本作の放送時。
あさが来たモデルとなった広岡浅子と関係の深い大同生命で、特設サイトが設置されました。
【参考サイト:大同生命】
これはよい兆候です。
時に作品の質にも影響する要素だと思います。
関西の朝ドラ『カーネーション』は名作として評価されています。
『マッサン』は、北海道なのに猪肉を出すという初歩的考証ミスがあったにも関わらず、メインテーマのウイスキー関連はきっちりと描写しました。
ニッカとサントリーはそれぞれの創業者を演じた俳優を広告に起用、商品不足になるほどウイスキーの売り上げを伸ばしました。
共通するのは、厳しいチェック体制なのです。
前者はコシノ三姉妹、後者はニッカという厳しい目がありました。
今作も大企業が目を光らせています。
よい意味でプレッシャーとなり、ともかく人物を取り上げればエエという態度だった『わろてんか』や、日清公式で明かされながら安藤百福の台湾ルーツを削除した『まんぷく』のように、デタラメが描かれにくくなります。
ではレビューへ参りましょう。
第2話です。
なんと清々しい一言よ
前回ラストは許嫁同士の年齢差に騒然となりました。
そこで2話ではナレーションが
「このくらいの年の差は当時珍しいことではなかったのです」
とすかさずフォロー。よい仕事をしています。
この一言、なんと清々しいことでしょう。
政略結婚や年齢差のある婚約を「今の価値観だとドン引きされちゃう」と逃げまくり、結婚前にわざわざ暴れ馬を止めるヒロインと相手が出会うような。
アメリカだと好きな相手と結婚できるのにぃ、と言い出すような。
そういうくだらない創作を入れる、昨今のダメ大河に見習って欲しいところですな!
そしてOPへ。
あさと新次郎の出会いは最悪でした。
古典的なお約束「何アイツ、サイテー!!」パターンですね。強気なヒロインにはよくあります。
あさは新次郎を最低と思いますが、新次郎の父・正吉も、あさのじゃじゃ馬ぶりに渋い顔。
どこか他人事の新次郎に「あのじゃじゃ馬の手綱を取れるのか」と正吉が聞くと、あっさり新次郎は無理だと認めます。
ドコか飄々としてヌケた新次郎の台詞周りから、彼の性格がちらりとうかがえます。
型破りなあさをおもしろがり、認める男性
あさは、父にそろばんや学問を習いたいと言い出してまた怒られます。
そこで聞こえてきたのが笑い声。
あさの祖父・忠政です。
忠政は、息子を評して「番頭のようによう働く」と言われているぞと指摘。
江戸時代の商家主人はどこかのんびりと構えたお坊ちゃまが多く、実力を発揮しなければ出世できないしっかり者の番頭に経理は任せることが多かったようです。
祖父・忠政が典型的な大店の旦那、父・忠興はその反対のタイプですね。
このマイペースな忠政は、型破りな孫娘あさが大好きなようです。
隠居の身ながら、ふらっと息子のところに来ては孫娘を存分に甘やかす。
今でもありそうな孫バカ祖父です。孫と祖父は木登りをしています。
息子に商売を任せ、今は趣味に生きるマイペースな忠政。
あさ&祖父の仲の良さを見ていると、この祖父のキャラクターは新次郎から逆算して創作したのではないかと思いました。
当時の女性としては型破りなあさをおもしろがり、認める男性。
新次郎のひょうひょうとした部分は忠政と違って、現時点であさの目からは見えません。視聴者にだけ見えます。
今は反発しているあさだけど、将来は祖父に似たタイプの新次郎とこんなふうに楽しく生きていくのではないでしょうか。
出会いは最悪――でも相性の良さのヒントをさりげなく残しておくのも、少女漫画的なテクニックかもしれませんね。
祖父の目から見てヒロインは男勝りだった
楽しそうな孫と祖父の場面から切り替わると、忠興は忠政があさを男として育てたらどうかと提案したことを回想します。
幼女にそこまで思い入れのある祖父とは何なのか?
と思いそうになりますが、押しつけがまさはなく、それでいてさりげない。
「祖父の目から見てヒロインは男勝りだった」と予言のような効果が出ています。
ヒロインがただ者じゃない予兆というのは、ヒロインの産声で戦が止むとか、「この子はスゴイことをするんですぅ〜」みたいな説明セリフでなくとも、ちゃんと表現できるんですね。
ここで忠興の仕事熱心さを紹介するとともに、どこか不穏なBGMが流れます。
京都一の商人である忠興すら世間の雲行きにおかしさを感じていた、幕府や大名が返すあてのない借金をしてくることに不安を覚えていたと説明されます。
幕藩体制崩壊の始まりでした。
幕府の崩壊は黒船から始まったワケじゃない
幕府の崩壊は、何も黒船から始まるわけではありません。
・ロシアの進出という北からの圧力
・フェートン号事件に代表される外国船来港
・将軍権威の低下とともに存在感を増す天皇や朝廷
・農業技術の進歩
・貨幣経済の活発化
19世紀に入ったころから、幕藩体制には制度疲労とも言える亀裂が入りつつありました。
黒船来航は、その亀裂の入った体制に回復できないほどの大打撃を与えたのです。
「こんな時代、そう長うは続かへんちゃうやろか……」
忠興のこの台詞、実に秀逸です。
脳天気にお菓子をつまみ食いするあさの顔と交互に挟まれるのもまた、よいのです。
ヒロインたちの世界の、足下のほうから気づかないうちに迫ってくる時代の変化。
「英雄ではない目線で描く歴史」
というのはこういうことです。
英雄におにぎりを握って食わせるとか、キャバクラで遊び惚ける維新三傑とは、断じて違います。
残り2分を切ったところで、12歳になったあさと14歳のはつは、父親の大阪行きについて行くように言われます。
あさの許嫁は出てきても、はつは引っ張ります。
あさより男前に敏感なはつの許嫁はどんな人なのか?
視聴者の興味をうまく引き寄せています。
なお、モデルとなった広岡浅子と五代友厚の史実をご覧になりたい方は以下の記事をご参照ください。
お二人とも、ドラマに負けず劣らずの波乱万丈な人生です!
また、各話におけるレビューも記事末に追記して参りますのでよろしければ併せてお楽しみください。
※大河ドラマも朝ドラもU-NEXTならスグ見れる!
スマホでもOKです。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『あさが来た感想』からお選びください
【参考】
連続テレビ小説 あさが来た 完全版 ブルーレイBOX1 [Blu-ray]
あさが来たのレビューが読めて幸せ。今日は電車の中で音を消して字幕で放送を見ました。