一番悟ってダメージを受けているのが、雪次郎です。
雪次郎は駆け落ちのゴタゴタを見ていたわけですから。
「俺にも、そんな資格はねえ……」
これはやっぱり、蘭子のことでしょう。
夜に自宅まで行ったわけですし、覚悟はあった。恋心もあった。
心の底から、惚れてもいたのでしょう。
「結婚に必要なのは、資格でねえ。覚悟だ!」
ここで、倉田がそう断言します。
これも一連の流れからして、重要なんですよ。
どの相手に心を奪われたのか。そういうことの問題がある。
****では、真っ先に男の側が女の所有権をマークするような言動がみられて、さんざんいやだと言い切って来ました。
覚悟を問われた雪次郎はこう断言し、問いかけ、そして夕見子も応えました。
「夕見子にはあるのか? 俺にはある! 結婚しても、夕見子のしたいことをすればいいべさ! 俺は、夕見子ちゃんが好きだ! 昔から。今はもっと、好きだ!」
「私も、結婚するとしたら、あんたしかないと思ってた。いつから? いつのまにか、そう思ってた……」
「本当かい? 夕見子ちゃん!」
かくして、お菓子発表からのプロポーズが終わったのです。
「雪次郎くん、ゆみ、おめでとう!」
なつがそう言い、皆が祝福ムードになります。
おめでとう、よくやった、おめでとう!
と、ここで総大将とよが言いおった。
「ひとつだけ、問題がある。柴田のじいさんと親戚になることだ……」
げえっ、ババアーーーーーー!!
坂場がなつに小声で「仲が悪いのか?」と問いかけると、なつが真相を突きます。
「いや、似てるだけ」
まぁ、総大将同士だからね。
柴田家攻略戦
かくして、雪次郎は柴田家に乗り込んできます。
「お嬢さんを、僕にくださいッ!」
おもしろいのが、富士子が先頭に立っているところですね。
なつの時に、順番に不満があったにもかかわらず、今回も後回しの剛男とは……まぁ、そういう性格なのでしょう。
なつぞら109話 感想あらすじ視聴率(8/4)同志、十勝で相まみえるしかし、皆、驚きを隠せません。
「こったら短い間に、二度もあるとは!」
これは偶然か?と口にしておりますが、作劇上、深い運命の共鳴現象にしているんでしょうね。
剛男が困惑を見せております。
「いつのまに……」
「いつのまにか、覚悟はできてるッ!」
なんか『ジョジョの奇妙な冒険』みたいになってきたな、オイ。
『任務は遂行する』『部下も守る』
「両方」やらなくっちゃあならないってのが
「幹部」のつらいところだな
覚悟はいいか?
オレはできてる
(ブローノ・ブチャラティ)
「雪次郎でいいッ!」
ゴゴゴゴゴゴ……。
「本気で好きなのかい? 真剣なのかい?」
「そったらこと、結婚してみないとわからないッ!」
「こういう夕見子ちゃんと結婚したいッ!」
すごい。
なんだかわからんが、すごいことになってきたぞ……。夕見子もすごいけど、これで理解できる柴田家、すごい。
明美は納得しています。砂良もそう。
夕見子の濃厚な軍師ぶりを制御できるのは、雪次郎だけだとわかっていたのでしょう。二人とも、揉まれてきたからな。
なつもまとめます。
「バターと餡子だね」
「したら、反対しない」
「父さんもない」
「ありがとうございます!」
柴田家、完全降参です。
まぁ、夕見子を無理矢理止めると、破壊的なことになりそうな予感もしますし。
あっ、まだ一人残っているぞ。
「待って、じいちゃんは?」
げえっ、ジジイ!
ここで泰樹は、魂の菓子をおもむろに食べ始めます。
「うまいな、これ」
「問題ないみたい……」
どういうことなのか?
視聴者からすると、
「意味が全くわからん!」
と絶叫もんではあるのですが。
・本当に心底反対なら【抹殺パンチ】をする(高山よ……)
・疑念があるなら、坂場のように反対を示す
・それがないし、菓子を褒めているし、なんだか満足しているみたい!
むしろすごいのは【表裏比興】を制御できる柴田家のメンツたちですね。
視聴者のみなさんも、理解者ワールドを体験しようッ!
「ただひとつ問題なのは、雪月のばあさんと親戚になることだ……」
げえっ、ジジイーーーーーー!!
総大将同士はわかりあうようなことを言い出しおった。
お互いだけにわかるようなことがあるのでしょう。
これは何度か指摘していますが。この二人は同年代、前世夫婦(『真田丸』のことですよ!)で、近いところに住む男女なんですよ。
それが、しっとりとした恋愛ではなくて、殴り合う総大将決戦になっているところが、実におもしろい。
なんだこの、婚礼経由、謎の同盟感は!
坂場も、すごい見事と納得してニッコニコ。
なつもぴったりだと改めて思っております。
姉妹揃って同時結婚式だ!
ともあれ、姉妹がともに結婚することになりました。
「大地に春がきた。たんぽぽが咲いた!」
剛男がそう言い切ります。詩人ですねぇ。
富士子が惚れたのは、こういう心なのかな。
「おめでとう、夕見子!」
ここでやっと、夕見子が頰を赤くして、モジモジと照れています。
高山は絶対にたどり着けなかった、めんこさの境地だべな。
女らしいところを見たことがないと言われてきた、そんな夕見子。
いや、そうでないんだわ。ただ難易度が高いだけ。
急に照れた、順番を間違った、夕見子です。
ここで坂場が、北海道での二組同時挙式を言い出します。
本州在住である坂場の家族はどうなのか?
周囲は不安になりますが、坂場は謎のドヤ顔で問題がないと言い切ります。
「家族も喜びます!」
「そったらことできたらうれしいけどね」
常識人の富士子は、まぁ、不安になりますよね。
そして夕見子も、らしいリアクションをします。
「よし、そうしよう。その方がめんどくさくないし、恥ずかしくない!」
「その理由が恥ずかしいよ……」
なつがそう突っ込みます。
すっかりなつが突っ込み役になりつつあるわ。
じいちゃんに似て照れ屋である夕見子ですので、そこはそうなのでしょう。
無駄な効率主義もありますし。そこも出ている。
しかし、ここはなつの言う通りなんだ。
大人になったら、そこはちょっとオブラートに包まないとな。ドヤ顔で言わんでいいから。
ナレーションの父が、心の底から言います。
私からまだ言っていなかったけれど、夕見子ちゃん、なつよ、おめでとうーー。
おめでとう!!
軍師の甘い消去法恋愛
意外なようで、運命的だった――それがこの二人です。
昔から、これですから。
なつぞら9話 感想あらすじ視聴率(4/10)なつにとっての青空「夕見子ちゃんのためにお菓子作る!」
そしてこうきた。
なつぞら43話 感想あらすじ視聴率(5/20)本当は凄い雪次郎「北大の夕見子ちゃんが認めるお菓子を作ることです!」
このお菓子について言えば、泰樹と高山でもフラグがあったと言えばそう。
なつぞら92話 感想あらすじ視聴率(7/16)その考えは古い問題高山はこう主張します。
泰樹じいちゃんは、今ならジャズを聴きながら、ウイスキーをロックで飲んでいるだろうと。
なつは、
「お茶をすすりながら饅頭を食べていますけど……」
と突っ込むのでした。
泰樹はウイスキーだと思っていた高山は、偽物。
泰樹が褒める菓子を作る雪次郎は、本物。
そういうことですね。
唐突なようで、かなり細かく張り巡らされております。
プロセスをすっ飛ばし気味の【表裏比興】の結婚ですので、いろいろと伏線を張ってきているのです。
それでも、この二人は運命だとキラキラしていなかった。
条件だけ並べると、お互いの運命にうっとりしていてもよさそうな、少女漫画状態なのに。むしろ謎の乱世感……。
夕見子は、恥ずかしいからって理由で同時結婚式に賛同するし。
雪次郎が押しているにも関わらず、むしろ夕見子は条件を確認し、
「もはやこれまでじゃ……」
という悟りすら見せている。
これも軍師だからさ。それでも、甘ければいいんでないかい。
あの照れ顔を見たら、甘くてメロメロしているとわかるでしょ。
なつと坂場、夕見子と雪次郎
実は、この姉妹の恋愛は構造が似ておりまして。
なつ&雪次郎:濃淡の差はあれど、好意に気づいていた
坂場&夕見子:不明。本当に不明……無意識には何かがあったらしいが
なつ&雪次郎:相手の鈍感さにイライラしつつ、押していく
坂場&夕見子:なっ! 決めれば早い。悩む時間はないのじゃああ!
