントネーションが今ではしっかり馴染んでいて、素晴らしいものがあります。

なんでも、照男が離れを作ったから部屋が余り始めているとか。

健全ですね。
家族とはいえ、同居して親が過干渉ですとプライバシーの問題がありますもんね。

我が子夫妻に「子作り、子作り、子作り……」と連呼する親もいたっけな……まぁ忘れよう。

牛舎もリニューアルしたので、富士子と砂良には考えがあるとか。
いわば二人の開拓です。

このドラマは、雪月のとよ・妙子・夕見子もそうですが、対立どころか嫁と姑が連合軍を結成していていいですね。

二人はアイスクリームを作り、牧場見学者に販売するそうです。

◆おびひろ観光ナビ

観光牧場! 観光牧場! ソーセージ、牛乳、アイスクリーム、乗馬、毛刈り体験、ジンギスカーーーン!!

はっ、テンションあがりましたね。

理想的じゃありませんか。
牛舎改造レストランでジンギスカン。想像するだけでワクワクしてくる。これぞ北海道だべな!

なつが泰樹の富山時代について尋ねると、富士子はあまり話したがらないと言います。

同郷出身の婿・剛男への厳しさも分かった気がする。

なんだあいつは。本ばかり読んでなまっちょろい奴だ。

 

わしが若い頃は、本を読む暇なぞなかった。まぁいい、北陸のよしみで見合い候補に入れておくか。どうせ選ばれんだろ。

 

な、富士子、あいつを選びおったのか! む、むむぅう!!

こんなところですかね。

なつぞら18話 感想あらすじ視聴率(4/20)そして語られる、妻への愛

一人だった、二人

子供の頃から一人だった――。
そんな泰樹の生い立ちを知り、なつは噛み締めます。

あの日、自分を受け入れたじいちゃんは、自分の人生と重ねていたのだと。

犬や猫じゃあるまいし。

それでこそ赤の他人だ。

学校は体を壊したらいきゃいい。

なつぞら2話 感想あらすじ視聴率(4/2)大人が守り、育ててゆくもの

なんとなく、彼も苦労したとは思っておりました。彼も、なつと同じようなことを周囲から言われてきたのだと、わかってきます。

「そして、人と支え合って、強くなってきたってことか……」

イッキュウさんはしみじみと語ります。

泰樹は、自分がされたようになつを突き放したようで、そうではない。

受け入れ、甘いものを食べさせて、馬車の隣の載せていた。

「もっと怒れ、怒ればいい!」

怒りを知っていればこそ、発散させた。

赤の他人だからこそ、支えあえたのかもしれない。だからこそ、なつは泰樹の孫になれたのです。

心をぶつけあい、結びつける。そんな二人なのです。

なつぞら41話 感想あらすじ視聴率(5/17)それでこそ、わしの孫じゃ!

牛の蹴りを、試される大地をなめるな

ここから先は、牛舎で搾乳指導です。
かつては手、そして今はバケットミルカーになりました。

◆バケットミルカー/ORION

「よーし、菊介さんが教えるからよ」

ここで張り切る菊介さんだ。

やりたい人を募集すると、みんな手をあげます。菊介は、カメラのお嬢さんことモモッチを指定しました。

牛に蹴られないようにと注意されて、モモッチは緊張し始めます。

「えっ……蹴られるの?」

「怖かったら蹴るべな」

怖い顔をしないでね、と下山に言われつつ。その高い運動能力と表現力を発揮しながら、牛の周りでこわごわと踊るモモッチ。

「今から触るよぉ〜! よろしくね!」

伊原六花さん、最高だな〜。
※続きは次ページへ

2 Comments

もずく

なつぞら作中の地名でしたら、「音問別(おといべつ)」で合っていますよ。

北海道に実在するのは「音威子府(おといねっぷ)」です。

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