1971年、昭和45年。
それは、団塊ジュニアたちが生まれたころ。
のんびりとした田舎町、岐阜県東美濃市を舞台に、ドラマが始まります。
待合室にはおっとりした妊婦も
出産で額に脂汗をにじませ、のたうち回るのは楡野晴(にれのはる・松雪泰子さん)。
胎内で臍の緒が巻き付いてしまっているのが、ヒロイン(誕生前!)でした。
このままでは帝王切開も視野に入れる、と告げる貴美香先生(余貴美子さん)。
晴は、
「お腹に傷残っちゃう? ビキニ着られないの?」
と不安そうです。
ヒロインは「私の命よりお腹の傷ですか!」と不満げですけれども。
体に刃物を入れるのは大変なことですからね。そこは労りましょう。無事に産まれてくるのが一番です。
一方、待合室にはおっとりした妊婦がいます。
萩尾家の和子さん(原田知世さん)です。
手にしているのはシンディ・アイズという女流推理作家の文庫本です。
推理小説のトリックをばらしたうえに、登場人物名が覚えられないとぼやく和子さん。
いやぁ、これは天然系でほのぼのします。
「あれ、痛い? ま、いっか」
と、和子は超安産のようです。
「宇太郎時は安産だった」と地雷を踏んで
宇太郎は両親に電話します。
母の廉子(れんこ・風吹ジュンさん)は
「おじいちゃんに似て、子供の頭が大きくないといいのになぁ」
としつこく繰り返し、仙吉さん(中村雅俊さん)をムッとさせます。
中村雅俊さんの祖父って、独特ですよね。
朝ドラにありがちな頑固親父ではなくて、軽妙なさわやか系で。
今日も奥さんのことを「廉子さん」とさん付けです。まぁ、ちょっと口喧嘩のときには「お前」とおっしゃってましたが。
「宇太郎の出産の時は安産だったなあ」
と、昭和あるあるな地雷を踏む仙吉さん。
実はこのとき仙吉は、出産が大変だというのに飲み歩いていて、次の次の日まで帰って来ていない――と廉子さんから反撃されます。
このヒロイン祖父母もいい味出ているなぁ。
風吹ジュンさんは、おっとり系でもピシッとした性格でも、どちらも演じるのが本当にお上手ですよね。
二人は神棚に手を合わせす。
「ご先祖様頼みます」
そうボケる仙吉に対して、廉子は「神棚だから先祖ではない」と突っ込みます。
祈っていても仕方ない、もう見に行くかと決める二人です。
やっと出てきたヒロイン!お猿みたいって……
一方、待合室の和子は誰もいない中でいよいよ生まれそうな気配に!
『コウノトリ』あたりと比べると、なんともユル~い産婦人科模様ですが、当時の田舎だとこんなテンポなんですかね。
晴に対して、きみか先生は宣言します。
「さぁ、女3人の戦いだよ!」
超音波診断はない当時ですが、貴美香先生は女と判断したようです。
「1、2、3、ハイー!」
と、いきむ晴。
一方、破水どころか赤ちゃんが出てきたっぽい和子は、パーティションで隠した待合室で生むことになります。
結果、和子の方が早く産まれるのでした。
そして陣痛ラストスパートをかけた晴も、ついに出産!
胎児CGではなくてやっとヒロインが出てきました。
「なんだか猿みたい」
と、ありがちな台詞を言う晴。まぁ、新生児ってそういうもんですけど、率直に言葉を出す性格なんでしょうね。
松雪さんだと嫌味なく受け入れられて、見ている方もクスッとしてしまいます。
ヒロインは感動の対面を果たして世界を見た、ということになります。
新生児の視力云々の突っ込みはやめときましょう。
心の目、心眼というやつです。
ここでヒロイン、横たえられたベッドの隣にいたのは、和子の生んだばかりの男児でした。
猿ではなく既にイケメンらしいこの男児。
そりゃあ将来が佐藤健さんだし、お父さんは谷原章介さんだもんなあ。
今日のマトメ「脇役や雰囲気に安心感」
まずは出産おめでとうございます。
現代から見ると何ともユルユルな産婦人科模様。当時の田舎町らしいテンポが出ています。
今日よかったのは、廉子と仙吉のやりとりですね。
こういう夫婦の、長年連れ添った感のある会話は、ここ半年間朝ドラで出てきませんでした。
ボケと突っ込み、歳月の重み、性格が出ていてなかなか楽しめました。
確実に前作よりも上なのは(ま、最低ラインですけど)、2話の時点で脇役の個性が出ているところです。
前述の廉子さん&仙吉さん、おっとり天然和子さん、豪快でちょっと大ざっぱぽい貴美香先生。
今日は出なかったけどギラギラした西園寺満。
このへんは安定感は抜群ですね。
新生児ヒロインの性格付けをしようとしたり、運命の出会いを演出したり、そこはちょっとやり過ぎかもしれません。
ただ、朝ドラはヒロインあってのものですから仕方ないところでしょう。
昨日も書きましたが、美術や衣装センスもいいなあ、と思っています。
楡野食堂の雰囲気、田舎の食堂あるあるですよね。
長距離バスの運転手さんや、作業着姿で首にタオルかけたお兄さんたちが、テレビを見ながら定食やカツ丼を食べている、そういう雰囲気が出ています。
カレンダーは日めくりか、近所の信用金庫から貰った一年もののやつ。
そういうあるある感が妙に納得なのです。
産婦人科も、薬品臭さが漂ってきそうな、なつかしさを感じました。
ドアの色が綺麗だったりして、オーナーの貴美香先生の趣味なんでしょうね。
生活感と人物の個性は押さえています。
この調子をキープしてくれたら、とりあえずノスタルジックなつかみはOKだ!
編集さんは、
「サル顔と言われた赤ちゃんの本物のご両親が可哀想だなぁ」
と懸念しておりましたが、まぁ、ほとんどの赤ちゃんがそうですしね。
しばし肩の力を抜いて楽しみたいと思います。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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