なつぞら48話 感想あらすじ視聴率(5/25)悪の道に転げ落ちても不思議なく

生き方を探すひとびと

こうしてなつの新宿生活は始まるのです。

雪次郎は、粉をこぼすなと杉本に注意されています。
杉本は口が悪いのですが、そう間違った指導でもないのです。
こぼすとどうしてダメなのか。滑って転んだ雪次郎をからかいつつも、しっかり教えます。

そうそう。指導って態度だけでなくて、理由と因果関係の説明も大事です。
野上もこの杉本も、そこがちゃんとしていて救われます。

パワハラまっしぐら。具体的な理由を言わずに、ともかくダメだと怒鳴り散らす****の**さぁんとは違うのだよ。

ここでナレーターの父が、新宿では必死に誰もが行き方を探しているようだと語ります。
なつは仕事の合間に絵を描き、喫茶店で仲と陽平に見てもらうのでした。

「この絵でもいける」
その言葉にちょっとひっかかるなつです。

「この絵ならいける!」
という、太鼓判を押すものとはちょっと違います。

いいと思いますよ。
仲は誠実なんです。しょうもない美辞麗句で気を引こうとか、そういう器用なことはできないのです。

咲太郎とは、ある意味真逆なんでしょうね。
そのことは、なつがセル画をお守りにしていると言ったあとの反応でもわかります。

「責任を感じます……」

これが咲太郎系、プレイボーイなら、なんかモテそうなことをペラペラと言い出しそうでしょう。
縁があるね、とかなんとか。雪次郎のような一途なチャラ男でも、ちょっと違うでしょう。

それができんのよ……そういうモテとは遠い男です。
ちょっと暗いというか、そういう雰囲気がちゃんと出ていますよ。

井浦新さんの使い方を、チームがしっかりと理解している証拠です。
井浦さんもその要求を理解し、きっちりと応えているんですね。

この兄・咲太郎が危険です!

ここで陽平は、弟も寂しがっている、そして絵を描いていると伝えて来ます。

天陽もなぁ……それをなつ本人には言わないし、言えない。
兄にはポロリと。
ここで無理矢理二人を接近させない周囲にも信頼感が湧いて来ます。

兄は弟を理解しているんですね。
そういうことではなくて、絵を通して通じ合うことが、弟の愛なんだと。

なんだか切ない。なんだか寂しい。
でも、そんな天陽は絵筆を握る姿が想像できてしまう。こういう思いもあるんだねぇ……。

そんな天陽を絶対理解できない枠代表の、咲太郎がやって来ました。
なつが間に立ち、互いを紹介し会います。

ここで、あのウェイトレスのさっちゃんこと佐知子がやって来ます。

「さいちゃん、座ったら❤︎」

「ちょっと……」

「ゆっくりしていってね。なっちゃんも休憩中でしょ」

「あんまり兄に関わらないで……」

さっちゃんというか、咲太郎関連女性のすごいところは、みんな語尾に浮かぶ❤︎が見えることですね。
ただの恋心じゃない。

門倉番長にうっとりしていたよっちゃんもめんこかった。
淡い気持ちを時々雪次郎に見せていた、あの夕見子ではありえない。砂良とも違う。

そういうのとは、何かが違う。
もっとこう、浮かれているというか、なんというか……。

魔性にメロメロになった――そういう❤︎が浮かんでいます。
なつがそんな佐知子を制するのは、これは依存症になるから気をつけてと言いたい。そういうことかも。

そんな妖しい空気がちょっと漂う中。
咲太郎は妹がものになるか? とズケズケと仲に聞きます。

仲も陽平も、誠実です。
儲からないしきつい。そう告げるのです。

だからこそ責任感を覚えるわけですね。妹の援護を頼まれても辛いものがあります。

「あんたが誘った。責任重大だよな。裏切ったら海に浮かぶよ」

なつが、兄のしれっとしたヤクザジョークにギョッとしています。
どういう生き方して来たんだ、咲太郎よぉ!

この路線。これは沖縄ですが……

あ、この咲太郎。往年の千葉真一さんとか、北大路欣也さんとか、渡瀬恒彦さんぽさが出て来たかも。
なんだかすごいことになってきちゃったぞ、岡田将生さん!

