女の子に優し過ぎる男
ここで雪次郎は新劇の話をせがみます。
しかし、さっちゃんに会いたいと咲太郎は断る。
「疎開中に親を亡くしたんだ。優しくしてやってくれ」
佐知子の過去をそう説明する咲太郎。孤児仲間だったんですね。
新宿を生き抜く同志って、そういうことか。
しかし、ここでナレーターの父が説明を始めるのです。
咲太郎。
それは愛情と道場の垣根がない男。
しかも、女の子に限って優しすぎる。
女の子に限って。
大事なことなのか、二回強調されます。
やはり……こいつはそうだったか。
ナレーターの父がしみじみと語るということは、やっぱり父譲りかなという気持ちが強くなって来ます。
身を落ち着けるまで、いろいろあったんじゃないですか、お父さん!
そんな兄の魔性が、好ましいどころかちょっと怖いのか。
なつは戸惑っています。
壁に貼り付けるのは、夕見子の合格祝い写真です。
新聞には不掲載でも、いい写真になりました。
泰樹の和装もいいですよね。
どうやったら家族になれるのか。そう戸惑うからこそ、手紙ではなく絵を描くなつ。
こうして描くことで、自分の気持ちに向き合っているのでしょう。
もはや安定感「とよババアvs泰樹ジジイ」
新宿から、帯広の雪月に場面がチェンジ。
柴田家の泰樹と富士子が来店したようです。
もう、とよババアが出てくるだけで、圧倒的な存在感と安心感がある。
雪月コラボカフェを作ってくれ。
そしてそこに、とよババア等身大パネルを設置してくれ!
「顔を見に来てくれたのぉ!」
「見に来てない。はんかくさい」
「寂しいのかい?」
孫娘二人の離脱を気遣いつつ、イキナリからかいます。
とよババアの前では、泰樹ジジイすらこうなる。どこまで強いんだ、この総大将は。
そんな総大将をくぐり抜け、雪之助へのお礼として牛乳を差し出す泰樹です。
すると雪之助が、試食としてクリームソーダを二人に振舞いました。
東京ではパフェよりまだこっち。そんな説明を入れています。
昭和レトロの味クリームソーダ。
『ひよっこ』ではみね子が感動しておりましたね。
ああいう未知の味覚を、どうやって画面を通して伝えるか。
NHK東京の本気です。
綺麗に映っていればいいってものじゃない。演技を通してこそ。
富士子は、アイスクリームも夕見子やなつのように変わると感慨深げです。
雪次郎もこのソーダのようなものかと、妙子も感情を噛み締めているようです。
とよがここで、なに感慨に耽ってんだ!と母親二人に軽くジャブを放つのでした。
いちいち強い!
日本一めんこい顔でクリームソーダを飲む男
話題は、咲太郎のことに及びます。
なかなかいいお兄さんだってさ。雪次郎が懐いているのでしょうか。
最初は、追い出されたと誤解していたんだと、雪之助が語りました。
柴田牧場のような心の広い人にとんでもないことだと義憤すら見せるのですが、おいおい、犯人はアンタでしょ!
ここで泰樹が、じっくりとクリームソーダを味わい、照れたような顔で、
「おかわり」
とせがみます。
もうクリームソーダのことしか考えてないべさ、と突っ込まれる泰樹なのですが……その顔が卑劣ですよ、めんこすぎて卑劣!
