なつぞら112話 感想あらすじ視聴率(8/8)幾重にも張り巡らされた伏線

女子アナウンサーってもう、玉の輿狙いの枠ではないですか。
今はやや改善されたとはいえ、かつては真剣な社会ニュースは女子だと回ってこなかった。

年中行事だの、お天気だの。
毒にも薬にもならないことを読み上げろと言われるわけ。

現在だって、パッと脳内にニュースを思い浮かべてくださいよ。
男性アナウンサーと比較して、女性は相対的に若く、美貌であることが多い。

男性に相槌を打つような役割も多い。これは日本独特のことです。
BBCでも、CNNでも、海外のニュースを見てみましょう。

できれば吹き替えなしでご覧いただき、そして気づきませんか?

・化粧が薄い

・衣装が、いわゆる女性らしいモテコーデ以外、ソフトでないものも多い

・声が低い

・年齢が高い

・笑顔ではなく、テキパキと読む

女子アナとは、日本独自のコンテンツ。
そこは踏まえた方がよさそうです。

◆「女子アナ」という差別 小島慶子さんから同性キャスターへのエール

「世間は、ニュース番組は中身で勝負してくれと思っています。視聴率に一喜一憂せず、メインキャスターの重責を担う彼女たちの志と努力に報いるだけの骨太な報道番組を目指してほしいと心底思います。女性はお飾りじゃないのですから」

それを目指さない、勧めない。
そういう柴田家には、独自の世界観があるんですよ。

ここで富士子が、ちょっと戸惑っていますね。

明美まで晩婚化するのではないかと、心配になっているのでしょう。富士子と照男は、その世界を理解はできても、戸惑いがあるのです。

照男は幼い頃、男の仕事である酪農をこなすなつに劣等感がありました。

富士子の堅実性を、夕見子は「大志を理解できぬのか!」とぶっとばしていました。

なつぞら25話 感想あらすじ視聴率(4/29)北大入学後に決めるよ

「つまんない。母さんがそんなにつまんない人だと思わなかった!」

スケールがでかぁあああい! そういう傾向があります。

だが、それがいい……ドヤァ。

あれは根っからの開拓者だ

じわじわと、重ねてきた要素。
ここでもうひとつ出てきますよ。

剛男が帰宅します。
残業があったとわかります。食事は済ませてきたんだとか。

結構大きく映っていたようで、孫の地平も褒めています。
当時、テレビに映ることは今よりずっと凄いことでした。

当時の子供は、テレビインタビューでテンションが高かったものですよ。最近の子供をテレビで見ると、その落ち着きぶりに時代を感じる人もいるものでして……。

帰宅した二人によると、田辺は入院したのだとか。よろめいていた昨日の不安が当たってしまったのか!

「なに、静養でござるよ。無理にでも休ませねばならん。ヨーロッパ視察旅行から僅か三ヶ月でここまで来た。過労よ。この私も、組合長の覇気には、たまげて感服するばかりじゃ」

夕見子が軍師ぽくそう説明すると、泰樹はこう来ました。

「あれは根っからの開拓者だ……」

ジジイお得意のボソッとした言葉。
視聴者からすれば、なんかすごいことだと理解できるものではあるのですが。

周囲からすれば、また変なことをジジイが言っているべ……で終わりかねません。
まぁ、柴田家はわかるべや。そうでなくて!

もっとわかりやすく、開拓者魂認定宣言はできるでしょうよ。
あの場で宣言するとか、飲み会にでも誘って語るとか。田辺も泰樹のことは評価しているんだ。誘えばできるでしょう。

それができねんだわ。そこは期待しないで……。

さて、夕見子によると、そんな開拓者魂の持ち主である田辺は、なつに頼みがあるのだそうです。

あの日、たんぽぽを食べた少女が描く夢

工場建設で急ピッチ。
しかも入院中。
そんな多忙な田辺が呼ぶとなれば、よほどのことのはず。

病室で、田辺はなつを出迎えます。

肉体的には疲れていても、精神的にバリバリ元気なんでしょう。こういうとき、無茶をしがちですからのう。剛男と夕見子が休ませたのは、正解です。

田辺の計画は、こうでした。

「十勝協同乳業」旗揚げじゃ!

かといって「十勝共同バター」では馴染みにくい

堅苦しくない名前を考えねばならん

剛男「それはたんぽぽバターではいかがでござろうか。たんぽぽが咲き、カッコウが鳴き、春が来ます。そんな新しい季節を連想させる、たんぽぽです」

田辺「それ、採用!」

田辺「次は商標か……」

剛男「たんぽぽには思い出があります。十勝にやってきたあの日、なつが食べたんです」

田辺「むむむ……あの、めんこい絵を描くなつ殿の思い出と関係あるとな?」

田辺「ようし、これも天命じゃ! なつ殿に商標(ロゴマーク)を頼むのじゃ」

なつ「なんと! これは光栄でござる!」

結果的に、泰樹の策謀であった照男の嫁としてよりも、なつはでかくなって戻ってきた。
感無量じゃ……。

と、感動しているところで夕見子がこう来おった。

「フッ……なつの商標案が不十分であれば、採用しなければよいだけのこと……」

この人たちに、普通の気遣いを期待しないで……。
キツめの冗談が平常運転。これも、散々スパーリングしてきて、対処に慣れたなつだからムッとしません。むしろ奮い立つ。

「よろしくお願いします!」

「こちらこそだわ、なつさん、よろしく頼む!」

かくして、何か大きなことが動き出したわけです。
坂場も何かを感じ取った顔をしています。

これもただのいい話じゃないんですよ。もしも田辺がこんな人だったら?

「どうせなら男性で、名の売れた方がいい。天陽さんってなつさんの知り合いでしたよね?」

「神地さんでしたっけ。彼も知り合いですね?」

「なつさんがお嬢さんでなくて、しっかりした男ならねえ。坂場さんが絵を描けるのであれば、お願いするんですけど。あ、名義だけでも借りられませんか?」

ご破算ですし、全員うんざりげんなりでしょう。

ただのコネ頼りでもない。
本作は、コネ頼りをしようとした咲太郎に、なつを巻き込んでキッチリと大制裁を加えていますので。

なつぞら51話 感想あらすじ視聴率(5/29)コネなど不要、実力で勝負だ

コネじゃない。金じゃない。肩書きじゃない。
才能ともちょっと違う。

倉田の天陽評価のように、生き方や魂そのものをみつめたい。
そういう世界なのでしょう。

ネトゲ廃人画伯の絵を、価格だけで評価していた世界とは違うのだ。

雪次郎、魂の味

そのころ、雪月では――雪次郎が菓子作りに挑んでいました。

「俺のバター。オバタ、小畑雪次郎! ははは! 天才だ!」

なにが「ははは!」だ。
と、突っ込みたいところで、ナレーターの父がこうフォローしてくれます。

「ふざけているいるわけでありません」
つくづく親切なナレーターだな。

どうやら、ここ雪月でも、新しい挑戦が進んでいるのだとか。

雪次郎は、演劇部ゆかりのメンバーを店に呼んでいました。
倉田先生だけは、呼ばれなくとも来ているのです。

彼も作劇上、何かを持っていますね。
特別なものを見出す、そういう魔術師としての役割がある。

いわば水鏡先生こと司馬徽しばき(『三国志』の人物鑑定エキスパート、諸葛亮はじめ多数を評価した)よ。

倉田はこう尋ねます。

「昨日は随分と面白かったらしいな」

なつは目をキラキラさせ、「こういうことを言っちゃいけないけど……」と前置きしつつ、そうだったと肯定します。
あの反董卓連合状態で目がキラキラするヒロイン……乱世よのう。

けれども、なつはいいんだ。
夕見子なら前置きなしに、おもしろさを全肯定しかねない。

※こういう顔で……

「来年は新しい春が来る」

「新しいたんぽぽが咲きます!」

倉田はナゼそう思うのか?
これも水鏡先生スキルかな。

そこでなつがそうだと言い切り、夕見子とふふっと笑い合うのです。
バターのことですね。これはいい姉妹だ!

するとそこへ雪之助と総大将・とよババアがやって来ます。
こういう時には、この人がいないと。

このあたり、番長とよっちゃん夫妻がいい味を出しています。
耳打ちしていたりするんですね。

すごく、夫婦の空気が出ている!

