半分、青い。50話 感想あらすじ視聴率(5/29)2つのすれ違い

ときは1990年、舞台は東京。

漫画家・秋風羽織に弟子入りした楡野鈴愛は、ネーム作りに四苦八苦し、落ち込んでいたところをゆるふわ系の朝井正人にやさしく癒やされます。

恋だ!
と舞い上がる鈴愛に対し、幼馴染の萩尾律も大学で運命的な出会いを果たします。

「ロボット工学」でした。

【50話の視聴率は19.1%でした】

 

ロボット工学 熱意はあれど人気なし

研究室のドアを施錠し、真顔で迫ってくる宇佐川。
あのロボヨは、学生が興味を持って研究室に入って来るようにしておいた罠だと言います。
確かに大学教員の研究室にしては、オープンだなあとは感じました。

するとそこへ、作業着姿の所属学生がやってきます。

学生たち曰く、弱小研究室に学生を勧誘するため、常にオープンキャンパス状態でロボット展示をしているそうで。
彼らも、すし詰めで実験を繰り返しており、シャワーを浴びる暇もない様子です。

これはこれで大変そうなのですが、今の大学生の皆様は学費稼ぎのためバイトをしている方も多く、就職活動も厳しいため、本業の研究すら身が入らない場合もあるそうです。

大学生というと【遊んでばかり】というのは、はるか昔のこと。
単位取得の難易度と学費は右肩上がりで、本作で描かれる学生像は、大昔と現在の厳しい状況の間の時代にあたります。

ややエキセントリックな教員と、コメディタッチの学生像は、時代背景的にもドラマ化もされた人気漫画『動物のお医者さん』を思い出してしまうかも。

特に、律の進学した理系の学部は実験やレポートが重なり、文系とは比にならず忙しいものでした。
そのぶん就職先は確保されやすいという一面もあるのですが、これがロボット工学に関しては逆に作用するという……。

 

就職に不利だから

大学内部をおちょくるのは、教育関係者から厳しい目線で見られるかもしれません。
こればかりはドラマの宿命でしょうか。

苦しい弱小設定研究室という設定なのに、三億円ロボを開発できる宇佐川研究室は、現代の視点からみればむしろため息が漏れてしまうほど贅沢なのかもしれません。
人気はなくとも、宇佐川の実績は並々ならぬものがあり、海外の関連誌にもバンバン論文を発表しているとか。

ドラマ的にはおもしろおかしく弱小研究室にしています。

実際のところは宇佐川は、相当な実力をもつ教員なのでしょう。
そういう教員をして、学生勧誘に涙ぐましい努力をさせる大学の組織って……と突っ込みだすとキリがないのでこのへんにしておきます。

なんといっても宇佐川は、世界初の二足歩行ロボを開発した研究者なのです。そんなすごい研究室なのにナゼ弱小なのか疑問を感じる律。

原因は就職でした。

『鉄腕アトム』や『スター・ウォーズ』で憧れてロボット研究にあこがれる者は多いものの、就職で挫折してしまうのだそうです。
理工系ならば自動車やコンピュータ産業が有利なのだそうで。
1990年当時、ロボット工学の地位は低かったのだとか。

それでも律は、めげません。

就職とか、将来性とか、二の次。
ロボットに興味を持った、感動した、またここに来ていいですか、とキラキラした目で言います。

そして宇佐川の著書を買います。
宇佐川はサインをしようかと言いますが、それを断りまして。

献本ではなく、高峰という学生がしっかりと2,850円を徴収。
ちょっとコミカルですが、教員にとって著書の売り上げは死活問題です。自分の講義で、自分の著書を使うというのはごく当たり前のことですしね。

 

本当に日本人はロボット開発が得意なのか

律は、鈴愛にロボット工学への情熱を語ります。

【日本人がロボット開発が得意なのは、無宗教だから。キリスト教は人型のものを作りたがらない】
という説は、日本人得意論の典型例で、かなりあやしいなぁとは思います。

当時のソ連は共産主義国家ですから、キリスト教倫理にそこまでこだわらなかった気がしますしね。
一方、日本にも当然宗教はあるわけで。

身もふたもないことを書くと、
【当時は軍事転用があまり考えられておらず、米ソはそこまで本気にならなかった】
ということ。

要するに、バブルで日本は金があった(その一方で現在は……)という状況が反映されていたのかもしれません。

※アメリカの企業が開発するこのロボは軍事転用を念頭において開発されたようですな。まだまだ課題が多いようですけれども……動きが鮮烈で怖いですよね

そういう日本特異論は実際によくみかけるので、律がそれを語ったとしてもそれは仕方ないことです(ただし、トリビアとして視聴者が周囲に語るのは要注意)。

ところが鈴愛は律の言葉が耳に入ってこない。
というか聞いていない。

夢をみつけたのかと聞き、夢のカケラをみつけたと照れ臭そうに語る律に、寄り添っていく感じがない。
これはちょっと寂しいなあ。

律も壁に向かって話してみるみたいだった、と思っていました。

「私は恋をした!」
突如、キラキラした目で語りだす鈴愛。ここで律は、こばやんとのデートで拷問黒歴史を持ち出します。

「今度はつけ耳、つけんなよ」
そうアドバイスする律。
この場面、二人が噛み合ってなくてちょっとなんかこう、胸がちくっとしますね。

 