そんなヤクザジョークの兄はさておき、陽平は書店で買って来た本をなつに渡します。
アニメ用ではないものの、馬の動きを連続撮影した写真集でした。

なつは感激します。
決して安くもないでしょうに、陽平はいい人ですね。

東京での日々を過ごして

ここからはアニメに切り替わります。
東京での日々がやさしいタッチで描かれるのです。

アニメとは何か。それがわかるよい演出です。
技術だけではなくて、なつが育んだ感受性の発露だとすっきりわかるのです。

そして二ヶ月が経過し、試験当日――。
全国から絵心ある若者が、会場に集まって来ます。

なつが握りしめているのは、泰樹からもらった懐中時計です。
それを手にして、じいちゃんに健闘を誓います。

なつよ、その扉、推し開けよ――。

そうナレーションが告げる中、来週へ!

女難ルートはかくして始まった

すごくいい話です。
感動しました。美しい。

しかし、そんな感動を打ち消すようで恐縮ですが、咲太郎はちょっとあやうい道に踏み込みましたよね。

「女難」の道だー!
女難といっても、女のせいじゃない、複合的要因ですが。

かつての咲太郎は、父と同じ料理人ルートを目指していたはずです。
うっすらと、そうでした。

それが亜矢美と出会い、救われて、ショウビズの世界に踏み込んだんですね。
そして、女に救われ、救った体験があまりに甘美でそこに酔っ払ってしまったのでしょう。

その結果が、マダムへの莫大な借金。

ストリップバー勤務。そのダンサー・ローズマリーとの火遊び。

レミ子の心の操を奪う。

佐知子をメロメロにする。

全部、咲太郎のトラブルというか、騒動は女絡みなんだよなぁ。
その悪い癖が、なつ関連でも出てきました。

コネと口利きでなんとかしようとすること。
それだけ厳しい世界を泳いできた癖といえばそうですが。どうなんでしょうね。

「俺の口利きで成功したぜぇ〜!」

そういうことを言い出したら、よくない兆候です。

おまけになつの恩人である仲に、責任重大だと凄むわ。
海に浮かべるだわ。

根は悪い人ではない。
ただ、トラブルメーカーになりつつある。
そんな咲太郎なのでした。

昭和の暗い道へと踏み込んだ

朝ドラは、やっぱりさわやかな印象があります。

モデルの周辺はどす黒いものが渦巻いていたにも関わらず、クリーンアップした作品はあったものです。
その極め付けが、NHK大阪の『わろてんか』と****でしょう。

芸の世界の黒いところ。
そういうものをきっぱりと消し去った結果、おままごとになった前者。
モデルの逮捕歴、捏造経歴、婚姻関係まで真っ黒だったと、ドラマ化のせいで暴かれた****。

ハッキリ言いましょう。
あんな真っ黒けモデルをドラマにした時点で、朝ドラ枠に仁義も道徳もあったもんじゃありません。

それでも一応はお行儀良くする。
そんな建前を本作はぶっ壊してきた感があります。

それが咲太郎周辺です。

戦災孤児をストリップ業に動員させていた浅草の劇場。
博打で盗品をやり取りする芸人たち。
藤正親分。
借金のカタに労働というのがあり得る世界。
孤児同士がリンチしあう殺伐とした新宿。

真っ黒けではありませんか。

咲太郎は、今後どんな悪の道に突き進んで転げ落ちても不思議はない。
そして咲太郎には、そうならない道もあったはず。

信哉がそうでしょう。
そこをあえて踏み外してきた本作。咲太郎は罪深い奴ですよ。

咲太郎周辺の色気も厄介でして。
朝ドラモデルに不倫歴があること、婚姻関係に問題があったことも、なかったわけではありません。

『カーネーション』は果敢にもそこに挑んだものですが、そこは避けた方が無難でしょう。

そこへもやっぱり咲太郎が踏み込んでくるわけです。

咲太郎が面白い。
なんなんだこいつは!

北海道から移って大丈夫なのか、と不安でしたが、咲太郎が暴れる限りなんだかんだで楽しく見られそうです。

このキャストそのまんまで、昭和アウトロー映画やドラマを作っても面白そう。
そんな期待感すら湧いてきます。

あ、いや。なつの道も気になりますからね!

※スマホで『なつぞら』や『いだてん』
U-NEXTならスグ見れる!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!

【参考】なつぞら公式HP

 

10 Comments

あねもね

救われた咲太郎と正しいラーメン!
からの、輝いていた亜矢美のレヴュー!
からの、2人のタップダンス!!

