まんぷく 7話 感想あらすじ視聴率(10/8)押せ押せクソバイスに辟易

職場の出勤前に再び告白

このあと、鈴がお見合い写真を受け取る場面となりました。

いや、あのですね。ここで必要なシーンってそこ?
福子が、もっとしんみり、それこそ布団の中で立花のことを考えてしまうとか。

本作には、それが期待できない。心の交流がない。二人双方が思い合っている描写がほとんど出てこない……出てきても、お互い不自然な顔をしているだけ。

そして立花、福子の勤務先にもう一度やってきます。

「付き合ってください。結婚を前提に」

いくら長谷川博己さんでも、コートのポケットに手を突っ込んだまま。
しかも、他の同僚が見ている前、気持ち悪いほどギリギリの顔で告白って、はっきりいってどうかと思います。ヤバイやつやで。しかし……。

「わかりました。そーですね」

ま、福子ちゃんは攻略難易度ゼロキャラだもんね。こうなるよね。
押せ押せクソバイスで正解でしたね……って、なんじゃこりゃあぁあああああああああ!!

 

本作は「戦略」の時点で詰んでいた

「戦略」と「戦術」という軍事用語があります。

「戦略」というのは、大局的・長期的視点に立ったもの。
「戦術」というのは、用兵術や実行する上でのスキルのことです。

「大坂の陣」を例にとってみれば「戦略」は豊臣家の方針となります。要は、上層部が何を考えていたか?ということ。
一方の「戦術」は、真田信繁はじめとする将兵の奮戦ですね。

戦いの勝敗においては、「戦略」のミスを「戦術」で補うことは不可能とされています。

「大坂の陣」では、徳川側の戦術にはお粗末さが目立ちました。
なんせ関ヶ原の戦いから15年間ものブランクがあり、将兵たちの経験不足から戦術はボロボロ、同士討ちすら発生していたほどです。

ひるがえって豊臣側の戦術は、真田信繁や毛利勝永はじめ、光るものがありまして。各所で善戦、結果を出しました。

ナゼこんな歴史オタク的な話を持ちだしたか?
それは、本作の失敗について分析するためです。

俳優の熱演や、映像の美麗さ、こういった良さは、いわば「戦術」です。奮闘しております。では勝利なのか?と言ったらそうじゃない。

「戦略」です。
本作の「戦略」ミスについては、ほぼ最初から指摘してきました。

・台湾ルーツ隠蔽というエスノセントリズムによる、プロットに生じた歪み
・本作が想定する朝ドラ視聴者層と、実際の視聴者層にあるズレ

こうした負の選択により、本作はズルズルと負け戦に突入することでしょう。

そして本作の問題点を考えるのであれば、この「戦略」ミス分析は避けて通れません。

女優の人選ミスといった「戦術」までの分析はあるようですが、さらに上を見なければならない。
そう痛感しております。

 

来年の大河まで心配になってきた

「戦略」が歪んだ戦場で健闘する将兵ほど、悲しいものはない……本作は役者が熱演すればするほど、見ていて痛々しさを感じてします。

ここ数年、露骨な「戦略」ミスにより、大敗北が開始前からわかった作品は以下の通りです。

2015年『花燃ゆ』
2018年『西郷どん』(※2015年末の時点で、同じ轍を踏むならば2018年大河も絶望的だと予感していました)
2018年下半期『まんぷく』

本作については、もう諦めました。
むしろ心配になってきたのが、来年大河の『いだてん』です。

スポーツ、とりわけ五輪と政治は関わりが強いものです。

嘉納治五郎も尽力した幻の東京五輪が流れてしまったのは、迫っていた戦争の足音のためでした(以下に詳細記事)。

幻の東京五輪(1940年東京オリンピック)はナゼ開催されなかった?広がる戦火と万博&冬季五輪

田畑政治が東京五輪開催のためにさんざん苦労したのは、太平洋戦争で国際社会から日本の信頼性が失われ、回復の途上であったからです。

田畑政治(たばたまさじ)85年の生涯とは?いだてん阿部サダヲが演じるもう一人の主役

ここをすっ飛ばして「太平洋戦争、割と楽しかったよ」と本作のようにやられてしまったら、戦略の決定的な失点で、来年の大河まで崩壊しかねません……。
大丈夫なのか。不安になってきました。

そういえば来年の『いだてん』に登場する、リアル「武士の息子(古今亭志ん生)」を感じてください。
本作の「武家の娘」がいかにユルいかわかります。

武家の指導は怖いのだ。

古今亭志ん生(ここんていしんしょう/美濃部孝蔵)83年のパンクな生涯

【関連記事】大河『いだてん』キャスト

結核は、現在でも深刻な感染症です

悪いことばかりでもありません。
今日10月8日からはアニメ『ゴールデンカムイ』アニメ2期がスタートします。

 

