スカーレット65話あらすじ感想(12/13)姓の変わらないヒロインの登場や!

心を動かすものを作る

NHK大阪朝ドラも、そろそろ感性があるところを見せな(アカン)。

はい、感性が音として流れます。
バイオリンの音色を背景に、八郎がNHK大阪朝ドラチームの感性を背負って登板です。

僕は人の心を動かすような作品を作りたい。

僕の部屋には絵が飾ってある。
深野先生ともう一枚。

秋口に風邪をひいて寝込んで、ご飯を食べられなくなった時、その絵を見て元気を出した。

「誰かの描いた絵が誰かを支えるように、僕も誰かの心を癒したり、励ましたり、そういう、そういう……すみません。ほんまにすみません。先程の約束、見合わせてください。僕は陶芸展に出品して、賞を取ります。陶芸家になります! 一緒に夢を見させてください! お願いします!」

八郎ぉぉぉぉ、これは完封や!

途中で言葉に詰まってしまう、むしろ流暢に決め台詞を言えないところが八郎らしさでもあります。これも彼の個性です。喜美子ほどガーッと喋れない。
演技が下手ということではなくて、個性としてわざと演出して松下洸平さんが応じているわけですから。

『なつぞら』の泰樹も、流暢でなくボソボソと平板に喋る傾向がありましたが、あれも役柄の特性を出しているのだと思います。

ジョーはもう、ここまで打ち返されると何も言えないんですわ。

金銭面をクリアして、喜美子は完全に頭を一緒に下げるわけで。

はい、完全試合まであと一歩や。
なし崩しになるところ、自覚できとったんやな。

川原八郎でどや!

だってもう、これやで。

「十代田の姓はどないすんねん?」

これももう外堀埋めてあるちゅうか。兄弟が継いでいるから、こうですわ。

「川原八郎にならせてください! 喜美子さんと一緒にならせてください! 喜美子さんと結婚させてください! お願いします! お願いします!」

喜美子もこうだ。

「お願いします!」

照子も釘を刺しておりましたし、マツとの会話で家族構成も確認しておりましたし。
即答できるということは、もう八郎の中では迷いなく決まっていたんでしょうね。

「えええええ、男が改姓? そんなん、自尊心ちゅうか……」

そういうところは通過済み。
繰り返しますが、八郎は男だ女だ、という先入観が薄いのです。

これも凄いことなんです。画期的や。
結婚してもヒロインが姓を変えない。

うん、こう来ると思っとったで! 期待してたで!

三姉妹で、武家の家系と言いつつ誰も婿入りを前提しない――そんな設定はあかんと昨年の放送事故にはさんざん突っ込んだ。史実ではヒロイン夫は婿入りだったのに。

『なつぞら』はヒロインに兄がいる以上、義父の剛男だけ婿でも仕方ないところだとは思っていた。

朝ドラで二作連続婿入りが出てくる。
小さなことのようで、大きなことだと思う。

夫婦同性では、こういう反論がくる。

「男が姓変える場合もあるんやから、男女平等や」

せやろか?
圧倒的に女性が変える割合が高いんやで。

男は無関係だという、そういう他人事感を変えていくためにも、朝ドラには使命があるわけです。
100作目から踏み込む意思を、私は感じたんよ。

ジョーは完全敗北し、こう言うしかない。

「陶芸展で賞取ったら、受賞祝いと結婚祝い一緒にしたる。取れるもんやったら取ってみぃ!」

「はい!」

マツも頭を下げます。

「八郎さん、よろしゅうお願いいたします」

上品なんですよね。
マツの出身地は公式サイトですと八尾ですので、あの河内弁(※秋風先生が荒れ狂っていたアレや)の土地ですが、彼女自身はおっとりしていてお嬢様風なのです。

やったで、これやで、勝った! 勝利です!
こっちも祝酒飲まないと、金曜夜だし。みんなでビール飲まんとな!

