かたやキャプテン・アメリカ かたや根菜切断機
立花の話を聞いた福子が、わざとらしいリアクションで咳き込みます。
またか……さすがに我慢ができないので言わせてつかぁさい。
口元が汚い!!!
口にものを入れたまま大声で話すわ、咳き込むわ、おいしーと叫ぶわ。
食品を扱うドラマで毎回毎回、不潔感の漂うシーンって、何を考えているんでしょうか。致命的じゃないですか。
恋愛エピソードとしても、お粗末です。
なんでドジっ子アピールですか?
お互い、声に惹かれあっていたとか、機転を利かせてくれたから覚えていたとか。
そういう長所をアピールできませんか?
これにてデート終了。立花は仕事場に戻ります。って、サボってたの?
缶詰パクリ野郎といい、どいつもこいつもしょうもないな。
ここで加地谷が、発明品が軍に採用される、アメリカと戦争が始まればビジネスチャンスだ、というようなことを言います。
アメリカと開戦間近なのに、根菜切断機を採用する日本……。
アメリカには、キャプテンアメリカがいたのに。
ごめんなさい、フィクションですけどね。
でもさあ……。
同じフィクションでも、かたや根菜切断機で、かたやキャプテン・アメリカですよ。
何が哀しゅうて、そんなしみったれた世界を描かなきゃならなんのよ。
戦争っていうのは戦いですよ。それなのに根菜切断機ぃ?
すんごくご都合主義なんですわ。
親切な軍部のおかげで助かる描写にしたい。
けれども、戦争がらみで流血があるような描写はちょっと……。
そこで根菜切断機!
そういう忖度、バリバリに感じますわ。
キンキンキャピキャピの日米開戦
立花が【世良相手に工場見学を許した】と知って怒る加地谷。
どうやら相談なしに決めたらしい。
しかも世良、野上商会で競合品を扱っているんですと。
どんだけアホだよ。お人好しというより、ただの無能じゃないですか。福子も大馬鹿ですけど、そんな二人が夫婦になって大丈夫なん?
しかも出てきた世良の悪役描写が、時代劇の悪代官レベルのわかりやすさ。
出てきた瞬間わかるレベルです。
確かに朝ドラは、15分間だし、朝ご飯のおともだから難しいものはよくないと言われます。
しかし本作はもう、そういうレベルじゃねえ!
そして本日最大の地雷が来ます。
キンキンキャピキャピのかわいい少女声で、日米開戦のお知らせです。
しかも、誰も負けるとは思っていませんでした、だって……。
いやいやいや。
昨晩出して来た『硫黄島からの手紙』のように、アメリカ留学経験のある人あたりは、これはまずいと知っていましたって!
ちなみに『硫黄島からの手紙』でも印象的だった、バロン西こと西竹一は、来年の大河ドラマ『いだてん』の田畑政治とも関わりがある人物です。
中学生でも負けると思っていた少年がおりました。
彼はのちに名脚本家として活躍します。
笠原和夫です。
◆真珠湾攻撃を「裸の王様」と自覚していた中学生・笠原和夫(仁義なきシリーズの脚本家)
日米が開戦した。でも、僕とつきあって
あらためて番組スタッフに問いたい。
本当に、誰もが負けるとは思っていなかったと断言できますか?
実際は
「負けるかもしれない、なんて言えば自分の身が危なかった」
「日本は【神の国】だというカルト的な洗脳」
「マスコミの偏向報道を信じていた」
ですよね?
それをなんでしょうか。
あまりに爽やか。あまりに無知。
本作は最低のドラマです。当時の日本人をあまりに馬鹿にしておる。
このあと、まるで戦時下の重苦しさもないホテル(ホテルって適性言語ですね)に、立花が乗り込んできます。
「日米が開戦した。でも、僕とつきあっていただけませんか?」
「へっ?」
うぉおおおおおおい!
何が起きた。どういうことなんだ。
あまりの驚愕の告白に「へっ?」という反応しかできませんて!
一体誰得? こんなドラマを誰が見たい?