気質が似ていて、舞台を愛する2人が運命的に家族になったこと。
コンパクトなシーンからヒシヒシと伝わりました。なつが時間をかけて柴田家の娘になったのとは対照的ですね。

やはり辛い境遇であろう亜矢美にとって、咲太郎はかけがえのない存在。
血の繋がった妹が突然現れた戸惑いと兄妹を結果的に引き離していた負い目が、観ていて切ない週でした。

しっかりした子供のなつ
老けた浮浪児の咲太郎
行方知れずの千遥

約10年離れて生きた兄妹の行く末が、それそれに幸せなものであって欲しいです。

乾燥芋

ひよっこ大好きなので早く修正してください。

匿名

或点不意寄るど!様
指摘のコメントを書いた者です。
恥ずかしながら『べっぴんさん』を視聴していなかったため
そういった描写があるのかどうか判別がつかず、察することができませんでした。
不快な思いをさせてしまったようで申し訳ございませんでした。

ガブレンツ奮戦

前回、ごく短いシーンながら、鈴木杏樹さんが登場しました(亀山蘭子役)。昭和30年代の女優さんを表現したのでしょうが、最近の『相棒』シリーズや『ZIP!』等での姿とは全く違った姿。若々しい美しさという感じでした。先週の予告では彼女とは気づかなかった程。
マダムの比嘉愛未さんの魅力はレビュー本文やコメントで語られていますが、この亀山蘭子の鈴木杏樹さんも実に良い感じです。

あえて鈴木杏樹さんをキャスティングしているからには、この亀山蘭子という登場人物も、今後の物語の中で意味を持ってくるのでしょう。
そうなってほしいな、という期待は強くあります。

904bis型

文脈上は、確かに『べっぴんさん』を『ひよっこ』と誤記した可能性はありそう。

ただ、もしそうだとすると、
『べっぴんさん』の場合、すみれ達親の側は、子のさくら達の入社には強く反対しており、入社を巡るすみれらの当惑や悩み、さくららの側の自己過信等による摩擦などは、物語後半の主要エピソードでした。

さくらの描き方として、浅はかさを強調しすぎだったのでは? それが作品の評価を下げすぎることにつながりはしなかったか? というのは、『べっぴんさん』を評価する上での主要論点でもあります。

最終的には、良い結果に結びつく描写としたのではありますが、そこに至るまで長い期間と努力を要したことも描かれていました。ですので、「『べっぴんさん』は縁故採用を肯定的に扱った」とするのは早計であり、『べっぴんさん』の正当な評価とは言えないと思います。

或点不意寄るど!

文脈上、また内容的にも、『べっぴんさん』と書こうとして『ひよっこ』と誤ったと見るのが妥当。

嫌味ったらしく書く必要はなく、簡潔・明瞭に指摘すれば足りる。

匿名

『ひよっこ』の身内採用というのは、みね子がすずふり亭に雇われたことという認識で大丈夫でしょうか?
あまりそういうイメージは無かったのですが、父親が世話になった縁から…と考えれば確かに縁故採用の一種になるのかもしれませんね。
流石武者さん、思いもよらないところに気づかれると感服しました。
しかしながら指摘させていただくと、『ひよっこ』は大阪制作でなく東京制作ですね。

こけにわ

TEAM NACS ファンの道民の方々は、
安顕さんを保護者目線で見てハラハラしてしまう、そうですね。
Twitterで見て笑ってしまいました。

雪之助さんが酔った時のことは忘れる所は、道民の突っ込みが入ったかな。
お前だよ~!北海道はいいなあ。

むらた

前作のラーメンシーンでは一切泣くことはありませんでしたが、今朝の咲太郎君のラーメンシーンは一緒に泣きました。そして亜矢美さんと咲太郎君のタップダンスの場面では今度はすごく嬉しくなって泣きました。ええドラマや。

904型

亜矢美が腹中に抱えていた隠し事。
それは「咲太郎を手元に置いて離さなかった後ろめたさ」だったわけですね。
でも、誰が悪いわけでもない。
なつが店を訪れて、こういう形でわかりあえてよかった。

それにしても、亜矢美は信哉のことも知っていました。「ノブ」と。
焼け跡の中で、身寄りもなく生き延びてきた人達。咲太郎の言うところの「戦友」。時にこういうつながりになって形を現すこともあるんですね。
十勝編で、泰樹が、酪農初期に利益を度外視して支援した乳業メーカーのことを忘れられなかったこととも、どこか通じるような(→※もっともこちらは結果的に利用されてしまいましたが)。

こういう「人の縁」は、本作の柱の一つかも知れません。

それから
その後のなつの二ヶ月間を表現したアニメーションは、なかなか効果的だったと思います。
今後も要所要所で活用されると良いと思います。

あの大失敗の「新宿の街角」も、アニメーションでリアルに、印象的に表現していたら良かった。後知恵ですが。(←まだ言ってるし…)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA