窯業研究所の橘さんが持ってきたええ話とは?
なんと喜美子にコーヒーカップを作って欲しいのだそうです!
どういうこと? 気になりますわな。
ええ話はすぐ乗っかれ!
「ほな、今からすぐ行きます!」
そう答えて電話を切る喜美子。
すぐさま宣言します。
「うちにコーヒー茶碗の注文が来ましたぁ! 行ってくる!」
その格好で?
写真館の中村さんも来るとマツは止めます。
ニコニコしているのは、百合子くらい。彼女は姉ちゃんが陶芸家として認められたと言っているわけですが……八郎の姉・いつ子は、喜美子は絵付け師だったはずだと疑念を顔に浮かべています。
怖いなぁ……川原家側は理解している。けれども、十代田家側はそうではないと。不穏ですけれども。
そういう不穏感を吹っ飛ばすのであれば、ジョーです。
「どないもこないもあるかほんまに。今、行かれん、あとにせえ」
喜美子はええ話はすぐ捕まえたいと言う。
一個400円。10個で写真代出せる! そう聞いた途端、ジョーが熱い掌返しをします。
「それはええ話や! いけいけもう! いけぇ、話はすぐのっかれ!」
おう、せやな。せっかち……大阪だから、いらちか。
こういう話にホイホイ飛びつくからあかんかったんやろなぁ。
NHK東京の柴田泰樹とNHK大阪の川原常治……どこで差がついたのか。
決断のスピードもあるべ。
泰樹は一旦聞いて考えて、結論を出す。出せば素早く【抹殺パンチ】。
即断即決のマイナス面を描く、そんな本作なのでした。
この好機は二度と訪れない
喜美子と八郎は、あの衣装のまま「カフェサニー」へ。
信作が看板を掛けており、喜美子を一瞥して、特に何も言わない。
「なんで声掛けへんねん!」
「はははは! ほやけどお前、何してんねん」
そう笑う信作に、八郎はどこかズレたことを言う。
「ホットケーキ、始めたんか」
ホットケーキといえば、マスコットガールミッコーのことを思い出しますが……。
喜美子はそんな八郎に「悠長や!」と突っ込んでから中に入ります。
橘は微笑み、注文の話を始めます。
叔父が経営し、開店するレストランで80個コーヒーカップが必要なのだそうです。団体客も見込んでいるとか!
えっ、え、え、えらいこっちゃ!
すごい。これはもう、ものすごいことですよ。
でも、すごいのはそれだけではない。八郎は横でムッとしている顔に見える。怖い。
おぅ、これな……以前、八郎は感情が隠せないと指摘しました。
それが喜びや愛情であればいい。
でも、怒りや不満ですと、なかなか困ったことになるのです。この場面は怖い……ゾッとする。陶器にヒビが入ったみたい。
橘は所長も驚いていたと告げます。女性陶芸家が信楽にいるなんて。そう思ったそうです。
喜美子は自分は陶芸家ではないと言います。
この人がいてくれたからできた。うちひとりでつくったわけやあらへん。そう説明します。
「奥さんの作品やない?」
「作品やなんて、うちはまだ……」
80個は無理。8個仕上げるのが精一杯。自分の電気窯も持ってません。
10個くらいの話やと。
「すみません。うちにはまだそんな力ありません」
「そうですか」
「せっかくいただいたお話やのに、すみません」
この一連の話の背後で、大野一家三人が何かを食べています。そして全部聞いてしまった。
橘はカップの中にお花を描いてあるのが気に入ったと言い、よそで頼んでみると言うのです。
ここでやっと八郎は、少し顔を明るくしてこう口を挟みます。
「あの……いつかいつか二人で独立しよう言うてるんです。すぐいうわけにはいきませんが、一年後か二年後。二人で独立して、電気窯入れて作業場持とう言うてるんです。もし、もしかしたらまた。機会あればまたお声がけください。そのときは、80個でも100個でも、作れるような力身につけてます!」
「またそのころに、ぜひよろしうお願いします!」
夫婦でそう頭を下げるわけですが。
「またええ話がそのころあればええんですけど。心に留めておきます」
橘はそう笑顔になって、ご破算となりました。
うーん、これはもうこの話はない。
この状況だと、開店は一度きりです。
80個ものカップが全て壊れてしまうような状況は、大災害でもなければまずないでしょう。それだっていつかはわかりません。
千載一遇――逃したら二度とないチャンス。
せめて丸熊に話を持っていくとか、どうして次の一手をすぐに提示しなかったのだろう。
橘の気に入った点は、カップの中の花。
そうとわかれば、カップの製作は八郎なり他の陶工に任せ、お花だけでも喜美子が手がければよい。
それで大量納品したら、ブランドにすることだって夢ではないでしょう。
機敏な喜美子らしからぬ失敗だと思う。
荒木荘でペンタテを作っていた彼女とも思えない。ああいうアイデアがお金になるチャンスなのに……。
八郎に関しては、そういうことは期待できないとみた。
思えば、「カフェサニー」のコーヒー茶碗のあたりで夫婦に価値観の違いが出てきていた。
これはまずい。
この夫婦は今後、明るくない将来だと思えてしまうのです。
写真撮影しましょ
川原家に戻ると、ジョーは不満タラタラでして。
400円×80個=32,000円
大卒初任給が10,800円の時代ですからね。
「ドブに捨てて来るかな……お前が手伝えばええ。一個五万はよ作れ」
ほんまそれ!!
