7月7日の七夕に同じ病院で産まれた鈴愛と律は、2011年を迎えて東京にいます。
【おひとりさまメーカー】の経営者となり娘の花野と暮らす鈴愛。
大手メーカーの菱松電機を退職した律。
二人で設立した【スパロウリズム】は、癌に罹った鈴愛の母・晴を勇気づけるため、「そよ風の扇風機」を開発し、長きにわたる苦闘の末、ついに完成品へと漕ぎ着けるのでした。
しかし、そんな扇風機のデータを津曲が盗もうと企んでいるのでした。
【149話の視聴率は22.1%でした】
もくじ
兄がそんなこと!……するわ
空っぽになった【スパロウリズム】オフィス――。
試作機もない!
おまけにパソコンからデータまで盗まれているーッ!「ない、ない!」と律がパニックになっております。
津曲ぃぃぃ、この野郎ぉおおおおおお!!
そこへ鈴愛もやってきて、すかさず犯人は津曲だと判断します。
そうだ、そうだ。
戦国時代なら城攻め待った無しだ!
修次郎についた嘘を覚えていたわけですね。あれが伏線だったとは!
そこでスパロウリズムコンビは、津曲の妹である恵子に詰め寄ります。
パスワードが突破できたのも、鈴愛が津曲のオフィス【ヒットエンドラン】時代に働いていたのと同じ使い回しだったからだろう、という推理まで披露します。
なるほど!!
厳しい組織ですと半年に一度、強制変更させられたりします。【ヒットエンドラン】は、セキュリティが甘かったんですね。
パスワードから犯人を確定させる鈴愛の知能そして脚本、ほんま冴え過ぎやでぇ!
兄がそんなことするはずない!
と言いかけるものの……即座に「やはりするだろう」と意見を変えるのは妹の恵子です。やっぱり~~!!
そのとき息子の修次郎から電話が……
津曲は、大手電機メーカーに「そよ風の扇風機」を持ち込んでおりました。
彼のスマホには恵子、鈴愛、律から着信が、ひっきりなしに入っておりますが、当然、無視無視。
津曲、貴様ぁ~~~!!
来週が最終週だってわかっているのかあ!
しかし、さすがの津曲でも、修次郎からの電話となると取らざるを得ません。
「お父さん、仕事中ごめん、先生に怒られた」
落ち込んだ声で電話をかけてきた修次郎。
聞けば、産休交代要員の社会科教師から、
「マスクをしているのはインフルエンザなのか、それともうつってはいけない菌でも持っているのか」
とクソな詰め寄られ方をしたそうです。しかも、周囲のクラスメートに笑われたと。うわぁ、これは辛い。
「でも僕、マスク外すと胸が苦しくなるんだ」
「修次郎、マスクは取らなくていいぞ。大丈夫だ」
今、学校にいるのならば、うちに帰っていいぞ、そう告げる津曲。
「明日お父さんが学校で話して来るから」
こういうのは親に頼らず、自分でどうにかしなきゃいけないのでは?と驚きながらも父に尋ねる修次郎。
しかし津曲は、相手は大人なのだから、太刀打ちできないし、する必要はないと告げるのです。
「お父さん、僕はカッコ悪い。友達もできない」
「友達なんていらない。媚びるな、自分でいろ。無理してみんなに合わせるな」
どうした、津曲!
すべてのセリフが名言じゃないか!!
「お父さんみたいになりたい」
「何言ってんだ」
「強く正直に自分の意思を持ちたい」
そう修次郎が言ったところで、ドアが開いて会社の偉そうな方が登場します。
「明日お父さん、学校行くからな。詳しいことはまたあとでな」
すっかり光属性になったかのような津曲。
さぁどうする、ここで嘘をついたらお前はダメな奴に逆戻りだぞ!
ここで津曲、深々と頭を下げます。
「まことに申し訳ありません!」
扇風機には重大な欠陥があり、家庭用電源だと羽根が回らない――そんな大嘘をテキパキと語り出します。
「それ駄目でしょ」
「すみません!」
こうして津曲の成果物盗難事件は、終わりました。
津曲、首の皮一枚で助かったな。
大手が飛びつくとは思わない ナゼなら原価が……
津曲は、オフィスに戻って来ます。
扇風機盗難は金目当てだったのか?
