なつが帰ってきた!
森を真っ直ぐ行けば帰れる――。
なつは翌朝、弥市郎から説明を受けて柴田牧場を目指します。
早朝の美しい夜明け。
寒い朝。
その中を進んでいくなつは、確かに雪ん子のような神秘があります。
美しいなぁ。
なつよ、その目に映るものすべてに魂を込めよ――。
そう父の声が語りかける中、頬にそっと一筋涙がこぼれるのでした。
一方の柴田牧場では、天陽が姿を見せて、こう尋ねて来ます。
「あの、なっちゃんいますか」
ガランガラン!
と、音を立て、ミルクバケットが落ちます。衝撃が走ります。
「俺のせいだ! 俺が行けって言ったから!」
そう照男が走り出そうとして、脚が雪にとられて前に進めなくなっています。
これも雪国あるあるなのさ。気持ちばかり焦っていると、慣れたはずの地元民でも、雪に脚を取られて進めなくなるのです。
こういうリアリティが怖いんだよ〜〜!
そこへ、なつが姿を見せるのでした。
阿川親子は何者だろうか?
公式サイトを見て、阿川親子はアイヌだと事前に予想しました。
おそらく当たりましたので報告まで。
ここまで証拠があれば、確定でしょう。
・木彫りの熊
→北海道土産のこの木彫りの熊は、もともとはアイヌが作っていたものでした。和人がそこに着目し、土産物として販売し始めた経緯があります。
・倉田は俺たちの話を聞きに来た
→アイヌの伝説ということ(鹿追町公式サイト)。
・オショロコマを取る砂良
→アイヌの獲物だった。
・弥市郎は子供たちに軍国教育を教え込んだ
→明治以降、アイヌは兵士として戦ってこそ日本人の一員になれるとみなされ、過酷な戦場に動員されて来ました。立派なアイヌの戦士として戦ってこそ、そう鼓舞してこそ。そんな思いが彼の中にあったとして、それは悲しいことなのです。彼の恨みや悲しみは、戦争だけに対してではないことでしょう。
慣れる必要がどこにある
しかし、一度たりとも彼ら自身がアイヌであるとは言っていません。
そのことが、かえって彼らの味わってきた差別を想像させます。
アイヌという言葉そのものが差別的で、面倒だ。彼ら自身でさえ口にできない。そうみなされてしまった。そんな経緯がある。
木彫りの熊を土産物として売り、伝統的な行事を観光資源とする一方で、和人はアイヌを認めてこなかった。
そういう歴史があります。
アイヌを大きく扱った漫画『ゴールデンカムイ』には、こんなやりとりがあったものです。
白石「そのアイヌはお前さんの飼いイヌか?」
杉元「アゴを砕いて本当にしゃべられんようにしてやろうか」
アシリパ「よせ杉元 私は気にしない 慣れてる」
ここでのアシリパと、阿川親子の態度には、共通するものがありませんか?
もう慣れてしまった。
差別されて当然だ。
そういう諦念がそこにはあります。
なつは子供だから、そういうことに気づかない。
倉田とは違う。
そういう態度には、慣れているから。
指摘しても、仕方ない。
この阿川親子となつのやりとりは、やっぱり『ゴールデンカムイ』を彷彿とさせる要素があります。
彼らは冷静で、合理的なのです。
吹雪の中で放置したら死ぬ。死にたきゃ帰れ。
泣きながら歩くなんて呑気だ。そういう突き放すような言い方をします。
『ゴールデンカムイ』でのアシリパにもそういうところがあります。
杉元が感傷的になって鹿を殺せないことをたしなる。
表紙では可愛がっていた動物を、次のページで撲殺し食べる。そういうお約束がありまして。
これはギャグのようで、実はアイヌの価値観と深い関わりがある。
『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修の中川裕先生が指摘していることです。
そんな阿川親子を見ていると、あの漫画で杉元がアイヌ差別に怒っていた気持ちが蘇って来ます。
差別に、見下されることに。あの人たちが諦める必要がありますか?
慣れる必要がどこにあるーー。
アイヌ新法成立の春に、この『なつぞら』が放映されたことには、意義があると思います。
◆アイヌ新法が成立 「先住民族」と初めて明記:朝日新聞デジタル
『永遠のニシパ』にご期待ください
ただ、本作はかなり進歩的であるとはいえ、雑なところもあります。
当時の和人、いや今もそうか。
そういう和人ならではの雑さもあります。
これを指摘するのは若干気が引けますが、阿川弥市郎は宇梶剛士さんという手もあったはずです。
演劇部衣装のアイヌ考証も、あんまり厳密ではない。
よっちゃんができたらできたで、それは不自然といえばそうなのですが。
和人側がアイヌに一方的に配慮し、いいことをしたようになって、そこで安心していないか。
そう当事者なり専門家から突っ込まれたら、それはそうだと思うしかないところはあるでしょう。
けれども、それは決して悪いことではありません。
むしろ幸せなことです。
そうして批判を受けて、むくれてめんどくさいとぶん投げたらそれまでのこと。
そうか、気づかなかった――そう受け入れ、改善してこそ、よりよい作品が生まれます。
これはもう『永遠のニシパ』に期待が高まりますね(公式サイト)。
そこもうまくできたら?
大河枠を深夜に移動して、実写版『ゴールデンカムイ』です。
ここはもう、水面下で谷垣役を探して、鍛え上げておきましょう!
明治版『マジックマイクXXL』を目指しちゃえ。
あっ、土方役は草刈正雄さんでね。
※スマホで『なつぞら』や『いだてん』
U-NEXTならスグ見れる!
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
阿川親子は東京からの移住組でしたね、私もアイヌかなとおもってたんですが、先生は阿川さんになんの話を聞きにいってたんでしょう?今思えば不思議
ゴールデンカムイはコミックで読む派ので、まさかここでネタバレに近い事を
見るとは思わなかった
10歳の頃に体験した、敗戦による価値観の180度転回が負けじ魂の原動力になったという奥山玲子さん。ドラマの奥原なつは、両親喪失&一家バラバラという悲劇に見舞われましたが、柴田家の暖かさのお蔭で真っ直ぐな娘に成長。そこに今度、その価値観逆転の加害者側(児童視点で)の弥一郎さんが妻を失った「哀しみと恨み」を胸に秘めた男として登場。
番長とのファーストコンタクトで垣間見せたように、実は今もマグマのよう強い怒りの感情を押し込め続けているなつ。弥一郎親子とのふれあいが彼女にどんな前向きな影響を与えるのか、これらかのお話にますます興味が湧いてきました。
先週末の、降りしきる雪の中、歩き続けるなつの姿は、なつの心の苦しさを象徴するものではありましたが、しかし、はたから見れば、その姿は注意力散漫な危なっかしい姿。もし砂良がチコちゃんだったら、「ボーッと歩いてんじゃねえよ!」といったところだったでしょうか。
気がついてからの、どこかボケとツッコミのような、ついクスりとしてしまうやりとり。
その直後に弥市郎の口から語られるあまりに重い過去。
弥市郎らの言葉を受け止めて、柴田家に帰ってきたなつ。今日のラストはちょうど牧場に入って来るところまででした。
明日、なつは何を語るのでしょうか。
週末の泰樹発言には参りました。
なつの東京行きが現実味をおびてきて、焦りもあったんでしょうね。
本当の家族にさえなれば、、、
でも、なつの側から見れば、“本当の”って事は今は違うの?、と。
このすれ違いは悲しい。
謝るなつ、謝るな、と外へ出る泰樹、追いかけようとするなつ。
この場面には泣けました。
吹雪から救助され、見知らぬ山小屋で目覚めたなつ。
壁には木彫りの熊や、弓と矢。
阿川親子は、まだ確定ではありませんがアイヌなんでしょうね。
弓矢が見えた時には、アシリパさんが思い出されました。
今後、物語にどう絡んでくるかが楽しみです。
ゴールデンカムイの原作の方も、武者さんの予想が当たりそうな流れに。
やはり、少尉という存在は短命なのか、、、
阿川親子が共にアイヌなのか
亡くなられた奥様がアイヌなのか
分かりませんが、色々と想像できますね。
私のように詳しくない者がステレオタイプのアイヌ像を更新出来る機会となるのではと期待しています。
ちょっとググると出てきますが木彫りの熊はもともとアイヌが作っていたものではないようです。
木彫りの文化はありましたがカムイである熊の全体像を彫ると言う事は数少なかったそうです。
あとタイトルが36話になっています。
阿川親子の名が砂川に、31話の本文では新人アニメーターの名が大山になっていますが、下山です。