五十歳からの挑戦がすっかり薄れてしまっている
本作スタッフは、チキンラーメンのセールスポイントすら把握しておりません。
それと同じく、安藤百福氏夫妻の特徴すら把握していないことがよくわかりました。
安藤仁子氏から口癖、性格的な部分、福島県ルーツもすべて消し去りました。
安藤百福氏の台湾ルーツや調理スキルもバッサリカット。
そしてここ!
【50才という人生後半戦でも諦めずに成功を収める】
こんな重要なところもまるで理解していない。
だから萬平は老けない。
それどころか、ハセヒロさんにチュー顔だの老成に似合わぬお色気シーンをやらせて、受け狙いをする始末なのです。
そしてこれこそが、昨今の炎上コンテンツが陥る罠そのものでして。
最近、炎上したある広告に、こんな擁護があって目玉ポーンってなりましたわ。
『80年代はこういうノリがトレンドだった。そういう遊び心がない年寄りじみた層が、きっと叩いているんだ!』
って、オイ!
むしろ逆だ。
80年代に生まれてすらいない若年層が、その古くてダサくて差別的な感覚に、びっくりして抗議の声をあげているんです。
空気を読めなんて言われても知らない。
差別的なものにはきっちりモノを言う。
それが最先端です。#Metoo然り。
80年代あたりの古い時代から進歩できずに、自分が歳をとって若者の感覚からズレていることも自覚できずに、炎上を繰り返す。
本当に、そういう話ばかりじゃないですか。
本作はまさに、そういうドツボに陥った、永遠のトレンディシティボーイズを描いていて、そこだけは秀逸だと思います。
それが安藤夫妻の伝記として正しいとは、まったく思いませんけれども。
ったく、嘆かわしいばかりですわ。
今日はバレンタインデーです。そんな今日にふさわしいエントリでも。
義理チョコなんて今時古いという広告について触れております。
受信料で企業の宣伝ドラマを作ってよいものか?
さて、ここで。
暗雲を帯びてきた安藤百福氏の経歴。
【果たしてインスタントラーメンを生み出したのか?問題】について、私からまとめておきたいと思います。
とにかく気になっているのがコレ。
受信料で企業の宣伝ドラマを作ってよいものか?
「これはフィクション! 作り話だからいいの」
と言われようと、本作が宣伝になり、日清側に利益が発生していることは紛れもない事実です。
◆NHK朝ドラ「まんぷく」効果でチキンラーメンが大人気に!? SNSで売り切れ報告が相次ぐ
◆まんぷく、ついにラーメン完成 昼食はチキンラーメン?ネット「食べたくなる」の声(デイリースポーツ) – Yahoo!ニュース
◆「まんぷくラーメン」完成でチキンラーメン売り切れ続出?意外な企業も”食べたくてしょうがない”とツイート
公共放送とはいったい何なのでしょう?
受信料で一企業の宣伝とも取られかねないドラマを、制作し放映することは適切なのでしょうか?
例えばBBCでは、このようなことが許されるのでしょうか?
とはいえ、過去の朝ドラでも同じようなことはありました。
問題があるとすれば、モデルの選定です。
今回は、特に慎重になるべきでした。
フィクションだからいいと言われたところで、他ならぬ脚本家自身がこういう発言をしているのです。
↓
◆『まんぷく』脚本・福田靖氏インタビュー 「私は武士の娘です」は実話
あれは実話です。でも作り話です。
って、そんな都合がいい話が通じるんかーい! ってなもんで。
しかも、公式のSNS投稿がコレですからね。
二人の結婚からおよそ17年。何度も何度も何度も「もうだめだ」という状況をくぐり抜けて、ついに即席ラーメンが完成しました。成功を成し遂げた後、安藤百福さんがおっしゃった言葉をもう一度ご紹介します。
「人生捨てるな。始めるのに遅すぎることなんてない」#まんぷく #朝ドラ pic.twitter.com/5u9kuTK8ns
— 【公式】連続テレビ小説「まんぷく」 (@asadora_bk_nhk) February 12, 2019
あのさ。
公式ツイートで安藤氏の名前まで出して、チキンラーメンっぽい画像まで出して、
「フィクションだから! 実在企業とは無関係です」
と言われましても、誰が納得するのよ?
実際にスーパーやコンビニでは、朝ドラを狙ったチキンラーメンが積まれているわけです。
この流れは、他の作品や朝ドラにも延焼しかねないのでは?
『とと姉ちゃん』と手を切った「暮しの手帖」は英断だったかもしれません。
『マッサン』の竹鶴政孝氏は、叩いても埃が出ない根っからのエンジニアタイプです。
ニッカ側の説明にも、さほど矛盾点はありません。
『あさが来た』の場合、実はそこまで宣伝効果は高くないのです。
広岡浅子氏が立ち上げた実業は時の流れによりあまり残っておらず、宣伝が効果を及ぼしにくい保険業くらいしかありません。
『べっぴんさん』の坂野惇子氏の場合、皇室御用達となるくらいですから、その時点で黒いところはあるはずがありません。
事実、彼女は無欲な人柄でした。
こうした作品の場合、パイオニアとしての功績もあり、偉人伝としてドラマになってもおかしくない要素が多いものです。
どうにも、そのあたりがゆるくなったのは『わろてんか』あたりからでしょうか。
あの作品も、ちょっと黒い部分は意識的に避けていたものです。
本作は、もっと慎重に挑むべきだったのではないでしょうか。
慢心……それが悪い結果を招きそうです。
もう悪ノリだの、フィクションだの、楽しければいいだの、そういう逃げの手が通じる時代じゃないんですよ。
※スマホで『いだてん』や『八重の桜』
U-NEXTならスグ見れる!
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
※まんぷくモデルである安藤百福の記事、ならびにラーメンの歴史もリンク先からどうぞ!
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