半分、青い。73話 感想あらすじ視聴率(6/25)結婚という違和感

1995年(平成7年)、24才の夏。
仲間のボクテとユーコとの離別を経て、漫画家としてさらなる成長を遂げたい楡野鈴愛は岐阜へ里帰りしていました。

キミカ先生の還暦祝いパーティーです。

萩尾律に五年ぶりに会える。
そう思い、出かけた鈴愛ですが、着ていくはずのドレスが台無しとなり、パーティーお開きの土壇場で会場へ向かいます。

律の姿を求めて夏虫駅へ向かったところ、電車が動き、もういないかとあきらめかけたそのとき……!

【73話の視聴率は21.1%でした】

 

溢レ出ル鈴愛話法

再会した喜びの後、こんな格好で、と我にかえる鈴愛。
律が噛みしめるように久しぶりだと言っているのに、とことんマイペースで、ブライトイエローのレダハーのドレスが、いかにして台無しになったか語り始めます。

「聞いとるのか、律」
ぼうっとしている律に、鈴愛がムッとします。

「鈴愛の声を聞いとった。懐かしい声」
「そういうこと言うのは、反則や」

ズギュウウウンってなるうぅ。
月曜朝からフルスロットル、ありがとう、北川先生。

鈴愛って実はあんまり友達が多くできなさそうなタイプと思っていて、理由はこういうふうに一人よがりで、思ったままをガーッと喋ってしまうところなんかが原因じゃないかと思います。

伊藤清みたいな人からすれば、うっとうしくて、わけがわからない。
ただのあざとくてウザい不思議ちゃんでしょう。

初デート相手だった新聞部のこばやんは、この溢れ出す鈴愛話法にドン引きしてしまいました。

一方で、可愛い顔や白い肌、声は何のためにあるの、男をつかまえろとユーコは言ってました。

鈴愛はそういう外見的な武器には無頓着です。
自分の感性と世界を好きという相手しか、眼中にない。合コンなんて興味ない。だからファッションセンスも言動もズレています。

ただでさえ子供っぽいのに、律の前だと完全に甘えきって子供返りがさらに進んでいる。
そういうことができるのは、俺が相手だからだろうし、懐かしいよなあ、全部いいよなあ、っていうのが律からも伝わってきます。

ここから律が近況報告。
京都の大学院で、ロボットの研究をしている。

鈴愛はキミカ先生から冊子を見せてもらったと言います。
アノ手の冊子って、書店にあるものではなく、入手経路は結構限られているはず。学会誌かな?

鈴愛が私も頑張って漫画家になった、と告げます。
律は知っている、和子が単行本を持っているし、自分も読んでいると。

 

鈴愛の現実歪曲空間

ここで鈴愛、着ているものの弁明。
ブティック木田原で買った母のアッパッパ(『カーネーション』でもおなじみです)。

「久しぶりなのにこんな格好。消えたい! はっ、こうしたら美人になるかも」
そういうと、律の目に手をかぶせる鈴愛。

うぜえ、あざとい、この手の女うざい、と舌打ちしたい人もおられるかもしれません。

鈴愛は、そういうの計算できてないです。美形で、計算づくの小悪魔モテテクを使えた伊藤清とは違う。
思ったことをそのままいきなりやると、こういうことになってしまう。本人もコントロールできていないんですよね。

で、律はこういうのを見て泣いてしまう。

なんでえ、なんで泣かせるんだよ、泣かせりゃいいってもんじゃねえだろ、ってなるかもしれないですし。

鈴愛ワールドの住民以外はポカーンでしょう。
住民は大歓喜でしょう。

本作の持つ恐ろしいところは、「鈴愛の現実歪曲空間」についてこれない視聴者を、容赦なく振り落とすところです。

律にとって鈴愛の作り出す現実歪曲空間は唯一無二です。
俺が理解してやらないとこいつはダメになるかも、という重たいずっしりした気持ちもある。

んで、それを理解していても、もう言葉にならなくて、思わず泣いちゃうんじゃないでしょうか。

 