テーマは『鈴愛の恋』だ

場面はオフィスティンカーベルへ。
今日は「テーマの捉え方」のレッスンです。

「テーマは『鈴愛の恋』だ」

秋風羽織がそういった時点で、挙手して鈴愛が怒り出します。

「プライバシーの侵害ですっ!」
「プライバシー? プランクトンじゃないのか?」
「ナカノガタもいるのに!」
「お前はナカノガタって呼ぶな!」

ここで羽織は勝ち誇ります。

お前の口が軽いから、跳ね返ってきたと。そして鈴愛につられて、ものすごくディープな河内弁でビシバシと罵倒しまくります。
大阪でも、一番喧嘩に向いているというあの河内弁で。

やっぱりトヨエツを使っておいて関西弁を出さないのは、もったいないと思うんですよ。
このコテコテの、えげつないまでのマシンガン河内弁、さすがや!

ちなみに河内弁で美術・芸術系といえば大阪芸大(大阪府南河内郡河南町)を思い浮かべるんですが、その辺の設定が来ているんですかね。

 

ネタにされてもニヤニヤの鈴愛 ボクテは見抜く

鈴愛は喋ったのは誰だ、ボクテか、ユーコか、はたまた菱本かと慌てております。
ただ、河内弁は理解できないため、羽織の言葉はわかっていないようです。

これが美濃権太モードだそうで。

ぶっちゃけ、秋風羽織の本名「美濃権太」が、ダサい本名として笑いに使われていると、最初は気づきませんでした。
美濃というのはダサいどころか、旧国名でむしろ素敵だな、岐阜県とつながりあるんだな、とか思っていて。

さらに権太というのも『義経千本桜』の「いがみの権太」由来で、本当の性格はごんたくれ、やんちゃなのかな、面白いな、くらいしか感じていなかったんですね。
ネットのニュースで気づきました。そういえば菱本も、確かにそこをからかったりしていたんですよね~。

ここで羽織が、恋の流れをおさらい。

途中で朝井正人が「ぼーっとした顔」「ぼんやり」と言われております。
それでも、うっとりとして、フルーツパフェではなくチョコレートパフェですと訂正する鈴愛。

ユーコはなんで恋をネタにされてああなの?とボクテに尋ねます。

ボクテは見抜いていて、鈴愛は話題の中心にいれば満足だからと答えるのでした。

ニヤニヤ鈴愛、可愛いッ!

しかしここで羽織、容赦ない行動を……。

 

暇になったら連絡するという男が、暇になることはない

「ここから先が問題だ。そのあとの行動は?」
そりゃそのあと花火でしょ、そのうち花火でしょ、という鈴愛。

「そのうちっていつ? 電話は? 電話は番号は知らないのか?」
「知っています!」

あ、これはまずい。
ここでボクテが起立!

「異議あり! これは公開処刑ですか!」
「却下します。電話がかかってこない。誘われて、断る男はいません」

羽織は容赦なく続けます。
暇になったら連絡するという男が、暇になることはないと。

中学三年生になれば見つける社交辞令をわかっていない、と容赦なく突っ込む羽織。
ショックを受ける鈴愛。
涙こそ流さないものの、心が泣いているだけですと答えます。

「もしかして、みんなうすうす感づいてた? みんな社交辞令だと気付いて鈴愛かわいそう、って思われてたのでしょうか?」
「そんなことないよ!」
と、中野さんが即答。

「私たちは今日聞いたから!」
そういう意味でかいっ!

すっかり意気消沈する鈴愛。
このころ秋風ハウスではピンクの電話が鳴っています。正人はちゃんと電話していました。

すれ違いなのです。

 

今日のマトメ「2つのすれ違い」

前半ロボット工学。
後半はオフィスティンカーベルでの河内弁&公開処刑でした。

二重構造というか、たった15分になかなかおもしろいねじれがありまして。

律は鈴愛のことも意識してロボット工学の道へと進むのに、その情熱が全く伝わらない――1つ目めのすれちがい。

そして鈴愛と正人の、SNSやスマホのない時代ならではの――2つ目のすれちがい。

このあたりの事情は、先週の鈴愛とナオちゃんの電話の場面で説明されていたのが、伏線なのでしょう。

実は鈴愛と正人は、すれちがっているようで、繋がっています。
鈴愛と律もそうであってほしい、そうでなければならないと思います。が、そうなると今度は正人がどうなるのかな、と気になってきますね。

ロボット工学関連も、今後どう描かれるのか。
また新たに気になるところが出てきました。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

1 Comment

mayajoyjoy

北川悦吏子さんのリツイートで初めて知って、今、毎日こちらのレビューを読んでいます。「半分、青い」ロスが癒され、改めてその魅力に気づかせてくれます。

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