荒馬を乗りこなす【魔王】
さて、マコプロには、新人三名が見参しております。
石沢(ベテラン男性)、町田(新人男性)、立山(ベテラン女性)です。
これもバランスがいい。
東映動画初期の仕上げ課あたりと比べるとわかりますが、マコはベテラン女性の役割をきっちりと説明しています。
彼女は今日も説明がハキハキしている。
・仕上げはどうしたって外注に頼る
→見下しはないし、そこは割り切りがある。
・その外注との折衝は石沢と町田の役目。そこにリスペクトを!
→わかっているのかな、特に神っち、イッキュウさん……?
・立山のチェックは大変だ
→私もサポートする。地位は上でも、彼女を見下すことはない。
そして、締めくくりはこうだ。
「しっかり、締め切りを守りましょう!」
「はい!」
「返事だけは素晴らしい」
このやり取りからも、マコがクセの強い部下を見極めつつ、泳がせている。
そういう総大将になったことがわかります。
こうなると、【魔王】は焼き討ちできないし、【表裏比興】も従うしかない。
猛獣使いであり、松風レベルの暴れ馬を手なずけた、そういう境地に突っ込みつつある。
名馬の制御は難しいけれども、乗りこなせれば最高なのだ。
そしてざっくりと、一話目の打ち合わせへ。
神っちの失言「洪水は使える!」の意図もわかります。
なつぞら140話 感想あらすじ視聴率(9/10)圧巻の北海道開拓史
プロットの基礎として使えるという意味。彼は一言多くなければ、もっといいんだけどな。それができないだけなのよ。
父と母、妹、主人公のソラ。
洪水のあと、馬車で一家は旅立ちます。
そこで彼らが見かけたのは、川に流されている少年。少年のお友達のリスが、鳴く声にソラは気づいたのです。
ソラの機転と家族によって、救われた少年。彼の名はレイ。
ソラと暮らすレイ。
レイと暮らすソラ。
ソラとレイの目を通して、物語は動き始めます。
こうして、物語は動き始めるのです。
きみの記憶と想像力に不可能はない
なつは一話目を描き、イッキュウさんに見せています。
「家族の表情はいい。でも荷馬車が競馬場を走っているみたい」
出た、ダメ出しだ。
彼の場合、ダメ出しされないということが合格ということ。
イッキュウさんの理論はこうきた。
いろいろな石がある道を進むなら、様々な振動があるはずだ。その方がリアリティが出る。おろそかにしない。
「そこまで追求しだすと……」
なつもびっくりして言いながらも、ハッとしているのです。
東映動画では、そういうことを捨てて進んできたんでしょうね。そのことを思い出しつつある。
「子供も大人も楽しめる、本物。きみの記憶と想像力なら、できる。お願いします!」
そう言われ、なつは集中し始めるのです。
なつの記憶の中にある、泰樹と乗っていた馬車の景色が思い浮かんで来ます。
これを、マコさんが感慨深げ(あるいは、そんな調子で締め切り守れるのか? という疑念かも?)に見ているこの顔!
神っちや下山も、このやり取りを聞いから、自分の机に向かいます。
本作は、視聴率が伸びないといわれております。
まぁ、気持ちはわかります。ものすごく疲れるもんね。
このラストシーンにしたって、マコ、神っち、下山まで顔がすごい。
本作の演技は、集中する顔にものすごくこだわりがある。
広瀬すずさんのなつは言うまでもなく素晴らしい。
背景に映っているだけの、神っちの横顔。過剰なまでに集中していることが伝わってきて、見ているこちらまで圧倒されてしまう。
疲れるんだ……毎朝、脳みそ破裂しそう。
なつよ、どんなものができるのか、私も楽しみだ――。
これはナレーターと気持ちが一致するのですが、怖い気持ちもある。
OPにソラが出てくるのかな?
何があるのかな?
ラストスパートになってから、凄すぎて毎朝が疲れる。
結果的に、睡眠時間を長く取らないと身が持たなくなった。
何をしているんですか、本作は!
今朝も関ヶ原かッ!
今朝も、関ヶ原っぷりがすごかったな。
・親子は血縁じゃない、意思の問題だ!
→これ、再三指摘しておりますが。****教団モデル企業は、外戚政治がはびこっていて、ライバルの東洋水産から激しくダメ出しをされまくっております。
つまりは、東洋水産と同じ姿勢を見せてきおった! ということですね。
日本式親族経営は、ツッコミどころがある。
雪月のような着地をして全否定はしないけれども、メスを入れおったわ。
・原案はあくまで原案だぞ?
→これも、本作がかなりアグレッシブに突っ込んで来たこと。
「モデルと違う!」
というツッコミは、360度から広がっていてほぼ『ジョン・ウィック』キアヌ・リーブス状態だと思って、興味深く見ているんですが。
狙って外していますよね?
本サイトもなつのメインモデル以下の人物伝記は、あえて放棄していますが、それが幸いしたと言いますか。
「いつ、わしがモデルをそのまま使うと言いおった?」
という境地に突っ込んで来おったわ。
・いい男性はセクハラしないから
→信哉と明美。これだぞ。
・深夜作業神話はいらんのじゃあああ!
→いまだに、真面目な日本人をドヤ顔で語る風潮をぶった切りました。現実を見つめよう!
◆「世界一真面目な労働者は日本人」と触れ回っては、いけない理由 (1/5)
もう、世界は気づいています。
日本式経営に学ぶつもりはない。
スーツ着ねえ。足元スニーカー。遅刻する。残業しねえ。飲みニケーションしねえ!
