狙ったか、そうではないか。
詳細は不明ながら、千遥は信頼できない証言者です。
彼女が嘘をついていないという前提そのものが、おかしいということになる。それは悪意ではなく、自己防衛のためでしょうけれども。
程なくして、信哉がやって来ました。
彼は昨日撮影した千遥の写真を渡します。
「ノブ!」
そう歓迎する咲太郎です。
しかし、彼の顔は暗い。
「この写真のせいかも……」
千遥は写真を嫌がった。何かに怯えている。このことが語られます。
咲太郎はハッとします。
「後ろめたいことがあるのか、逃げたのか……」
「何よ、それ!」
なつはそうつぶやく兄に、怒ります。これも生育環境の違いでしょう。
噛み合わないきょうだい
妹を間にして、きょうだいは噛み合わなくなります。
咲太郎:悪徳置屋から逃げたのではないだろうか。俺もそういう例は見て来たからわかる……
なつ:逃げる、後ろめたいということは、千遥が悪いことをしたって言いたいの!
「話が通じないあるある」ともいえる状況です。
劣悪な学校、部活動、労働環境から逃げ出した相手を、理解できるかどうか。
これも年代差が大きいものでして、親子ですら理解されないことありますもんね。
親:嘘をつくな、そんな悪いわけないだろう! お前の根性が足りないんだ!
子:信じてくれ。あそこは地獄だ、根性でとどまったら命すら危うい……
こういうパターンだ……。
なつは悪い子ではありません。
ただ、繰り返していますが、こういう短所はあるのです。
・頑固さゆえに、柔軟性が欠けることがある
・性善説で生きていて、悪人の思考が想像できない
・感情暴発気味
ただのよい子ちゃんではありません。
以前だって、決めつけ由来で咲太郎に結構ひどい突っかかり方をしています。
でも、こういう性格だからこそ、黒軍師マコと一騎打ちしても倒れないんですよ。
芯が弱かったら危ないんですってば。
ここで剛男が、余計なことを言ってしまったと、仲裁に入ります。
信哉も謝ります。
なつたちが来てから話そうと思って、あまり聞かなかったのだと。
「なんで、もっと話を聞いてくれなかったの!」
なつは思わずそう言い、謝ります。
「……ごめんなさい」
しかし信哉の一件が強く影響したとは、その場に居た誰もが感じていませんでした。
千遥は、朝食では明るく笑っていて、そんなそぶりもなかったのです。
いささか場がとりとめのない状況になったところで、黙って話を聞いているだけだった総大将・泰樹が動きます。
「なつ」
彼は牛を見に行くように促すのでした。
総大将・泰樹を信じるのじゃああ!
泰樹は、牛の前になつを連れて行きます。
この牛を相手に、千遥は嬉しそうに搾乳をしていた。
「昔のお前と同じ……あの笑顔に、嘘はなかった。わしが保証する。心配するな……必ず、あの子の方から知らせが来る」
そう力強く言います。
やはり千遥別人説は却下ですね。
本レビューにおいて、泰樹(真田昌幸)と、とよ(徳川家康)は、総大将だと何度も言い続けてきました。
これも、ただのノリではないんじゃあああ!
作劇上、この二人の言うことには嘘がない、真実であり、実現することが示されています。
ややこしくなった事態を解き放つ役割があります。
泰樹が照男となつの結婚を画策した計略は外れました。
あれはメインプロットを塞いでいることと、かつ動機に自分勝手なところがありましたから、例外でしょう。
総大将がこう言う以上、千遥は別人ではなく、柴田家で安堵していたことは確かだと思えます。
総大将の言葉を信じて、安心しましょう。
今の彼は情緒ケアもできる、完成した表裏比興ですね。
それが発達途上・表裏比興との違いです。かつての彼ならば、あの性格と突撃力で、警察に捜索を頼むとか、ビラを作るとか、そういう方向性にすっとんでいって、なつの心理は放置するかもしれません。
自分の考えを述べたうえで、相手の気持ちを気遣う。
これこそ知略99の完成形です!
