「おおさかてーだいそつー♪」
「赤ちゃんできたら大変よぉ〜〜」
と、ベタ甘い口調で神部に言うあたりも気持ち悪いです。
赤ちゃんとはっきり言わなくとも、「家族が増えたら」とか言いようがあるでしょ。
「子作りしろ、二人目作れ」と迫る、鈴そっくりですね。さすが母娘。
本作は若くてかわい子ちゃん枠の福子と鈴はまるで違いますアピールしていますけど、そっくりやないか。働き者である鈴の方がマシだわ。
克子と福子の、電話口での会話も最低です。
「おおさかてーだいそつー♪ おおさかてーだいそつなのにぃい♪」
連呼する福子が、表情もあいまって下劣の極みに見えます。
なぜ神部の人柄について何も言わない?
泥棒ロリコン野郎だから?
結局、大阪帝大ブランドだけを見ているってことをハッキリ示すって、どんだけゲスの極みなんでしょうか。
本作は、一事が万事そう。
人間性なんて見ているとは思えない。
萬平(まんぷくモデル→安藤百福)が福子を気に入った理由だって、10も年下で、父親がいなくてガードが甘くて、精神年齢が幼くてホイホイ操れたからでしょ。
今にして思えば保科もモテないアピールしていたし、【いかにチョロく釣れるか、ガードがゆるいか】ばっかりが強調される本作の女たちです。
泥棒として侵入してきた神部に同情したタカも、ゆるゆるガード女だわ。
ステータスが欲しい女たち
男だって人柄ではなく【レアカード扱いできるステータス】ですね。
福子だって萬平さんのどこが好きかはさして言っていません。
優しいから?
賢いから?
違いますよね。
「発明家だから特別なんですぅー!」
ってだけです。
こんな調子じゃ、萬平という発明家の妻として、他の女とは一味違うアピールがしたいだけな人物像が浮かんでしまうじゃないですか。
だからSレアカード発明家を選んだに過ぎないのです。
実は克子も同じなんですね。
たとえ売れなくても「画家の妻」ブランドが欲しいだけ。
克子は一応、忠彦の絵についてどうこう言いますが、その絵について理解があるともさして思えません。
ま、絵が変ということならば、鈴の肖像画はどうかと思いましたよ。技術云々ではなくて、あの年齢女性の肖像画として、あんな幽霊みたいな絵をよく描けたもんだと思います。
時間稼ぎみたいな、やたらしつこい指切りげんまんしているタカにしても痛々しい。
神部というイケメン。あるいは「社長右腕の妻」というレアカードにポーッとしているのかもしれません。
なにせ母や叔母とは同じ一族、育ち方ですし。いや、それよりも脚本家のワンパターンゆえ。
もしも、もっとレアなカードが出てきたら、そっちになびく可能性だって考えられるわけです。
娘に【稼げる夫】を求める鈴を滑稽に描いていますが、克子や福子の場合は、
【稼げるかどうかより、ステータスシンボルとなりうるレアカード】
が、欲しかっただけの話じゃないですか。
本作には愛なんてありません。
川の字で寝転がって、ベタベタしつこく手を重ねて握りあおうが、そこにふれあう心も魂もないのです。
発動!ぜんぶ世良におまかせシステム!
ラストは、世良が乗り込んできて宣伝戦略を立て始めます。
結局、世良任せやないか!
ボタン連打すると、自動的にアイデアが持ち込まれる
【ぜんぶ世良におまかせシステム】
ですね。
憲兵逮捕、GHQ拘束も打開できたのは世良のおかげでした。
もう世良の物語。しかも萬平が信用しきっている点が、どうにもこうにも滑稽で。中抜きされても手放せない理由がそこだとしたら、非常に整合性が取れていますね。
これじゃあ本作は詐欺ですよ。
福子の究極のマネジメント能力とやらはどこに消えました?
商店街で買い物をしていた福子が、宣伝を聞いて思いつく――という展開じゃダメでしたか?
ま、そうですよね。福子の良さはガードのゆるさだけですから。そういう女は馬鹿でないと困るんです。
だから福子はそんなこと思いつきもしませんし、タカだって勉強して上の学校に進もうなんて思うわけもない。頭の中身が軽ければ軽いほどいい、それが本作の女性観と見てとれます。
社運を賭けたプロジェクトならプロに頼みなよ
ちなみに不思議だったのが世良の持ってきたポスターのラフ。
世良が描いたにしては上手すぎません?
