なつぞら92話 感想あらすじ視聴率(7/16)その考えは古い問題

僕らの使命

なつは、噴水前に坂場を呼び出します。

「仲さんに、なしてよくも!」

考えが古いとは何事か。そう迫るのです。
そういう単純なことではないと言っておきながら、これです。

「考えが古いというのは……」

「同じじゃないですか!」

「そうです。どうして怒るんですか? 仲さんを尊敬しているからですか?」

認めおったわー!
これは、あるかもしれない。何かリメイクやシリーズ新作を褒めるファンを叩く心理にも通じるかもしれない。

あまりにとある作品が嫌い、あるいは好き――だからこそ反転した価値観を持たねばならないという心理とか。

自分自身よりも、自分が好きな作品を貶された方が怒る。一切の批判を受け付けない。そういう有毒なファン心理に似ているかもしれませんね。

坂場はそんななつの心理をふまえつつ、こう来ました。

「仲さんは面白い、素晴らしい。子供だけではなく、大人が見てもかわいいと思うものを作ることができる。僕もかわいいものは大好きです」

「真剣な顔で言わないでください」

真顔でかわいいもの好きを語る坂場に、思わず戸惑いつつ突っ込むなつ。

照れるとか、男だからとか、いい歳してそれはないとか。
そういう価値観と、こいつは無縁だからさ……。

坂場はこう語り始めます。
彼も空襲体験がありました。

焼け跡で家族を探し、幸いに見つかったものの、餓死をするのではないか、そんな絶望ばかりを感じたものでした。

それを忘れられない。
大人の冷たさ、子供の卑しさ。

でも、見知らぬ人から受けた愛も知った。

「そういう子供の体験が、今の僕やあなたを作っている……違いますか?」

「だから何だと言うんですか?」

「だから、仲さんたちと違うものを作るのが、僕らの使命です」

そう言い切るのです。

一方のマコは、喫茶店で仲にこう訴えていました。

「最後まで、やらせてください。仲さんを邪魔するつもりはありません。みんなで決めた通りに作らせてください!」

この場面は、先週の喫茶店相談と比較すると、興味深いものがあります。

なつぞら87話 感想あらすじ視聴率(7/10)異例の新人・神地は何者だ!

マコは頑固かもしれない。納得いくまでは腰が重い。
けれども、一度信じた相手には、全力でついていく。そういう忠義心があります。

カッコいいなぁ。誠意があるのです。

けれども、これが今後どうなるかがちょっと想像がつきません。

お煮しめを美味しく作ることのできる、そんなマコ。
もしも結婚したら、全力で良妻賢母になろうと奮闘するかもしれない。それも責めるべきことではないだろうけれども。

なつぞら91話 感想あらすじ視聴率(7/15)漫画映画は子供のためか?

仲は理解しています。

「僕もきみも、あの坂場から影響を受けている」

「疑っていたけれど、坂場くんと奥原さんは本物です」

坂場はともかく、なつの才能を最初に見出したのは他ならぬ仲です。

なつぞら48話 感想あらすじ視聴率(5/25)悪の道に転げ落ちても不思議なく

そのころ、坂場はなつにこう言い切るのです。

仲とは違うアニメーターになって欲しい。
裏も表も描く、現実をそのまま、子供に体験させるようなアニメーターになって欲しい。

「僕もそういう演出者になりたい……一緒に作って欲しいんです」

日差しの中、二人きりになってそう言い切る坂場。

父も戸惑い、こう突っ込みます。
なつよ、古い人間の私は、腰が抜けたぞ――。

変化を受け入れてこそ

今日は、高山と坂場が問題提起しました。

【その考えは古い】問題です。

受け止め方もいろいろです。

【肯定型】亜矢美:そうかそうか、そうなるか! それもそうだ

 

【反発型】なつ:それは失礼でしょ!

 

【変貌型】坂場:だからこそ変わり続けねばならない

理想は坂場でしょう。前作****もそうでした。

あれは、
「老人が提起した生前葬に、若者が乗っかった。それを見て主人公が若者のナウな感覚を取り入れる」
という、しっちゃかめっちゃか、自分が若いと思い込みたいだけの、そういう層を納得させる程度のなめくさった説得力しかなかったわけですが。

そんなものはさておき。
結構、難しい心理だと思いますね。
なんせ無意識なんです。

なつみたいに「それは失礼だ! 敬え!」と反発して終わることがあまりに多い。

そこを本作は、突っ込んでくる。
これは坂場の個性であり【表裏比興】思考ルーチンもあるのでしょう。

流れる水は腐らない。変わり続けてこそ、常に新鮮である。
それはよいことではあります。

ただし、堀内の反発のようなものもあるわけです。

同じチームにこういうのがいると、とてつもなく面倒臭いし、締め切りに間に合わんのじゃああああ!
という、マイナス面まで描くのが本作のよいところです。

進捗管理をギチギチにこなすタイプと、ギスギスしたチームを調整するタイプも、一緒に組ませる必要があるんですよね。

なつも、反発を乗り越えれば乗っかってくると思います。
そこを見据えての、坂場のあの言葉です。

繰り返しますが、彼は恋愛面では影武者にすぎません。

再鑑賞で変わるもの

そしてもうひとつ、耳に痛いこと。
再鑑賞すると見方が変わるというものです。

これは結構辛い。
子供の頃大好きだった作品が、価値観の変化で否定されること。自分の変貌で好きじゃなくなること。

これについては、苦しいと思う経験者も多いのでは?

