なつぞら133話 感想あらすじ視聴率(9/2)魔王が男女で降臨だ

天陽、また倒れる

一方、十勝では――。

8月、天陽はまたも体調を崩し、帯広で入院していました。

こうなると、根本的な何かがある。
でも、それがわからない。

兄・陽平が弟を見舞っています。明日には東京に戻るって。
東洋動画の陽平が見舞いに来て、帰るところ。

同じ職場のなつは、どうなのでしょう?

陽平は、天陽の馬の絵もいいけど、風景も好きだと褒めます。
どうやら信用金庫のカレンダー用に描いているんですね。

確かに素敵な絵です。
カレンダーや絵葉書によさそう。ペンションや旅館の部屋に飾ってもよさそうではある。

「つまらない風景画だよ」

天陽はそう来た。
そうかもしれない。
彼は、部屋にマッチする無難なものではなくて、もっと魂をえぐるようなものを目指しているのかも。

兄からすれば、アニメの背景を担当している自分への侮辱にも取られかねません。
兄だからこそ、そこを軽くたしなめる程度で終わりますが。

でも、弟に悪意はないんですよね。むしろアニメの背景画はいいって。

「アニメなら、なっちゃんを歩かせたりして、面白いだろうなって……」

幼いなつが、天陽の家まで来るために歩いていたあの頃。
そんな日々を思い出しています。

「なっちゃんは会いたがっている」

「会えなくても、絵を描いていればそれでいい。十分なのさ」

天陽は言います。
絵の中でしか会えない関係。もう、天陽はどこかへ飛び去ろうとしています。

靖枝のおかげで

なつは、優と約束した夏休みを取れていません。

北海道と東京の距離感が、あまりに残酷です。
もしも天陽の様子をもっとしっかりと認識できていれば、すっ飛んで行っていてもよいところなのですが。

天陽は、森の中をよろめきつつ、自転車で家へと向かいます。

自宅へ戻ると、山田家は驚いています。
天陽は、来週が退院だからいてもたってもいられず病院を抜け出してきたと言いだすのですが……。

喜んでいるのは、子供の道夫と彩子だけ。
その顔色の悪さを気遣い、叱り飛ばし、さっさと病院へ戻れと両親は言います。

「もうちょっとの辛抱だ」

我が子にそう語りかける天陽。

「辛抱できないのは。むしろ陽ちゃんでしょうや」

そう妻の靖枝は言い切ります。

先週、夕見子は彼女の苦労を語っておりました。理由は、わかってきます。

なつぞら132話 感想あらすじ視聴率(8/31)深まる天陽の孤立感

イケメンの画家と結婚できたら、私はセレブ妻だから幸せ〜♬ そんな単純な話じゃない。

「まったくしょうがないんだから。無理しないで」

朝になったら戻るように釘を刺して、靖枝は天陽をキャンバスに向かわせます。

天陽は感謝しています。

「靖枝のおかげで、わがままができる」

「わがまま過ぎるわ」

「畑も牛も、頼ってばかりだ。靖枝と結婚して、ほんとよかったわ。俺が俺でいられる」

「したら本当にほどほどにしてよ。大事な体なんだから」

そう告げる靖枝の腕をつかみ、天陽はこう言います。

「ここにいろよ」

「ちょっと、ちょっと、陽ちゃん! 絵の具ついちゃう。早く治してよー」

筆を持ったまま、妻を抱きしめる天陽。

「ありがとう」

ものすごくロマンチックなようで、不器用で、痛々しくて、天陽がどんどんこの世界から消えていっているようで。

子供かえりしていて。妻というより母に甘える子供みたいで。

もう、無茶苦茶、怖いです。

もうすぐ夏が終わる

翌朝、靖枝はアトリエの隅っこで寝ています。

朝まで天陽は絵に向かっていました。
そして、馬の絵ができあがっているのです。

いい絵。ほんとうにいい、そんな絵。
カレンダーには向いていないかもしれないけれど、素敵です。

天陽は顔をぬぐっています。集中ゆえの汗なのか。それとも、別の要因なのか。

「靖枝、起きれ。もう朝だ」

「絵はできたの?」

「できた」

ここでナレーターの父が語りかけます。

なつよ、もうすぐ夏が終わるぞ――。

秋まで、彼は生きていられるのでしょうか。

妥協のない残酷さ

不穏、謀反、叛逆。【魔王】神っちは止まらない。
モデルへの忖度がなさすぎて、頭がぐるぐるしてきました。

【魔王】マコは、もうあの妄想でいいです。強すぎる!

優のそばにいたいと語るなつに、やる気の問題だと言い出すイッキュウさんも、なんだかずれているし。

そして天陽も。
兄や両親にも、結構キツイことを言いますよね。

天陽と靖枝の、アトリエのあの場面。
もろもろを考えると、心の底からぞっとしてしまいました。

・自分の背景で歩かせたい女の子は、靖枝ではなく、なっちゃん
→自分の絵の中に入り込める存在は、なつということ?

 

・靖枝に感謝はしている。でも、それはあくまでサポート役としてのこと
→なつにもはっきりと好意を告げず仕舞いでしたが。実は、アトリエでも靖枝本人の魅力には言及していません。

 

・靖枝が体に気をつけて欲しいと願っても、絵を優先してしまう
→俺が俺でいることが大事。天陽はそういう人だから。

天陽って、実はかなり怖いところがあると思いますよ。

靖枝も今だからこそ、ニコニコと受け止めておりますが。
結婚生活が長引いたら、萩尾律とすれちがって離婚した、より子状態になりかねないんじゃないかと思うのです。

吉沢亮さんも、大原櫻子さんも、こんな難しい役をよく演じていると思います。

吉沢さんの演技は、鬼気が迫っていて本当に怖い。佐藤健さんの萩尾律も結構そんな時がありましたっけ。

これほどのものを朝からありがとうございます。

女の【魔王】、男の主役が必要な理由

さて、公式【魔王】枠のマコさんですが。

あのレジェンドを二分割して男女に割り振ること。
ややこしくなるだけで、どういう意味かと思うかもしれませんが。

意味は、あるんですよ。

◆女性が死者の8割を占めたケースも。災害の死者に女性が多い背景とは|BUSINESS INSIDER

この記事にあるように、どうしたってトップばかりに話の焦点を合わせると、男性目線ばかりになってしまう。
結果、女性のものとされる問題点への切り込みが不十分になる。

それはアニメでも同じことでしょう。

「表現の自由!」
とは、アニメ界隈でも叫ばれる概念ですが。

その範囲はきわめて狭く、ジェンダー観点では歪んでいることは、近年指摘されてきていることでもあります。

そこを意識しているからこそ、本作は朝ドラで敢えて取り組んだ。

「女性を応援しているんです!」という名目の朝ドラならば、そこは通しやすい。同じ企画を他の枠ならばできたかどうか。

これも『ゲーム・オブ・スローンズ』と同じ構造ですね。
歴史的なモデルよりも、意識的に女性君主を増やしていた。

これは来年の朝ドラ『エール』にも通じる話であります。

女性主人公では、どうしてもできにくいことがある。
それは従軍です。

千遥役の清原果耶さんが熱演していた、こちらのドラマ。よい作品でした。

◆特集ドラマ「マンゴーの樹の下で~ルソン島、戦火の約束~」

こういう女性の従軍はあるにせよ。
もっと主体的に、兵士の背中を押すようなロールとなれば、男性が向いておりまして。

古関裕而氏をモデルとして起用するということは、そういう狙いがあるのではないかと、私はどうしても思ってしまいます。

朝ドラ『エール』モデル古関裕而(こせきゆうじ) 激動の作曲家人生80年

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】なつぞら公式HP

 

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