スカーレット99話あらすじ感想(1/29)泣かず!追わず!リヤカー引っ張る!

マツは、ミシンを借りるために電話をかけています。内職を再開するそうです。

これも喜美子の穴窯のため。子供服を作る内職はお金になる――理由を聞く喜美子にそう微笑みます。

けれども、マツは病弱かつ加齢している。体力的にも大変なことではある。

喜美子はそんな母に、穴窯二回で40万円かかったと言います。

それでも母は笑うばかり。

喜美子が唖然としていると、こうなのです。

「お父ちゃんで慣れてるさかい……」

「そんなこと慣れんといてえや!」

喜美子はそう返します。

尽くす女は称賛され、尽くす男は嘲笑される

そこへ八郎が入ってきます。マツはそんな彼に、こう頭を下げるのです。

ハチさんのおかげで許してもらえる。ハチさん、ほんまよろしゅうお願いします。

思わずは八郎は顔を強張らせてしまう。

女のマツがそうすれば、尽くす女――健気な妻として称賛されるけれども、男の八郎がそうすると、尻に敷かれる情けない夫として嘲笑されるのだから。

マツに関する評価は、男性向けメディア、女性向けメディアではくっきりと対照があって面白いんですよね。

◆男性向け(特に高年齢層)
これぞ昭和の尽くす女やで。こういうんが見たかったで、ええなぁ。富田靖子さん最高や!『なつぞら』の女どもは生意気であかんかったからな!

それがジョーが死んでしもたら、何やようわからん女になってもうて。

(いや、未亡人マツは合唱をエンジョイしてますよ。夫が妻を縛り付ける構図を見たくない心理が推察できますが……)

◆女性向け、男女双方向け
マツは毒親やな。こんなん娘守らんとあかんで。ジョーだけやのうてマツも問題あるわ。時代背景を考えたら、ま、しゃあないけど。

本音ダダ漏れすぎて、大丈夫か心配になりますけれども。この違いが、時代についていけるかそうでないか、そういう断絶になっていて怖い。

マツを尽くす妻だと評価している善良なる紳士の皆さん。

大丈夫ですか?
熟年離婚の危機、背後で進行してへんか?

こういうのはクリックされてナンボ、アクセス数が正義。そのためには、一見無害なドラマ評は視聴者にコミットしてこそナンボなのでしょう。にしても、いろいろダダ漏れすぎて怖い。

気ィつけなあかんで。作り手も、反応の先回りをしているのではないか?
そう思わせる100作目前後の時代に突入しとる。

ジョーに尽くすマツは褒めたくなったとしても、喜美子までこうするマツに問題を感じるとしたら?

それは、動機の中身ではなく、マツの犠牲で利益を得る人間の【属性】で判断しているということがわかります。

グレタ・トゥーンベリさんの主張の中身は、実は成人である研究者やこれまでの活動家とさしたる違いはないのです。

彼女が初めての主張ではない。

それでもグレタさんはぶったたき、研究者や活動家はスルーするなり、肯定するなりしていたら?

それは彼女の若さと性別に過剰反応しているということになる。未成年女子にビンビンに反応するええ歳こいた大人。すみませんが、キモいです。

※子どもを前にして子ども返りする、あかん大人や……

そういう社会実験を、NHK大阪はしているんじゃないかと思うほど、キレッキレなのです。

気ィつけえや。あなたも、もちろん私も、実験対象者やで。

※男女の振る舞いを逆転させる。そういうミラーリングは『軽い男じゃないのよ』でもありまして

子どもに不和を伝えないこと

子どもには、不和は必ずしも伝わらない。

武志と芽ぐみは、穴窯の前で話をしている。無邪気そのもので、自分の学費が薪に化けるかもしれないことに、気付いていません。

あっ、なんやろな。なまじジョーはダダ漏れすぎて、娘たちも敏感でしたが。喜美子と八郎はそういう不和を見せないようにした結果、武志は何も察知できていない感がある。

喜美子は芽ぐみが漫画忘れとるでと声をかけ、二人を見送ります。

そこへ八郎がやってくる。

「話、しようか」

工房で八郎は語り出します。信作が穴窯手伝うと電話してきたとか。信作は骨折回復したそうです、よかったな。

八郎の苛立ちがわかってきます。穴窯をやめたことを、マツにも、百合子にも、武志にも言っていないのです。

「なんで言わん?」

これに対して喜美子は?

