その心の昂りは何だ?
なつは、あの新人・神地とその発想にうっとりしています。
あそこまで言う彼は何者なのか。
大卒一年目。なつより一歳歳上です。
入社試験では、動画の成績ナンバーワンでの合格だったとか。
しかし、マコはそれどころじゃない。
「これからどうする……坂場め、脚本を立てぬだと!」
眉間に皺が寄りそうな、おそろしい状況です。
内容が不満ということではなく、何を作っていいのかわからないのです。
話が前にあって、そこから描くことーーそんな従来のやり方を無視して、話を作りながら描くことになる。
怖いけれど、ワクワクするなつ。
一方で、プロット作りを求められることに、マコは恐怖を感じています。
するとそこへ、あの新人・神地が絵コンテを持ってドバーンとやってきました。
ダメなら指摘してね、と言いながら。
「ぜひ見せてくれ!……これ、君が描いたの?」
「ダメなら捨ててください」
神地はウキウキと、魔女から裏切らせることにしたと言うのです。
味方にしたい。
殺したくない。滑稽で、愛嬌がある。
子供達もきっとそうなれば喜ぶって。
「よかったですね、マコさん!」
なつはそう励まします。
マコのキャラクターデザインであればこそ、そういう膨らませ方、動かし方ができたのですから。
「新人に褒められて喜んでいる場合じゃない……」
しかし、マコの心配に周囲は向き合っているのかどうか。
ああいうのがいてもおかしくない。
これからの漫画映画の時代にはあんな才能がいてもいいはずだ! と、盛り上がっています。
なつもウキウキしています。
そして父はこう告げるのでした。
なつよ、その心の昂りは、一体何だ?
坂場を見守ってあげてください
坂場のイメージボードヨレヨレ問題。
ちょっとした描写ですが、結構これは大事なんじゃないかと思います。そういう積み重ねが本作にはあります。
かのシャーロック・ホームズには、紙を壁にナイフでブサリと刺してとめる描写があります。
なんだこの変人は、画鋲を使わんかーい!
そう突っ込みたくなるところですが。
※もっと悪化すると暇つぶしに壁を射撃する。原典由来のお遊びです
坂場もこの系統で、
「目的が達成できればそれでいい」
で止まっていて、ルールや社会規範への気配りがお留守なんじゃないかと思います。
不器用以前、認識がどこかすっぽ抜けているのでしょう。
人の前でカレーパン食べなから読書続行しますしね。
本人には悪気がないというか。
どうしたらいいのかわからなくて困っている可能性もありますので、茜のように、助けてあげましょう。下山のように、見守りましょう。
マコ、自信喪失
今日は貫地谷しほりさんの演技が圧倒的でした。むろん、皆それぞれよいのは踏まえた上で。
呆然として、時々魂が抜けかけています。
堀内と彼女は、きっちりとしたスケジュール管理やプロジェクトがないと、燃え尽きて混乱して、困惑するタイプではないでしょうか。
倉田先生の指示問題の時、結構反応が割れていましたよね。
「あんな雑な指示ではわけわからん、そりゃ天陽もイライラするよ」
という受け止め方もあったもの。
天陽はそこではなくて、
「魂は訓練で作れない!」
という、ぶっとんだ方向性で苛立っていました。
マコならば、指示ざっくりでイライラしたんでしょうね。
まさに、そういう苛立ち方をしています。
予想外のことをされると焦ってしまう。
『真田丸』の石田三成にもそういうところがあり、非常に有能なのに、忍城攻めでは何もできずに硬直してしまうのです。
人間には、向き不向きと特性があります。
あの忍城攻めだって、水攻めは秀吉の計略ですし、三成ばかりを責めるのは酷というものであります。
しかし、彼が想定外の事態には弱くて、そうなると焦ってしまうことは否定できません。
有能だからって、万能にはなれないものです。
そういう流れがあったらば、ちょっと疑ってみましょう。特性が違う同士でチーム結成をした方が、物事はうまくいくものです。
※卑劣な手はできないのだ
そんな軍師・マコは、なつ相手ではそこまででもなかった焦燥感を、神地に見せてしまっています。
なつぞら70話 感想あらすじ視聴率(6/20)天才なんだと褒めたいけれど……なつならば、センスは負けても技術では負けなかった。
けれども、神地は違う。両方自分を上回っているかもしれない。
ここで、仲なり周囲が、励ませばまた別なのでしょう。
「でも、マコさんにはあなたが身につけてきた技術があるよ」
「マコさんにしかできないこともある」
なつは、マコのキャラクターデザインあってこそ、神地のアイデアも膨らむのだと、不器用ながらも励ますのですが。彼女の耳には、心には、届いているのやら……。
原典アレンジ、そして批評の整合性
昔から、原典をひねったアレンジはあります。
本作での『白蛇伝説』『白蛇姫』もそれぞれアイヌの伝説と、中国古典由来でした。
『白蛇姫』は原典からして、教訓から人外萌えになっているという、ややこしいものです。
なつぞら64話 感想あらすじ視聴率(6/13)己のスタンド見極めろ、ゴゴゴゴゴゴ……『ヘンゼルとグレーテル』も、この通り。
※またまたこれ。これは殺して魔女狩りに目覚めた設定です
グリム兄弟も死闘を繰り広げます。
※『ブラザーズ・グリム』がこれだよ!
『高慢と偏見』にゾンビをぶち込むとか。
※なんでゾンビやねん!
『アナと雪の女王』だって原典ありきのアレンジです。
坂場モデルの方の古典アレンジといえば、これでしょう。
ここでちょっと考えてみたいことがあります。
明治時代から『舞姫』の主人公がボコボコにされており、これも伝統なんです。
ただ……何でも好き勝手にしていいわけではなく、ざっくりとしたルールはあるんですよ。
【アレンジでしていいこと・悪いこと】
本作でも取り上げている現代版『SHERLOCK』のシーズン2-1「ベルグレーヴィアの醜聞」の論争です。
ドラマでも屈指の高評価ではありますが、重大な批判があるのです。
原典「ボヘミアの醜聞」ではシャーロック・ホームズ敗北。
アイリーン・アドラー勝利である結末。
それがこのアレンジでは【勝敗逆転】ではないかとされたのです。
これは解釈によるところではあるのですが。
※ネタバレ注意。このエンディングをどちらの勝利とみなせるか?
原典では、負けて当然である悪女が勝利するところに、予想外のひねりがあったはず。
そこを変えることへの批判は、どうしてもつきまとうものでして。神地の指摘は、そこをふまえても納得のできるものです。
なつの案では、原典では【救う側】の妹を【救われる側】にしているからNG。
そこを神地はクリアしているのです。
センス抜群ではありませんか!
アレンジや批評への反論として、本レビューで指摘しているこの点も重要です。
それは【力の差】です。
男女、人種。
そういう力関係が異なる状況でこういう入れ替えをすると、問題が発生します。
社会的に弱いもの、数が少ない(マイノリティ)とされたものが、入れ替わる。
そういう下克上は多様性の変化としてありなのです。
逆は、多様性を潰すものとして批判されます。
人種の場合、後者(白人以外を白人が演じる)は「ホワイトウォッシング」とされ、批判対象とされます。
最近の例だと、こんな感じですね。
『ドクター・ストレンジ』におけるエンシェント・ワン
『ゴースト・イン・ザ・シェル』における草薙素子
前者(白人を白人以外が演じる)の場合は、「カラーブラインドキャスティング」とされ、多様性の表現とされます。
実写版『リトル・マーメイド』のアリエル
『ホロウ・クラウン』のマーガレット・オブ・アンジュー
舞台版『ハリー・ポッター』のハーマイオニー(原作者曰く人種設定をそもそもしていない)
そこをふまえて、これはやめておきましょうね。
「ムーランを白人が演じたら怒るんでしょっ!」
※それはとりあえず怒るし、劉亦菲は最高でしょうが!
新人・神地は何者だ
さて、いきなりマコを動揺させる新人・神地ですが……。
ここから先、ネタバレになりそうなので、嫌な方は飛ばしてください。
本作は夕見子にせよ、坂場にせよ、特別な才能のある人間は準備を用意しておきます。
それを彼はいきなりジャンプしたような、異例の登場をした感があります。
・激動の水曜日にいきなり出てきた
・新ビジュアル公開日と同日登場
・ナレーションで「なつにとって特別」と示唆されている
・天陽と信哉の、なつからの恋愛候補退場後に出てきた
・結婚を二週連続で扱って、なつから寂しいと連呼をさせたうえで出てきた
この要素をふまえると、彼はなつにとって特別な人となりそうですね。
さぁ、実際はどうなるか?
これも繰り返しますが、坂場は【恋の影武者】であって、本物の標的ではないと思います。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!
実写版「リトル・マーメイド」といえば「半分、青い。」のハッシュタグ騒動を彷彿させるような騒動がありましたね・・・
https://front-row.jp/_ct/17286388
もし、モデルといわれる方々のその後通りの展開であれば、
〇〇さんは、XXさんと、、、、
ネタばれかもしれないため伏字です(^▽^)/