ここは腰掛け、花嫁候補選びの場
東洋動画では、なつが新宿暮らしだと聞いて、モモッチの目が好奇心でキラキラしております。
「毎日遊びに帰るようなもんじゃない!」
「遊んでないってば」
彼女は、結構、素朴な環境からやって来たんでしょうね。
出身も新宿なのかと聞かれ、なつは日本橋生まれ、北海道育ちと答えます。
スタジオ前で、仕上課のなつとモモッチの2ショット。#朝ドラ #なつぞら #広瀬すず #伊原六花 pic.twitter.com/ejqgaishO2
— 【公式】連続テレビ小説「なつぞら」 (@asadora_nhk) June 3, 2019
苦労人だと感心するモモッチ。そうでもないと謙遜するなつ。
謙遜でもなく、北海道の暮らしが楽しかったことは確かなのでしょうね。
ただ、あの豪雪、酷寒、時々過酷で危険な酪農経験ですから、やっぱり苦労人と言えると思いますよ。
ここでモモッチは、職場にはお嬢様が多いと言います。
花嫁になるまでの腰掛けという意識であれば、給金が安くても問題にならない。そういう認識で雇っているとモモッチは言うのです。おっ、鋭いな!
モモッチは、自分は違うと断ったうえで、ここへは遊びに来ている感覚の人も多いと言います。
野上の態度にも頷けるものが出てきます。
確かに、彼の言葉通りの怠け者も結構いるのでしょう。
なつが職場に目をやると、男性社員の山根が若い女性社員に囲まれ、浮かれております。
「そうなんですか……」
なつはそう言います。
おめでとう、なつよ、おめでとう。
きみも、やっと浮いている自覚をちょっと感じてきたね。
出たぞ……怒涛の水曜日に向けて、大森氏が不穏要素を重ねて来たぞ。
白娘子伝説、それは「かわいいは正義!」
なつが読むことを通して『白蛇伝説』のあらすじが語られます。
日本にも伝わり、定着した古典です。
『雨月物語』の「蛇性の婬」も、これがベースとなっています。
女性の性的な奔放さを、
「あの女は蛇のようなものです!」
と批判し、たしなめる言葉の由来でもあります。
中国では、狐や蛇の妖怪が美女に化けて、男を誑かす神話があったもの。
安倍晴明の母のような狐が美女に化ける話も中国が元ネタです。
当初、これは警告でした。
「おわかりいただけたであろうか? この世のものでもない美女に誘われ、ホイホイいやらしいことをすると、ひどい目にあうのである……」
唐代あたりまではそうなんですけれども、時代が下ると、これが世のムーブメントにより、アレンジされていきます。
「人間じゃないからってひどいよ! こんなにかわいくって、一途で、ストーカー気味でヤンデレだけど……そんな白娘子たんをいじめるなんて絶対に許さない!」
「かわいいは正義! 蛇だろうが、かわいいは正義です!」
お前ら、どっかで見たことあるようなノリで、原典を乗っ取りやがって!
そうとしか言いようがありませんが、史実です。
ちなみに、惚れられる主人公の許仙も、どっかで見たようなヤレヤレ系なところがあるんです。
「ヤレヤレ……ヤンデレの白娘子に惚れられて、ったく……」
ちなみにこの許仙も、イラつく性格でして。
「人外ストーカー怖いんですぅ!」
と、白娘子を訴えおったクズ野郎と罵倒されるポジション。
「なんでわしが悪役なんや! 人外ストーカー退治しただけやろ!」
そう愚痴りたくなるのが、法海和尚ですね。
本来、人外ストーカーを倒すはずが、純愛を邪魔する空気を読まないジジイ扱いで嫌われるハメになる。
そもそもが、許仙がこいつにヘルプを求めているあたりが、もうわけがわからんね。
ちなみにアニメでは兵隊を派遣していますが、原典ではスーパー妖術対戦になります。
これも映像では見どころでしょう。
中国の古典怪談で、美女と恋愛するものはだいたいこんなかんじです。
ゾンビ相手だろうが、幽霊相手だろうが、蛇相手だろうが、狐相手だろうが、妖怪相手だろうが。
子供も作れるし、なんのかんのでハッピーエンドばかりです。何百年もかけて、ファンがそういう風に改めてきました。よかったね。
白娘子を法海が封じたという雷峰塔が倒れたとき、喜んだ人も多かったそうですからね。
「白娘子たんやったね、法海ざまぁ!」
ハッピーエンド改変、聖地巡礼、カップリング論争、コスプレ、二次創作。
そういうものは日本のオタクだけかと思われるかもしれませんが、中国ではだいたい何世紀も前に通過しています。
イギリスにおけるシェイクスピアオタクも相当なものなので、そこは気をつけましょうね。
※映像化も定番の作品です❤︎ かわいいは正義❤︎
アニメですし、朝ドラですし、キュートな悲恋になっておりますが、原典やその準拠作品は、なかなかいやらしくけしからんものもあります。
ご興味がある方は当たってみてください。
嫌われマコの攻撃
なつはそんなストーリーを学び、うっとりしております。
プロットをふまえ、自分でしてみるといいと下山に聞かされ、納得しているのです。
そこで、不穏なやりとりが聞こえて来ます。
「やはりこれでは駄目だ。やり直してもらえんか」
出た、マコのダメ出しです。
「表情が死んでいる」という彼女の指摘がちょっと面白い。
あなた自身の目も……いえ、何でもありません。死んでいるというより、暗い情熱ですね。
相手はムッとしています。
原画通りに描いて何が悪いのか。そうなるわけです。
そこでますます、マコは突っ込むのです。
「だから駄目なのではござらんか。原画通りを描き写して何が面白いのか。自分でどうなるか想像もできぬとは……もうよい。それがしに任せよ」
そのやり取りを横に、なつは泣く白娘子のボツ絵を手にしました。
そして噴水のところへ出向くと、マコの矛先がなつに向けられます。
「お前は、何をしにここに来ておるのだ……」
外に出て来た瞬間、噴水の奥の方からヌーッと出てくるマコ。
怖いってば!
「ここにまで来て結婚相手探しとは。そのことばかりを考えていて目障りだ。毎日派手な格好をしおって。男を探したい。そんな気持ちが顔に出ておるわ」
おいっ、マコ、おいっ!
マコのマは政次のマ〜〜〜!
「目障りな奴だ。我が目の前をうろちょろできると思うなよ……」
なつよ、それが初めて味わう、何というか、会社の人間関係?
父がナレーションでそう言いますが、むしろ乱世じゃないか。
火曜日に小野政次が敵意を見せる……恐ろしい世界だ。
ファッション戦士のかぶく道
前回の『いだてん』がジェンダー関連描写で壊滅的でした。
あっ、どのように酷かったのかは確認していただかなくて結構です。
壊滅的になった理由がこうなら、納得できます。
「このドラマのジェンダー描写はなんだあっ! 監修者を呼べっ!」
「すみません、『なつぞら』班にとられました」
「あっ、そうなの」
そう思いたいほど、今回は鉄壁ですね。
まず、亜矢美の着せ替え人形ウッキウキ描写。
女で言われる“あるある”として、
「ババアは若い女に嫉妬する」
というお約束があります。
そりゃなんか違うんじゃないか? ということでして。
まだ『眠れる森の美女』の時代なのか。
今はもう、ディズニーですら『マレフィセント』なんです。
男女問わず、若いお肌や髪の毛を見てウヒョーッ! と、テンションはあがるものなのでしょう。
亜矢美がこの典型。
こんなにかわいいなっちゃんで着せ替えできるなんて、楽しすぎるぜ、ヒャッハッハー! 状態になっております。
自分の体形や顔色では、しっくり来ない服もある。
そういうところをカバーできる子が着てくれるならば、むしろウェルカム。
ヒャッハー! 嫉妬している暇はねえ! そういう心理を感じます。
亜矢美には、そういう女同士で競い合う、ファッション戦士感もあります。
実は彼女が一番気合を入れたファッションになったのって、同性のマダム相手の時なんですよ。
それに、男性受けというよりも、ファッション戦士同士での戦いを意識しているっちゃ、そう。とんがってるんだ。
「モテはどうでもいい! かぶくのじゃああ!」
そういうことです。
いわば戦闘服ですね。
前田慶次が派手な格好をするような心理です。
実は、こういう個性の強いファッションって、モテないし、痴漢にも遭いにくいんですよね。
『半分、青い。』のひしもっちゃんも、その典型例でした。
ああいうファッションはかわいいメルヘンチックな女性が好むという誤解がありますが、そうでもない。彼女もシャープな軍師でした。
男とかどうでもエエ。
自分と仲間内で盛り上がればそれでエエのよ。
亜矢美に惚れている常連客には気の毒ですが、彼女はそういう湿っぽい色気がそこまでない気もしますね。
むしろ、咲太郎の魔性にメロメロになるマダムに突っ込むくらいでした。かなり豪快で、さっぱりした、そういう気性なのでしょう。
だがそれがいい!
そういう女性です。とびきり魅力的です。
花嫁修行をさせるのは誰だ?
マコが、そんなファッション戦士のセンスを理解できない。
これは仕方のないことです。
小野政次並の黒いファッションだからさ……似合うから? 好きだから? 汚れが目立たないからという答えでも、全くこちらは驚きません。
それにしても、モモッチとマコの反応で、昭和のひどい社会をきっちり描いたのはすごいことだと思いますね。
『いだてん』では、結婚できなくなったらどうなるのか? と嘆く女子生徒に対して、男性教師が嘆いていました。
そんな意識でどうするのか、って。
ここがもう決定的にダメです。
ナゼか?
というと、そう仕向けたのは社会だからですね。
女性が働き続けることは、けしからん。
産めよ増やせよ、家庭に入れ。
社会は、そうずっと言い続けて来ました。
現在だってそうでしょう。
◆「放言・暴言・失言の製造機」桜田議員が「子ども最低3人産んで」発言で炎上の何が問題なのか(木村正人) – Y!ニュース
「どうせ、嫁に行くまでの若い女の子なんでしょ」
という言い訳は、低賃金でも許される。
モモッチはそう指摘しました。
鋭い。その通りなんです。
そうやって、働き続けると貧しいまま。つまはじきにされる。
会社をやめろと迫られる。そもそも雇用しない。
『半分、青い。』でも出てきました。
転職しようとした鈴愛が、若い職場の花になれないからと、苦労する様子が出てきたものです。
そういう構造には触れず、『いだてん』のような認識でいると、女のせいにするわけです。
「お前らのやる気のなさが問題だ」
そうじゃないでしょうよ。
そこをすっ飛ばして、男が女を変えてやらなくちゃ♪ と言い張ったから、『いだてん』はどちゃくそ最低最悪だったのです。
女の敵は女なのか?
そして明日を前にして、本作はひねった着地点を見せ始めました。
女の敵は女!
今日のなつとマコの対立は、そういう着地点になりそうですが、果たしてそうなるか?
ならないでしょう。
今回のシーンを見て、マコの動機をこう思った方。
前に出て、そこに並んでいただけますか。
「モテない女の嫉妬ですね!」
「ドラカーリス」
違うのです。
マコは、硬派なんだ。イライラしているんだ。
そんな士気、やる気のない奴は出て行け。目障りだ。こう言いたいんです。
これ、男同士なら納得できませんか?
「やかましいッ! うっおとしいぜッ!!」
黒い服のマコ太郎がそう叫び、女目当てはうんざりだぜ、やれやれ……と言う。
なぁんだ、硬派なんだ――と、なりませんか? ちょっと古いけどね。
こういうのは個人の性格です。性差ではありません。
マコはモテなんて度外視している。そういうタイプです。
本作はそういうタイプが多く、マコは夕見子の上位版かもしれません。
あの夕見子ですら、雪次郎には弱いからねぇ。
では、女のマコが、モテない女の嫉妬とされるのはどうしてか?
それは、無意識のうちに【女は男を求めるもの】だと思っているせいではありませんか?
実はこれ、マコ自身ですらそう。
なつの意識を見抜けず、こいつもああいうチャラ女だぜ、やれやれ……という状態に陥っているんだな。
しかし、ここからです。
殴り合って和解するパターンでしょう。
なつとマコは、似た者同士です。
ざっくりした指示をもとに、イマジネーションで自分の世界を作り上げる。そういう仲間です。
殴り合った末に、こいつなしでは俺は戦えねえ。
そうなるパターンを期待しましょう!