ん、ええんか?
いかんでしょ。まだ早いでしょ。

いてるだけでえよ、横にいてくれるだけで

そして翌朝、商品開発室へ。喜美子が中に入ります。

「今日から」「今日から」

言葉が重なります。

八郎は断ります。今日から集中して、出品作品に取り組む。教えてあげられる時間が取れないかも。

喜美子は、気にしないで、言おうとしていたと言います。土と友達になるところからだから、好きにやらせてもらうって。

八郎は、そんな喜美子に削りカスを好きなように使うてええと言います。

「聞きたいことあったら、何でも聞いてな。わからんことあったら、何でも聞いてえな」

喜美子は、十代田さんが納得できる作品を作れるよう、自分にできることがあれば言って欲しいと言います。

「いてるだけでええよ。横にいてくれるだけで」

そう微笑む八郎。
これはもう何も言うことない! きゃーーー!

喜美子は粘土を練り、八郎はろくろを回す。

Vやねん!
結婚待ったなし!

せやろか?
うーん、なんか嫌な予感がするんよ……。

嫌な予感ってなんやねん!

クソレビュアーはまたそういうことを言う。
沼の民が『あさイチ』の八郎さん投稿で盛り上がっているのに、またムカつくことを言う!
いい加減にしろやぁ!

はい、そういうご意見は理解しております。

でもな、嫌な予感があってな。

・ここぞということろでやらかす

前例があるんです。
『なつぞら』のイッキュウさん。
彼も、劇場公開長編映画成功と結婚を一緒に考えていて、失敗して退職して、一悶着あったじゃないですか。

セオリー通りなら「きみの愛のおかげで成功したよ!」ってなりそやろ?
でも、そうじゃない。

・締め切りが怖い、そして妥協できない

締め切りを区切られることで、必要以上にプレッシャーがかかっている気がする。
これまたイッキュウさんは、神っちともども締め切りがあるだけで絶望していた。

周囲がこれでいいと言い張っても、自分が納得できないと遥か遠くへ上り詰めようとして、ぶっ壊れる。
そうならんとええんやけど。

・「何でも聞いて」「ほな……」「ああああぁぁあああああ!!」

彼は集中できる。
『なつぞら』にもそういうタイプがいたものですが、神っちは特に集中していると顔がすごいことになっていた。
神っちを演じた染谷将太さんによる、『麒麟がくる』織田信長にも期待してええんちゃう!

それはそれで、悪くないんです。
パニックを起こさなければ。

雑談や何かで破られると、パニックを起こす可能性がある。
周りからすればボーッとしているように見えることも。何もしていないようにすら、時折見える。

それでも彼ら自身の脳内では考えが渦巻いているのです。
断ち切られるとパニックを起こして床を転がってしまうかもしれない。

「いてるだけでええよ。横にいてくれるだけで」

というのは、素直に解釈すればとてもキュンっとします。
しかし……。

「いてるだけでええよ。横にいてくれるだけで(=喋らんといてな。なるべく音立てないで。邪魔せんといて。信楽焼狸のつもりでおってな)」

という意味だったとすれば、あかんやんか。

プレッシャーがかかりまくっている。
喜美子はそこに気付けるかどうか。

「ちょっと休も?  気ィ張り詰めすぎやで」

この言葉を適切なところで掛けられるかどうか。
これなんよ、ここが大事や!

『なつぞら』の面々も濃かったんですが、本作はそれ以上に意識して濃いところを見せてきています。
やたらと突っ掛かったり、布団と戯れたり、絶叫ローリングしたり。

明日の八郎がどんなにキモかろうが、喜美子がどう対処するのか、冷静に観察したい。

キュンキュンもええけど。
沼にハマるのもええけど。
これはNHK大阪ならではの対策ドラマだからさ。

そんでもって、過去に
『パニックを起こすけれどもええ奴だった、そんな相手を邪険に扱わなかったか?』
というところまでそ考えることができれば、ええと思うんやなぁ。

そういう作り手の気持ちを感じるで!

※こういう使命感ゆえにパニックを起こす枠で、トワイライトスパークル。紫色のポニーやで

ついでに書いておきますと……。
『あさイチ』ですが、松下洸平さんは八郎に近い素の部分ゆえに選ばれたと確信できました。

イッキュウさんの中川大志さんは、高い演技力を見抜かれての抜擢だと思う。

そういう意味では、松下洸平さんの起用は賭けであり、気合の入ったことだと痛感しました。

そういうことをする本作は半端ない。

ほんとうにすごい!
しみじみとすごい……。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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