『ひよっこ』のみね子も可愛らしかったものです。それに匹敵するかもしれない。
『真田丸』同様、いかに若手俳優が頑張ろうとも、その頂点に草刈正雄さんが君臨する本作。
クリームソーダを巡っても、美しい女優を上回りかねない、おそるべきめんこさを見せつけてきおった。
こんな使い方をしていいと思っているんですか! いいんです、この調子です。
これからも、この泰樹に甘いものを提供し続けましょう♪
野上のクールな接客指導
舞台は川村屋へ。
そこにいるのは佐々岡信哉でした。今日はスーツ姿です。
「ノブさん!」
そう話しかけるなつに、野上が咳払いをします。
今度は声を潜め、信哉に話しかけるなつ。
野上が、こう許可を出します。
「座ればいい」
この場面も、さりげないながらいいですよね。
なつが大声を出すとたしなめる。そして着席の許可を出す。
前作****の喫茶店接客は最悪でした。
従業員の*ちゃんが奇声を頭のてっぺんから出して大騒ぎ。そんでもって、当たり前のように客席に座る。
あんな飲食店どこにあるというのですか。
思い起こせば、あの作品は最初のホテル業務からしてそうでした。備品缶詰泥棒のコック、モデルにセクハラをして当然と考えている画家、身勝手な投資で事業を破綻に追い込む金融機関理事長等、職業倫理が最低のドラマでした。
開拓者たち
彼は大学卒業後、第一志望の新聞記者には不採用でした。
その代わりに放送記者として採用されたと言います。
「これからは新聞より大きいかも」
「すごいなあ、開拓者なんだね、信哉さんも」
なつはにっこりします。
いいですねぇ、こういうテレビ黎明期の描き方って。
黎明期と今を比較する意義も、きっちり辿ることでしょう。
「テーーーーーレーーーーービーーーーーーやーーーーーー!」
という素っ頓狂な声、顔芸、大げさな演技でテレビ黎明期を表現した****との落差がね。演技派のパフォーマンスを台無しにするような、酷いものでした。
なつは、そんな信哉とドコかに行きたいようです。
一方、咲太郎は女優・亀山蘭子の付き人をしていたのか。
東洋撮影所にいました。
目の前を通ったのが同社の大杉満社長だと知ると、猛烈に走って追いつきます。
考える前に行動する奴なんですね。さて、何を企んでいるのか?
咲太郎は、大杉社長に何者かと聞かれ、元気よく返事します。
劇団・赤い星座所属だそうです。
赤い星……『ひよっこ』でもロシア民謡を通して触れられていましたが、ソ連オマージュ劇団かな。演目がチェーホフでしたしね。
なつは、信哉を風車に連れて来ていました。
「赤提灯……」
戸惑う信哉。赤提灯のムーランルージュですね。
店の中には、藤正親分がおりました。
なつを見た亜矢美は、
「彼氏とご一緒? 何か御用?」
とからかうように声をかけます。
亜矢美って、服装、言動、所作といい、赤提灯の女将ではないんですよね。うまい演出と演技です。
なつよ、一体何をする気だ――。
そう父が告げる中、次回へ。
魔性の男がやって来た
それにしても、咲太郎。
女の子に限って優しすぎると言われる男!
『半分、青い。』のマァくんに次ぐ、魔性の男を出して来ましたね。
バブルにかかる平成のマァくんとは違う。
昭和の魔性です。
「別に女たらしになりてぇわけじゃない。勝手に惚れられんのよ。参ったな」
ってかぁ! こういう奴でしょ。
ちなみに萩尾律は、顔、頭脳、収入以外はそこまでモテ要素はないと思います。
もちろん、魅力的です。
一途で研究気質で理屈ぽい。ガチの専門的な話を延々として、避けられかねないところがある。あいつは結構な変人ですよ、となりかねない。
鈴愛にも指摘されたように、高飛車と取られかねない発言もちょっとあります。マァくんとの対比で、そこがうまく表現されておりました。
「佐藤健さんなのにキモ〜い」
とまで、一部からは言われた律。
理解できない人がそう言っていただけでしょう。
律はいい奴。それに、彼はあれでいいんです。
鈴愛と深く思いあっていればそれでいい! モテモテでなく、魔性でもない、不器用なんです。
**さぁんは、って?
パンチラと入浴で女を飼いならす、ただのクズでしたね。ハセヒロさんの無駄遣いにもほどがあるってもんでした。
成長した子供たち
そんな魔性の男である咲太郎は、新宿編を大きく引っ掻き回していきそうです。
優しすぎて気がつけばモテている。
考える前に行動してしまう。
何がすごいって、子役時代からその片鱗はあったところですね。
賢い。機転が利く。
幼い頃は、愛くるしい少年であった咲太郎。
それが育って魔性の男になっていて、厚かましい。
人間ってそういうもんだろうなぁ、そうしみじみと思えます。
本作の人物って、幼い頃から変わらない本質があるんですよね。
なつには、幼い頃から持ち合わせた繊細さや感受性の豊かさがあります。
そこに泰樹の開拓者魂を持ち合わせ、実に強い女性になりつつある。
信哉にも、きっと空襲からなつを救った機転と勇気があるのでしょう。
そんな子供時代があればこそ、子供の夢を目指すなつが心強く思えるのです。
自分が夢をもらったように、夢を与える側に回るんですね。
戦災孤児たちの苦しみや悲しみだけではなく、その後の強い歩みや生き方まで描く本作。
昭和の歴史を丁寧に描く。そんな凄みを感じます。
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文:武者震之助
絵:小久ヒロ
北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
のぶさんは本人が言うように、周囲の人に恵まれたのもあり、学業を修めて堅気の仕事につくことができましたが、子どもの頃を見ると、より生き延びるための才気が輝いていたのは咲太郎の方でしたよね。
咲太郎はもつ力を徒花のように散らせてしまっているように見えます。
また、泰樹は、武者さんもレビューでおっしゃっていたかと思いますが、自分の力で人生を切り拓こうとする姿勢を無視できない。だから幼いながら牧場で働こうとしたなつを受け入れるし、自分の道を見つけて東京に行こうとしたなつを止められない。そしてだからこそ、大事な相手が自滅に向かおうとするとき、そこに殉じることはできないのだろうと思います。一緒に自滅できない自分を呪いながらも、見送るのだろうなと。
新宿編の咲太郎は、その点も泰樹に比べて危いように思えます。浮浪児として生きてきたのだから余程したたかだろうに、なのに危うい。でもそこが魅力となって、やはり生き延びてもきたのでしょうし。
生きる力とは何なのか、家族とは何なのか、人を支えるにはどんな厳しさが必要なのか、色々なことを考えさせてくれるドラマです。
連投失礼しました! 謝
それにしても雪之助がすぐに「いい兄ちゃんだ」と請け合ったように、咲太郎は会う人会う人がその真っ直ぐな心根を感じざるを得ない、誰にでも理解してもらえる、天性の人たらしなんだろうなとしみじみ思いました。だれもが彼に好意を持つし、悪い人間だとは思わないのですね。甘やかされることもある。
野上などは、彼のそんなところが鼻につくのだろうなあと思います。
また、孤児あがりでしっかりしているように見えても根がやさしくて真っ直ぐなことがダダ漏れだから、誰かがそこにつけこもうと思えばつけこめてしまう。それで騙されたのだなとしみじみ納得でした。
いろいろ考えが巡る朝ドラですが、今日一番感じたのは、泰樹と咲太郎の違いでした。
なつが一番最初に北海道にきた時、天陽の家族を助けるとき、泰樹は相手の覚悟を見定めているように思えます。それが開拓者として生き延びてきた彼のやさしさだと思うのです。当人に覚悟がないものを生半可に助けても意味がないのと知っているのかなと。
咲太郎は、彼自身には覚悟があるように思えます。それは、助けられなかった母や、手放さざるを得なかった妹たちを、父の代わりに助けるという男子としての覚悟に思えます。それが咲太郎の生きる意味になっているようです。だから無条件に「俺に任せろ」につながるのかなと
ただし、今回の咲太郎の「俺に任せろ」はちょっとネタ的に連発されていたようにも思えました。幼い頃なつを北海道に送り出した決断や、前年再会したなつに、自分を忘れろといった思いも、自分の無力を知り、自分の身を削ってもそこに大切な人を巻き込まない、彼の己への厳しさ・奥ゆかしさ・怯えに思えます。そこからすると「任せろ」と安請け合いを連発しないようには思えました。でも、今回もすぐに撤回したので、やはり根本は変わっていないのかもしれません。
前回ラストのなつの言葉。
やっと再会した肉親が…と切なくなりましたが、歩くうちに冷静さを取り戻したのですね。良かった。
10年の歳月の間には、それぞれに大切な家族ができてしまい…
しかし
咲太郎も、「俺に任せろ」が、これほど「任せたくない」感を振り撒いてしまうというのも、ある意味スゴイ。
一人で盛大に機雷を敷設してまわり、甚大な触雷被害を生じさせた挙げ句、また一人でせっせと掃海してまわった雪之助も。
こういう笑いなら、朝からいくらでも。
やるねえ。
北海道編と東京編に出てくる人の質が表向きは全然違うけど本質は人間としてどちらも優しいのは脚本家さんの人を見る眼なのでしょうか。野上さんも世間が認めるような絵画でもないアニメーションを目指すなつの様を子供の遊びだと思っててムカつくなーと思っていたのですがやっぱりそれだけじゃない人なんでしょうね。いつかなつを認めても多分夕実子のようにそっけなくなんだろうなとか思うと可愛く思えてきました。咲太郎が狂言回しになっていますが彼にとって自分より年下で少しでも気の毒な身の上の子は皆妹たちに見えていたのかなと思いました。本人は自分が心配してやってるつもりで実は心配をかけているのに気付かないお兄ちゃんではなつも安心できない気がしますが北海道編とは違うコメディの色も良いなぁと思います。
キャラとしてはある意味安定している咲太郎よりお菓子修行より演劇の方向を向きつつある雪次郎が気になります。