ジョーがええ。八郎はあかん。
こんなにすぐそうなるなんて、どういう朝ドラHELLのぶん投げ方なのよ。
ジョーは金にがめつくて、人間の尊厳や心理に無頓着な傾向がある。
八郎はその逆。
その中間が正解ちゃうか? そう思えて来る。
めんどくさい枠の暗黒面が見えてきたで。
『なつぞら』の泰樹やイッキュウさんあたりなら、もっとええ着地点を見いだせたんちゃうか。
あの作品は、複数の男性の長所を組み合わせた。そういうものがある。
本作はその逆で。
出来上がった男性像をぶっ壊すか。わざと割ってえげつない作りにするようなものを感じる。
女性に人気があるということで、本作はそれぞれにとって理想の夫像を出しているという、そんな恋愛専門家の記事もみかけましたが。
クソレビュアーとしては、みんなそれぞれ難ありなので、腹括るか手出しすらやめとけ――と、言いたくなるんですわ。
リンクは貼りませんが【本作名+理想の夫】で検索かければ出てきます。
そういう嫌な予感をすぐに変えるのが、本作のおっとろしいところや。こういうテンポとミスリードの技術が極めて高いのです。
「東京帰んで!」
直子はそう言い出す。
おう、時間あるわな。百合子はこう言い出します。
「マリリン・モンローわかったで!」
「何?」
「こうやわぁ!」
「違うで、こうやで!」
姉妹だけでなく、母まで真似するアレ、あのポーズや。
※コレな
いや、個人的には、マリリン・モンローを目指したつもりで爆発した、直子のパーマネントの方が気になるんやけど。まぁ、ええか。
有能なきみちゃんがここで突っ込んでくれる。
「お母ちゃんもやらんでええ! もう、はよ並んで並んで。なんやその頭は!」
直子ぉ……姉の記念写真でそのパーマネント記録されるんか。
そんなこんなで、記念撮影。
喜美子の口から八郎さんと聞いて、こう来ました。
「今、八郎さんいうて……」
「あっ、ああもう!」
「ごめんなさい、すいません! 間ァ悪い! ごめんなさい!」
はい、再撮影です。
タイミングがちょっとズレる。そういう八郎の愛嬌といえばそうですが、なんだか微笑ましいだけではないものを感じ始めました。
予定通りのこと
時は流れて昭和40年(1965年)、夏――。
めおとノートの結果は?
書いた通りに「かわはら工房」が出来て、丸熊陶業から二人は独立していました。電気窯も入った。
八郎の作品は新人賞を取ったものの、一個五万にはまだ至りません。
喜美子は大量の注文を請け負って、八郎を支えております。
八郎は自分の作品に取り組みつつ、麦茶を飲んでいます。喜美子は仕事中。
「あっついなぁ、喜美子も飲む?」
「飲むぅ。はい、飲まして」
「どうしたって?」
「口移しせぇ!」
「ドスのきいた声でやらしいこと言うなぁ」
「そこ、置いといて」
「口移しでぇ!」
「やめてえや! あかん、あっ、飲みこんだ!」
はい、どう思いますか?
あれだけキスで盛り上がった。
なら、やらかしてもええと思います。昨年の放送事故セクシー拷問みたいな、あざとさ狙いならありでしょ。
それに、口移しと聞くだけで、八郎はドキドキして叫んでいた。
ジョーとマツは仲がええ夫婦だからということになっていた。そしてそれは【ジョーが一人で水すら飲めないから】と説明されている。
つまり、短い場面ではあるのですが、微笑ましいイチャイチャで、カワイイと盛り上がることは想像できる。
せやけど!
・口移しに照れていた時期は過ぎている。五年経てばそらそうよ。
・せやけど、ジョーとマツはしとるやろ。画面外でな。娘はそう認識しとる。
・喜美子は、ジョーと違って一人で水を飲むちゅうこっちゃ。
=やっぱりなんか亀裂入っとらんか……?
嫌なもんを感じる。
無意味に口移しを二度も出すかな?
※続きは次ページへ
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