喜美子、天下布武への道

「辞めろ言うたのハチさんや、ハチさんが言うて」

あっ喜美子、これはもう攻撃体勢出てきたで!

喜美子 魔王への道

その1「相手が言ったことを記憶している」

電話がないと言った相手に、電話を引きたいから昇給させろと主張していた。そんな丸熊時代からそう。
相手が言ったことの言質をとる。

ジョーも時折ありましたが、喜美子の場合は精密性が抜群で、かなり昔のことまでパッと記憶から出してくる。そういうインデックスシステムが脳にあると思っておきましょう。

喜美子の中では、この構図がキッチリと残っている。

うちはやめようか、無理か、先延ばししようと迷っとった

それを、戦争を持ち出してやれと言ったのはハチさんやで

それなのに、二回の失敗でやめろって?

こんな朝令暮改についていけると思っとんの?

うちの意思でやめてへん。ならやめた宣言はハチさんがすることやろ

八郎は、弱気にはなる。

一生やめろとは言ってない。お金がない今だからやめとき。そう説得するのですが。

「お金ないことに気持ち負けたらあかん。昔、フカ先生が言うてた」

あの恐怖の記憶力で、夫妻の目指したフカ先生まで持ち出す。強すぎるやろ!

そうかましたあとで、こうきました。

「やりたい気持ちに変わりないねん。ハチさんの言うことに納得してないけど、受け入れました」

喜美子 魔王への道

その2「納得しないで、受け入れるポーズ」

昔のヤクザ映画には、菅原文太さんや松方弘樹さんが、三白眼になってギロリと睨みつけつつ、気に入らない相手に妥協する場面があります。

戦国武将が出てくる、時代物でもあるある。
納得してない。受け入れる。そういう演技ですね。

喜美子はあそこまで三白眼にはならないけれども、そういう凄む姿勢が即座に取れる。強いんだなぁ。

このあと、喜美子はあのカケラを見つめています。
そのうえで、レンガを積んで穴窯の入り口を塞ぎます。

ここで涙は、一滴もこぼれない。

もしも喜美子が泣いていたら?

ポロポロと涙をこぼし、八郎に抱きつき、こんな甘ったるい口調でこぼしていたら?

「はぁちぃろぉうさぁあああ〜ん、あながまつづけたいですぅ、くやしぃですぅぅぅ〜〜〜〜! 喜美子がアホやからぁああ〜〜〜!」

同じことをするにせよ、受ける印象はまるで違うことでしょう。

喜美子は、爪と牙、そして智勇を隠せないのです。

己を知る道化師・信作は、クリストフや

はい、このあと百合子と信作が川原家にやって来ます。

百合子は、穴窯に失敗した喜美子が不機嫌だからやめとことグズグズしてしまう。

ここで信作は、こう言い出すのです。

人には人の役割があんねん。喜美子にとって信作の役割は? そう問われ、百合子はこう答えます。

「笑われること?」

「呆れられること?」

「アホやなあと思われること?」

「おーい、ようわかってるやんけ! いくで!」

百合子に感謝しつつ、頭をちょっと撫でる信作。これはなんちゅう信作や!

戦国大名にも、王侯貴族にも、古来から御伽衆や道化師がおりまして。

とぼけたことを言い、笑わせることで、リラックスさせる。意外とええことを言う。そういうムードメーカーが必要なのです。

今でも絶好調の『アナと雪の女王2』には、クリストフが出てくるじゃないですか。

あいつが問題解決に必要かというと、特にそうとも思えない。アナを助けることはあるものの、『2』では国の危機だというのにプロポーズでウジウジしていて、ちょっと鬱陶しい。空気読め。そう突っ込みたくなる。

じゃあクリストフはおとなしくトナカイと遊んでろ、な?
と、そうなるかというと、それではつまんないわけです。劇中で大事な役割を果たすのです。あいつがいないとギスギスするもんね。

信作と百合子のプロポーズが、こんなに長引いてウジウジするのはナゼか?
それはクリストフみたいなもんやで!