なつ&雪次郎:この人を理解できるのは自分だけ、ありのままを受け容れる、悟りきった感
坂場&夕見子:この人しか自分を理解できないんじゃ! 君と余じゃ! そういう謎のテンションを感じる
作劇上かなり重要だと思います。
なつと坂場はナイスカップルですが、なつが女で、坂場が男。
これだけだと、
「男は子供だから、育児するつもりで女が妥協しなくちゃ」
という偏見の刷り込みになるんですよね。
◆男は大きい子どもだと思え!? 彼とケンカをせずに平和に過ごすコツ
なんか恋愛コンサルの記事かよ、合コンでは女がサラダ取り分けろ系かよ……そうなりそうなところ。
それを、夕見子と雪次郎がいればこそ、ひっくり返すことができる。
夕見子は子供っぽいことで向きになるし、【抹殺パンチ】だし、北大に進学するし、ともかく夕見子なので。
幼少期から、男らしいと社会ではみなされそうな言動が、ものすごく多い。伝統的な女らしさを、踏んづけて破っている。
そういう彼女を受け容れることは、雪次郎にしかできない。
男でもない、女でもない。
「あやつは、【表裏比興】……」
と、悟りきった笑みをうかべること。
かといって、受け容れる側だけが疲れるわけじゃない。
坂場にせよ、夕見子にせよ、役立つこともあると示されているのです。
ここでもうひと組。
それは総大将コンビです。泰樹ととよですね。
癖が強いながらも、とても役立つ総大将ですから。
受け入れて、互いに支え合う、そういう姿が本作にはあります。
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
久しぶりに訪問します。
連休のお陰でレビューを一気読み。
シーンを思い起こしながら読むのも良いものです。
夕見子の結婚、その経緯も私は納得です。
賢くて世間の常識を重々承知しているからこそ、それを超えて行かんとする夕見子。
祖父譲りの照れ屋でもある。冬の通学シーンなど、雪次郎を昔から意識はしていて愛らしい。
蘭子にも夕見子にも好きな人には面と向かって告げてきた雪次郎。
子供時代は力不足が否めなかった彼も、自分の道を定めて大きくなった。魂の菓子を認められて夕見子と向かい合える存在になった。
「私でいいの?」
北大を出ても、工場設立で活躍しても、世間の評価はどんなものか理解している。自ら選んだはずの高山にも突きつけられた。
その苦い経験があっても自分は曲げない。
だから、夕見子は聞く。
それがいいと雪次郎が言う。
夕見子らしい。雪次郎らしい。
心が動いたら、大切なものを選び取れる。
結婚したとしても互いの道を行ける。
時代や理念を超えて、よい伴侶に恵まれたと嬉しくなりました。
ショックでした。どうして夕見子に「私でいいの?」なんて自己肯定感どん底の台詞を言わせてしまったのか。よりによって夕見子に。
駆け落ち事件で変わってしまったのかもしれませんが、自信満々で口の減らない才女だった夕見子が小さくまとまっちゃったとこが残念でなりません。
それにこういう展開になるなら駆け落ちと蘭子のエピソードは必要だったんでしょうか。互いに別の恋愛を経験・失敗した上で結ばれるというのはいいと思いますが、夕見子も雪次郎も失恋してからの心の動きが全く描かれていないので唐突にしか感じられません。脳内補完の域を超えて二次創作レベルの想像をしないと話が繋がりません。
それにしても返す返す夕見子のキャラ変が残念です。特に必要ないから一生結婚しないか、「結婚するなら雪次郎しかいない」なら自分からプロポーズするか、それくらいのことはして欲しかった。
arataさんのを読んで、、。
私もそう思います。
半分、青い の時のような、奥深い癒されるようなレビューを もう一度読みたいです。
前作をもう思い出したくないし、なつぞら という世界観に どっぷり浸りたいです。
もう、過去は流して、今をみたい。
いい文書だ。
俺のはいつも通り消していいけど、下の文章は消すとあんたの良心が問われるよ。
ここが多分、あんたの分岐点だ。
よく考えて、行動するべきだと思うよ。
丁寧に書いてくれたら多少更新遅くても、誰も怒らないからさ。
毎日楽しみに拝見しています。
ところで、時々他の方からもご指摘はありますが
「発した台詞人の間違い」などが、このところひどいように思います。
人名の間違いなのか?と思っても、さすがにそことそこは入れ替えないだろうと…
レビュアーさんの体調を心配してしまいます…
あと、前作は私も好きではありません(初期で試聴をやめました)が、
此の期に及んでまだ比較対象として引用するのは、さすがにどうかな..と。
逆に言えば、前作知らない人(自分も初期で脱落しました)にとっては、全く意味のない悪口タイムでしかないので。
このサイト、ずっと楽しみにしていましたが、上掲な余計なことを考えることが多くなってきました。
大河ドラマのレビューにいたっては、阿鼻叫喚のコメント群をうけてからの後出し記事にしかもはや見えず。
よくある掲示板の書き込みに成り下がっています。
せっかく、半分青い、のときには、脚本家さんのインタビューまでしていらしゃった方なのに。
どうか、心を強く持って、外野の誹謗中傷にも動じず、ただただ自分の心で思ったことだけを文章にして公開していただければ幸いです。
それが楽しみでしたので、批判(それほどの価値もないものですが)にもめげず
心に思ったことだけを綴っていただければと思います。