なつの服を着たままいなくなった
なつは、富士子の案内で千遥が泊まっていた部屋に向かいます。
そこには藤色のワンピースがハンガーにかけてそのまま残っていました。
千遥の服です。
この部屋で、千遥はなつの寝巻きを着て、寝ていたと説明されます。
「なつの服を着たままいなくなった」
服を残しているというのも、何かのポイントかもしれません。
計画的であれば、着替えるか荷造りをしていてもおかしくないのでは?
軽装で、手荷物が少ないということは、やはり突発的な行動という気がします。本作は、手抜きで荷物なし移動をするようなダメなドラマではありません。
砂良は、咲太郎お兄さんと、照男お兄さんが一緒に寝るようにと言います。彼女自身はなつと眠るそうです。
咲太郎は照男にこう言います。
「砂良さん、おめでとう。二人幸せになれば何よりだ」
それを聞き、照男は申し訳なさそうにうなだれます。
「千遥さんのこと、力になれなくてすみませんでした」
「世話になって心から感謝しているよ。俺も、なつも、千遥も。牛の家でも見せてもらおうかな」
咲太郎はそう言い、謝罪を受け入れつつ、感謝して、切り替えるのでした。
こういう細かいセリフにも、彼の気遣いと魅力があります。
一方、布団に入った砂良は、こう言い出します。
「なっちゃん起きてる? 千遥ちゃんは、私をお姉ちゃんって呼んだ。一番最初に聞いた千遥ちゃんの声。会いたくないなら、呼ばないっしょ。どうしても会いたくて、ここに来たんじゃない」
「ありがとう、砂良さん」
なつはそう感謝を伝えます。
「千遥ちゃんはなっちゃんのところに戻ってくる。あの声は、それを望んでる」
砂良はそう確信を込めて言うのでした。
手紙が届く
柴田家へ向かう道を、自転車に乗った郵便配達員が走る景色が映ります。
本作は難易度が高く、いくつもプロットが複合的に絡んでいます。
ただ、ヒントや予兆もしっかりと入れるので、唐突感はありませんし、先読みをする楽しさもあります。
フラグの立て方がすっきりしていて、そこが上質のミステリめいた面白さを醸し出しているのです。
泰樹が、なつと咲太郎にバターチャーンを見せていることも、重要でしょう。
「二人が来たら作るつもりだった。千遥に食わせるつもりだ」
総大将・泰樹の夢であるバターです。
こんな重要なものを出しておいて、肩透かしにはならないでしょう。
このバターチャーンを見ているところへ、明美が飛び込んできます。
手にしているのは、千遥からの手紙でした。
なつよ、千遥の思いは今、そこにある――。
父がそう告げる中、明日へ。
千遥はどこへ消えたのか?
さて、ここであまり本作についてはチェックしていないニュースでも。
本編が深いと、ニュースをチェックする余力がないのです。すみません。
◆なつぞら:“写真嫌い”の千遥は「闇が深い」?「家出」説から「別人」説まで臆測呼ぶ
ええと……他人の感想なんて、好きにすればいいとは思いますが。
それを前置きしたうえで、ちょっとよろしいですか。
こういう、深い悩みや事情がありそうな人に対して、
「闇が深い」
と、キャラ付けするのはどうなのでしょうね……。まぁ、SNSなんてそういうものでしょうが。
◆別人説否定根拠まとめ
・電話応対で、騙すつもりならばあの反応は考えにくい
・総大将・泰樹の態度
◆失踪に計画性がない、突発的なものである
・朝食の席にいた複数の相手が、誰も異変を感じていなかった
・ワンピースを残してある、手荷物も用意しなかった
・ナレーションで「家族が繋がった」と明言されている
◆十勝と新宿
・十勝と新宿の登場人物では、前者が率直、後者が偽りやひねりがあると示されている
→だからといって、後者が悪人というわけでもありません
・この噛み合わなさがあると、なつと咲太郎の反応から伝わってくる。一長一短で、どちらがいいというわけでもない
郵便物の届く速度、移動制限が示されていることからして、千遥は近くにいるのでしょう。
なつと咲太郎は軽トラックを利用して、帯広と柴田牧場間を移動しています。
音問別町内か、その近辺にまだいるはず。
そしてあの突発的な行動からすると、早々に困難にあたるはず。
手紙に何が書かれているか。
そこは明日のお楽しみですが、決定的な断絶にはならないと思いたいのです。
ただ、北海道は危険です。ヒグマとか……。
※ヒグマと戦うのは辛いぞ! 早く戻って来い!
