スカーレット114話あらすじ感想(2/15)親父のバナナ

なかなかない。どれだけ出世しようと、ケアワーク、特に情緒面を期待されるのが女性ですから。喜美子はそうじゃないと。

大津の小池紡績の話をする住田。喜美子は神戸に嫁に行ったと言います。

神戸は女優になったあとだと、語り出す住田。なんでも許嫁がおるのに映画監督と噂になった。30年、40年前にスキャンダル女優とされていたそうです。

なんでそんな知ってるん?
そう不思議がる喜美子に、住田はこう来ました。

「芸能ゴシップ、だーい好き❤︎」

なんやこのノリ、関西のおばちゃんかっ!

住田はなかなか重要な役所だと思います。
田中美央さんといえば『おんな城主直虎』の“六左”ですね。『なつぞら』の泰樹が、『真田丸』の真田昌幸を前提としていると思えます。住田も大河から朝ドラに、そういう流れで来たのかな?

「こういう役なら、田中さんしかおらんやろ。神戸出身やし」

そんなところかな。

両者ともに“女性的”で、ケアワークができて、女の主を支えることに使命感を覚えている。そういう雰囲気がバッチリと出ています。

そんなサポート役が「男らしくない」から「情けない」と思うのはただの偏見。愛すべき人物で、果たす役割があると教えてくれます。喜美子は住田の価格をつけることに、違和感があろうと文句はないわけです。

どこか浮世離れしていて、気がつけば山の中に消えそうな貴美子を、世間につなぎとめる重要な役目が彼にはあります。演じているのが、若くて中性的な美形ではなく、田中さんというところに、配役の妙を感じますね。

彼の演じる役柄の良さというのは、

「なんで女に言いたい放題されとんねん……」

という、不満を感じさせないところにあると思えます。

喜美子、百合子、ちや子の中に入ってちらし寿司食べられるだけで実はすごい。八郎ですら、時々あのパワーについていけないようなところがあったのに。

ああいう緑一点(※女性だらけのところに男性一人のこと、紅一点の逆)状態だと、ハーレムだとウハウハしたり、自分がリードすべきだと威張る残念な奴もおんねん。女性専用車両は、事故に遭ったら誰も助けてくれないから危険だとか。いや、女同士で助け合えばええやん。

住田はそういう気配がないから。だからこそ、あの場で百合子に突っ込まれつつ、ちらし寿司を笑顔で食べていられる。ほんまにすごい男です。

住田がこういうただのゴシップ好きでよかったとは思う。アンリにゲスなジャッジは言わないんですよね。

「いやあ〜、若い頃は綺麗でしたけど、今はもうお婆ちゃんやわぁ〜」

こういう事は言わないからさ。こういう【いつでも男は女をジャッジできるんやで目線】、いらんから。

心配したでえ、そう叫び抱きつく

そのアンリが戻ってこない。

喜美子は一人食事をしつつ、気にしております。
食べ方からして、食事が喉を通らない状態だとわかる、戸田恵梨香さんの演技が今朝も半端ない!

いつでも絵になる。それも彼女の演技や制作側の気合いあってのことだと思えます。

するとそこへ物音がする……。

「持ってきたでえ、おろし金とすりこぎ」

武志か。
思わずガッカリする喜美子。これもマザコンを地獄に落とすよな。ともかく母に顔を見せれば喜ぶ。そういう思い込みを粉砕する。

でも、愛はあるんやで。食事をとったか?と尋ね、今からバイトだと聞くと心配している。自転車でここまで来たことを気遣っている。いつもご飯をちゃんと食べてるのか、気にしているのです。

「こんばんは。工房な電気消えてたから……持ってきたでえ、一本5万円のワインや」

そこへアンリがふら〜っと戻ってきます。
何日ぶりや!

「何言うてんねん! どっかで野垂れ死んでんのかと思うたやん! すぐ戻って言うてたやん、心配したでえ!」

喜美子はそんなアンリに抱きつき、泣きそうになるのでした。

これはもう運命やな。

人はなぜ、高級ワインを買い、飲むのか?

