幻灯機の何がどう凄いのか?
このあと、一応ときめかせようという努力はあります。
「福子さん、ご結婚は?」
「まだです」
「そう」
会えて嬉しいとか、お綺麗になりましたねとか、そういうトキメキや愛情はござーせん。
他の男のものかどうか、確認するだけ。
立花クソ男疑惑が積み重ねられてゆく。アクシデントとはいえパンツを見せ付け、他の男が唾つけていないか確認する奴ですよ。
ヒロインは小学生女子で精神年齢が停止しており、その相手役はパンチラ発明家ってさ……。
このあと、世良という、一目でわかるチンピラ系の悪役が、立花に絡んできます。
立花の幻灯機を見て、もう俺には勝てないと販売方面に回ったとのこと。
幻灯機がどうすごいのか、ろくすっぽ説明すらない!
繰り返しますが、幕末期にはこの手の機械は日本伝来済み、明治20年代には娯楽として定着しているのですよ。
世良、あきらめろ。
君は所詮、このご時世に根菜切断機というしょぼい発明しかできない男に負けたんだ。そう言いたいです。
中学生のキャンプカレーじゃないんだから
しかしここで、根菜切断機が軍隊に売り込めるかも、という話になって二度びっくり。
軍事転用でおぞましいアイデアが脳裏を駆け巡りましたが、封印しときますね。
根本的な疑問として……軍隊がそんなアホなことに金を使いますか?
軍の食料事情を、中学生がキャンプでカレーを作るものだととらえていたら、考えつきそうな話です。
例えば、軍事的な食料技術だと、ナポレオン戦争での缶詰発明なんかがありますね。
野呂が以前パクってきたコンビーフも、元はイギリス海軍のものでした。
そういうガチな【軍事と発明の歴史】と比較すると、失笑しか湧いてこないのです。
このあと、立花との再会を鈴に大声で語る福子。
だ~か~ら~。大丈夫なのか、本作は!
21歳の娘でこれはないでしょ?
ニヤニヤしながら帰宅し、母親にそっと打ち明けるとか、なんでもない、ウフフ、と笑ってごまかすとか。
なぜ、それができん?
これはむしろ恋愛的なトキメキがないからゆえの無邪気さやろ!
あ、そうだ。咲が咳き込んでいます。結核かな。
過去のダメドラマと比較してみると
本作から駄目な歴史もの要素が濃厚過ぎて、絶望感しかないです。
【まずはストーリーを決めて、それから時代考証をする。そこでプロットホールが出てきたら、手直しする】
これが、あるべき姿ですよね。
ところが、
【まずはストーリーを決めて、それから時代考証をする。そこでプロットホールが出てきても、誤魔化す】
これが、ダメなパターン。
例1:伊能栞を第二次世界大戦中のヨーロッパに渡らせて、無事助かることにしたい。当時、安全なヨーロッパの国なんかない。
でも、伊能様を苦労させたくないからゴリ推ししちゃえ!(『わろてんか』)
例2:やっぱり江戸で再開した篤姫には、スマイルで西郷どんを励ましてもらいたい。史実では島津家を絶対許さないだったみたいだけど、やっぱり女の子はスマイルだよねっ!(『西郷どん』)
例3:やっぱり結婚式といえばスライドショー。当時もとっくに普及していたけれど、まあええやん、押し通して出会いのアイテムにしちゃえ!(本作)
もうダメだ……。
『人生はシネマティック!』を学びなはれや
本日思い出したのは、『硫黄島からの手紙』です。
この作品では、自動車が道ゆくアメリカを思い出しながら、日本の技術力との違いを思い知らされる――渡米経験のある日本人の姿が描かれるわけです。
ナゼ思いだしたかって?
チャップリン映画を、福子のような若い女性でも見ることができる時代。
それなのに、幻灯機やしょうもない根菜切断機でワクワクしている、劇中では日本屈指と思われる発明家の姿を見たからですよ。
こりゃもう、技術で完全に負けているじゃないか!!
