半分、青い。9話あらすじ感想(4/11)鈴愛の左耳はすでに……

1980年(昭和55年)秋、岐阜県東美濃市。

大衆食堂「つくし食堂」の娘・楡野鈴愛は、小学3年生です。

ある晩、鈴愛は母親の晴と喧嘩して、家を飛び出してしまいます。一体どこへ向かうのでしょうか……。

 

「家出してきた。結婚するか?」

ピーピーと笛を鳴らす鈴愛。
「りーつー!」
やっぱり、萩尾家でした。そこしか行き場がないでしょうね。

律が窓から顔を出します。
「家出してきた。結婚するか?」
「勘弁してください」
こういう会話がちょっとマセているのが、本作の面白さだと思うのです。
鈴愛も律も、ただのイイ子ちゃんじゃないんですよね。

楡野家では、歌番組で流れた『ダンシング・オールナイト』を録音しようとして、失敗したテープを聞いています。

期せずして母娘喧嘩がバッチリ録音されているわけで。
夫の宇太郎は、お母さんも厳しいんじゃないの~、と鈴愛の肩を持とうとします。

厳しい父と優しい母という従来の親子像も、この時代になると立場が変わったりしておりまして。楡野家もそのパターンのようです。

それは鈴愛の言動を見ていてもわかります。
鈴愛と父親が一緒にいる場面はありませんが、鈴愛が父のコレクションである漫画を読みハマっていることを見ていると、父親のことを好きなのでしょう。

テストの答案が悪かった時も、心配する母親の晴に対して、宇太郎は上手に描けた絵の方を喜んでいました。

 

口裂け女は本当に恐怖でした

宇太郎と仙吉が探しに行こうとすると、晴はちょっとムッとしています。
厳しく接することを母親である自分だけに任されて、損な役回りだという不満なのでしょう。

ここで草太が、夜になると「口裂け女」が出てくるよ~、食べられちゃうよ~、と言い出します。

 

「口裂け女」伝説の最盛期は1970年代後半で、この時代よりもやや早いのですが、子供の間では根強く残っていました。
彼らが知っていても不思議はないですね。

※72年生まれの編集部注「めちゃくちゃ残ってました。怖かったです」

ここで、電話が鳴ります。
黒電話に手作り「おかんアート※」なカバーがついているのがこの時代らしい~。

※おかんアート:母親や祖母が作りがちで【洗練されているとは言いがたい、されど温もり感がパネェ】手芸品のことです

電話は萩尾家からでした。頭を下げつつ、何か話す晴。

場目が切り替わると萩尾家の電話がちょっと映るのですが、こちらはお洒落な装飾があるタイプですね。
生活レベルの差がわかるようになっています。

時代が進み、主人公たちが高校生ぐらいになると黒電話はプッシュ式に変わり、その辺でまた時代感を出すかもしれません。

※「ちなみにポケベルは高校終わり頃、ケータイは大学生ぐらいかなぁ」との編集談です

 

分娩室に男は入るもんじゃない

鈴愛は、萩尾家の両親の前で、萩尾家の子になりたいと訴えます。

「うちは大歓迎だよ」
そう言う律の父・弥一。

和子も大歓迎だけれども、鈴愛は晴さんの大事な子だもの、と言います。
「ほんとうに? うちのおかあちゃんはクッキー焼いてくれへんし、髪も編み込みにしてくれへんし」

どうやら商店街のマナちゃんは、髪の毛を編んでもらえるようです。
和子は、お仕事が忙しいからなのよ、とフォローします。

「晴さんは命がけで鈴愛ちゃんを生んだのよ」
そう説明する和子。

弥一は怖がったのに、宇太郎は分娩室まで来たと。
そういうものは男子が見るべきものじゃないから、と弥一も優しく反論します。
実際、当時はそれが一般的な考え方でした。

「お母さんは、鈴愛ちゃんのことだーい好きなのよ」
と、和子が語り出したところで、律は「マーブルマシンを見て来る」と自室に立ち去ります。鈴愛にも声をかけ、二人で部屋へ。

 

立派なマーブルマシン

「母ちゃんのいい話は長いからなあ」
そういって逃げて来た律。

部屋には、小学3年生が組み立てたものとしては限界ギリギリの、立派なマーブルマシンがあります。
割り箸や家庭で準備できる材料で組み立てた、ビー玉(マーブル)を転がす仕掛けです。

鈴愛もからくりを見ていましたが、やがて眠くなったと律のベッドで寝てしまいます。
「音、うるさくない?」
「ううん、ちょうどいい、子守歌」
スヤスヤ眠ってしまう鈴愛。

天然というか、律は鈴愛のこういう大らかさに救われているのかもしれませんね。
にしても律の部屋、なかなかこだわりのある、お坊ちゃま系の寝室だなぁ。さすが萩尾家は全体的に立派です。

このへん、セットも使い分けができていまして。

庶民的な家:楡野家
ちょっとおしゃれに気を遣う庶民的な家:木田原家
リッチで趣味のいい家:萩尾家
田舎の成金御殿:西園寺家

見ていてそれぞれわかりますね。

 

ブッチャーは鈴愛のことが好きだったのか!?