やっとカッコイイ、猿叫して自顕流を使う、まっとうな薩摩隼人がテレビに出てくる! キエエエエエエ!
大河ドラマ?
知らない話でごわすな。

いやちがう、そうじゃありません。

結核描写ひとつにしても、ゴールデンカムイの方がリアルで迫ってきます。

ちょっとネタバレになりますが、本作主役の杉元は、一家が結核感染で全滅しているんです。
それで、故郷にいられなくなっております。

杉元時代より、時代がくだり、ペニシリンが出てきているとはいえ。

結核ナメんなーーーー! 2018年現在だって、過去の病気じゃないんだー! どう見ても結核ぽいのに、「元気だから病院行かなくてもいい」ってそういう問題じゃなーい!!

政府広報オンライン

現代ものでは、病院や災害、障害を出すだけでナメているだの、侮辱だの、さんざんボコボコにされますけど。
違うんです。
NHK朝ドラは、ダメな時代もののほうが医療はじめ、ありとあらゆる考証ミスと侮辱が山盛りなんだってば!

 

「王道」って意味わかっておりますか?

こんなニュースがありました。

『半分、青い。』と比較して新朝ドラ『まんぷく』が好評 視聴者が朝ドラに求めるものとは

嫌味に突っ込ませていただきます。

「王道」って言葉の意味、ご存じですか?
「王道」っていうのは、古代の伝説的名君である尭舜の徳治のことですな。儒教的なお話です。

最近儒教知識が危うくなっていることを、なんとなく感じてはおりましたが。儒教由来の言葉も誤用が目立ちますね。

本作は、台湾ルーツ隠蔽という禁じ手の時点で「王道」の反対である「覇道」に近いですね。
そういう馬鹿げた卑劣な簒奪行為こそ、徳治からはほど遠いものですから。
英語Royal roadの和訳という解釈もできます。

しかしこの場合、楽をした手抜きの道って意味。

それならば本作にはふさわしいと言えますが、それは視聴者が喜んで褒めるべきことではないと思います。

※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください

U-NEXTでスグ見れる!
『まんぷく』や『半分、青い。』全話ほか多数の朝ドラ・大河作品を視聴できます。
スマホでもOKですよ。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

以下は、まんぷくモデル安藤百福氏の生涯です。

まんぷくモデル安藤百福の生涯96年をスッキリ解説! 日清食品の誕生物語

ラーメンの歴史は明治維新後にスタート~日本の歴史と歩み、世界の食となるまで

 

3 Comments

あかさたな

「わろてんか」「まんぷく」が
冷静にみてもダメな朝ドラなのは
明らかなのに、えらくヨイショされて
いるんですよね。
制作側が無理矢理テコ入れしてるのかなと感じてます。

いだてん、クドカン脚本でしたっけ?
それなら大丈夫かなとか思って
いたんですが・・・甘いかな(笑)

匿名

頭カラッポにして観てもキツイゆるさですね……

Susuka

「王道」と「覇道」について、思い出したエピソード。
福岡市に「筥崎宮」という名前の神社があります。元寇の折、時の亀山上皇が「敵国降伏」を祈願し、この四字を自ら記した勅額を奉納しています。
この「敵国降伏」についてですが、一般には「敵国(モンゴル)を破り、降伏させる」という願いであると考えられています。しかし、仮にそのような意図で額を書いたのであれば、漢文調では「敵国降伏」ではなく「降伏敵国」となっているはずです。
明治期になってその意図が分かっており、この勅額の真意は「敵国を降伏させる」のではなく、「我が国の徳治に、敵国が自ら降伏する」ことを望んだものです。つまりこの場合でも、力でねじ伏せる「覇道」ではなく、徳による「王道」で平和裏に事が治まるのを願っていた、というわけですね。
が、それこそ本作で現在扱われている日米戦争の時点では、米国相手に破れかぶれで開戦して、勅額を「駆逐米英」の「覇道」精神で誤読してしまいました。まさか、昭和以降の日本では「王道」が完全に廃れたわけではないと思いたいですが、本作の台湾無視は確かに「覇道」モノですね。

日本ヨイショの動機から「台湾隠し」の「覇道」路線に走るのは、必然でも何でもないんですよ。台湾要素をちゃんと書いて、「王道」路線で日本を(台湾と一緒に)持ち上げることもできるわけです。台湾出身の実業家が日本で発明したカップラーメンが、世界的なヒット商品になった。これでいいじゃないですか。これを無理やり「生粋の日本人による発明」扱いにする必然性が、どこにあるのでしょうか。あるいは、「マッサン」はスコットランドべったりの情けないドラマだった、とでもいうのでしょうか。
本作の制作者は、「台湾隠し→日本ヨイショ」と単純な因果関係を結んでいるあたりで、とんでもない「戦略」ミスをしているといわざるを得ません。

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