1971年(昭和45年)の岐阜県東美濃市。そこはノンビリとした田舎町でした。
キミカ先生の産婦人科医院では、その年の7月7日に二人の赤ん坊が産まれます。
一人は「楡野食堂」を切り盛りする、楡野宇太郎と晴の娘。
もう一人は「萩尾写真館」を営む、萩尾弥一と和子の息子。
二人の運命はどうなるのでしょうか。
今日は男児のナレーションから
今日はなんと、萩尾家の男児サイドからのナレーションです。
分娩台を乗っ取られたのに安産で生まれてきた俺をホメて!だそうで。
ヒロインのことを、
「なんだ、この猿」
とまた可哀相なことを言います。
試みとしてはなかなか面白いですね。
無事出産を終えた楡野晴(松雪泰子さん)の元に、楡野廉子(風吹ジュン)がおしめを持って来ました。
綺麗なさらしを手に取り、萩尾和子(原田知世さん)の元へ向かう晴。
分娩台占領のお詫びとして、さらしを持って行くのですが……。
和子のいる病室は、特別室。
かなり豪勢な個室です。
一方で晴は大部屋なわけでして。
萩尾家はなかなかリッチなんだそうです。
ここでちゃんと萩尾家の内部まで出てきます。
皇太子が撮影したこともある由緒正しい老舗で、なんともシックな店内。
和子は時折店に出て、趣味でピアノを弾きこなすとか。
昭和の典型的な、優雅な奥様ですね。
一方の晴は、大衆食堂で毎日働き、暇があれば昼寝をしているわけでして。
生活のレベルが違うわけです。
裕福な萩尾家では貸しオムツ!?
和子は晴のさらしに御礼を言いつつ、貸しおむつを利用するつもりだと言います。
当時、紙おむつはまだまだ本格普及の前でして。
普通の家庭では、布おむつを洗って使用するわけですが、上流階級ともいえる萩尾家は高~い貸しおむつ派でした。
経済格差にショックを受ける晴。
しかも壁には、
「命名 律」
という紙が貼っております。
難産のせいだけではないでしょう。
晴は命名のことをスッカリ忘れていました。しかも萩尾さんのおしゃれな名付けに、刺激を受けた様子。
夫の宇太郎は、腎臓病ながら頑張って出産した妻に気遣い命名しようとするのですが、祖父の仙吉も張り切っておりまして。
廉子は宇太郎に向かって
「娘が産まれたらクミコってつけるんじゃなかった?」
と、おもむろに言い出します。
思わず固まる宇太郎。
どうやら中学時代の日記を母である廉子が盗み見ていたようで、完全に黒歴史です。
なんせクミコとは、当時好きだったけど、フラれてしまった女の子の名前でして。
ここであるあるネタ、
「お母ちゃん、俺の日記勝手に読むんじゃねえよ!」
と争いが始まります。
定番ですけど、それがいいかも。
命名と無縁だった男 仙吉、張り切るが……
場面はキミカ先生の病室に。
女医としてキャリアを積んできたキミカは、実のところ出産経験がありません。
それでも自分はいい仕事をしているんだ、とサバサバしております。
「子供っていうのはよいもんだ」
そう語る言葉は力強いです。
こういう、当たり前だけどちょっといい言葉を入れてくる、そういう作風でしょうか。
一方の晴は【律】という名前への憧れが止まりません。
「普通の名前は絶対駄目! ヨウコとかクミコとか駄目!」
と、唐突にダメ出しされるクミコ。
あ、これ、普段からぐるんぐるん回り過ぎてしまうパターンだ。
ブ~っとお茶を吹いている夫の異変に、晴は気づいていないようですが。
仙吉は、とっておきの名前として、
【つくし】
を考えます。
一晩考えたそうです。
なんでも三人の息子(仙太郎、宇太郎、賢太郎 ※宇太郎さんは二男だったんですね)は妻が名付け、柴犬のポチは宇太郎によるもの。彼自身は命名と無縁の人生だったのが悔しかったようです。
一晩寝ずに考えたぞ、とドヤ顔の仙吉に、廉子は「寝てたがね」とつっこんでいます。
お母ちゃん本気か!
晴もずーっと命名を考えている様子。
そして窓を開けて目に入ったのがスズメです。
「スズメは? かわいくない?」
ここでヒロインが、お母ちゃん本気か!と突っ込みます。確かに突っ込む気持ちはわかる。
それから時間は飛び、教室でヒロインがぼーっとスズメを見ています。
その様子に気づいた先生が声を張り上げます。
「スズメさん、楡野鈴愛さん!」
懐かしい「椅子の2本立ち」ですっ転ぶ鈴愛。
年代ジャンプして、やっとこさ子役ヒロインの登場です。
小学校3年生のようですね。
今日のマトメ「家庭像が丁寧に描かれている」
胎児スタートから3日目で、ようやく子役の登場です。
胎児にせよ、新生児交替ナレーションにせよ、割と斬新なことをしているとは思います。
切り口は斬新で、中身は【あるあるネタ】なのがいい味を出しているかも。
母が子供の日記を盗み読みネタなんかベタですもんね。
楡野一家は、ここまで積み上げられてきた歴史がわかるのがいいと思いました。
三人兄弟で柴犬を飼っていたという話は、別に本編とは関係ないことです。
ただ、こういう背後の積み重ねがあるからこそ活きてくる面白味もあると思います。
前作『わろてんか』は判を押したように、家族ネタといえば「子が親を喜ばせたくてホニャララ」という、エエ話しかなかったですからね。
楡野家と萩尾家の経済格差も、今後、重要な気がしてきました。
萩尾家って、いわゆる昭和のハイソ家庭なんですよね。
遊びに行くとお母さんが「手作りクッキー」と「はちみつたっぷりのホットケーキ」、さらには「ロイヤルミルクティー」がオヤツとして出てくる。庶民的な家の子はちょっとショック受けちゃう系ですよ。
うちのおやつはせんべいなのに、なんであの子の家はすごいの~!って、なっちゃうやつ。
お父さん(谷原章介さん)も上品でオシャレです。
今日、晴が受けていたような格差ショックを、今後、鈴愛は律に対して感じるんですかね。
昭和のベタなネタを入れていくだけで視聴者は釣れるし、本作はそういう路線なんだと思います。
ちょっと古い少女漫画的世界観でベタになるのでは?という予想もありますが、それはそれでありかもしれません。
脚本家さんが自分のホームで戦うのはよいことだと思います。
なにわの女興行師の世界を無理に平成少女漫画に落とし込んだ前作の轍は踏まない――そう期待しております。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
、で味気無い思いをしている分、に期待しています。
は、現代劇なので武者様のレビューは諦めていたのですが、連載して下さり、嬉しいです。
ありがとうございます。♡