わろてんか32話あらすじ感想(11/7)内場勝則さんでグッと!

時は明治。
日本一の「ゲラ(笑い上戸)」娘ことヒロインのてんは家を捨て、船場の米屋・北村屋の長男藤吉のもとへと嫁ごうとするものの、藤吉の実家で姑の啄子からは認められません。
そうこうしているうちに、藤吉が詐欺に引っかかり北村屋は倒産。店も家を失います。

てん、藤吉、啄子が引っ越した先の長屋は、売れない芸人が集まる通称「芸人長屋」でした。
金が底を尽きそうだというのに、てんと藤吉は「寄席を探したい」と言い出します。

そして偶然目に入ったのが、天満の裏の裏、さびれて閉鎖された寄席小屋なのでした。

 

小屋の前に座っている奇妙な男「万年亀井」

小屋の前には、なんだか奇妙な男性がいます。
彼に小屋を譲って欲しいと頼む二人ですが、「若くて金もなさそうやし」とズバリ見透かされます。

「でも! やる気だけは誰にも負けへんつもりです!」
てんは笑顔でこう言います。
うーん、スマイルだけで押し通す笑顔ブルドーザーにもほどがあるやろ……。

芸人仲間に話をすると、あの男は通称「万年亀井」というそうな。何年も前に潰れた寄席の小屋主だそうです。

なんだかあれはあきまへんで、やめとけ、と言われる二人でしたが、藤吉は日参して亀井に頼み込みます。
頼み込む、って言っても隣で饅頭食べるとかそんなんですが。

啄子はこのままでは金がなくなる、と一人まっとうな感覚で焦りを見せます。
一方、てんはアハハと大笑い。
「草でお餅作るなんて美味しそうやわ~」
……ここまで来ると、笑い上戸とかいつも笑顔とかそんなチャチなもんではなく、何か重大な問題がある人物に思えてきます。

 

アサリを巻き込み野菜の行商を始める啄子

啄子は馬鹿息子夫婦に見切りをつけ、アサリを巻き込みつつ行商をして家計を助けようとします。

啄子とアサリのやりとりはそこそこ面白いです。鈴木京香さん一人のパワーでそうなっているのではない、と思いたいところ。

しつこいようですが、この絶妙な言い回しと笑顔は、史実の吉本せいにふさわしいものです。
なぜに主役ではなく、ほぼオリキャラの啄子がせいに近いのやら……。

しかし、啄子はぎっくり腰を再発してしまいます。
しゃあない、こうなったら俺が働くかあ、と言い出す藤吉。そしててん。

藤吉は野菜の行商。
てんは、昼間に一膳飯屋、夜はお針子をして稼ぎます。

働くのはよい兆候なのですが、もし啄子が倒れていなければ、イチャイチャしながら寄席小屋探しを続行する気だったんですかね……。
昨日のレビューで私は「行商でもしてたら偶然いい寄席小屋を見つける方が自然では?」と書いたのですが、半ばその通りになっていて驚きました。
最初からやっぱりそうすればよかったんじゃないですかね。

あと細かいことですが、てんはお客様の前で「働かせてくれてありがとう!」とか大声で言わない方がいいと思いますよ。バックヤードでやりましょう。

まあ、歌子も万丈目に怒鳴り散らしていますし、そういう店かもしれませんが……。

 

「席主をやりたいような奴は親不孝や」

藤吉が亀井の横にいると、金持ちそうな紳士と横を通るリリコを見かけます。

「街の中で偶然リリコを見かける」
このシチュエーション自体はいいと思います。

問題は、寂れていて誰も通らない所、芸人たちが「あんな所誰も行かへん」みたいなことを言っていた町外れ。しかも何年も前に閉鎖された寄席小屋の前を、何故偶然リリコは通るのか?ということ。

藤吉が街の中で野菜を売り歩いている最中に、偶然、雑踏の中でリリコが通りかかる方が相当に自然だと思うのですが。

ヒロインが暴漢に襲われていたら婚約者が通る。
外米で困っていたらインド人が通る……そして今回のこれ。
偶然の通過も回数を絞っていただかないと、なんだか見ている方が心苦しくなってしまいます。

さて、亀井は藤吉にこう言います。
「席主をやりたいような奴は親不孝や」

ここで藤吉は苦笑して反論するのですが、亀井の言う通りだと思います。

この亀井の説得に、てんと藤吉夫妻はいろいろなものを渡しているようです。
てんは端布で作った着物を渡したりしています。

こういう思いやりが、後に芸人を上手に操る商才へと繋がる伏線かもしれませんが、なにせ今までがあまりに鈍臭くて。
ただ、てんが昼も夜も働いていることを気遣う亀井の優しさがプライスレスでした。

 

夜にリリコの元へ向かえばトラブるに決まってるやろ!

藤吉は、夜地図を見て考えこんでいます。めぼしい寄席小屋の地図のようです。

この地図をもっと早めに見せてほしかったですね。
せめて昨日の「客寄せに片っ端から売れと持ちかける」前であれば視聴者も納得しやすかったハズです。

藤吉は、横でつくろいものをしながら居眠りしてしまったてんに、そっとショールのようなものを掛けます。
愛おしそうにてんの寝顔を見る藤吉。
愛情がある……だろうか? 本当に相手を気遣うなら、ここは起こして布団に連れて行きましょう。あんな薄布、さして役に立ちませんよ! ついでに消灯もしっかりと。そういうところだぞ!(いや、そういう感性が鈍くてダメ人間を描いているからこれでOKということ?)

藤吉は居眠りをしてるてんを見届けると、「今晩来てね」と行っていたリリコの元へ向かいます。

はい!
てんに布を掛けた気遣いがプラス5点なら、この行動でマイナス10000点です!

リリコはどうやら金持ちパトロンから何か持ちかけられているらしく、藤吉に泣きつきます。

これがキッカケでてんと何か揉めたら、どうせ藤吉は「リリコは家族みたいなもんや」「妹や」と言い訳するのでしょう。
そしてこんな大変そうなリリコの状況に「なんだか揉め事になりそう~」と、まるで喜ぶような“ゲスの極みナレ”が重ねられ、私の心は朝から荒んでしまうのでした。

 

今回のマトメ

本作を『吉本関係者はどう思って見ているのか』と最近、不安になっておりました。

そして、吉本新喜劇のエース・内場勝則さん演じる亀井が出てくるだけで、ドラマがグッと面白くなるのを見て、吉本マジックを思い知りました。

しかしこれは決して手放しで褒められたものではないかもしれません。
俳優を本業とする方が“お笑い”を演じると、いまいちイケてない芸人になってしまう――それが明らかになってしまい、非常に辛いところです。

吉本せいは、後に大衆のお笑いを落語から漫才(最初は万歳)へと革新させる一手を打ちます。
言わば漫才革命を起こすワケで、こうした重要な役どころは本業の芸人さんが請け負うべきだったのではないでしょうか。

舞台上での“話の間”や“テンポ”などは、一朝一夕に身につくものではなく、それこそ大阪で培われてきた伝統であり、またドラマでも笑いどころとなるはずです。

今日見て思ったことはこれです。
「このドラマが嫌いでも、吉本のことは嫌いにならないでください!!」
内場さんの演技を見ると、しみじみとそう感じてしまいました。

ただ、寄席を開くようになれば、新しい役者さんも追加されるようで。

わろてんかに新キャスト、11月から新章 | Lmaga.jp

関西弁ネイティブ、吉本関係者が増えればもっとよくなると思います。
それに期待したいです。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

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