恵子にそう聞かれると、修次郎にいいところを見せたかったと、素直に吐露します。
それが電話でいいところを見せたから、動機が消えたわけですね。
律はここで怒るよりも「帝都電機はどういう反応だったか?」と知りたがります。
しかし、プレゼン前に津曲は撤収していたわけで。
大手電機があの扇風機に飛びつくとは思わない――そんな衝撃の発言をするのは他ならぬ律でした。
理由は価格。なんと、ざっと見積もっても3万円はするだろうとのこと。DCブラシレスモーターは、ACモーターよりはるかに高いのです。
あー、そういえば、本作がモデルにした扇風機も『あっ、結構するな』と思いました。
って、いやいやいや、来週で終わりなんですよね?
「律、聞いとらん」
「言ったら反対されると思って」
ここで、戸惑う鈴愛にさらなる衝撃の告白が!
「退職金は試作で尽きた。クレジットカードでも借りてる」
「うわぁああああ」
衝撃のあまりオフィスを飛び出す鈴愛。律は冷静に、岐阜県人は借金に弱いと語ります。
にしても、なんだ、このテンションの差は!
走り出す鈴愛のテンションの高さが面白い。それでこそ、君だ!
西のうどんか、ホセ・メンドーサか
律は3万円の扇風機を4千台売らねばならないと、目標を立てます。
さらに津曲に、こう迫るのです。
「修次郎くんにチクられたくなければ協力してください」
「脅迫?」
「脅迫です」
この軍師め!
鈴愛が猛将なら、律は軍師だ!
律としては、岐阜犬をヒットさせた、その手腕が欲しいと言い出します。
さらには昔、冷蔵庫のケーキを食べたと恵子に責められる津曲。軍師・律と妹・恵子から迫られております。
そこへ鈴愛が、大事な話の気配を聞きつけて戻ってきます。
そして【ヒットエンドラン】でも逃げた奴だと言います。
うどんを食った西だ、と『あしたのジョー』ネタを振り出す鈴愛。ここで津曲は、むしろ俺はホセ・メンドーサだからとカッコつけ出します。
西とメンドーサ。
どちらにでも転ぶことができる!
しかし、修次郎のことを思えばホセ・メンドーサだ、僕もそうだから、と説得する律。
「翼くん?」
そう津曲に聞かれて、ふふっと笑う律。
この笑いが奥深いなあ。息子の翼君ではなく、鈴愛を思ってのことかな、とも想像できますからね。
「あんなかっこいいこと言える大人はいない」
ここで、その修次郎が登場します。
父に会いにきたのです。
観念したのか、息子を前にして腹を括れたのか。
津曲は正直に告白し始めます。
【スパロウリズム】は自分の会社じゃない。会社は潰れた。
今はラーメンを作っている【イコイノバ】で働くバイトの身だと告白します。
「お父さんはな、もうかっこ悪い」
「お父さんはかっこ悪くなんかない」
そう返す修次郎。
ラーメンは美味しいし、友達なんかいなくていいと言い切ってくれたのだと。
「あんなかっこいいこと言える大人はいない」
そう語る修次郎に、律も賛成します。
友達なんて無理に作るものではなく、できるときは自然とできる。そして作曲についても褒めます。
想像性のあるもの同士、年代を超えて話があっているのかな。
律は津曲の説得を続行します。
この扇風機を売って欲しい。多くの人に届けたい。それは津曲にしか出来ない!
「わかりました、受けて立ちましょう! この扇風機は風がいい、わかる人はわかる」
そう言い切る津曲。
「お父さん、なんかかっこいい」
そういう修次郎の顔からは、マスクが外れている――。
思わず津曲もハハハと笑うのでした。
今日のマトメ「アイツに理想の父親像が潜んでいたなんて」
津曲評価、最低最悪、どん底からの急上昇!
朝ドラ15分間でこんなものが出来るセンスに唸るしかありません。凄い、凄いぞ~!