※信作の気持ち、わかりみあるで!

道化師を前に、王は泣く

百合子が家に入りますと、何か焦げております。

大根炊いて焦がすなんて珍しい。百合子がそう言います。心理的に動揺があるのでしょうか。喜美子は「はあ、うん」と返事しています。

百合子から、八郎がどこにいるか聞かれて、喜美子は工房だと返す。

百合子はここで、信作に合図を出すのですが、

「まだや! うちが言うてから言うてたやん! この人と結婚したいんですぅー!」

と、バラす。おいおい、どういうええボケや!

おうそうなん、びっくりするやろ。まだ言うたらあかん。そう筒抜けの二人。出直すとかなんとか言い、もうめちゃくちゃやん! とうろたえ始める。

何をしとるのか?
これ、プロが作っていることは要注意です。敢えて、わざとや。クリストフの歌がダサいのも、あれはわざとやし。

百合子が、お義兄さんを呼んでくると去ったところで、信作が入ってきます。

林遣都さん、このプロのヘタクソな演技が最高やで!

「なんとなくわかってたやろ、お前。きちんとご挨拶せんとあかんと思てな。ご挨拶させていただく、その前に言わして……」

「???」

「長かったわー!」

桶の中へ顔を突っ込み、叫ぶ信作。

信作はわけのわからん迷走癖があるようで、結婚の挨拶の前振りなのか、弟子のみっちゃんがやめたこと(触れたらあかん!)、一生懸命作った穴窯のこと(それもあかん!)を言い出します。

喜美子はここで、たまらずすすり泣きを始めるのです。

えっ?
信作のみならず、視聴者もビックリするかもしれませんが。

信作には、真相を明かす役割があるとすれば、どうでしょう。作劇上、道化師は時折そういうことをやらかします。

妖精、亡霊、それに道化師。枠組みから外れたものが真実を見出すパターンや。

それだと喜美子が王……ええやん、もう燃やす魔王ちゃうか。

信作は、自分と百合子の結婚に感動したのかと言い出しますが、そうじゃないと彼自身もわかってはいる。

「どうしてん?」

「わからへん!」

なんどかわちゃわちゃしていると、百合子と八郎が入ってきます。

「わからへん」

「わからへんそうです!」

「わからへん」

「わからへんそうです! 全然わからへんそうです!」

「うるさい!」

「なんや!」

喜美子に布巾をぶつけられる信作。どうやら喜美子の触れてはならんところに触れたらしい。

「ちょっと黙れ、ええから!」

そう言われつつ、どういうわけか穴窯へ移動するご一行。

「お〜、穴窯。おーいがんばれよー」

「誰もおらへん」

そう突っ込まれつつ、信作は百合子交際が認められ、調子こいてます。

「ほなまた、今日は帰さへんからな」

「ちょ、何いうてんのん! ご飯食べたら帰って来ます」

「帰さへん!」

林遣都さんという顔グラによる帰さへん宣言なのに、ここまでときめかないのって、ある意味超絶技巧にもほどがあると思う。

ええんちゃうか!
イケメンじゃない演技がええという評価もあるようやし。時代の先回りをしてこそ改革やで。トレンディドラマの手癖は平成に置いてきてええから。

ふざけすぎと突っ込まれつつ、百合子とどこかへ向かいつつ。信作は引き返してきます。

「喧嘩してへんよな?」

「してへんよ」

「ほな」

八郎の答えを確認しつつ、また戻ってくる。そのうえで、今年の紅白はどちらが勝つかと聞いてくる。

「白!」

「紅!」

「白!」

ここで、喜美子と八郎は違う答えを出す。

百合子と信作も分かれるため、なんだか無駄な世間話のようには思えるのですが……。

せやろか?

百合子と信作は婚約もまだできているような、できていないような。

一方で喜美子と八郎は、結婚十年目。

十年経とうが、夫婦が同じ意見になるわけでもない。そういう同床異夢を見せてゆく、信作のおっとろしいスキルが発揮された気がするで。そして……。
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