いや、ヒグマに遭遇していたら手紙どころじゃないべさ!
真田信尹「ここから先は読まんでいい」
はい、読まんでいいタイムです。
ふと思いついて本作関連ニュースを見ると、突っ込みたくなるから困るんですよね。
時間の無駄なので、なるべくやりたくはないのですが。
わかってきたことがあります。
ネットニュースはさして参考にはしないのですが、深読みすると面白いのです。
◆「なつぞら」で吉沢亮の嫁を演じる大原櫻子に“ほよ顔”だけはしないで!
「ネット上では『広瀬のほよ顔見飽きた』『ほよほよしてれば誰もが喜ぶと思ったら大間違い』『朝ドラ視聴者層は広瀬にほよほよされてもムカつくだけ』など、広瀬のほよ顔に言及する声が続出しています。7月6日放送の第84話には、ファンの間では“さくすず”と呼ばれ親しまれているほど公私ともに仲がよく、容姿も似ていると評判の大原櫻子が、女性人気の高い吉沢亮演じる天陽の妻・靖枝として出演。放送前からネット上では『大原までほよほよしたらもう“なつぞら”から“脱ぞら”します』『どうかお菊人形系のよく似た2人がそろってほよほよしませんように』『大原にはほよ顔だけはしないでほしい』といった声があがっているようです」(女性誌記者)
脚本と演出の押し切りが言われておりますが、それって前作****の話じゃないですか?
「*ぅあんぷぅえいぃぃすぅああああ〜ん!」
「武士の娘ですっ!」
「クソクソクソッ!」
あの連呼はなんだったんですか。
ほよほよどころか、クソクソ連呼……。
演出でも、
・入浴! 入浴! 入浴、ついには義父と婿が一つの湯船!
・褌尻無双
・夫婦が浴衣寝室でゴーロゴロ
ばっかりでした。書いていてめまいがしてきます。
なつは、レビューでもさんざん指摘していますが、割と感情暴発型で、ワンパターンでもないんですよね。
今日も、信哉はじめ周囲に怒りをぶつけそうになって、自制しております。
◆「なつぞら」ヒロインなつは「半分、青い。」ヒロイン鈴愛より「タチが悪い」!? | アサ芸プラス
「実は『なつぞら』開始当時から、“奥原なつをヒロインにしたドラマ”ではなく、“オジサンがかわいいと思う広瀬すずのカタログ動画のようだ”と指摘する声が相次いでいたんです。なつがどんな感情を持っているのか不明な場合が多いことから“自分勝手で情緒不安定なお騒がせ娘”との悪評が高かった、昨年上半期に放送された朝ドラ『半分、青い。』で永野芽郁が演じたヒロイン鈴愛と比較され『感情不明の“サイボーグなつ”より鈴愛のほうがマシ』『なつは鈴愛よりタチが悪い。生意気で礼儀知らず』『なつが出てくるたびイラッ。鈴愛にイラッとしても演じてた永野芽郁にはイラつかなかったけど、最近はCMで広瀬すずを見てもイライラッ!』などと指摘されているんです」(女性誌記者)
とにかく数字さえ取れればOK体質の、週刊誌系メディアに本気でレスするのも本当にばかばかしいのですが。
なつのどこが感情不明の”サイボーグ”ですかね? 生意気でも礼儀知らずでもないでしょうに。なつより常識も礼儀もない朝ドラヒロインなんて、おりましたが。あ、鈴愛じゃないですよ。
“オジサンがかわいいと思う広瀬すずのカタログ動画のようだ”
この見方は問題外と言いますか。
放送前の予想をそのまま垂れ流しにしていませんか?