ぼーっと座っていても、いいわけですよ。
でも、そうじゃないんだ。こういう脇役も動くから、本作は全体的にとても生き生きしているんだな。

雪次郎が、彼の魂を持って来ました。

「お待たせしました、できました! これが俺の、新しい魂です」

これが雪次郎発案、記念すべき菓子です。

なつよ、この雪次郎の魂が、新しいきみを呼ぶことになりそうだ――。

父がそう締めくくる中、味のお楽しみは明日へ!

なんだかすごいことになってきたな……

すごい。
本作は、すごい。

朝ドラは15分フォーマットですから、複雑な構造は禁忌であるはず。

『神をつかんだ少年クリフ』の評価は、本作にとって自虐的になりかねません。

本作をわけがわからないと評価する人がいても、特に何とも思いません。心当たりがありすぎるし、好きになれとプレゼンをする気もさらさらありません。

そこは、人それぞれですからね。
私は大好きだというだけです。

簡単にしようと思えば、

・一週間単位で話をまとめる

・週をまたぐ伏線を仕掛けない

・朝にともかくわかりやすい、SNSでわーっと盛り上がるネタを入れる

・時系列シャッフルをしない

・登場人物を削除し、少なくする

・ヒロインは男(=妻として)と女(=姑から見た嫁として)双方にとって「お嫁さんにしたい可愛い子」であること

かように難易度を落とすテクニックがあるでしょう。

これもバカみたいな話ではあるんですが、
「ごろ寝している主婦でもわかるように」
という、しょうもないセオリーもあったわけでして。

まぁ、気遣えばって言い換えれば、
「朝、出勤前、家事の空き時間で見ていてもわかるように」
というあたりに落ち着くんでしょうね。

『半分、青い。』では、このセオリーをボコボコに殴り、踏み抜きました。
それゆえか、アンチの勢いが「侵掠しんりゃくすること火の如し!」ってなもんでした。

本作は、意図的に進化系で来たとは散々申し上げてきました。
今日だって、半端ない伏線の繋がり方をしつつある。

◆過去

・泰樹の【夢】であるバター

・剛男となつの思い出である、たんぽぽ。そしてなつの【画才】

・夕見子が自らの開拓者魂として身につけた【学識】

・雪次郎が役者として見出しかけて挫折した【役者魂】

・坂場の【大志】と【失敗】

◆現在

・田辺が構想し十勝酪農王国という【大志】

◆未来

・雪次郎が、皆の思いが詰まったバターで菓子を作る【未来】

・全てをひっくるめて、なつと坂場が作り出すアニメという【未来】

開拓者魂でつながったんじゃあああ!!
十勝と東京をつなげて、何か大きなものができようとしている。

ただ、繰り返しますが、その過程が複雑かつ話がでかああああい!!
ある意味『三国志』なんですね。

「引きこもっているなんか頭がいい兄ちゃんを、おっさんが三度訪問した結果、いろいろあって三国鼎立していた」

いろいろぶったぎってまとめると、こうなりかねない。
そういう謎の疾走感と爽快感と大志を、本作から感じます。

だから、どういう朝ドラなんだってば……。

普通じゃない。
北海道開拓者の苦労と歴史と産業、アニメを組み合わせる時点で、超絶技巧が必要かつめんどくさい。

これに挑んだ時点で、本作はおそろしいのです。

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】なつぞら公式HP

 

3 Comments

あねもね

たんぽぽの優しい黄色。
バターの優しい色 を連想させます。
なつのタートルネックの色も呼応しているようで。

剛男の詩的な発想も素敵で、伏線の妙を感じながらも、美しいシーンでした。

むんむん

懐かしい※※※※教団の様子を見て『ホモソーシャル』という単語と『日本は巨大な男子校』というウィジーの記事が頭をよぎりました。
なつぞらは共学なので、安心して見ていられます。

hiromin

お父さんが帰ってきたら自然にテレビを消すところが昭和の懐かしい光景で、ほんの数秒にそういうシーンを入れるところが丁寧だなぁと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA