半分、青い。43話 感想あらすじ視聴率(5/21)グラサン&和装の秋風、岐阜へ

イケてるお姉さんはみんなワンレンボディコンだった、1990年(平成2年)春。

漫画家を目指して上京した楡野鈴愛は、師匠である秋風羽織のネームを紛失、破門処分を受けます。
失意のまま、岐阜へ帰る鈴愛。

しかし、ネームはなくなってなかった!
秋風部屋の電子レンジに入っていたのです。

【43話の視聴率は21.6%】

 

上京したばかりの娘が突如帰ってきた

秋風羽織、痛恨のネーム紛失勘違いから始まる月曜日。
手元に戻ってきた貴重な紙束を見ながら、羽織は満足げに見返します。

しかし!
これが大して面白くない!!!

いやぁ、クリエイターあるあるっすわー。
メモや構想時点ではすごく面白い、大傑作、脳みそからガンガン興奮物質が湧いてくるんですけど、あとで見返すとなんだ大したことない、ってなる現象。

夜中に書いたラブレターを、翌朝見直して顔真っ赤という現象と少し似ているかもしれませんね。
一体どうするんでしょう。

岐阜県東美濃市では、宇太郎と晴が「つくし食堂」の仕込み中です。

そこへ、ふら〜っと鈴愛が帰って来ます。
「ただいま」
「鈴愛、鈴愛、どうした!」
びっくりする周囲。
そりゃあれだけ大騒ぎして、前触れもなく娘が帰って来たらそうなりますね。

「今は寝かせて」
しかし鈴愛は、疲労感と眠気でぐったり。ディスコで踊り狂ったわけですから、反動もありますよね。

とはいえ、皆事情が知りたい。
鈴愛はこう言うだけです。

「簡単に説明します。失敗をして、首になりました。以上です」

以上ですってそりゃないぜ、鈴愛ちゃん。まあ、ありえないのは羽織のほうだけど。

そのころ、東京のオフィスティンカーベルでは……。

 

ここで非を認めねば人としておしまい

菱本、穏やかな声で羽織をガン詰中です。

「先生、みんなの背中から聞こえてくる声はありませんか。声なき声はしませんか。ここで非を認めなかったら人としておしまいです。誰もついてきません。バックは真っ白です。来週から背景を描いてくれません」

井川遥さんの出番がつくづく、んーっ! パーフェクトです。

このピンクハウス風のふりふりドレス、それにあわせた不思議なガーリーメイクとヘアスタイル。
でもって、この立て板に水で、切迫感がある声で、迫ってくる。ただのきれいなお姉さんだけではなくて、それを上回る魅力が出ています。

実際、彼女のセリフを、この原稿に落とし込んでいて痛感するんですけど(ちなみに全文そのままではないです)、テンポというかリズムがあるんですよね。
テンポやリズムは原稿の命でもありまして。
聞いているだけで、そこはかとない面白みもあって、いいんですよねぇ。

そして菱本は、さらに原稿を手にして迫ります。

「これは鈴愛さんのかけあみです。素晴らしい!」

菱本ってナイスですよね。

羽織が鈴愛を弟子にするときは反対でしたし、宇太郎と丁々発止のやりとりをしてからは一旦弟子入りの話を断ったほどです。
ところが、いったん懐に入って来たら彼女を庇い、才能を見抜いて、守ろうとする。大人っていうのはこうあるべきなんじゃないでしょうか。

あの格好のせいで風変わりなイメージがありますが、中身は作中屈指の良識的な人物でしょう。
ガーリーファッションに身をつつんだ優秀な軍曹、って感じです。

このへんは本作のよいところで、楡野家の人、萩尾家の人、キミカ先生もそうなんですけど、基本的に子供や若者は大人として責任を持って守ろうという、そういう意識があるんですね。
単なる放任主義ではないのです。

『あまちゃん』もそうだったんですけど、一見チャランポランだったり変人だったりする人が、きちんと芯を通す。

若い才能を食いつぶす大人、道具のように指導してダメにしてしまう大人のニュースに最近げんなりさせられたのですけれども、本作を観ているとなんだかホッとします。

 

ただ五平餅のためだけに雇ったのか?

菱本は出版社へ打ち合わせに行かなければなりません。
そこで是非とも岐阜までお迎えに、と羽織に迫ります。

「先生、これはずっと聞きたかったのですが。楡野鈴愛を、五平餅のためだけに、ほかの若者のつなぎのためだけに雇われたのですか? なんらかの才能があると思っていたのでは?

しかし、そう問い詰められた羽織はスッカリ忘れているのです。
前述の責任感ある大人枠に、彼は入れなくてもいいかな。だって鈴愛の漫画のことすら忘れているんですから。

ここで、廉子さんがナレーションで説明します。

鈴愛の記念すべき第2作は、『神様のメモ』だと言います。

モデルとなっている人物は、萩尾律と伊藤清。
神様は二人に運命的な出会いを与えます。
しかし、二人を再会させると書いていた神様のメモは、いたずらなそよ風で飛んで言ってしまう。そして二人は二度と逢わないまま終わるのかな、と思うと55才で再会するというお話です。

ここは結構脚本家さんは苦労する点ではないでしょうか。

荒削りだけども。
なんだか面白くて、可能性を感じさせる。
さらには鈴愛の性格に即したモノ。

この三条件が最低でも必要で、時間にして1分あるかないかの場面でそこまで頭をひねるのは、結構ハイカロリーな作業なんじゃないかと思います。
同じく、劇中漫画の作画も苦労したことでしょう。

「55才で再会。ホラーか。でも面白いな」
羽織、ええんちゃう的なリアクションです。
彼の中では、スケッチブックに鉛筆で描いていた変な猿どまりの印象しかなかったようで。

改めて才能は思い知ったようです。
しかし……。

「私は天才にありがちな超方向音痴だから、たどり着けるわけない!」
しかも梟町の名前まで間違っているし。

そこはぬかりのないサポート役の菱本、岐阜県に詳しいものを同行させると言い出します。
それはもうアイツしかおらんやろ。

 

律が正人と秋風を引き連れ、梟町へやってきた

鈴愛は、自宅で弟・草太を前にふて寝中。
疲れていて頭もボケッとしているけど、ナゼか眠れない。そういうある種の興奮状態なんだと思います。

すると、萩尾律が「つくし食堂」にやって来ます。
やっぱり彼が、菱本のいう岐阜に詳しい人でした。

羽織の事務所で旅費をポンッと払ってくれたのでしょうか。朝井正人も同行しています。

大学の授業が始まるまで、まだ時間があるのかな?
最初は、教授の当たり外れがよくわからず、授業選びには苦労するはずです。

「秋風先生を連れて来ました。俺、実家に戻りますんで」

晴はそう言われて和子さん喜ぶね、とはいうんですけど……そもそも、なんで羽織がいるっちゅうねん!という話。

そしてこの羽織先生が、もうインパクトがでかすぎる、まさかの和装ですよ。
しかもあのもしゃもしゃヘアーにあやしいサングラスは健在。

この、見た目だけでも卑怯だとしか言いようがない。こんなの笑うしかないやろ!
漫画家というより、日本の奥地で起こる謎の連続殺人事件を解決しに来た探偵みたいなルックスです。

豊川悦司さんはイケメンでセクシーなんですけど、陰影もある。
ボソボソとした声なのに、時折、関西弁が混じるとひょうきんな感じになる。

その個性が出ていたのが、昔のキンチョールのCMでして。

 

エロスとユーモアが入り混じるよさがあって、今見ても笑ってしまうんですけど、こういう豊川さんの魅力が炸裂してますね。

和服とサングラスの組み合わせで増幅された、豊川悦司さんの怪しさをコトコト煮込んで出汁をとったようなスープと申しましょうか。

朝ドラで濃厚すぎませんか。
いや、私は替え玉入れた後に飲み干したいところですが。

 

たつやの羊羹に本気さがにじみ出る

「まあ、素敵なお召し物」
「西陣です、富士山から西は和装で行くと決めています」

晴の言葉にドヤァ〜って感じの羽織。またまた妙なこだわりがあります。

ただ、名古屋でのトークショーは洋服でした。
東西分岐点で和装着用を課しているとしたら、岐阜は難しいんですよね。

なにせ、天下分け目の関ヶ原があるところです。
日本を真っ二つにする境目で、飲食物の味もここで別れるという説があるそうで。

「申し訳ないっ! 孫にかわってできることはなんでもします!」
ここで、仙吉が土下座。

なんだか往年の時代劇っぽいBGMが流れ、家族揃って土下座しだすという雰囲気のせいか。
妙に時代物っぽい。

「いえいえ、これはお土産です、たつやの羊羹」
わりとモデル企業をひねらない本作。
これはあの、豊臣秀吉のお茶菓子を作ったことでも知られる「とらや」がモデルですな。

「とらや」の羊羹というのは高いし、味もよいし、土産物としては横綱級でして。
他にも美味しいお菓子はいくらでもあるのですけれども、これが出てくると相手は本気だな、ってなりますよね。

「あの、鈴愛さんは?」
いたたまれない中、そう尋ねる羽織。

 

秋風先生に殺される!

晴は鈴愛を起こそうとしますが、完全に眠っていて駄目です。
疲れがきてぐったりしている様子。

しかし、羽織が来ていると知って鈴愛は驚きます。

「秋風先生? 新宿まで一人で出られん先生が、こんなとこまで追いかけてきた……殺される!」
まぁ、切腹とか言われちゃったしなあ。

「鈴愛、あんた何したの?」
ここで昭和のサスペンスドラマ調の音楽が流れます。それこそ金田一耕助とかあたりに似合いそうなやつ。

「原稿、捨てた!」

鈴愛、悲痛な告白をします。
その説明を聞いて、またも家族一同で謝ります。

「ですからどうぞ、孫の命だけは!」

だから、なんで大河ドラマより悲壮感漂うのよ。
わざとでしょ、わざとこういう演出にしているでしょ!

ここで羽織、家族がいなくて犬だけが友達だった、一匹はウサギだった、と自分語りをします。

さらに告白。

「鈴愛さん、無くなったネームのことだが、あなたが捨てたものは、本物のゴミでした。本物は電子レンジから出てきました! 申し訳ありません、ネームはありました。私の勘違いでした」

次に流れ出すのは妙にファンキーなBGM。
うはっ。音楽担当者さんと演出担当者さん、仕事良すぎるわ。

よい脚本が渡されてきて、それを読んで、スタッフ一同張り切ってワクワクと、楽しみながら作っている。
そんな雰囲気が伝わってくるようです。

 

今日のマトメ「尻尾の先まで餡子が入った鯛焼きか」

おはようございます。爽やかな朝ですね。
本作の総評前に、ちょっと自分語りにおつきあいください。

月曜日の朝、その気持ちはより強くなるのですが、どうしても好きになれない作品評を書いていると自分がとんでもなくひねくれていて、堕落していて、どうしようもない奴だと思えてきてしまいます。

そんなひねくれたレビュアーであっても、ドラマのとあるワンシーンやひとつの台詞を聞いた瞬間、自分はまだまだこんなにも感動できるのか、と驚かされることがあります。
朝の連続テレビ小説でそんな輝きを見つけたときは、その日一日が明るくなる。
出来の良い朝ドラにだけ宿る、特別な力だと思います。

はい、そんなわけで今日は。
朝から豪華なカツ丼を出されたような、ハイカロリーな回でした。

和装の秋風羽織だけでも特濃にもほどがある。

すごくよかったのが、BGMと演出です。

本作のBGMは悪目立ちしませんが、今日は例外的。
時代劇、サスペンス、ファンキー、三種類のちょっとレトロなBGMが目立っていました。

昭和っぽく演出するとそれだけでおかしみが出てしまう。
遊び心があって、ともかくおかしい。

先週は衣装と美術がすごくよい味を出していました。
いきいきと楽しく仕事をしていそうだなあ、というチームの雰囲気が感じられてよいですね。

三種類の特徴ある、他ではあまり使わないような劇伴を作るって、これまたハイカロリーな作業だと思います。

嫌いだったりつまらなかったりしたら、やる気が出ない。
で、中途半端なものができる(そういう作品に対しては、こちらもハートマン軍曹レベルでビシバシ活を入れたくなる)。

しかし本作は、尻尾の先まで餡子が入った鯛焼きのようにみっちりとしています。
妥協がありません。
チームのモチベーションが輝いています。

きっと現場で互いがやる気スイッチを押し合って、面白いモノを作ろうとしているんでしょうね。
よい空気がビシビシと伝わって来ます。

なんだか、その場面を想像するだけで嫉妬を覚えそう。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

3 Comments

匿名

鈴愛がたたき起こされるところでは効果音も雀の声で、サスペンス調のBGMが流れ出すとけたたましくカラスが鳴き始めると、ありとあらゆる悪ノリを感じる回ですが、ともかく何度見ても笑ってしまいますねw

ヒグタツ

土曜日の予告を見ていたときから、期待感高かったのですが、
月曜日にもうここまでやってしまうとは!

しおしお改め、七歳上

毎日、楽しんで拝読しています。
ドラマも毎日、わくわくです。
これからも頑張って下さい。

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