本作には明らかに奇妙な点がある。
これを指摘しておきます。
朝ドラというのは、伝統的な想定視聴者層として【在宅女性】を想定しているように思われました。
女性の胸キュンポイントをおさえてくる。
女性の苦労を描く。
女性の成功を描く。
そういった、女性共感ポイントが大事であったと思うのですが……。
本作からは、それを感じません。
かといって、ヒロインの描き方に戦前女性の理想像が反映されているかというと、そうとも思えません。
福子みたいな21歳、戦前では嫁にも出せない残念な子と思われても仕方ないのではないかと思えます。
私が想定した、本作の想定視聴者は以下の特徴を持ちます。
・エスノセントリズム、歴史に鈍感
・脳内ハッピー戦前に憧れているが、戦前の歴史に疎い
・女性は、いくつになってもふわーんゆるーん幼稚な子が大好き
・女性に対して気遣いゼロでも、ナゼかモテモテの展開に憧れる
どうしても私の脳内にチラついてしまう人物がいます。
出張先でのキャバクラ費用を会社経費で落とそうとした元上司っすわ……。
そのとき心の底から、
「女を口説く、あるいは女性と遊ぶことにすら、自分の金を使わないのか!」
と驚いたものですが、会社備品をちょろまかしている野呂、会社の備品を使って女にアピールしていた立花を見ていると、あの上司を思い出してしまうんですよ。
元上司の口癖はこうです。
「昔の女はもっとおとなしかった!」
「俺のおふくろとは違う!」
ったく、だから何なんだよ、キャバクラどちゃケチ野郎が。
要は、脳内の妄想戦前女と比較して、部下を叱り飛ばしていたんですね。
本作がコケる!
と確信を持って言えるのは、そんなバカはそうそういねえから(いて欲しくねぇから)!という願望でもあります。
さて、今日この原稿を書きながら流していた曲があります。
フォートマイナーの『ケンジ』です。
この曲は、日系人として第二次世界大戦時に強制収容所に収容された祖先の苦労を、マイク・シノダが歌い上げています。
「日米が開戦した。でも、僕とつきあっていただけませんか?」
そう能天気に言う本作。
時代考証ミスではない、意図的なものを感じさせるほど。
同じ頃、アメリカでマイク・シノダの祖先たちは絶望していました。
真珠湾攻撃の後。
ドアマットの新聞を見た瞬間、ケンジは世界が暗闇に覆われたような、絶望に突き落とされました――。
日本だって、真珠湾で死んでいった若者の命に涙する人はおりました――。
本作は、第二次世界大戦なんか、そこまで悪いものではないと描きたい。
誤魔化したい。
そんな意図を感じます。
戦時中の暗い世相を主役夫妻のラブコメで覆い隠そうという、そんな意図が見えます。
本作について考えていて思い出した映画が、こちらです。
本作の姿勢は、この映画に出てきたホロコースト否定論者のやり口を彷彿とさせます。
これこそが、本作が世界的に見ても恥さらしであると感じる理由です。
今年のノーベル平和賞のニュースが流れました。
◆BBCニュース – 強姦被害者支援の活動家2人にノーベル平和賞
彼らのように、戦争の中にあった苦しみの声を拾う者は、英雄として尊敬される。
それが2018年です。
ところが、NHKは大河ドラマと朝ドラで、その流れに逆行しようとしています。
まさに、ここが本作のゆるしがたい点です。
本作は出来が悪いだけではない。
恥そのものです。
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
※U-NEXTでスグ見れる!
『まんぷく』や『半分、青い。』全話ほか多数の朝ドラ・大河作品を視聴できます。
スマホでもOKですよ。
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
以下は、まんぷくモデル安藤百福氏の生涯です。
私も、このドラマは好きになれません。
おかしいな、と思う所は色々ありますが、なにより主人公の演技が大袈裟すぎるのが嫌です。他の役者さん達は普通に芝居をしてるのに、浮いてるよ…って思います。福子が喋る時だけ、テレビから出る音がうるさい…。今日も、喫茶店内で他のお客さんがいるのに「萬平さんが憲兵に連れて行かれたーーー!!」って叫んでいるし。大声で話せる話題じゃないのでは??