【#Metoo】への反応も典型例で、関係者の深刻なセクハラが明らかになり、もう二度と見る気がしなくなってしまうようなものも出てきます。
あるいは作中の差別描写指摘に気がつき、嫌になってしまうとか。

坂場の言うような、製作者の意図がわかってますます好きになることもあるのですが、そういう幸運ばかりでもないのです。
そこを受け入れられるのか?
実は難しいところです。

気がつかなかった過去の自分まで貶された、一緒に楽しんだ仲間ごと貶された――そう思った結果、攻撃性をむき出しにする心理も出てくるからですね。

◆暴走する『スター・ウォーズ』への愛が招いた“事件”から、「正しいオタク」のあり方を考える

典型例が『スター・ウォーズ』界隈ですかね。

新シリーズで白人以外、女性が活躍するようになると、

「白人男性ばかりが活躍していた旧作は駄目なのか!」

「旧作ファンを侮辱しているのか!」

という、困った心理でファン暴走を招くことがある。

日本でも同じで、朝ドラや大河もそう。
ある特定の作品が好き、あるいは嫌いだと、異常に攻撃的になる心理を、その層からの攻撃で身をもって体験しました。

前作****が好きだから本作は叩く。そういうルーティンはいりません。
私の****嫌いは、そういうことでなくて作品として純粋に出来が悪く、差別的で、歴史修正だからなんですけど、頭に血が上って見境がなくなってしまうんですよね。

そのへん、もうちょっと比較サンプルとして注目してみましょうか。

弁解ありきの人物像は見苦しい

今日、坂場はかわいいものが大好きと、真顔で言い切りました。

あれは、
「成人男性はかわいいものが大好きとは言わないはず」
という、そんな偏見を逆手に取っているともいえるわけです。

これで思い出したのが****なんですよね。

あの作品は、
【本当はそうじゃない人物が考えた人物像を描いている】
と書いた記憶があります。

主人公の**さぁんは変人で過剰集中傾向があり、傍若無人である――そんな造型をしていたと思います。

違うのです。
彼は空気を読めていました。

どのへんからそれがわかるかというと、
【まともな男ではしないはずの家事労働(=調理、ラーメン作り)をする。その言い訳に、女性のためだという大義名分を用意している】
あたりからわかるわけです。

【政治家の後ろ盾を使えば、空気を読んでライバル企業が黙るはず】
という言動からもわかります。

周囲の空気や心理を踏まえたうえでの行動が多い。
老人でいじめていいターゲットの武士の娘をしつこくいびっていたあたりにも、それがにじみ出ていました。

空気を読まずに暴走気味である坂場とは根本的に違います。

前作の、何もかもが嘘くさい人物像。
それと比較すると、本作はほんまもんの変人感があります。

フラットな職場はよいものだ

本作の職場にはフラットなノリがあります。

これを、
「令和みたい」
「大学のサークル」
と評価する意見もあるようですが、個人的にはシリコンバレー調という気がしないでもありません。

彼らはスーツを着ないし、好きな時間にリラックスもできる。
社内で寝てもいいのです。

スーツを着て、パンプスや革靴を履き、同じ通勤電車に乗り、昼休みは空気を読みつつランチを取り、残業して、帰る。
そういう毎日きっかり決まったルーティンで生きていくことがどうしても難しい。

そんなはみ出しタイプが、なじめるオフィス環境でしょうね。

自由度が高い職場は駄目かって?
全然そんなことはない。むしろ効率的と証明されつつあるじゃないですか。

いいことなんです。
そういう模索やあるべき姿を見せてもいいってこと!

ちなみに人類史で見ても、実はそこまでかっちりした学業や職場というのはなかったのです。

一例として江戸時代の藩校をあげておきますと……。
皆で揃って教科書を読むわけではなく、てんでバラバラで読む。

武士だけあって殴り合いになっても止めない。
学級崩壊どころの騒ぎじゃない。
自由なんです。

授業中にケンカ上等!会津藩校「日新館」はやっぱり武士の学校です

藩校ではなく私塾でも同じで、緒方洪庵の適塾にせよ、松下村塾にせよ、割と自由。
江戸時代の武士だって、現代ほどハードワークでもなかったそうですし、夏場はシエスタタイムもあったとか。

モーレツ社員が正しかったのかどうか。
そこは考え方次第ってものです。

ハードワークだけが、成功する道でしょうか?
そこまで考えて問題提起しているのであれば、そこはバッシングすべきところではないと思うのです。

今週も深いぞ!

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

※北海道ネタ盛り沢山のコーナーは武将ジャパンの『ゴールデンカムイ特集』へ!

【参考】なつぞら公式HP

 

1 Comment

まるいと

この後に及んで、板場は「恋愛面では影武者」と言いきる根拠がわかりません。板場君を過小評価しすぎじゃないかなあ…
ほんとにそうだったらお見事ですが、前にもありましたがこの感想自体、所々セリフの発信者違い(出世払いでいいといったのは亜矢美の方)などもあって全幅の信頼をおきづらくもなってるので、あえて批判的に読んでおきます。
明日以降の展開が楽しみです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA