半分、青い。8話あらすじ感想(4/10)お母ちゃんは五平餅の匂い

のんびりとした時間が流れる、1980年(昭和55年)の岐阜県東美濃市。

大衆食堂「つくし食堂」の娘・楡野鈴愛は小学3年生です。

元気いっぱいな日々を送っていたある日、突然彼女の世界が揺らぐ感覚がありました。

 

後から思い出すときっと懐かしくなる

「大丈夫か、鈴愛」
「平気」
鈴愛は、ちょっとよろめいただけで大丈夫です。律は鈴愛を心配している様子。
二人はそのあと仲良く帰宅してゆくのでした。

なんということなない、なんでもない場面。
でも、後から思い出すときっと懐かしくなる、そんな日常です。

こういう、特に意味がないけど貴重な場面を入れていくのはよいことです。
景観も岐阜らしいですし。

養老山地の多度山から望む下流域の木曽三川(手前から揖斐川、長良川、木曽川)/photo by Alpsdake wikipediaより引用

さて、秋祭りの準備のために、ふくろう商店街の母親や子供たちは、西園寺家に集まっていました。
まさに田舎の成金御殿といいますか。
子供の運動会をできるほど立派なお屋敷です。

鈴愛、草太、律、ナオ、そしてブッチャー姉弟たちはトランプ遊び。
ブッチャーの姉・麗子は、ピンチになると膝に抱いた愛犬メルシーを使い、カードをグチャグチャにしてしまいます。
この子役もいい味出しているなぁ~。

西園寺家はみんなインパクトが強いですね。
お姉ちゃんも、クラスメートに香り付き消しゴムを配っていたりするのかな。
キウィとかカステラとか、あまりに美味しそうで、授業中、思わず齧りついてしまったことがあります(編集さん談)。

 

「おしりだって洗って欲しい」を順番待ち

お母さんたちは、廊下で何やらソワソワしています。
順番待ちのようで、なんだろう?

と、思いきや、「おしりだって洗って欲しい」のウォッシュレットトイレでした!

 

時代考証的に考えると、発売は1980年6月。
CMは1982年です。

ナレーションはちょっと未来を先取りしていますが、この時点でウォッシュレットが設置されているのは、発売後数ヶ月で買ったということがわかります。
さすが、リッチ&贅沢体質の西園寺家ですね。

鈴愛と晴が帰宅した楡野家でも、ウォッシュレットの話題になりました。
痔にもイイとはいえ、当時は、かなり高嶺の花です。
一般家庭で買うのはムリかな……。

テレビの前では、鈴愛が当時のトップアイドル・松田聖子が『青い珊瑚礁』を歌うのにあわせ、熱唱中。
草太は「聖子ちゃんだけが聞きたいのに~」と不満そうです。

 

廉子さんは無言で晴が「いい風吹くね」

ここで仙吉は、廉子の墓参りに行こうと提案します。

秋晴れの空の下、墓の前で手を合わせる楡野家。
仙吉は何か長いものを持っています。

鈴愛の糸電話でした。

「三途の川はこの世にはないんだ」
「うん、そうだと思ってた」
鈴愛は、自分のしたことを無駄だと思っているかもしれません。
でも鈴愛ちゃん、おじいちゃんはあなたのその気持ちだけでも嬉しいんだよ、と言ってあげたくなります。

ここで、糸電話の工夫をしたのが律ばっかりだな、と仙吉に言われると、
「鈴愛もいろいろやった! 何がいろいろかは聞かないで!」
と返す鈴愛から、背伸びを感じますね。

「廉子さんが、これを持ってくれたらなあ。寂しいなあ……」
糸電話を手にする仙吉。
「廉子さんはここにいる。見守ってくれているんだ」

ここでちょっと意外だったのが、ナレーション担当者の廉子さんが無言であるところですね。
ここぞとばかりに感動的なBGMを流し、しっとりと彼女が語るだけでわざとらしいほど泣ける場面になりそうなんですけどね。

そのかわり、風を感じながら晴が「いい風吹くね」と言うに任せるわけです。

過剰演出しないところに好感が持てます。
裏声をつかって宇太郎が廉子さんの真似をしておちょくり、仙吉が「アホか」と返すのもいいですね。

「廉子さーん!」
「おばあちゃーん!」
「おかあさーん!」
「お義母さーん!」

皆の声が響きます。
ブッチャーが先週、鈴愛に「大きな声で名前を呼ぶとか、愛かよ!」と言っていましたが、ああ、確かにそうかもしれないですね。
なんだかあったかいなあ。

 

テレビの歌をカセットで録音!