そういう型にはまらない奴らを泳がせた方が、あっと驚く発明をするって。
ビジネス王者になれるって。
ついていかないと、そういう流れに!
マコプロは、こういう海外の最先端に迫るものがあります。
・男女が一緒に歩き、成長するんだぞ!
→【スパロウリズム】からそうだ。
なつとイッキュウは、同じ位置で歩んでいる。そして、それがソラとレイにまで及んで来た。素晴らしい!
「もらい感情ぅぅぅ〜」にドラカーリス。
・細かいところを追求するんじゃああ!
→本作は、かなり細かいところを追求しています。でも、それを別に自慢するわけでもない。いや、自慢したいけどね! そういう気持ちもあるけどね、わかる人がわかればよいんだろうね。
・見られて困る話をフィクションにしていいの?
→イッキュウさんは断っている。これも重要かもしれない。
なまじ、朝ドラが取り上げたことで、神話にヒビがはいったモデル。いましたよね……。
収監されている人物は、その間、自宅で新商品開発に励むことはできない――というのが、世界的に認識された真理といってもよい。
が、この真理が通じない信徒がおられるようでして。やれやれ。
ドラマにしなければ、そんなこと、私だって気がつかなかったんだ……。
でも、まだここまでは前哨戦なんだよな。
彼らには届けたい声がある
ずっと指摘していますが、本作は『半分、青い。』の謎解きヒントとしても秀逸です。
あの作品において、北川悦吏子先生は、自分のルーツを見つめなおして入れ込んで来た。
岐阜のこと。
左耳のこと。
彼女自身の内側にありながら、ドラマでは描いてこなかったこと。それを、世界に投影した。
彼女だけの意思?
それともそうではない?
だからこそ、あの物語には消えぬ印象的な魅力が宿ったのだと思います。
「ふくろう商店街」のモデルとなった恵那市を訪ねて、私はそのことを感じました。
ドラマと同じ空気が、そこにはあったから。
鈴愛が、聴覚での距離感をうまくはかれずに、迷子になったように戸惑う場面も、見ていて心に響きました。
そういう、生きてきた誰かの声を反映させること。
それでこそ、物語が活きてくるはず。
しかし、信徒のやらかしたことは残酷でした。
お前の言うことなんか聞きたくない、自慢しやがって。左耳が聞こえないだと? うるさい、嘘つき、黙れ! そうやって朝から晩まで喚く。
信徒よ、むしろこちらから聞きたい。
口塞ぎが趣味ですか?
あなたの発言とは、全部マウンティング材料ですか?
確かに、その心理状態に、興味がそそられるところではある。
一方で、主人公のルーツを無茶苦茶にした朝ドラがありましたっけ。そのせいで、墓穴を掘った。
そうは言うけれども、本作だってモデルの経歴を切り刻んで組み合わせているって?
そういうところは確かにある。
そこに、誰かが別人の感情、人生、涙、血を注ぎ足している。
なつが千遥に届けたいと願うように、届けたい誰かに向けて、発信している創造者がいる。
妥協なく、わかりやすい一本道ルートの活躍でもなく――生きるうえでの心の動きや悲しみを描きたい人がいる。
イッキュウさんの語る本作の意義には、そんな声が背後にある。
『半分、青い。』以来、NHK東京の朝ドラには苦しみや悲しみも満ちていた。
空気を読めないこと。
突拍子もないことをしてしまうこと。
ルールを外れてしまうこと。
「あいつキモいよね」と悪口を言う。そんな人たちの存在を感じてしまうこと。
想像を通して、それをキャンバスにして、アイデアで、自分自身を描いて、それを受け取る人に届けようとしている。
そんな信念を感じるのです。
あと一ヶ月以内で終わると思うと、悲しいけれど、ほっとする。
くたくたになるんだ。
こんな強いボールを投げられる、こっちのことも考えてくれ。
でも来年、彼らがマウンドに登ったら?
私も受けて立ちたいと思っている。
北村紗衣氏の『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』以来、ドラマの作り手は犯罪者で、レビュアーは探偵や刑事という理論が引っかかっているんですが。
最終回、どうなるかわかってきた。
ドラマではなくて、私のこと。
ライヘンバッハの滝から落ちるんでしょうね。
いや、自分をホームズにたとえるなってことではあるけど。まあ、それも楽しみだ。
しばらく受け身をとって、滝の下に潜もう。
信尹「まだ読まんでいいタイムがあるのか……」
◆「まんぷく」安藤サクラが「なつぞら」劇中アニメで声の出演!朝ドラヒロイン異例の連続参加
なんということをなさるのか……!
これほどの残酷なことをしてッ!
「クソレビュアーめ、貴様の*ちゃんは出ない説は否定されたぞ、フハハハハ!」
って、まぁ、それは別にどうでもよいのよ。声だけやん。
イケイケでノリノリで売り出している最中だし、そこは諸事情もありましょう。
あんな直談判記事を出されて、スルーできるかって話でもありますし。
声にしたって、いいことでしょう。
むしろ朗報なのだ。
あんなベトベトした声しか出せないと、朝ドラファンに認識されたら不憫でなりません。
彼女は被害者だもの。そこは挽回の慈悲くらいあってもいいでしょう。
問題はッ!
毎朝(ではないか、夕方までか、やれやれだぜ……)マントラのように、本作を全否定ハッシュタグ投稿をしている、そんな前作信徒が引き裂かれてバグを起こすという懸念ですぞ!
おぉ、おお、おそろしや……ラーメン教に挑んで、どうしたいのですか、NHK東京の異教徒はッ!
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
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