明治43年(1910年)。
藤吉の実家北村屋で働くてんは、しずからもらった白い喪服が、女中部屋から消えてしまい、慌てます。
トキは「まさか楓さん?」と楓による盗難を疑います。
電車の中のイチャイチャカップル的な……
「女の戦いはますます燃えさかり!」というナレーションが入る中、着物と探し回るてん。そしてようやく出てきて、安堵します。
「女の争いごとはくわばわくわばら~見て見ぬ振りが一番ですね!」
と番頭の又八が言います。
ナレーションといい、こういう台詞といい、「ホラ、視聴者も女同士のドロドロを見たいんでしょ?」とけしかけられているようで……。たぶん多くの方は望んでないと思います。
藤吉は帳簿を見ようと番頭に言いますが、啄子に止められているからと断られてしまいます。何かあるようで……。
藤吉はてんを励まして笑いをひとつ。
「俺とおてんちゃんとかけて、夫婦茶碗ととく」
「そのこころは?」
「どちらも欠けてはなりません」
「…………」
えぇと……電車の中でイチャつくカップルを見てしまったかのような気まずさが、微妙に流れているような。
四週目に入っても、気になる登場人物の行方を見守るというより、他人が目の前でイチャつきだしたような気まずさがあるのは、視聴者が感情移入するのを妨げられているのが原因かもしれません。
繋がりのおかしな編集になってません?
てんとトキは、文句を言いながら楓の部屋を掃除中。
トキは楓の荷物から、与謝野晶子の歌集を見つけます。
「いやらしいわ! 恋愛に興味がないなんて嘘!」
と中身を読み出すトキ。
「やっぱり犯人は……」と言うと。
「うちや! 謝る気ぃはないで!」
そう言いながら楓が入ってきます。
ここで非常に引っかかったことがあります。
トキは「やっぱり犯人は」としか言っていません。
「やっぱりおてん様の白い喪服を盗んだ犯人は楓さんでしょうか?」とまでは言っていません。
それなのに、なぜ楓は喪服の出来事を知っていたかのようなリアクションなのでしょう。
女中部屋にあった白い喪服を、楓が盗んだとハッキリわかる場面はありませんでした。
てんが喪服を探す場面を楓がこっそり見ていた、ということは可能性は否定できませんが。
にも関わらず、楓が「(喪服を盗んだ犯人は)うちや! 謝る気ぃはないで!」と言うのは、物語の繋がりがどうにもおかしいと思うのですが。
そこは視聴者の想像で補完せよ、ってことですかね。なんだか編集が少々雑な気がします。
それに、こんな場面では、楓がまず「うちのものを勝手にあさるな!」くらい怒ってもよいと思います。
女中が掃除しながらそんなことをするのは相当失礼なこと。
楓が本当にいけずをする気なら、これ幸いとそこをつつくはず。
楓が「愛嬌なく見合いを断られ続けた」事情は教えて
てんは家を飛び出した楓を追いかけます。
その途中で、質屋から出てくる頼子を見かけて、頼子が喪服を物色して盗もうとしたのだとわかります。
インド人も頼子も、てんの目の前に出て来るのが、絶妙過ぎるタイミングだなぁ。
てんは誤解が晴れたとニッコリ。
ここも不自然で、勝手に喪服を盗もうとした頼子に「おおきに!」とニコニコ御礼を言いますかね……。
その帰り道、てんは一人で佇む楓を発見し、声を掛けます。
「なんで、(盗みを)やったなんて言うんですか?」
いやそこはまず「疑ってごめんなさい!」かなぁと……。
「本当は頼子さんの仕業でした。着物を盗んだと疑ってごめんなさい!」
くらい言わないと会話として不自然な気がします。
これに対し、楓は突然一人語りをしだします。
ここの台詞が妙に不自然なのは理由がありまして。
楓を演じる岡本玲さんは、自身のインスタグラムアカウントで、こう説明したとのこと。
「楓は愛嬌がないために見合いを断られ続けていた。そんな楓を認めてくれたのが北村屋の啄子」
そこを説明してこないとここの会話が、何を唐突に自分語りしているんだろう、ってなるんですよね。
本編なのに総集編を見ているようなぶつ切り感があるのは、こういう必要なところをカットしてしまったせいなのでしょう。
藤吉の出番を半減させてでも、楓をきちんと描いて欲しかったです。
本当は親の決めた相手に嫁ぎたくない、と楓飛び出す
てんはやっとここで勝手に歌集を見たことを詫びます。
楓は歌が好きだと言いだし、てんはそんな楓はカッコイイと言います。
しかも勝手に楓の和歌を持ち出し、真っ昼間から朗読。
歌を詠むことすら照れている人の作品を、真っ昼間から勝手に読むって、公開処刑かい!
「楓さんって薄い漫画の本描いているんだね! すごく絵が上手だね、漫画家になるのが夢なの? 夢があってカッコイイね」
そんなふうに、学校でクラスメートが同人バレをやらかしたような、そんないたたまれなさを感じて辛いです……。
楓は、本当は親の決めた相手に嫁ぎたくない、と言います。
ましてや藤吉みたいな仕事のデキない男ではそうでしょうね。
ここでヒロイン同士が夢語り。
この唐突な夢語りで、どうやら二人は唐突に和解したようです。
インドカレーを瞬時で作るヒロインですから、和解もスピード勝負なのです。
そこはよいとして、楓に「てんの方が格好いい」とか、敗北宣言のようなことは言わせないで欲しかったです。
無計画な駆け落ち娘がカッコイイ?
いやいやそんな。こういう主人公をむやみに持ち上げる台詞を周囲に言わせるのは、やり過ぎ注意です。
褒め殺ししてリタイアする魂胆かもしれないですけど。
楓は啄子に、揉め事にあきた、自分らしく生きるから嫁にはならないとリタイア宣言。
楓を追い出す展開にしてしまうと、てんが悪役になってしまうから、勝手にリングを降りた不戦勝にしてしまうわけですね。
その努力はわかりますが、今日まで窃盗の疑いをかけていて、そのあとの態度も変なので、やっぱりてんはどうしたものだろうと思ってしまうのですが。
今回のマトメ
今日は編集の粗さを感じてしまいました。
楓の設定は「そこを削ってはイカン」というところが削られてしまったようです。
会話も唐突でした。
ゆえに前述の通り「本編なのに総集編感」が漂っているかのようになっているのだと思います。
余計な描写が長く、必要な描写が削られているのではないでしょうか。
これはおそらく、編集側は、主人公サイドをたっぷりと描きたいのに、見る側は脇役の方が気になってしまうという、齟齬の結果かな、とも思います。
今週、ずっと気になっていたのが謝罪の仕方です。
先週以前もそうでしたが、頭を下げる前にまず弁解から入るのです。てんも藤吉も、その他の人物もそうです。
これは性格設定ではなく、脚本家の手癖なのでしょう。しかし、こうした細かいところが不快感の積み重ねになって、視聴者にのしかかってしまうのではないでしょうか。
北村屋のゴタゴタは早く終わらせ、とにかく寄席を開いて、てんに商売をして貰いたい!
じゃないと視聴者の脱落が続きそうです。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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