楡野家の夜。

チャンネルは再び歌番組です。
もんた&ブラザーズの『ダンシング・オールナイト』とは、相も変わらずエエ選曲してきますなぁ。

 

鈴愛と草太は、カセットデッキをテレビの前に置き、スピーカーから流れてくる音をテープで録音しております。

テレビのイヤホン端子と、カセットのマイク端子の間をコードで繋げば綺麗に録音できるんですけどね。
そんなこと当時の小学生にはわかるはずもなく、【ひたすら声を潜めて】、歌を拾うしかないのです。

しかし……。

「鈴愛!」

と、鳴り響く晴の声。
こんなときに限って、お母ちゃん、うるさい!という、これまた当時の家族あるあるですね。

 

お母ちゃんが一生懸命考えてくれた名前だから

「あんた、キミカ先生に聞いたけど、律くんにゴミ箱投げつけたって!」
バチンと音を立てて録音を中止し、鈴愛に迫る晴。

「何で隠すの、卑怯なの! バレなきゃええと思ってる!」
「卑怯やない!」
晴は、テストを隠すこと、川に落ちたこと、今回の件を隠していて卑怯だと責めます。

 

「鈴愛にはがっかりや!」
「うちだっておかあちゃんにがっかりや!」

引っ込みがつかない鈴愛。
「おかあさんはいいにおいっていうけど、ぬかみそとコロッケあげる油臭いし 和子おばちゃんのほうがええにおいするし、宝石みたいなクッキー焼いてくれるし! うちは五平餅ばっかりや!」

ああ~……わかるわ~。

五平餅のようなしょっぱい郷土料理がおいしいと思えるのは大人になってからで。
子供のうちは見た目綺麗な洋菓子に憧れるもんですよね。

円形の五平餅(長野県駒ヶ根市)/photo by fitm wikipediaより引用

「ぬかみそはおばあちゃんから受け継いだ大事なもんで、コロッケはうちの名物で!」
晴も引けません。
そうやってコロッケを揚げたお金で育っているのに、なんでここまで言われないとあかんの、ってなりますね。双方の言い分が理解できるのです。

「おかあちゃんがなんでパーマかけんかしっとる! ゴアそっくりになるからや! 大きな手して、ゴアや。ゴアそっくりや!」
またマグマ大使ネタです。

晴もムッとして、手を上げようとすると、宇太郎と仙台が入ってきて、鈴愛を慰めようとしますが、
「甘やかさないでください!」
母として、ここは引けない場面。

「なんで律くんに石投げたの!」
「石やのうてゴミ箱で、相手はブッチャーで、当たるとは思わなくて……」
「なんで投げたの!」

ここで鈴愛、言葉に詰まります。
母が一生懸命考えてくれた「スズメ」という名前を馬鹿にされたから。
そうとは言えないのです。

「いいたない! 和子おばちゃんならわかってくれる!」
「そこまで言うなら和子おばさんの子になりなさい!」
「なるよ!」

家を飛び出す鈴愛。
「おばあちゃん、私どこに行けばいいの?」
こんなところで言われても、私も困っちゃうよ、と廉子のナレーションが語ります。

 

今日のマトメ「専業主婦の幻想も昭和ノスタルジー」

話があまり動かないというか、一見無意味な日常を描いているように思えます。
通学風景にせよ、墓参りにせよ、母子喧嘩にせよ。

ただ、こういう積み重ねが話として繋がっていると感じました。

「和子おばちゃんがいい!」
鈴愛がこういう風に言う展開は、あるんじゃないかなと思っていました。

出産したばかりの場面で、晴が和子との格差に驚くところ。これは将来、和子が理想の母親になって、その差が描かれるだろうと思いました。

和子のような、清潔で、おしゃれで、もちろん専業主婦で、いつも笑顔で、手作りクッキーを作るおかあさんが、当時の子供の間では理想なのでしょう。
自分の母親ならば、そんな理想像にも人間臭いところがあるとわかるものですが、クラスメートの母だとわからないものなんですよね。

理想の母親像とうちのおかあちゃんは違う……そういう残酷な比較を子供はしてしまうものでして。
大人になってみれば、おかあちゃんの五平餅おいしかったなあ、となるんですけど。この時点ではそうなりませんもんね。

ここで気づいたんですけど。
悪ガキブッチャーと同じで、和子さんも実は昭和ノスタルジー、過去の人なんですよね。

平成の今、共働きが一般的になってきているワケでして。
昭和から続く漫画原作作品だと和子さんタイプが出てきますし、広告なんかでもまだまだ多い母親像です。

しかし、実はもう古いんだなぁと、ハッとさせられました。

この当時だって和子さんのような典型的なおかあさんは実は少数派。
晴のように揚げ油のにおいをさせつつ、働いていたお母さんがたくさんいたのです。

『ひよっこ』の母親像もそうでしたけど、働かないでずっと子育てだけしている母親像って、昔からそうは多くないんですよね。

ここ数年の大阪制作朝ドラは、子供が思春期に
「おかあちゃんは働いてばっかりで、うちのこと見てなかった!」
とグレだします。

しかし、そういうのは陳腐なんだよ、おかあちゃんは働いているもんだよ。
それでもちゃんと子供を愛しているじゃない……と、東京制作の朝ドラがダメ出しをしているようにも思えました。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

2 Comments

管理人

>roko様
ご指摘ありがとうございます!
修正させていただきましたー^^
「抜け味噌」って、一度食べてみたいw

roko

書いて下さってありがとうございます。

本日、校正委員様の存在を知りましたので、必要ないかと思いましたが、これまでお伝え出来なかったことを今後コメント出来たら…と初めて投稿いたします。
遡らないといけませんので時間が掛かるとは思います。
また、今後私のコメントは公開されなくてかまいませんので、どうぞよろしくお願い致します。

>「おかあさんはいいにおいっていうけど、ぬけみそとコロッケあげる油臭いし 

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