半分、青い。10話あらすじ感想(4/12)無邪気さにコチラの胸が苦しくなる

小学校3年生の楡野鈴愛は、元気いっぱいの女の子。

そんな鈴愛に、1980年(昭和55年)秋、ある事件が起こります。

突如、左耳が聞こえなくなってしまったのです……。

 

耳鳴りを海と表現 それは潮騒だな

ノートに絵を描いて、ボルネシアン風と言い張る鈴愛。
それをいうならポリネシアンだろと突っ込まれます。

「左耳だけが海にいってもうた」
耳鳴りを海と表現する鈴愛。それは潮騒のことだな、と律は言います。

でも耳鳴りもこれを飲めば治る、と鈴愛が取り出したのがステロイド。
律が飲む喘息の薬と同じだ、おそろいだ、とちょっと嬉しそう。無邪気すぎて、チョット切なくなってきます。

検査結果が出るのは二週間後です。
ステロイドが効くかどうか、実はわからないというワケで。突発性難聴ならば効果があるそうですが……。

放課後のチャイムが鳴ると、鈴愛は元気に飛び出してゆきます。
風を感じている様子がノビノビとしていますね。
森林の匂いが画面を通じて、伝わってきそう。

「鈴愛、マーブルマシン改良したけど見に来るか?」
「うん!」
律に声を掛けられ、走り出す鈴愛。

 

「なんで。なんであの子がそんなことに……」

そのころ晴と宇太郎は、病院で検査結果を聞いていました。

「ムンプス性難聴です」
おたふく風邪が原因の難聴で、治療できないものでした。
この病気は、本人も周囲も気づかないうちに発症することがあるようで、どうにもならないようです。

結果、遠くから呼ばない、右から話しかけるといった注意事項を聞かされる二人。
本人は、気配を感じられなくなるそうです。
あるいは、音がどこから聞こえるか、そんな距離感もなくなり、バランスもとりにくくなる――といったことを聞くうちに、二人は愕然としてしまいます。

「なんで。なんであの子がそんなことに……」

呆然とする晴に、医師は原因を説明しますが、晴の聞きたかったことは違い、思わずムッとしてしまいます。
彼女は【なぜ、愛する娘が、こんな運命に襲われなくてはならないのか】と嘆いているわけですが、それは医師にも、誰にも答えられるものではなく……。

片耳が聞こえない人は意外と多く、皆さん頑張っていると医師は続けますが、晴が聞きたいのはそうではなく。

「うちの娘は、一人です」
そうなんですよね。
晴の嘆きは、一般的な慰めでは癒せないものです。

 

突如咳き込み、鈴愛を帰す律

鈴愛は、律とマーブルマシンで遊んでいます。

「エレベーターを使わないでビー玉をあげたら、永久機関になる」
「無理だ」
「なんでそんなこというの」
と、平常運転の二人。

「クッキー焼けたわよ」
そこへ和子さんが、ドレンチェリーをのせたクッキーを持って来ます。

宝石のクッキーだ、と喜ぶ鈴愛。
赤はルビーではなくてダイヤ、というあたりが子供らしいです。そうそう、この頃ってキラキラしたものがやたらと好きなものですよね。

鈴愛やマナも食べたことがあるはずですが、当時は「ジュエルリング」というレトロ駄菓子がありました。
プラスチックの指輪に、宝石型のキャンディがついたものです。
たった30円でお姫様気分になれると大人気――なんてことを思い出しました。

鈴愛は耳の中に小人がいる、と言います。和子も少し不安そう。

「律、最近ピアノさぼってない?」
和子にそう言われて、律は咳き込み始めます。
わざとらしい仮病かと思ったら、喘息発作でした。

「鈴愛は帰れ!」
苦しそうにそう叫ぶ律。
鈴愛は家から出たものの、不安げに律の部屋を見上げています。

ナゼ、律に帰るよう言われたか理解できない鈴愛。
和子は、鈴愛のマグマ大使だから弱いところを見せたくないのよ、と説明します。律なりの強がりなんでしょうね。

 