ちなみに第二次世界大戦中のイギリスにおける、プロパガンダ映画作りを描いた傑作として、『人生はシネマティック!』があります。
戦時中の映画作りに関しては、『わろてんか』のことは忘れて、これを見るとよいかと思います。
『わろてんか』の底抜け時代考証が酷い――そう嘆いていた時代すら懐かしい。
なぜならそれ以上に『まんぷく』がキツすぎて…………。
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
以下は、まんぷくモデル安藤百福氏の生涯です。
時代考証に関しては、この作品は相当ユルいと思います。
確かに、日中戦争による軍需で日本が世界恐慌以来の不況から脱出できた面はあります。ですので、ドラマ開始時点の昭和13年ぐらいなら、まだギリギリOKでしょう。
しかし、この回の舞台となる昭和16年ともなれば、国家総動員体制が進み、食糧の配給やガソリンの統制が相当厳しくなっている頃(ちなみに、この前年、昭和15年に阿有名な「贅沢は敵だ!」のスローガンが生まれました)、なのに、あんな豪勢なパーティーはないでしょう。
あるとすれば、あの場に高級軍人がいること、つまり軍部へのご接待も兼ねている場合でしょうが、残念ながら軍服を着た人は見かけませんでした。軍人でも連隊長クラスになれば、市長などと同様、その街の名士なわけですから、商工会(今の商工会議所みたいなもん?)主催のパーティーなら来賓として呼ばれておかしくはありません。ましてや、万平さんところも含め、軍部のお偉いさんとのビジネスチャンスを虎視眈々と狙っている人達ばかりなのですから。
ですので、缶詰にいちゃん(と、呼ぶことにします)がいきなりトマトスープ缶を持ってきたのにもたまげました。うわ、コンビーフからグレードアップしとるやん!もしかすると、福子の勤めているホテル自体が、軍から特別な便宜を図ってもらっているのかもしれませんが、勿論そういった描写もありませんでしたね。
確かに、戦時下でもみんないつも戦争の事ばかり考えていたわけではなく、普通に日常を暮していたとは思いますが、こうした、歴史や社会の大きな流れは、描写としてもきちんと個人の生活の中に落とし込んでいくべきと思います。同じ大阪制作でも、「カーネーション」などはそのあたり、ちゃんとしていましたけどね。
このコメント欄を含め、「『半分、青い』の鈴愛が嫌い。だからこの『まんぷく』はまだいい」という趣旨の意見をこの頃しきりに見かけるようになったけれど、いささか筋違いと思う。
この『まんぷく』の人物描写の雑さ加減、時代考証のひどさは致命的。実につまらない。
『半分、青い』の感想は様々あっていいとは思うけど、『まんぷく』自体への評価とは関係ない。
今のままでは『まんぷく』はいただけない。
ー鈴愛を叩いた輩を批判されるのなら、鈴愛と正反対の女性も尊重するのが、差別と一線を置く目線
とのご指摘ですが、「ホンワカ系の福ちゃん」のような女性しか認めない人々が鈴愛を叩いたのであって
時代背景をしっかりと描かなければならない(モデルとなっている人物が歩んできた世界の中に発明の種がある以上)本作が70年前のリアルな戦争の時代を大幅に脚色した世界に登場人物を登場させてはならないと私は思います。
戦争をリアルに体験した人たちが非常に少なくなった今、本来一番知っていなければばならない時代をゆるふわに描くのは許されないと思います。
戦争は平和の延長にあるのではありません。
もちろんドラマはそのテーマにより歴史的事実の取捨選択は行われて当然で、主人公が生きた時代の出来事全てを取り込む必要はありません。
東日本大震災が描かれていて阪神淡路大震災が描かれていないことにクレームを付けるのは作劇に対するいわれなき批判の部類でしょう。
不自然な 脚本・演技に もうまんぷく
らのさんのコメントを拝見して、なんだかすごくスッキリしました(*’ω’*)
感じているもやもやを的確に表現できる人ってすごいなぁ。
自分も武者さんのレビューが大好きなので、最初からのゼロ宣言はとても切ないです。
「わろてんか」は最低の作品だったと自分も思いますが、
「まんぶく」はそこまで酷くない気がします…。
少なくとも「わろてんか」のように見ているだけで憂鬱になる怒鳴り合いがありません。
ドラマに求めるものがリアルのみなのならば、「半分、青い。」もかなり酷かったですよ…?
母子家庭であの生活は無理でしょう…。
大河の感想から、半青、こちらと拝読しています。
今日のお母さんへの立花さん報告は、福ちゃんとしてはトキメキも何もない故と見ていました。年齢差もありそうですし、ちょっとだけ接点あった人とまさか結婚とは、この時代にあまり考えないかなと。
武者さまは史実をあいまいにされることが何よりお嫌いのようですね。とはいえまだ5回ですし、百福氏の長い人生、まず50歳までの紆余曲折を描いて、それからラーメンなのですよね。書物も作家の文体に馴染むまで少し時間がかかるので、最初からゼロ宣言するのはどうかなと思いました。ゼロには何をかけてもゼロ。でもそう言ってしまうと、これだけの熱量をかけて執筆された感想=価値ゼロと、ご自分で言うことになりませんか?
口先だけ「武士の娘」と言いながら女々しい、ホントに腹痛になっちゃう(現代では転換性障害、身体表現性障害などの診断がつきます)鈴さんや、ホンワカ系の福ちゃんなど、女性を前面に出したタイプが鼻につくのかもしれません。でも鈴愛を叩いた輩を批判されるのなら、鈴愛と正反対の女性も尊重するのが、差別と一線を置く目線かと思います。
そしてナレーション、激動の思春期真っただ中の「天才子役」と呼ばれた才女ちゃんですよね。半年でどう成長していくのか、一緒に見守りませんか?
第2次世界大戦、浅間山荘事件、(半青でスルーされたと一部が怒っている)阪神大震災、どう織り込まれていくのでしょうね。私は楽しみです。