ソラの真似かと聞かれて、にっこりとする千夏。
「ソラの卵もお母さんのお友達かな?」
「そうかもね」
千遥もにっこり。
これも、大事なところじゃないかとは思う。
『キャプテン翼』を見てサッカーにあこがれて、選手になりました!→アニメの影響って素晴らしい! さすが!
『アンパンマン』の真似をしてパンチされると痛い→アニメの影響で真似する子供なんていねーよ、いるなら親の問題だろ!
こういうダブルスタンダード。そろそろ限界だと思います。
『大草原の少女ソラ』は、確かに奇跡を起こしているのかも。
大人はどうやって料理をするのか?
おいしいご飯をたっぷり食べられることって素晴らしい! 子供に、そう学ばせる力があるのですから。
決意した千遥
その夜、眠る千夏の枕元では――。
千遥が箪笥からあるものを取り出してじっと見ています。
十勝の柴田家で着ていたなつの服でした。
翌朝、千遥は出汁をとっています。
そこへ、義母・雅子がやって来ます。
1976年上半期『雲のじゅうたん』から浅茅陽子さん。アベンジャーズ枠ですね。
「清二、帰ってきてない?」
ちなみにこの杉山清二って、渡辺謙さんの息子である渡辺大さんではあるのですが。
良い役ではなさそうですね。
暗い顔で、千遥がうなずきます。
「そのうち目がさめるわよ」
「私の所に、戻らないと思います」
「そんなこと言ったって、この店は、清二のものですからねぇ」
でた。無神経な姑発言だ。
よかったことは、千遥が結婚していることくらいか。少なくとも、妾ではないと。
嫁ぎ先から夫を武力討伐めいたやり方で追い出しかけた。
そんな下克上朝ドラヒロイン・2013年下半期『ごちそうさん』のめ以子もおりますが。あれはただ、おんな城主になれるくらい強すぎただけだから。
でも千遥はそうじゃない。
「お義母さん、お話したいことがあります。清二さんとも、きちんと話をさせてください」
「離婚したいってこと?」
「お願いします」
残酷すぎて、もう、声も出ない。
千遥には行き場所がない。店も彼女のものにはならない。
味も。客も。経営も。育児だって、彼女が頑張った成果だろうに。
家のことも、店のことも、妻と母にぶん投げている。夫は今頃、別の女の元でヘラヘラしているのでしょうか。
ここで雅子が、うちの息子がダメだと言えば、まだマシだったかもしれない……。
この雅子は、外聞は抜群によろしいとは想像できる。
どーんと構えていて、細かいことに目くじらを立てず、男を立てるいい女。
さすが女将だね。夫を立てて、逆らわない。
息子のこともどーんと構えて、泳がせている。
いい女、いい妻、いい母。
女将みたいな賢い女の手のひらの中で、男は操られて生きているわけよ。
いやあ、馬鹿な男なんて、女に頭が上がらないんだよね。
そう思って、疑問も抱かずに生きてきたのでしょう。
それが彼女の生存戦略でもあった。
そういうことをどうしたって想像してしまう。
辻褄は合う。
千遥のやさしい義母が、太鼓判を押して進めてきた婚礼であることも。
いくらいい家だと言われたところで、家族を捨てろと交換条件にしてくるあたり、奥歯に物が挟まったようなものはありました。
なつぞら83話 感想あらすじ視聴率(7/5)戦災孤児の境遇を浮き彫りにその懸念がここで浮かび上がってきた。
マコプロに千夏がやってきます。
マコはあわてて、なつを呼び出します。
「千夏ちゃん、こんにちは。千遥……」
千夏の奥から姿を見せたのは、疲れたようで、何かを吹っ切ったようにも見える。そんな千遥の姿でした。
なつよ、どうやら千遥は決意をしたようだ――。
朝ドラは誰を応援してきたのか?
ラストスパートに突入してから、この問いかけが頭の中をぐるぐると回ってきていました。
結論は見えてきた気がする。
女を応援するといいながら、男を応援してきた。
夫唱婦随こそが、社会を築くのだと。そう言ってきませんでしたか?
朝ドラと史実を比較すると、どうにも不可解なところはありました。
史実では性的関係が放埓であるとか。横暴であるとか。そんな絶対に夫にしたくないようなヒロインの相手役。
それがクリーンアップされる。
何度も指摘してきた、2017年下半期『わろてんか』の藤吉です。
これも世の変化かもしれない。
そう思ったのは、同じモデルの山崎豊子氏『花のれん』との比較でして。あの作品では、ゲス夫のままでした。
かつてはひどい夫に耐える妻を描くこともできたのに。それが今は、乙女ゲーか少女漫画めいたキラキラカップルでないと、受けいれられない層があるらしい。
そうため息をついたものでした。
不可解なのが、そういう変化がある一方で、男性側の気遣いが下方修正される傾向もあったからなのです。
2014年上半期『花子とアン』にせよ。
2014年下半期『マッサン』にせよ。
史実の夫は、もっと妻に理解を示し、気遣っていました。
特に『マッサン』では、古き良き無理解亭主関白面を強調されていて、よくわからなかったものです。
本作を観て、そんなもやもやが晴れる爽快感がある!
朝ドラが応援してきたもの。
それは、女ではなく男の甘えでしょう!
その結論に至ったのは、千夏の顔色を伺うようなところを見てしまったから。
どうして千夏はそうなったのか。
彼女はどこか寂しそうだ。
それは不在の父親のせいなんだろう。そうわかったら、悲しくなってきた。
父の不在でそうなることだってあるのに、家庭のことは、なにもかも女のせいになる。
千遥のことだって、叩く人の声は想像できますよ。
「そんな男を選んだお前のせいだろう」って。
「女としての魅力を維持できない、お前が悪いんだろう」って。
そうじゃないでしょうよ。
男だって、家庭を築く責任はある。
けれども、朝ドラすら、そこの描写では偽善はあった。
本作には、そこに切り込みたい、勇猛果敢な誰かがいるようです。
彼らは気づいた。
千遥が父母の存在を感じ、きょうだいから勇気をもらい、辛いけれど自由になる道へと踏み出したように――彼らもそうしたのでしょう。
朝ドラが、個人が自由や解放へ向かう道を描いたら、困る人がいる。だから、今まではそこに手加減があった。
でも、そういう迎合はもう要らない!
その道は暗い、冷たい風も吹いている。
でもそれだって味方にできるんだな。そう思いつつ、彼らは歩いています。
その気配を感じて、毎朝、真剣勝負に挑むような気持ちにすらなってくるのです。
自分を甘やかすことは、彼らを甘やかすことでもある
自分の頭を滅多打ちにする――そういう姿勢すら感じる本作。
今日も目玉焼きなんて、原点回帰しろという叫びに思えました。
妥協をするな!
そう叱咤激励するみたい。
そしてこの妥協は、視聴者にも言えることなんじゃないか? と思うのです。
かつてのエンタメにあったもの。
年長者の経験を聞き、取り入れ、過去の苦労を描くもの。
現在の直面する問題を、提起したいもの。
未来の展望に向けて、考えてゆきたいもの。
朝ドラはそういうものをぶっこぬいて、視聴者の脳内に迎合しすぎているのではないか? そう思ってしまうことが最近増えてきまして。
むろん、そんなこと思いたくなかった。
けれども、****でのセクシー拷問だの、褌尻だの、未成年女子に群がるロリメンだの、ブスいじりだの、エロマンボだの、夫婦寝室萌えだの。
そういう萌えだのゲス要素ぶっ込みをもろにしてきたあたりで、これはもうダメかもしれない……練りに練ったプロットやこだわりでなくて、イージーなウケ狙いに走ってしまったのかと、ゾッとしたものなのです。
朝ドラとしては、それがいいんでしょう。
15分間、何も考えずにでれーっと見たいならば、それがニーズを満たすってことでもある。
あれを褒めていれば、カンヌ評価がわかるとして、センスのアピールもできた。
『半分、青い。』の提起した部分が気に入らなくて。
物言う女がムカついて仕方なくて。
そういう層は、****開始前から大賑わいでした。
「王道だ!」
「私たちの朝ドラが帰ってくる!」
でも、残念ながら、ドラマ自体の出来は意に沿わなかったようでして。
いくら褒めていても、そういう深層心理はわかったもの。
で、そこから現実逃避して、本作のことを叩き始めるために、ドラマ開始前から大張り切りであったと。
もう作り手も、迎合には疲れ切ったのかな?
そう感じるのは、『スカーレット』のサイトから。
あまり期待しないで見たところ、引っかかる部分はありませんでした。
さすがにNHK大阪も反省したみたい。
101作目からの朝ドラも勇敢に続いていけよ――。
そう思える、朝なのでした。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
千遥は今日初めて父の手紙を見たのですね。なつと咲太郎がずっと心の支えにしてきた父の手紙を、千遥だけは見ることが出来ずに来た、そのことが千遥の今までの孤独をより感じさせられました。でもよかった、自分を大切に思ってくれる家族がいた事を思い出すことが出来たようだから。
このドラマは、柴田家の暖かさをたっぷりと描きながら、奥原家が失われた絆を取り戻す様子を、長いスパンで緻密に描いているんですね。つくづく、よく練られたストーリーだと思います。
大泉さんの登場にネットが沸いてますね。鈴愛は出ないのでしょうか。このなつぞらへ多大な影響を与えたであろう、あの名作のヒロイン永野芽郁さん、お待ちしてます。今録画をみても、ドキドキわくわくさせてくれる、あの東京班の意欲作はとにかく素晴らしかった。
目玉焼きで、確信してしまいました。
私だけかもしれないですけど、
パズーとシータモデルもいますね?
衣装も。
武者様の。朝ドラへの、物の見方、切り口、時代感と今後の展望等々、いつも興味深く拝見してます!勉強になります!
なつぞらは、凄い。物語として、幾重にも層がある。皆が、物語の中で生きている。
妊婦のリアルな造作、一つとっても。夫イッキュウさんの、家庭と子育てへの関わり方、一つとっても。
主張の柱があって、深く練られ、丁寧に調べているのが分かる。物語として、秀逸。面白い。
所謂、批判したいが為のネットニュース記事、変なエロで物語とは全く関係ない話題で煽る記事、記者の名前を見るようになりました…。
良妻賢母出ないヒロインならば、『ととねえちゃん」は、テーマ的には悪くなかったということですね。もう少し、全体的に、丁寧に作ることができればよかったのに。