オープニングも含めて、髪の毛をかくのは止めてほしい。不潔に見えるので。
緊迫感も高揚感もない開戦の日でしたね。
終わりの見えない日中戦争や、日毎に強まる諸外国の対日圧力。また、国家総動員体制による統制の締め付け、そんなものによる鬱積があの日の朝、一気に吹き飛んだというのが、当時書かれた文章から伺えますが、本作はそうしたものを全てすっ飛ばしてますから描きようがありませんねw
オリンピックの金メダルの号外でもみんなもっと盛り上がるだろう!と思わせる呑気にヘラヘラしていた群衆の表情がそのままこのドラマの基調になっているのでは、と思います。
でも、「朝ドラはそれでいい」と思っていらっしゃる方が一定数いる以上、そこそこ人気作にはなると思います。ただ、今まで、「朝から暗い」とか「重い」という批判を浴びながらも、戦争に対してはある程度真摯に向き合ってきたと思うNHKの看板番組が、今回、その姿勢を放棄してしまった。もっと言えば、「そんな辛気臭い話はサクサク済ませて、もっとみんなアハハウフフできるドラマが見たい!」と仰る視聴者様に忖度してしまった。その代償は相当に重たいものになるのではないでしょうか。
あと、カンヌで安藤サクラさんの演技を絶賛していたケイト・ブランシェットがこのドラマ観たら一体何て言うのかなあ・・・・
考証を一切無視しても、咲の結婚式で福子が感動的なスピーチをするまでは、まだ話の流れが感じられなくも無かったですが、初週でいきなり三年スキップはいかにも唐突な感じを受けました
週の引きをお付き合い宣言にしたいという目算優先でしょうが、他に描くべき伏線とか無いんかな……
キャラの芯が未だに見えないまま、ぶりっ子アピールと意外に仕事もできるんですよ?アピールを繰り返す福子共々、落とし所が何処なのか、何を描きたいのか、悪い意味で先が見えないドラマです
日系人が強制収容所に入れられた話が紹介されていた本に
こんな一文が続いていました。
当時日系人は強制収容所に入れられ差別されたが
同時期にアメリカにいたドイツ人はそのようなことはされなかった。
なぜなら彼らは白人だから。…
こんな感じで 多くの人が差別しあっていた時代に
台湾人夫と日本人妻が愛し合ってたよ、と描く方が
より少女漫画的で 良かったのでは?と思います。
(強制収容所など 当時のアメリカでの日系人の扱いについては
DVD「442日系部隊 アメリカ史上最強の陸軍」がわかりやすかったです)
台湾人設定を排除したのは
・台湾に妻がいた(重婚だった)こと
・戦後 中国(戦勝国)の籍を取ることで 優遇処置を受けたこと
この辺も消したかったのかな…と思いましたが
それこそ ドラマなのだから 色々描きようがあったんじゃないですかね。
「あれをそんなふうに描いたのか!」を見たかったかなあ。
とりあえず
福子が髪を触るクセは直してほしい所です
(ぶりっ子過ぎて いつもちょっと ウッと思います)
オープニング、指摘していただいて胸のすく思いです。教育番組のタイトル映像として15秒くらいにまとまってたらアリだったかも。
穿った意見であることを承知で言わせてもらえれば、歌詞も主体性が感じられず常に受け身というか…
想定視聴者さん達はハセヒロを萌え消費して「新しい朝ドラたのしいね!」って言ってるご様子だし、昭和の少女マンガ大好きなのでたぶん馬の耳に念仏かなと思います。マーケティング大成功って感じですが、民放じゃないのにその評価のされ方どうなの?と思います。
台湾描写なかったの本当に残念でした…
僕もアメリカと日本が戦争するけど付き合ってという思考回路はいかがなもかと ホテル適性言語は敵性言語ですね宿泊施設とでも言い換えるのですか
想定視聴者に思いっきり当てはまってしまいました…(;´・ω・)
自分のような無知な愚か者が、朝ドラをダメにしてしまうのですね…。
「まんぷく」を面白いと思ってしまってごめんなさい……。
武者さんのレビューを見ることと、
歴史の勉強に来ています。
参考資料の動画に涙が出ました。
このサイトの、朝ドラ以外のレビューも見るようになりました。
ニュースよりも、世界が見えてきます。
ありがとうございます。
朝は気分悪くなりたくないですね、
まんぷくは一週間で、
見る気を失いました。
べっぴんさんはオープニング美しい。
これを見て、半年過ごします。
武者さんの戦いを心から応援します。
SNS上で絶賛されていて自分の感想とあまりにも違い不思議に思っていましたので、レビューを拝見して、あぁまともな感覚で良かったのかも、とホッとしています。
本作は誰かに忖度しているのでしょうかね…?