なつは反抗的で、感情暴発型です。泰樹すらぶっ刺す。咲太郎にも割と容赦がない。
「あーたあーた」連呼の大杉社長には、謀反を起こす気配すらある。
マコともぶつかる。坂部がムカつくと怒りながらずんずん歩く。
サイボーグどころじゃないでしょ。
そういう意味では『半分、青い。』の楡野鈴愛と仲間だと思います。
そこを、生意気で礼儀知らずと言いたいわけでしょうか? 愛想笑いして、感情をもらいっぱなしのヒロインより、いいんじゃないですかね。
ここまで書いて思い出しましたが、当初はこんな意見もありましたっけ。
あんな図々しい鈴愛と違って、なつはまだマシだって。
サイボーグに話を戻しますと。むしろ前作****の*ちゃんこそ、そうでしょうに。
主題歌からして、
「もらい泣き もらい笑い」
で自分の主張が薄いことを明言していたじゃないですか。
しかも、もらい食文化(「文化の盗用」)というオチまでついて、どんだけって話で。
もう少しツッコミます。
なぜ、この手の媒体が、こういう結論に至るか。
【スタッフや出演者のキャラクターと劇中キャラクターの同一視】
【読者が持ついじめ願望への忖度】
現象だと思います。
『半分、青い。』では、鈴愛に脚本家氏を重ねて、叩いておりました。
彼女はSNSアカウントがあり、積極的に発信していました。
本作の場合、男性脚本家でSNS投稿もない。
だから“感情不明”。読み取れない。その結果、生贄として、演じる女優さんが捧げられているんでしょう。
だからこそ、こうなるわけです。
『なつが出てくるたびイラッ。鈴愛にイラッとしても演じてた永野芽郁にはイラつかなかったけど、最近はCMで広瀬すずを見てもイライラッ!』
脚本家ではなく、演じる役者にイラついていると。
その結果として、本編を吟味して鑑賞していれば出てこない、ズレたSNS投稿がある。
ただただ気に入らない人物を叩きたい、そういういじめマインドを選んですくって、そういう投稿をする側をスッキリさせながら数字を稼ぐんですね。
問題はSNS投稿をする側じゃないんだな。
針小棒大に、どうでもいいSNS投稿を作り上げれば、インスタント記事の出来上がり! そういう姿勢がどうかと思います。
これも時代遅れになりつつありますけどね。
あと、いつまで『半分、青い。』を叩けばいいスタンスでごり押しするんでしょう?
ネットにうろつく声の大きい前作****信徒そっくりのムーブです。
私もいい加減****から頭を切り替えたい。
けれども、信徒が活発すぎて……ん? なんか理由がわかったような。
御託はこのへんにして、結論にいきますと。
【NHK東京はメディアコントロールに注力していない、していても正常範囲内】
これですね。
好評記事にしても、やらせ臭がない。不自然さがあまり感じられません。
叩きにせよ、言いがかりめいたSNS投稿集めや女優への難癖くらい。
時代考証不備、プロット破綻ではありません。
ここへのツッコミが少ないということは、完成度が高いってことですね。
対してNHK大阪は、次はどんな宣伝活動をされるのか。
『スカーレット』では、ドラマそのものに魅力ある中身を期待したいところです。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
千遙はどこにいるのか。
東京から来たにしては、柴田牧場に現れたときの荷物が異様に少なかった(ハンドバッグ一つだけ)ことと併せて考えると、千遙は、「帯広に投宿していて、荷物はそこに預けて柴田牧場に来ていた。」のではないか。
そして、柴田牧場から姿を消した後も、帯広の宿に留まっているのではないか。
そのようにも思われます。
ちなみに移動手段は、バスでしょう。自家用車がまだ普及していない昭和30年代、バス路線は、「開設、延伸すれば金になる」時代であり、僻地にも路線開設が続いていました。柴田家の地域に路線が引かれていても全く不思議はありません。
千遙が何故十勝にやって来たのかは、まだよくわかりませんが、あの写真を撮られたときの反応から見ても、何らかの理由で逃げてきて、身を隠さねばならないような事情を感じます。
荷物やお金も用意して、決意の上での逃避なのではないか。
明日以降の展開が待たれます。
千遥は軽装で荷物も持っていないようなので、連れがいるのではないでしょうか。牧場で連れに見つけられて戻された、とか。
推理しながら見るのも楽しみです。
前のドラマではヒロインの「なんとかなります」というセリフが何度か出てきていましたが、主体性を極力外した設定をワザと作ったなと感じていました。
朝ドラヒロインならば「なんとかします」という前のめりなイメージがありましたが、****は成り行きドラマでした。
****礼賛のファンには今作のなつの性格には嫌悪感を覚えるでしょうね。