そこへ、晴がやって来ます。
玄関に現れた律に、晴がゴミ箱の件を謝ると、逆に律は、鈴愛がからかわれた原因が「自分の名前だから言えなかったんだ」と晴に伝えます。

実のところ私も、マタニティハイで「鈴愛」とつけられたあたりから、この子将来いじめられないかな?と不安なところはありまして。
その不安をプロットに入れていくんだなあ、と思いました。

晴は名前のことで、自分をかばっていたことにハッとしています。

それから律はこう続けるのです。
「ブッチャーは鈴愛が好きだから。だからからかっているんだと思う」
ここだけの話で、とブッチャーの恋心をばらす律。

この辺ちょっとねじれていて、ブッチャーは鈴愛だけではなく律も好きで、この二人がうらやましくてちょっかいを出すんだろうなと。律はそのことに気づかないのでしょう。
「名前を呼び合うなんて愛ちゃう~?」
と言っていますし、そんなところでしょうね。

ブッチャー、今日は出番ないけど、きみはやっぱり光ってるよ。

「鈴愛のこと怒らんといて。鈴愛は思ったことをそのまま言ってしまうから。そこが鈴愛のいいところだから」
「ありがとう。律くんが友達で鈴愛は幸せね」

晴はしみじみと感謝します。
和子は鈴愛が律の親友でよかったと思い、晴は律が鈴愛の親友でよかったと思っているわけで。
何気ない日常の中で、この二人の関係性がきっちり描かれています。

いきなり出会って、いきなりラブアイテム交換して、運命の出会い――というのもアリなんでしょうけど。
本作はこういう幼なじみの思い出を重ねるスタイルですね。

 

子供好きな弥一の一面が見える

弥一にお姫様だっこされて、おりてきた鈴愛。熟睡ぶりがわかります。

弥一も良い人っぽいんですよね。娘が欲しいお父さんという感じで。
抱っこしたときに「女の子だから柔らかい」という感想も、なかなかリアルな台詞です。

実際、性別が一緒でも、抱っこした感触って子供によって全然違ったりしますもんね。
つまり弥一は、過去に律を結構な回数で抱っこしていたのかなぁと。出産には立ち会ってなくても、子供思いなところが伝わってきます。

鈴愛は晴におんぶされて、『ふるさと』を歌いながら帰ります。
起きたならおりなさい、と言われて走り出す鈴愛でした。

翌朝、早起きして仙吉は五平餅をこねています。
楡野食堂では、店頭販売しているようですね。岐阜県の軽食がバッチリ出ている点、よいと思います。

「孫にまで心配させたらいかん」
そう張り切っています。

鈴愛の糸電話で、心配かけてはいかんと思ったのです。糸電話事態は成功するはずもないのですが、そこにある思い入れは家族にちゃんと届きました。

鈴愛は、草太に耳元で叫ばせています。なんだか耳の調子がおかしい様子。

目玉焼きを作る晴に、鈴愛が話しかけました。
「おかあちゃん」
「もう三年生やし、おかあちゃんでなくておかあさんって言おうね」
「左耳がもわーんってする」

キミカ先生のところで受診すると、名古屋の大学病院に行かなきゃダメみたいと言われてしまうのでした。

「名古屋? あんかけスパゲッティ食べたい!」
無邪気に喜ぶ鈴愛。
あんかけスパゲッティというのは名古屋ローカルB級グルメ、いわゆる「名古屋めし」ですね。

あんかけスパ

ローカルフードが結構出てきますよね~。そこがいい。

楽天的な宇太郎、大丈夫だと自分に言い聞かせながらも不安げな晴。
そして名古屋の病院で検査を受ける、無邪気な鈴愛。

この時点で、左耳はほとんど聞こえなくなっていたのでした。

 

今日のマトメ「何気ない子供時代に見える中に」

今日前半は喧嘩の顛末、後半は鈴愛の異変がハッキリとわかる回でした。

前半は結果的に母子の愛情を確認する構造でしたね。
明日以降、晴は耳が聞こえなくなった原因は自分じゃないか、と責めてしまいそうで不安な気持ちが今から募ってきます。

のんびりした宇太郎や仙吉と違い、責任感が強く、やや悲観的なところもある晴。
そのことをきっちりわかっているのは、和子じゃないかと思うのです。

だからこそこのあと待っている展開が、ちょっとしんどそうです。

何気ない子供時代を積み重ねているようで、本作は結構情報量が多いですね。
口裂け女とか、電話カバーにおおっ!と思っていると、わりと大事なことを見逃してしまうかも。

今ンとこ、本当に丁寧で安心感がある作品です。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

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