風鳥亭の席主夫婦のてんと藤吉。
2人の間には長男・隼也も生まれたものの、仕事にかまけて家庭を省みない夫に、てんは爆発寸前です。
リリコから「怒りをかんにん袋にぶちまける」という、落語由来のストレス発散手段を聞き、巾着袋を持ち歩いてストレスを吐き出すことに。
でも、それって爆発フラグでは……。
もくじ
チベットスナギツネ状態 てんの顔
かつて、藤吉相手に恋のライバル宣言をしていたリリコ。
よりにもよって、そのリリコを子守にした藤吉の態度に、てんの顔はチベットスナギツネ状態です。
妻には気遣いしないのに、「リリコには子守が大変やな」と労る藤吉。
釣った魚に餌はやらんけど、泳いでいる魚には優しさという餌をバラ撒く、クズ男あるあるどすなぁ(´・ω・`)
隣で仕事をするトキは、てんを気遣います。
「他の子守雇ったらええんちゃいます? 近所の子なら安く雇えますで」
最初からそうしときなはれや……とは思うのですが、そんなことを本作に期待しても無駄なわけでして……。
いつもの「男ガー! 女ガー!」トークになります。
ここで万丈目の妻・歌子もおにぎりを持って参戦。
出てくる度に、
「男っちゅうもんは勝手なモンや!」
を連呼しますが、この脚本でもコミカルにしっかり演じる歌子は貴重な存在だと思います。
寺ギンあたりと対峙させたらオモロそうですのぅ。
京都のお嬢さんに「アホーッ!」と絶叫させるのが間違いどすな
てんの勧めで、トキと歌子もかんにん袋に吐き出します。
この二人は、さすがに振り切れていてコメディ調のシャウトが大変よろしいと思います。
やっぱり
「アホーッ!」
と叫ぶなら、腹の底からしっかりと叫ばないとしまりがないんですよね。
てんに欠落しているのは、その辺の吹っ切れ具合ではないでしょうか。部活に入ったばかりでモジモジしている新入生の声出しを見ているみたいな(昭和ではよくある風景でした)。
例えば『マッサン』のヒロイン役シャーロット・ケイト・フォックスさんは、しっかりできていた記憶があります。
彼女は関西人どころか日本語を習得しながらの演技ですから、葵わかなさんが関西人でないとか、そういうことではないと思います。
問題はそもそもの設定ではないでしょうか。
ふわっと可愛らしい京都出のお嬢さんにしたのが裏目に出ている。
そんな印象です。
一方、藤吉とキースは、寄席小屋のオーナー相手に、昼間から酒を注ぎつつ、商談の真っ最中。
この商談の場面も、そろそろ工夫が欲しかった。
食べ物を食べさせたり、酒を飲ませたり、キースが「芸やりましょか!(逆効果だから辞めた方がいいと思います……)と言い出すものではなく、もう少しキッチリした、緊張感のある雰囲気にはできないんですかね。
書面片手に数字を見ながら話し合うのであればマシな気がするのですが。
藤吉がキリッと事業計画を説明する姿は永遠に望めないのかなぁ(´・ω・`)
高橋一生さんが親戚のオッチャンに見えてしもた
てんは算盤をはじきつつ、途中でイライラして、かんにん袋に叫びます。
ストレスが溜まっているのは理解できます。しかし、客商売をしている人が、職場で絶叫するのは、さすがに……。
この事務所、寄席の席のすぐ側ですよね。
実際、その場へ栞が来てしまいました。
栞も藤吉ほどではありませんが、昼間からフラフラと風鳥亭に来てばかりの印象。
仕事に追われている様子を感じさせないため、親の七光りでブラブラしている坊ちゃんにすら見えてしまうんですよね。
藤吉と栞の友情も、ダメ男同士のぬるい関係……とは言い過ぎなんでしょうけれども、栞のどこがどう小林一三なのか。全く見えてきません。
おそらくや宝塚劇団の話も突然出てきて、視聴者を困惑させるんだろうなぁ。
てんは叫んでいるところを見つかって、栞に寂しさを訴えます。
藤吉のリリコへの態度も大概ですが、やたらと思わせぶりな栞と二人きりで相談をしたり。
藤吉の留守中に風太を家にあげたり。
てんも迂闊なことをしています。
しかも、藤吉と違ってこちらは誰にも突っ込まれないので、なんだかなあ……。
そこへ藤吉が入ってきて、芸人に払うための給与を持ち出して去って行きます。
唖然とするてん。
現金を入れた金庫くらい、施錠しておけばいいのに……。
藤吉は、かつて無断で証文を持ち出して米屋を潰した前科もありますしね。
てんは、「給与を払え」とせっつくアサリたちを相手にしどろもどろ。
こういう時、おろおろしていないで!
背筋を伸ばして頭を下げて「待っておくれやす!」くらい言えないと、とても「ごりょんさん」なんてなれませんよ。
ここで栞が金を貸そうか、と言い出しますがてんは断ります。
かつては出てくるだけでやたらキラキラしていた栞が、高橋一生さんが、お小遣いをくれる親戚のオッチャンみたいに見えてきました、ごめんなさい><;
実は笑いで人を助けている
風太が牛鍋をつついております。
その前にいるのは、寺ギン。
いい加減、風太の大阪滞在は長すぎます。
やはり、代替わりしたりん夫妻の藤岡屋に居づらくなったのでしょうか。
風太は寺ギンに、どうして僧侶を辞めてお笑いの世界に飛び込んだのか?と尋ねております。
対する寺ギンの返答がイイ!
死人のお経を唱えるよりも、生きている人間を笑わせた方が救いになる、と。
凄んでニヤリと笑う兵動大樹さん、タマランっすね。
この存在感、迫力。
人を食い物にしているようでいて、実は笑いで人を助けるという発想は、てんの「笑いは薬」と根底では似たようなものであります。
しかし、こちらは聞いていて、俄然納得できるんですよね。
覚悟を感じられる。
もう、明日から寺ギン物語にしてくれないかな、と思うほど最高です。
まぁ、そうはならないわけで。
ついに堪忍袋の緒が切れて爆発
てんは帰って来た藤吉に、ついに怒りを爆発させます。
藤吉は、
「これも家族のためや!」
という言い訳しかありません。
てんが兜のことを持ち出すと、
「兜を買うてきたらええんやろ!」
と、逆ギレ。こうなると予想はしていたんですけれども、そのまんまやられると、ねえ。
てんの膝の上では巾着袋が膨らんではじけます。
翌朝、てんは怒りつつ朝食を用意しています。
藤吉と一切口を利こうともしないてん。
手を伸ばせがすぐそこにあるのに、「醤油を取ってくれ」と頼む藤吉。
ここでてんが「アンタが取らんかい!!」と、藤吉に醤油をぶっかけるぐらいすれば、見ている方も「おっ! おっ! てん、落ち着け! なっ!(キレるとこんな娘やったんか)」と画面に吸い寄せられるんですけどね。
まぁ、今の脚本ではできないでしょう。
というか、これまで描いてきたキャラからして無理っすわな(´・ω・`)
今回のマトメ「夫婦喧嘩は犬も食わない」
こういう夫婦のすれ違い、仕事と育児の両立。
「あるあるネタで共感してもらえるはず!」
と思っているのかもしれませんが、それは勘違いというモンでっせ。
昔から、
「夫婦喧嘩は犬も食わない」
とはよく言ったモンでして。
誰にでも身に覚えがあるから、面白くもならないし、共感をうまくすくい取るように作れない。
かえって反発されることもあるんで、今週がまさにそうでしょう。
「女のかんにん袋」
このサブタイトルからして「女ならわかるでしょう!」とハードルをあげているようなものですが、いやいやいや……。理解できません。
吉本せいという不世出の実業家の人生ですからね。
出来が悪くてリアリティがない夫婦喧嘩よりも、彼女の商売がどう軌道に乗ったか、そういうところのほうがワンアンドオンリーの個性として面白くできるんじゃないですか。
史実やら資料を調べるのがめんどくさいと思うかもしれません。
しかし、「犬も食わない食材」を無理に料理しようと四苦八苦するより、史実という名の食材をただ皿に盛って醤油つけて食べた方が、よほど楽ということもあるんじゃないですか。
今回のマトメ「てん、ついにキレたけど」
夫婦喧嘩あるあるのせいで、てんのキャラクターが完全に崩壊しました。
てんが藤吉にブチギレるタイミングは、今までずっとありましたよね?
・売れっ子芸人と騙して文通し、てんがチンピラに絡まれる一因を作る(第2週)
・危険を冒して家の蔵に匿ってもらいながら、図々しい態度(第3週)
・駆け落ちした家には他の許嫁がいたうえ、使用人扱いされても姑の言いなり(第4週)
・パーマ機詐欺に引っかかり、北村屋をぶっ潰す。おまけに実家に戻れと言い出す(第5週)
・夜中に無断で出かけて、リリコと密会(第6週)
・てんに仕事を任せて、栞と酔い潰れるまで飲み歩く(第7週)
・父の兵衛が亡くなっても、生前借金を返せなかったことについてノーコメント(第8週)
ここまでされても長州小力状態で、てんは「藤吉さんを信じます!」とニコニコしていたわけではないですか。
見ているこちらの背筋がゾゾッとするほどの明るさで。
それがここにきてムスッとしてガチギレ。
ハネムーン期の愛が冷めたということかもしれませんが、パーマ機詐欺は笑顔で許して、兜の件はしつこく頼んでキレる、ってなんだかおかしいんではないですかね。
しかもこのキレ方が中途半端。
子供を連れて家出するわけでもない。
藤吉が斧を持ちだして母親を殺そうとする真似をしたり(第5週)、今週も隼也が二度も姿が見えなくなったりいるわけですけれども。
煽るだけ煽っておいて、結果がたいしたことが無い……というパターンが多すぎる気がします。
来週からはまた菩薩キャラに変わりそうな気がします。
てんだけではなくて儀兵衛や栞もキャラがブレブレの本作。
皮肉にもキャラが固まってぶれない、それどころか日々強化してゆくメインキャラクターは、クズとしてまっすぐ歩む藤吉だけではないでしょうか。
藤吉はむしろもっとマトモになってええんやで!
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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