廉子さんがナレーション説明を放棄した男、津曲。
スカした駄目っぽい、鈴愛に土下座させたこともある奴が、まさか、最後の最後で隠し球となるとは……。
しかも産業スパイから一転、心強い営業プッシュマンです。
もう、今回は、見所しかない。そう言いたくなりました。
津曲と修次郎の会話。
こんなにあたたかく寄り添う父子像って、朝ドラでは本当に珍しい。
朝ドラ定番の親子対立って、働く母親にぶーたれる子、それを反省する母というパターンばかりだとは何度も申し上げた通りです。
子育てをしているはずの父親の存在感は、薄いものです。
しかも、津曲の我が子への接し方は柔軟性があります。
男らしくシャキッとしろ、困難に立ち向かえばいい。
そういう昭和マッチョな考え方ではなくて、世間の価値観に合わせなくていいし、友達作りなんてしなくていい、自分の生き方をしろと励ますのです。
そのために自分は学校にまで行く。
津曲、アンタって奴ぁ……いい父親だよ!
彼がそんな父になれたのも、挫折のせいかもしれません。
かつて津曲が在籍していた広告代理店で出世を驀進している母親ではなく、父親に電話をしているのです。
母親では、相談相手にならないということなのでしょう。
津曲だって、広告代理店でイケイケの頃ならば、マッチョなアドバイスをして息子を突き放していたかもしれません。
『学校までわざわざ行くわけねぇし!』ぐらいに思っていたかも。
そんなゴリゴリの広告マンが挫折を経たからこそ、息子に寄り添い、理想の父になりたいと願った。
それゆえの盗難、そして復活なのです。
あるいは鈴愛と接していたのも津曲に影響したのかもしれません。
学校の授業や世間の常識・価値観などに全く左右されない彼女の言葉。それが津曲に刺さっていたと思われるようなシーンもありました。
なにより鈴愛や律の人生の凸凹道にも意味がある。
それが本作の伝えてくること。
津曲もそうなのかもしれない。今回、私にもそう伝わってきました。
よりによって津曲に理想的な父親像が潜んでいたなんて、……昨日は思いもよりませんでした。
おい、津曲、よかったな。盗人ではなくて、息子からの電話で思いとどまり、そればかりか寄り添うことで、尊敬されるようになって。
これが平成の良さかもしれませんね。
昔のようにギラギラしていた時代では見られなかった価値観が生まれてきています。津曲は、その価値観を体現するナイスガイになったのです。
本作は時代を描いてきただけではなく、そこで生きる人間の姿が見えてきます。
バブルの頃だって、ボディコン瞳さんのようにお色気を搾取されるように消費され、ポイ捨てされた人はいました。
一方で、平成という先の見えない時代だからこそ、マッチョイケイケ価値観にそぐわない人にとっては生きてゆく道が見つかると、そう描いてくれてもいるわけです。
そして今日、ぐっと来たのは!
岐阜県民らしさというか、戦国っぽい軍師・律!
脅迫です、とサラリと認めて津曲をスカウトするあたり、よいではないですか!
【スパロウリズム】にはない営業手腕を求め、敢えて敵だった将を斬らずに登用するかのような、この流れ。
戦国時代ぽい、戦国時代ぽいぞ!
やはり本作のチームは、大河にスライドすべきではないか?とゾクゾクしてしまうほど、見事な軍師ぶりでした。
その一方で廊下を走り周り、すかさず過去の恨みを炸裂させる鈴愛も、武将ぽさがあってイイ!
こんな個性的な面々、そして深い世界観、鋭い時代感を持つ本作が来週で終わりだなんて……。
信じられない!
彼らの世界はいつまでも続く――そう思ってしまいます。
この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
>miyuki様
そういえば和子さん言ってました!!!
スッとしました、ありがとうございます^^
つか、津曲、どこまでも調子者でサイコーっすねw
miyuki様、なるほど〜。
納得しました。
うどんをたべた西、ももちろん、
秋風先生の言葉にありましたよね。
このドラマ大好き人間として、いつも楽しませてもらってます。ありがとうございます。
津曲が子供に、友達は作らなくて良い!と言ったのは、和子さんが岐阜犬に悩みを相談していた女の子に言った言葉ではありませんか?確か、津曲が聞いていたように記憶しています。
こんなところに、あのさりげない言葉が 繋がっていると感心しています。
私は、この作品のしっかりとした骨格のある流れが素晴らしいと思います。