ドリフを見てる場合じゃないんだ

その夜、鈴愛はもう薬を飲まなくていい、と両親に言われます。

「まだ小人おるよ」
不思議そうな鈴愛。
両親は弟の草太に出ていくように言います。

『8時だよ! 全員集合』が見たいと草太は不満そうですが、険しい顔の仙吉を見て、素直に従います。
自分の子供の頃だったら狂ったように反抗して、絶対に見続けた――とは、鈴愛の年齢設定より一つ歳下だった編集談。
たしかに、この頃のドリフって、子供の絶対神だったんですよね。

「もう、耳の治療はしない」
「治るの?」
無邪気な鈴愛。
言葉に詰まる両親。

鈴愛は元気な左耳にバイバイ言えんかった、と言います。
その様子が、両親には辛いのです。

「草太呼んでくる。まだヒゲダンス間に合うし」

 

「ババンババンババン」
そうドリフのテーマをハミングして、寝室の天井を眺める鈴愛。

 

「あ、龍ににとる」
天井のシミをそう例える鈴愛。

このとき鈴愛は、一滴の涙も流さなかったのでした、とナレーションが入ります。

 

今日のマトメ「自分を責めてしまう親心と無邪気な子供」

ついにおとずれた、左耳失聴です。

初回の記事で、
【大変なところもある障害が、軽く扱われてしまうことへの懸念】
を書いたのですが、大丈夫そうかと思いました。

医師の告知シーンでは、こちらの胸まで詰まってくる重苦しさがあり……。

どうしようもない怒りを、思わず目の前の先生にぶつけてしまう晴の気持ちがわかります。
責めても仕方ないのに、先生だけでなく、最終的には自分を責めてしまう。そういう悲しみが伝わってくるのです。

そして鈴愛の能天気さ、マイペースさが、もう、なんともいえない。

演出が抑制的で、ここぞとばかりに悲しい音楽をかけるわけでもない。
子役が泣き叫んだらそれだけでもつられてしまいそうなのに、鈴愛は一滴の涙もこぼさない。

そういうところがかえってリアリティというか、むしろ衝撃的すぎて、幼すぎて反応できないんだな、とこちらで色々と補ってしまうんですよね。

律の喘息発作も初登場です。

鈴愛にも律にもかなり感情移入してしまって、この子たちが楽しくのびのびと生きて欲しい――されど、試練を与えられる、人生の苦さを感じました。

この先、どうなるのか。
気になります。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

1 Comment

匿名

今回といい、前回といい、達者な子役を使ってるにも関わらず、抑制の効いた演出、すごく良いです。初めての聴覚検査にワクワクする鈴愛に降りかかる、お婆ちゃんの淡々としたナレとBGMの無音が静かに怖かった。
子供を泣き叫ばせれば簡単にお涙頂戴できるし、実際そういうドラマは多くて子役の実力の見せ所でもありますが、現実には子供って自分の容量オーバーの事態に対しては無表情になってしまうんですよね。
親に叱られる、だったら泣き喚いて反抗しても、突然知らない大人に怒られるとピタッと動きを止めてポカンと見つめてくるような。
今回の鈴愛も失聴という現実より、両親の泣きそうな顔という非日常に対して(親の泣く姿って子供には異常事態なんです…)、なんとか日常に戻って欲しくて、自分に起きた事は軽く受け止めてみせ、すぐに「ドリフ」という日常に戻そうとしました。
そうしたある意味大人のストレートな感情とは違った子供の心の機微がリアルでした。

北川悦吏子氏といえば(一昔前の)恋愛ドラマの名手と言われましたが、こんなにリアルで魅力的な子供が描けるとは思ってなかったです。これは嬉しい収穫。
今のところ子供時代ドラマがとても面白いので、今週末から始まる成長後で失速しないといいなあ。

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