覚悟してここまで来たーー雪次郎のただならぬ様子。
蘭子はワイングラスを置き、静かにこう言います。
「そう……」
早く出てってちょうだい
蘭子を前にして、雪次郎は「虻田の乱」の顛末を語りはじめました。
なつぞら98話 感想あらすじ視聴率(7/23)理解され難き者たちよ新しい演劇を作ると言うけれど、即座に断った。
僕の夢は蘭子さんと共演すること。そう切々と訴えるのです。
新しい演劇を、蘭子さんと作りたい。
蘭子さんとこれからも赤い星座を盛り上げていく。
「蘭子さんを、絶対裏切りません!」
そう言われると、蘭子は何かが吹っ切れたように高笑いをして、ワイングラスを置きます。
「あなたやっぱり、勘違いしてるわ」
蘭子は呼び出した本当の理由を語ります。
それはダメ出しのため。雪次郎の芝居は最低最悪で、下手すぎて舞台上で笑いそうになった。そう小馬鹿にするような口調で語るのです。
「気持ち悪いったらありゃしない!」
その新しい仲間のところに行けばいい。
そう突き放すのです。
「アマチュアはアマチュアらしくやりなさい。早く出てってちょうだい! 出てって!」
そう告げられて、雪次郎はその場を立ち去るしかありません。
蘭子の横顔が映し出されます。
しばらく立ったままであった彼女は、糸が切れたように椅子に座り込みます。そして震える手で、ワインを飲み干すのでした。
わななく声で歌う蘭子。後ろ姿。
顔を見せないのに、苦しい気持ちが伝わってきます。
カメラワークや演出を含めて、演技、抑えたBGMに至るまで、ハイレベルでした。
女優の顔をこれみよがしにアップで映し、演じる側はワンワンと泣き叫び、がなりたてるようなBGMが流れる――そういう涙をカツアゲするような、陳腐な演出はありません。
横顔と後ろ姿、震える手と声で動揺を見せた鈴木杏樹さんを筆頭に、見事な場面です。
傷ついた心を抱えて
雪次郎は、風車に悄然としてたどり着きます。
「えっ、こんな早く!」
「雪次郎君……」
レミ子となつ、亜矢美が驚きます。
まぁ、翌朝に戻ってきてもおかしくない状況っちゃそうですもんね。
「お酒ください」
雪次郎はそう告げ、酒をあおりだすのです。
いいのかな?
とよ、雪之助と続く、酒に弱い上に荒れる家系では……。
何も言わず、手酌であおる雪次郎を、なつとレミ子は見守るしかありません。
翌朝、風車の夜が明けます。
カウンターでは、雪次郎となつが突っ伏して毛布をかけられていました。目の覚めた雪次郎は、なつに声をかけます。
「つきあってくれてありがとう」
「おはよう」
「昨夜は悪かったな」
「なんもなんも!」
出た、なんもなんも。
「なんも」
あるいは、
「なんもです」
という使い方もありますが、個人的には「なんもなんも」のパターンが一番好きです。
日本語というより、英語圏の”No problem!”みたいなニュアンスかなぁ。
標準語にしやすいようで、しにくいような。北海道の方と話していると口癖のように使うケースがしょっちゅうありますね。
そしてここでは、この言葉に意味が深くあったようでして。
「雪次郎君は、なんもしゃべってないべさ」
なつにとってこのくらいのことは「なんも(=たいしたことじゃない)」だけではなく、雪次郎がそもそも「なんも(=何にも)」しゃべっていないともとれます。
「水飲む?」
なつがそう語りかけると、雪次郎は言葉を絞り出します。
「蘭子さんを傷つけてしまったんだ……」
なつは驚きます。
視聴者もそうでしょう。傷つけられたのは、むしろ雪次郎ではないのかと。
雪次郎は語り出します。
愛の告白、「虻田の乱」について語ったこと。
出番が短いにも関わらず、ここまで事態を引っ掻き回す虻田とは一体……真田一族はおそろしい。
※「迷わんでいい」……とはならなかった?
まぁ、ここで強引に『真田丸』に持ち込みおって……という話ではあるんですけれども。
徳川家康から誘われた真田幸村とは違い、雪次郎は迷ったのです。
ともに稽古をしていた仲間から、「力を買っている」と告げられたこと。
あの言葉に、実は悩んだのです。
「本当に嬉しかった。正直、心動いた。やってみたかったのさ、みんなと……そういうところを蘭子さんに見抜かれた。怒られながらそう思った。なまら怒られた。アマチュアはアマチュアらしくって」
【なまら】と北海道弁を交えつつ、そう語る雪次郎。
あのスカした高山すら、カッコつけたセリフにすっと北海道弁が混じっていた本作。指導が細かいなぁ。
いやいや、それだけじゃないのです。
雪次郎は洞察力や思考力があり、優しく思いやりがあるのでしょう。
だからこそ、あれだけ突き放した蘭子ではなく、自分自身の弱いところが許せないのです。いい奴だ!!
「したけど、蘭子さんが好きなのも、ずっと一緒に芝居したかったのも、本当なんだわ。これからも……」
「蘭子さんに言えば?」
「もう遅い。気持ち悪い、下手くそすぎて使えねえとはっきり言われた。もう一緒にはできねえ」
そう語る雪次郎。もう何も言えない。
辛すぎるぞ。
※続きは次ページへ
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