鈴愛が左に立っている気がした

一方、駅の外ではブッチャーも合流。
いきなりナオちゃんにオシャレが全部間違っているとダメだしされます。

いや、ナオちゃんの気持ちはわかるんですけど、私は好きだというか、矢本悠馬さんの魅力が出ていますよね。
ブッチャーはよくピンクをさりげなく身につけていて、今日は蝶ネクタイに、黒の帽子と組み合わせ。んで、これが絶妙に似合うという。

電車いってまったと謝る鈴愛。
次まで20分、ちょうどええ感じやと律は言います。自然な岐阜弁に戻っています。

鈴愛が左に立っている気がした、と律。
右耳しか聞こえないからと答える鈴愛。

「なるほどそういうことか」
律は納得し、自動販売機で奢ると言います。百円くらいで、とからかい微笑む鈴愛。

「このぜいたくミルクティーなら120円だ」
「じゃ、それにする」
他愛のない会話です。

 

鈴愛の夢、短冊を奪ったと律儀な律

ナオとブッチャーは、車の中で話しています。
このまま「ともしび」にでも行くのかな、と話しています

車のガラスが曇っているから洗ったらとナオに言うブッチャー。余計なお世話、とナオ。
こういうちょっとした、気の置けない距離感の会話がうまいんですよね。

全部全部、ドラマチックなことを言わせようとするわけじゃなくて、緩急がちょうどいい。

鈴愛と律は、空き缶をボールに見立てて投げて遊んでいます。

それから話は、ロボット工学へ。
五年前の別れの日、律は鈴愛の短冊を盗みました。

ロボットを研究するようにという、鈴愛の夢。ここが律の律儀なところなんですが、盗んだこと、鈴愛の心にあることを持ち去ってごめんね、夢を叶えさせてくれてありがとう、とちゃんと言うんですな。
そして短冊を返そうとする。つまり、ずっとこれを持ち歩いていたわけです。

律の字は「旋律」だけじゃなくて、「律令(刑法)」とか「仏教的な律(規則)」なんかの意味も考えてしまいましたが、「律儀」というのもハマりますね。

 

3年ぐらいで別れていた

「律の夢は私の夢やったもん。ここまで夢が叶いました、のしるし」
そういうと、鈴愛は冊子に短冊を挟みます。夢のしおりです。

ここで気になるのが、伊藤清です。
実は彼女とは……結局三年で別れて、今はフリーだったことがブッチャーとナオちゃんの会話から判明します。

わかりますよね~。
ステータスシンボルみたいな美少女彼女。大学生が初めての交際相手にするにはベスト(というか普通は高嶺の花)ですね。

でも、あの人は律と全然相性良くなかったと思います。納得。
まぁ、学生時代から付き合ってそのまま結婚という例の方が稀ですし。

一方でブッチャーは彼女いない歴更新中。って、おい、がんばれ! がんばるんだ、ブッチャー!!!

鈴愛と律は、じゃんけん遊びをしています。じゃんけんで勝ったほうが、歩数で進むものですね。
地域によって差があるかもしれませんが、
・チョコレート(ちょき)
・パイナップル(ぱー)
・グリコ(ぐー)
こんな感じでしょうか。

先程の缶投げも含め、このふたり、24才の行動じゃありません。
そのへんがゾワゾワ……。
時間潰しにしても、普通はそんなことしません。鈴愛は、ユーコやボクテ相手にこんなことしないでしょうし、律だって絶対にしない。

鈴愛と律だからこそ。

 

「鈴愛、結婚しないか」

律は、大阪の菱松電機に就職が決まったといいます。

三菱電機と松下電器のコンボでしょうか。これは相当大手で、理系男子の就職口とはバッチリなのでしょう。

おめでとうと言う鈴愛。
やっと24才の会話らしくなってきました。

そのとき、風が短冊を飛ばしてしまいます。

思わず手を伸ばし、よろめいて、歩道橋から落ちそうになる鈴愛。
律はまあいいよ、もう夢も叶ったし、鈴愛にも会えたし、と言います。

そして突然、告げるのです。

「鈴愛、結婚しないか」

 