戦争を知らない現代の人々に、
戦前、お国のために、の時代は楽しかった、呑気だった、今と変わらなかった、と謝った情報を伝える意図とは…。
日本の未来が、本当に恐ろしくなってきました。
相変わらずのお怒りっぷりですね。
母子家庭の描き方、仕事への向き合い方、家事へのハードルの低さ、気になるんですね。
何とか1週間見ましたが…
この作品って、本当にエスノセントリズムの作品なんかな?と思っています(皮肉を込めて、です。最初に断っておきます)。
武者さんと読者の皆さんには釈迦に説法ですが、本作は時代考証が雑なうえに(根菜切断機)、キャラクターの言動が絵に描いたようなテンプレで(大げさなドジっ子ぶり)合理性にかけており(金銭感覚の欠如)、言動不一致もあり(コスプレ武士、コスプレ貧乏…)などなど、ドラマの脚本の質の点で、台湾隠しを抜きにしてもかなりの低レベルです。
本作について、台湾にルーツを持ち、安藤百福を「郷里の英雄」として尊敬する人々が、設定を純日本人にされたことで失望するのは当然でしょう。では、「台湾何するものぞ」の精神で日本エスノセントリズム過剰気味の方にとって、本作はどう映るのでしょうか。
エスノセントリズム全開で作品をつくるとすると、本作は、カップラーメンをネタにして日本を実態以上にヨイショする、一種のプロパガンダ作品でなければなりません(そういう動機を前提とした場合の話です、念のため)。プロパガンダというのは、大衆を引き込むのが目的ですから、「ぱっと見、違和感がない」作風であることが必須条件です。例えば、戦後70年がたった今、ナチスの党大会やモンペ服の女性が「お国のために!」「お国のために!」的な当時の映像が、流れたところで、一般大衆は感動するでしょうか。断じて、「否」です。プロパガンダというものは、発注元(時の権力者など)が大衆を、自身が望む方向に自発的に誘導するためのツールであり、大衆が自発的に作品を見て、発信者の政治的主張に(意図せずして/深層心理のレベルで)迎合して初めて、その目的を達成するものです。ですから、優良なプロパガンダ作品は、その核心である政治的意図を除けば面白くなければならず、作品としての質も高くなければなりません。
事前講評で武者さんは
『たとえドラマが面白く盛り上がったとしても、根底にある価値観が0で変わりなく、私の中では点数が確定してしまいました。』
とおっしゃっています。武者さんの言を借りれば、プロパガンダ作品は、「ドラマが面白く盛り上が」ることが必須条件です。仮に、発注元が「日本をヨイショするのじゃああああああ!!!」と言って現場に介入、ドラマの流れを無視して日本ヨイショネタてんこ盛りの、視聴者目線から見て「面白くもなく、全く盛り上がらない」作品になってしまったら、それはプロパガンダ作品としてすら落第です。視聴者が「面白くねーな、次の作品を待とう」とチャンネルを変えてしまえばそもそも制作者の意図が視聴者届きませんし、あまりに露骨だとネガティブキャンペーンが沸き起こって本末転倒、逆効果です。
先に挙げた40年代前半のプロパガンダは、今の視聴者からは「プロパガンダでございます!」と触れ回っているようなもので、押しつけがましいことこの上ない。また、このような映像が流れるのは大抵、「戦争によって多くの犠牲が出て…」といった文脈なので、こんな動画がプロパガンダとして通用するはずがありません(本作の日米開戦の場面では、この点で盛大にやらかしてます)。
たとえば、本作が「あまちゃん」のような、社会現象を巻き起こすほどの「オモシロ作品」だったらどうでしょう。あるいは、「半分、青い」や「ひよっこ」のような、緻密な脚本であったらどうなったでしょう。「マッサン」のウイスキーのように、カップラーメンの創作への苦悩を丁寧に描いていたらどうでしょう。これらを全て完璧にクリアして、時代考証や脚本の質やら、本作が現時点で抱えている問題点も文句を言われないレベルまでに高めて、そのうえで台湾の「た」の字も出さなかったらどうでしょう(その時点で、時代考証がメチャクチャになりそうですが…)。武者さんならば、「価値観が0なので、0×100で0点です!」と断言されるでしょうが、世間では「朝ドラ史上の傑作!」と大絶賛されることでしょう。台湾の人々の不満や、武者さんをはじめとする「エスノセントリズム警鐘派」を圧倒して、カップヌードルをネタにしたエスノセントリズムが、極めて巧妙に達成されるでしょう。本物のプロパガンダとは、こういうものです。
結論として、本作が現状のまま推移すると、「日本をヨイショしようとしたけれど技術な体力がついてゆかず、全ての層にソッポを向かれて盛大にコケた作品」という評価になりそうです。要するに、「エスノセントリズムもどき」「エスノセントリズム崩れ」。
日本をヨイショする意図があるか否かについては、「疑わしきは被告人の利益に」ということで、私は意見をもうしばらく保留したいと思いますが、意図せずして台湾の人々および世界のエスノセントリズム警鐘派を敵に回しているのならば益々タチが悪い。武者さんの懸念はもっともです。
いやー、キレッキレのコメント、ぶった切り、いや跡形もなく粉砕、ありがとうございます。一々共感してスカッとします。間違い無く史上最低の駄作決定ですな。
名曲、晴れたらいいね以来のドリカム主題歌、同じ様に行進曲風で、きっと朝のスタートを元気にきれるようにとの、吉田美和の願いが込められているのでしょう。少しトリッキーな旋律ですが、聞き飽きない気がします。しかし、初日にそのOP映像見てぶっ飛びましたわ。この方何ふざけてるの?不自然なだけで何の面白みも無い!えっ、これ毎日見させられる訳?半年間。
正面切った批判にはそれなりの知識、根拠、論理が、また何よりも反感を怖れない勇気が必要です。ぶれずに筋を通す姿勢は気持ちが良いですわ。応援してます。これはTVに向かって突っ込みながら楽しむ朝ドラと割り切りました。