女自身ですら気付かない、そんな鎖をぶち破る本作。
そっか、ジェンダー監修者は全員こちらに集結したんだねッ!
あるいはスタッフが猛勉強したか。もともと気づいていたか、そういう意識を持ち合わせていたか。
いずれにせよ、素晴らしい試みです。
※スマホで『なつぞら』や『いだてん』
U-NEXTならスグ見れる!
↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
東映動画自体はその当時はもう大泉だった模様です。
西武線かな?
あ、そうそう、
小田急沿線か、京王線沿線という可能性もアリでしょうね。
なつとモモッチの会話「新宿から通ってる…」から、東洋動画は新宿以外の場所にあることがわかります。
でも、通勤中のシーンを描く必要はありませんから、そういうシーンは一切なし。『ひよっこ』と同じような感じです。
東洋動画の所在地は、山手線沿線か、中央線沿線か…もしどちらでもなかったら、この時代ですから交通機関は都電でしょう。
函館市でロケを敢行して、函館市電710形か800形を都電に見立ててなつの通勤シーンを描く、というのも悪くないですが…
しかし現行の、「余計なシーンはスッパリ省略」というほうが、簡潔・明瞭で好ましいと思います。
「マコのマは政次のマ~~」
何とも言い得て妙というか、
台詞を小野政次流に変換したレビューの表現、ぴったりハマってしまい、
ツボにもハマってしまい!!
初めの方の風車のシーンで、落語家師匠が語った、作品に魂がこもっていると自ら動き出す…という話、ドラマ作品についても当てはまります。
『べっぴんさん』再放送を見ていた頃、同作では登場人物各々のキャラも確立していたので、仮に無理な展開をさせようと想定しても、キャラ自体が自己修正してしまい、受け付けないなあという結論に至ったことを思い出しました。
「女の敵は女」がイヤで、勝手に思い込んで誤解していたのが『アナ雪』。女性二人が主役と聞いて、それが姉妹ということで一人っ子の私にはきょうだいの葛藤を想像するのも難しいし、姉妹が対立してというかさせられてどちらかの生き方を推奨するような話だと思い込んで、ビデオだけ買って(そのうち東京にこれをテーマにした場所ができるから予習)見てませんでした。冷静に考えればそんなストーリーだったらヒットするわけないんですけど。その後いつだったか、武者さんの何かのレビューで、『アナ雪』は二人が並び立つ話だと読んで、それで初めて見ました。
女性二人というと『直虎』で貫地谷さん演じるしのと直虎が直親のことで「すけこましー!」で意気投合したところが好きでした。というか、あれでいっぺんに好きになった。まさかあんな風に意気投合すると思っていなかったので、直虎に対してしのにきついことを言わせるのかな、言われても直虎には殺生だしそんなセリフをしのいうか貫地谷さんに言わせないで欲しいなと思いながら見守っていた先の意気投合だったから、印象に残っています。血に対する直虎と政次の話のすれ違いとか『直虎』は面白かったです。
女性二人というと貫地谷さんがらみで「ちりとてちん」のA子ちゃん、B子ちゃん。もう話もうろ覚えですけど結局二人はどうなりましたっけ?最後A子ちゃんが橋?を渡って去っていく後ろ姿が思い出されますが。
なつぞら、山口智子というか亜矢美さんが楽しそうで何よりです。私は山口智子が好きなので楽しんで見てますが、彼女のあの感じが苦手な人にはイヤだろうなあと思うとなんか余計笑ってしまいます。長文失礼しました。
「風車」の客の柳屋喬太郎さんは、岡田将生さんの前作「昭和元禄落語心中」で、落語指導と、岡田さん演じる主人公の運命を変える「死神」という噺を教えるメフィストフェレスのような役をされていました。今回の登場はそのくすぐりでもあったと思います。「ちりとてちん」の貫地谷しほりさん本格登場もあっての落語つながりだったのでしょうか。
上方落語ついては「わろてんか」のモデル企業よりも、そのライバル事務所の方が強いような気がします。鶴瓶さんもそっちの方の所属ですし。少なくとも、「蹂躙」という状態ではないのではないかと。