今日のマトメ「結婚という違和感」

いやあ、スイートだぜ! と見ていながら、しかし、感想を書きながら心がズキズキと痛んできました。

この二人。
鈴愛と律。
絶対に、おかしい。

24才にもなって缶を投げて、じゃんけん遊びして。
誰かに聞かれたら意味がわからないような、自分たちにしか理解できないファンタジックな会話をしている。

そもそもマグマ大使の笛で呼び出す習慣を、この年齢でも続けている時点でおかしい。

精神年齢が、木曽川沿いで遊んでいたころから、まるで進歩していない……(安西先生風にフザけてません)。

それは本人たちも無意識的になんとなくわかっているのでしょう。
律は大学生の頃に、彼女と「そういうこともしたい」と正人を相手に語っていました。鈴愛もキス未遂は正人相手です。

同じ場所で寝ていてもそういうことはしないだろう、というセリフもある。
そういう方向に、進もうとはしない。

要するに、このふたりは、あの幼いころのまま永久凍結された関係に生きているんですね。

結婚して、子育てをする二人。
もう俺の妻なんだから漫画家なんてやめて、俺を支えろ、と言い出す律。
その通りだとあっさり筆を折る鈴愛。

そんなの想像できないし、見たくもないんだぁ!

それに、不吉な予感も山ほどあるではないですか。

運命の二人が再会するのは55になってからという、鈴愛の漫画ネーム『神様のメモ』。
ボクテが盗作して殺していますけど、秋風羽織先生がこの作品にエロを入れて怒った理由、というか謎はこのあたりにある気がします。

結局、未完のままである『屋根月』。あれは鈴愛と律の関係を描いたものでした。

今日飛んでいった、夢のしおり。
捨てられかけたと思っていた、あの笛。

普通は、こういうのを全部完成させるなり、取って置いたりするわけでしょう!
そうじゃないですか、無茶苦茶怖いんですけど、このドラマ!

唐突に思い出したのが、
「容赦なく鬼畜外道行為をして、視聴者を地獄のどん底に叩き落とす精神拷問ドラマ」
こと『ゲーム・オブ・スローンズ』でして。

愛しあうカップルだろうと容赦なく血の海に叩き落とされたり、爆発や毒で呆気なく始末されたりします。

なぜそんな例を出したのか?
というのも、最新シーズン7のラストで、視聴者待望のビッグカップルを結びつけておいて、その裏で、
「でもこの二人、実は結ばれてはイケない非情すぎる設定があるんだよっ!」
と、外道の極み設定を視聴者に見せてくれるのです。

結果、「二人とも良かったなぁ」というところから「吐きそうなほどの地獄」に叩き落とされるのが見える……。
その手の、地獄展開を思い出してしまいました。

本作も、
「男と女が結婚して家庭を築くだけがハッピーエンドだと思っていますか? そんなこと知りません。こういう運命もあるんですよ!」
と、最高に切なくて苦しい関係を、ガラスのハンマーのように脳天に繰り出してきそうな予感がある。

この世界と付き合える者だけが勇気を持って飛び込んで来い的ワールド!
今週も全開で楽しく、そして辛いです。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

3 Comments

匿名

ブッチャーとナオちゃん、「ほしたら(ともしび行くのに)付き合うか、ナオちゃん」なんて事を言ってみたり、言われたナオちゃんの目が少し泳いだりして、むしろこっちが大人になった幼馴染同士の王道っぽくて面白かったですね〜

moon

追加です。
私から見ると、清の方がウザくてあざとい女だと思います。6年ぶりに会う愛しい人。綺麗な姿で逢いたかったのに、不本意な服装で会う事になり、言い訳したくなるのは女心。鈴愛可愛い!と思います。清はミニ&ニーハイで決めてるつもりなのがあざとくて、律との再会から不快でした。
ヤキモチも度を超えていてウザかった〜。

moon

匿名改めmoonです。
律のプロポーズ、突然でしたね。私から見ると律くん少し勝手な気が…。律くんの就職が決まったから…というのはあるのかもしれないけど、就職先は大阪。鈴愛は東京で漫画を描いてるのに、住むところとかは考えてないのかな?何処でも描けると思ってるのかな?鈴愛は連載を持っていると言ってもまだ4年。編集者が大阪まで通ってくれるとは思えない。書きあがったら東京へ送ればいいのでしょうか?(出版のことは解りませんが…)
今週のタイトルを見ても何だかイヤな予感が…。
明日の鈴愛の返事とっても気になります!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA