まんぷく 110話 感想あらすじ視聴率(2/11)ジェンダーバイアスで墓穴掘る?

NHKには他に意欲作もある

さて本日は、
【『まんぷく』がどんな流れでおかしな展開に陥ったのか】
ちょっと真面目に分析してみたいと思います。

答えから申しますと、大きな要因が、
【ジェンダーバイアス】
です。

◆「なんで女の子に生まれてこなかったのよ!」と叱られ泣いた私の現在

最近の意欲作には、この【ジェンダーバイアス】に挑んだものがあります。

例えば
『トクサツガガガ』
もそうです。

特撮なんて好きなのは男だけだろう――そういうバイアスに挑む作品であり、同番組にたまたまチャンネルを合わせた編集さんがハマっておりました。

実はこうした【ジェンダーバイアス】病には、大河も長いこと冒されてきたものです。

おにぎりマネージャーだの、キャバクラ通いだの。

そういう深い病に冒された名前を出したくもないアレやソレはこの際、横に置き、逆に意欲作もありますので、軽くピックアップしてみましょう。

2016年『真田丸』

豊臣政権では絶対的な定番だった
北政所(豊臣秀吉の正妻)vs淀(側室)
という描写が一切出て来ません。しょうもない黒百合事件とかね。
実はこの二人の対立は後世の創作であり、現在は否定されているどころかむしろ協力的であったことがわかっております。
「女の敵は女〜」だの「有能な男の足を引っ張るバカ女〜」だの、偏見まみれの展開が見たい層には、うってつけのデタラメサービスでした。
『真田丸』は、そこと決別したのです。

2013年『八重の桜』2017年『おんな城主 直虎』

良妻賢母型よりも、スナイパーである新島八重やリーダーである井伊直虎にスポットが当てられました。

2019年『いだてん』

明治末期という時代は、女性がスポーツへと向かった転換期でもあります。
現段階ではそこに触れておりませんが、三島家の女中・シマを一例として女子スポーツ黎明期も描くであろう、意欲作になりそうです。

朝ドラでも『半分、青い。』は頑張っていました。
少女漫画家が男性。
医者が女性。
菱元が弁舌と頭脳で、男性をきっちりと言い負かす。
菱元の服装は、完全に自分の趣味であり、男の目線は度外視している。
弥一が和子に料理を作る。
律が花野の面倒を見る。
父である津曲が、我が子のいじめと向き合う等。
色々とアップデートされていたものです。

しかし……。

ジェンダーバイアスで墓穴を掘った可能性

そのあとが、この『まんぷく』の体たらくぶりですよ。
本作の女性描写は、ともかく【ジェンダーバイアス】はじめとする偏見がてんこもりです。

・女はバカで大学を出ようが、それを活かす仕事なんかしようとしない
・女は常に男のことばかり考え、女同士で喋り散らしているものだ
・カワイイ女は常に男に都合がいい言動をする
・ババアは若い女に嫉妬する
・ブスは美人に嫉妬する
・女の敵は女!
・仕事ぉ? そうは言っても、一人きりで男の家に来る女もエロ目的でしょ〜ウヒヒ〜

よくぞここまで燃料を投下できたものだと感じます。

そして、この【ジェンダーバイアス】を盛り込んだエピソードこそが、本作を壊してしまう決定打となりかねない。
それは何か?

「妻が天ぷらを揚げる姿を見て、チキンラーメンを思いついた」
という展開です。

この神話、もともとは安藤氏の自伝で私も信じ込んでおりました。
が、冷静に検証したらちょっと……いや、相当に怪しいのです。

※そもそもインスタントラーメンのルーツが台湾とか、安藤氏が特許で一悶着あった等の点は、とりあえず脇に置いておきましょう

「天ぷらを揚げる妻の姿」については、安藤氏の自伝も含めて矛盾を感じます。

彼の言葉によれば、幼い頃から家族の食事を作るほど台所に立つ時間が長かった。

疑問① それならば「自分で天ぷらを揚げているときに気づいた」という説明の方が自然では?

疑問② ドラマでは無職なのに家事すら手伝わない。スキルがあり、無職なのに手伝わないって?

『まんぷく』の描写では、福子を外で働かせていて、萬平は台所にすら立たない。
本来は得意なはずだったのに、そのスキルも台湾ルーツと同様に削除してしまった。

要は、当時の日本人にとって最も受け入れられやすい設定にした――ということでしょう。

現代社会ならばともかく、確かに当時の日本では、
「男子厨房に入らず」
なんて死語が、当たり前でした。

そしてこの怪しいエピソードを踏襲した結果、色々と不自然が生じています。
早い話、日清側の言い分にNHK大阪が乗っかったワケです。

そもそも本作は、ナゼ立花萬平ではなく、その妻が主役なのでしょう?

『カーネーション』のように、ヒロインモデルが朝ドラヒロインとなるという「夢」を語っていたわけじゃない。

『あさが来た』、『べっぴんさん』、『わろてんか』のように、自力でビジネスを行ったわけでもない。

『マッサン』のように夫婦単位での主役でも、挿話が豊富なわけでもない。

【ジェンダーバイアス】の罠にかかり、関係者を激怒させた朝ドラもあります。
『とと姉ちゃん』です。
仕事ではスカートを履いたことのないモデルなのに、ドラマはメインビジュアルですらスカートをなびかせる始末。
「女の子はやっぱりスカートだよね!」
という、古くさい偏見塗れの価値観を押し通し、その結果が以下の記事です。

◆朝ドラ『とと姉ちゃん』を、本家「暮しの手帖」が痛烈批判! 花森安治の反権力精神を描かないのは冒涜だ

『まんぷく』では、
「妻の天ぷらがチキンラーメン発明のヒントだから」
という一点突破を狙ったのでしょう。

しかし、それがかえって矛盾点を際立たせなぁと感じます。

【ジェンダーバイアス】を打ち破れなかったこと。
これまた炎上への燃料なんですよ。

◆日本のワーキングマザー 妻の過大な負担・夫の過少な支援 

◆「日本という国に根強く残る性別役割分担の名残」 ニューヨークタイムズが描く、日本のワーキングマザーの生きづらさ

日本の【ジェンダーバイアス】の酷さは、世界的にも話題になるほどです。

もしも本作が果敢にも【ジェンダーバイアス】に挑めば結果はもう少しマシだったかもしれません。
安藤氏は調理スキルもある。
働く福子を励ますために彼が天ぷらを揚げたならば、そこは評価できたかもしれません。

「だって昭和だもん!」
と周りが言い張ろうが、そんなもん実際の安藤氏に調理スキルがあるのですから、無視して描けたはずです。

それなのに、本作は安藤氏から調理スキルまで奪い去るという、馬鹿げた【ジェンダーバイアス】をやらかし、事態を悪化させた。

ナゼ、こんな悪手を打ちましたか?
このあたりの謎を解ける日は訪れるのでしょうか?

※スマホで『いだてん』や『八重の桜』
U-NEXTならスグ見れる!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

立花福子のモデル・安藤仁子の生涯

※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください

まんぷくモデルである安藤百福の記事、ならびにラーメンの歴史もリンク先からどうぞ!

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・まんぷくここが好き!
・まんぷくここがアカン!
という意図でご自由に記述してください。
作品に関するものについては全て掲載しております。
攻撃的な書き込み等については、こちらの判断で削除させていただきますので、あらかじめご承知おきください。

 

7 Comments

904bis型

【訂正】
今日の『べっぴんさん』は、第109話ではなく第110話でした。失礼いたしました。

ビーチボーイ

いったい本作の脚本家は、ドラマ展開のイロハを知らないのでしょうか。
全くの素人の私でも、以下に述べる程度のことはおのずと理解しているつもりです。つまり、萬平が即席ラーメンを開発しようと悪戦苦闘しあれこれ試行錯誤を繰り返す過程。一方で、家族・親族や旧塩軍団の美女イケメン連中の恋愛ごっこなど人間模様のあれこれの過程。この両者が同時進行してるのに、互いに全く絡むことなく文字通り単に同時進行のパラレル状態なわけでしょ。こんなドラマは見たことありません。あり得ない、と断言して良いでしょう。
彼らの惚れた離れたのおハナシがラーメン作りに絡まって進んでいく、のでなければ、プロの演技者を多数動員する映像作品として成り立つわけがない。それが私の言うイロハです。たとえば、萬平のラーメン開発の一か八かの賭けを全面シンパする推進派と、今一つ乗りきれない懐疑派の間のズレや葛藤が、男女間のハートの遠近に重なっていくみたいな。
だが本作では、昨年10月のスタート以来毎度お決まりの、おばあちゃんが「そんな発明なんて無理や~」と愚痴るのみ。周囲はまたか~て感じで取り合わない。それで終わり。そこから何の葛藤も次の展開も生まれず、鈴さんのこの台詞に何の意味があるのか全く不明です。
とにかく半年間の連続ドラマが、全て全てそんな具合。こんなもん、誰もが見てて面白いわけがないです。
この脚本家氏、本当にそうしたドラマ作りの基本を知らないのだとしたら、そんな人に日本の朝のシンボル番組を委ねたNHKは何を考えてるのかという大問題になるし、いやプロだから当然分かってるけどやらないというのなら、とんでもない職務怠慢です。どちらにせよ、あいた口がふさがらず、この先の言葉が出ません。