滋賀県といえば、ヒトミワイナリーの濁りワイン――。

※うまいで!

いや、そういうことでなく。ワイン問答はおもろいなぁ、としみじみ思いました。

ちょっと最近、ある本でちょっと怖い話を読みまして。

「なんやこんな金出して高いワイン買うて。意味あるんかいな?」

ある人がそう思い、実験をしてみました。

安ワインと高級ワインを買う。銘柄と価格を伏せて、しかも同じボトルのものを別のグラスに注ぎ、ワインにこだわりのある複数の人物に飲ませたのです。

「これはアレやろ、ええワインちゃうか!」

そうご機嫌で飲んでもらい、点数をつけてもらったのですが……その結果は衝撃的でした。

安いワインでもうまいと思っている!
値段と点数、相関関係ないやん!
しかも、同じワインでもグラスを変えただけで点数が違っとったのです。

これはワインだけではなく、高級酒で横行する手口でもありまして。

◆‪核実験のおかげで「ビンテージ・ウイスキーは半分以上が偽造品」であることが判明

かつて、ジョニーウォーカー黒ラベルが、「ジョニ黒」と呼ばれ日本人の人気であったころ。

安価な国産ウイスキーを瓶に詰めて出す手口が、流行していたそうです。

なんで酒の話しとんねん。『マッサン』か! そう突っ込まれかねませんが、ここでアンリが高級ワインを買ってきたからではあるのです。

それでも高級ワインを買う意味はある。
ヴィンテージワインのラベルを見て、香りを味わい、グラスを傾ける。親しい誰かとそうしてもよい。

そうするとき、人間は紛れもなく高揚感と満足感を得られる。そういう「時間を買っている」ようなものではあるのです。

ですので、ワインの味は変わらないと突っ込むのは野暮ではある。

ただし、喜美子ならそうしかねないかもしれない。そういうところがある。

喜美子は、住田が高い値段をつけることに感謝しつつも、納得できないところはあるかもしれない。

皮肉なもんです。

喜美子の金銭感覚は面白い。目的のためならドカンと使う一方、米の値段で自作を換算して戸惑ってはいる。こんなんただの器やん。そう本人が一番思っていそうな気配すら時折ある。

住田がいうような「舐められない価格」だの、「世間の目」だの。理解しているのか、していないのか、よくわからない。本人ですら、わからないのかもしれない。

そこにアンリが現われました。

世間の目ではなく、自分の指で感じる。誰かに自慢するためではなく、心の底から求めてくる。何もかも得たようで、ポッカリ開いた心の穴に、アンリはするっと入ってくる。

アンリは、まさしく高級ワインのような存在かもしれない。

住田ほど知識はない。
八郎とももちろん違う。

百合子、直子、照子、それに荒木荘の仲間のように、昔から喜美子を知っているわけでもない。

それだからこそ、自分の本質を見出せるようで、喜美子はもうアンリに夢中になってしまうのでしょう。

来週が気になるで!

ほんで、このアンリ役に烏丸せつこさんを選んだ本作スタッフがすごい。こんなお姫様みたいな役を、あえてベテランに演じさせる。その試みが、朝ドラとしての新境地だと思えます。

ワインのラベルと同じで、人は肩書きも大事です。むしろ肩書きこそ第一かも。

中身がさほどなくても、学者や高学歴だと披露している方の意見であれば、権威ゆえに信じてしまう。これは広告やテレビ業界を見ていれば、よくわかることだとも思う。

騙されやすさと知能は、実はそこまで関係もない。

偏見や世間の目を知る大人の方が、実は子どもよりも騙しやすい。マジシャンは子ども相手だとトリックを見破られないかヒヤヒヤするそうです。

喜美子には、子どものころまで戻してくれる――そんなアンリが必要なのでしょう。

実は見る方も、そうかもしれんなぁ。
烏丸さんの本質を見せたい、そんな意気込みすら感じます。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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