ラフって、もっとザックリしていて、表情なんかシロウトにはなかなか描けません。
キャッチコピーがあって、その下に顔のカタチが薄っすらとわかるぐらいになる。
今の時代でも、編集者がイラストレーターに発注するときは
「こんな構図でお願いします」
と殴り書き程度のものを渡すのが一般的で、当時だって大差ないでしょう。
こういう些細なところの手抜きも痛々しい。
アナウンスが福子で、モデルが萬平ってのもなぁ。キンキン声のナレーションが向いているとは思えないんですよね。
製塩業をヤメて、社運を賭けたプロジェクトになっているのに、プロにお願いすることは無理なんでしょうか。
最後に蛇足。
本作が好きそうな層を分析していて、思い出したのがこのニュースです。
◆「女子はコミュ力高い」を理由に一律減点していた順天堂大が「女性活躍推進大賞」…?
医学部医学科の入試で女子や浪人生に不利な扱いをしていた順天堂大学に「東京都女性活躍推進大賞」を贈呈していた都が、同大にヒアリングを行うことがわかった。
ほんとしょーもない話だわ。
あれですよね。
「女がみんなバカで、家庭に入ってニコニコしている『まんぷく』みたいな世界観なら、そもそも医学部受験なんかしないから、こんなめんどくせーことになってなかった」
そんな愚痴をこぼしたい人にとっちゃ、本作は癒しですよね。
ついでに言うのなら、前作ヒロインの鈴愛みたいに自己主張する女は嫌いなんでしょうね。
2018年の朝ドラとそれに対する反応って、世相を反映していて興味深いです。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
※まんぷくモデルである安藤百福の記事、ならびにラーメンの歴史もリンク先からどうぞ!
同じNHKのコント番組『LIFE』に、吉田羊さんとシソンヌによるこういうコントがありました。
番組打ち合わせと思われる場面で、吉田羊さん演じるプロデューサー(定見は全く持たないのに、発言力だけは強そうな)?がシソンヌ演じるコメディアンに、あれやこれやと的外れな要求、それも他でウケているものをパクっただけのようなことを要求し、せっかくのオリジナルのネタを全くつまらないものに変えさせてしまう、というもの。
放送当時はただ笑って見ていただけでしたが、今、こうして『まんぷく』『西郷どん』『わろてんか』といった失敗作の数々を見てみると、こういう失敗作を作ってしまうのは、こういう「無定見、なのに発言力だけは強い」類いの制作者なのだろうな、とつくづく思います。
あのコントも、もしかすると、NHK内に実在するこういう制作者を痛烈に皮肉る意図があったのかも。
朝日新聞のテレビコラムに、まんぷくがつまらないと言うような内容の記事が書かれたようですね。SNSでもそうですが、徐々に批判をオープンされる方が増えている気がします。
先週安藤百福記念館編の文庫本を購入して読んでたんですけど、安藤氏は奥様の義理堅いところに惹かれて一目惚れした、って書いてあったんですよ…!素敵だと思いません?
本には書かれていない一目惚れするような妻となる人の義理堅さエピソードなんて創作者ならとても腕が鳴るシーンにできただろうに…と思うともったいないことしてるな、と今日のレビュー拝見して思いました。いつか良いチームでドラマでも映画でもこれぞという安藤夫妻の物語が描かれるといいですよね。
漫画家さんがおっしゃるように、確かに人物造形はしっかりしています。
とにかく主人公たちが
「下衆でかつ言動がその場しのぎで一貫性がない。」
ということは(脚本家が何人居るにせよ)ブレていませんね。
周囲の連中もまたゲスだらけ。
当初真っ当かと思っていた人もあっという間に朱に交わっちゃいます。
登場人物オール下衆でゲス度が違うだけなんてドラマはとても斬新!
しかしそれを公共放送で、朝ドラでやっちゃあ駄目でしょう。
最後の蛇足部分に多いに同意です。
あれほどに前作には細かく厳しい指摘をしていた人たちが、細かいことはいいじゃないかと本作を容認している感想を読むと、(全ての人がそうだとは言わないが)根本的な価値観の相違があるとしか思えなくて、悶々としていました。
そこで思い当たったのが、まんぷくは、見ている人を不愉快にしても、プライドは傷つけないということです。
キャラクターも物語も薄っぺらくて、上っ面の表現ばかりだから、自分の弱味や触れられたくない部分になんら影響を与えない。ともすれば、自分の中の男尊女卑や女性蔑視、学歴や出自で人を見下す等の価値観を持つ人にとっては、むしろ心地よくすらあるのかもしれません。
つまりは、そういう人にとって、安全にいじれるドラマになっているのでしょう。
好きだった漫画家さんが、まんぷくを人物造形がしっかりしていておもしろい、等とSNSで書いているのを目にし、ちょっと失望しました。
「半分、青い」と「まんぷく」は、価値観のリトマス試験紙のようです。
「まんぷくアンチ」が無条件に「半分、青い信者」と言われるのは、心外な人も多いとは思いますが、私としてはむしろそれは褒め言葉なんじゃないかと思うようになりました。