羅蜜王

「トクサツガガガ」は自分もハマっているドラマですが、
これは視聴した瞬間からNHKの本気度がうかがえる作品と感じました。
案の定目指したのは「本物」というコンセプトで、NHKとしては未知の特撮モノなだけに、東映の専門スタッフとタッグを組んでの作品とのこと。
視聴者にはこの本気度が伝わるものです。元の原作も良いですね。
「まんぷく」は逆に制作スタッフのなんちゃって加減がいい具合に伝わってきており、回復が見込めるとは思いません。モデルの日清食品からよくクレームがこないなと心配するくらいです。もしかしたら日清とタッグを組んで半年余りの宣伝をしているのではないかと思ってしまいます。良い宣伝か悪い宣伝になっているかは疑わしいですが。

904型

今日の『べっぴんさん』第109話。
喜代さんと忠さんの新たな旅立ちのきっかけが描かれました。
五十八が倒れた近江の本家での伏線が動き出したシーンでした。
とりわけ、忠さんが訪れる直前の、喜代さんと忠さんがそれぞれ無言で思い詰めている数秒間のシーン。言葉によらず表情だけでの表現。良かったです。

これが『まんぷく』なら、たちまち説明台詞やらナレーションやらが押しかけてきてブチ壊しといったところ。

これも、NHK大阪の「2年前は当然だったのに、今やロストテクノロジー」の一つなのでしょう。

三等航宙装甲艦

今回問題点を指摘されている『とと姉ちゃん』。年末総集編レビューで指摘の『花子とアン』もそうでしたが、問題点として確かに小さくはないでしょう。

では、この両作品が、『まんぷく』『わろてんか』と比べてどうなのか、と言えば、決定的に異なるのは、「面白いこと。ドラマとして成立していること」です。同じレベルに扱うのは無理なほど。
両作品とも、問題点に気づかなければ、ドラマとしては実に面白く、楽しむことのできるものでした。人物描写にぶれや不自然さはありませんでしたし、物語の展開も面白かった。どういう物語を示したいのかの考えは明確だったと思います。

本来発展すべき方向性は、「どういう物語を示したいのかの考え方は確立させながらも、『してはならない改変』はしないようにする」である筈。しかし現実に起きたのは、「物語の考え方は失い、してはならない改変は犯す」…
困ったものです。

Susuka

食品関連では、かつお節は確か日本オリジナルだったかと。ささいな補足です。

以前書いたことの繰り返しですが、「日本ヨイショ」は完全オリジナルじゃないといけない、という前提がすでに近視眼的なんですよ。安藤百福氏の発明家はともかく、「即席麺」自体は間違いなく台湾系日本人の発明です。「元祖」の大陸ではなく、日本で即席麺が誕生して世界に広まったのは紛れもない事実ですから。そのほかの中華料理も、例えば韓国のキムチやビビンバも、世良がやたらと食べていたカレーも、日本流のアレンジを行ってヒットしています。なぜわざわざ、「日本人は人種差別主義者」などという迷惑なプロパガンダを垂れ流すのでしょうか。

あ、あと日付が間違ってます…(小声)

ガブレンツ奮戦

本当の安藤百福氏は、台湾の食生活の中で育ったのだし、料理もこなす人でした。
だから、『まんぷく』のここに至るまでの一連の話は何もかも無意味で全くの無駄だし、何の感動もありません。

せめて、揚げ麺に思い至るきっかけとして、例えば「長崎皿うどんや、同様な揚げ麺を使った中華料理に出会って、それを採り入れてみようと思いつく」「春雨を使った中華料理から発想を得る」といった具合に描いたら、まだしも説得力もありますが。
ここまでの迷走は、どれも単なる思いつきばかり。少しも調べたり試してみたりはしていないかのよう。
それに、揚げ麺にお湯をかけてふやかしても、あんなツルツルした具合に簡単になるものなのか。軟らかすぎてしまったりする失敗も当然ある筈。「試行錯誤」を描きたかったのなら、最適な揚げ麺に至るまでを描いた方が遥かに有意義だったのではないかと。

「黒豆のムカデ」などという正直どーでも良いものはわざわざ実作までしたのに、肝腎要の麺についてはこの扱いか? と皮肉の一つも言いたくなります。

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