なつは、東京で待つイッキュウさんに電話しています。
「あの企画、まだ動いてない?」
企画書もまだ作っていない。
そう確かめて、なつは言い切ります。
「それ、私がやりたい」
「えっ!」
「私にやらせてほしいの」
「うん、わかった」
「今すぐは無理だけど」
「わかってる、あわてなくていい。あとは帰ってから話そう。大丈夫そうだな」
「うん、じゃあね、いってらっしゃい」
夫婦の通話はここで終了。
新しい物語が、動き始めました。
剛男、奴は最弱……
富士子はそんな会話を聞いていました。
「なつ……」
「母さん、やっぱり仕事続けるわ」
「答え出たんだね」
「うん、また天陽くんに答えを教えてもらった」
なつが出した答え。
そして作品の中には、天陽が生きています。
そして、柴田家は土曜日を迎えます。
子供が帰ってくるとうれしいと、剛男はニコニコ。
夕見子は帰り、代わって帰省したのは明美でした。明美ちゃん、待ってました!
その明美は、月曜に東京へ戻るなつに、もっといればいいと惜しんでいます。
と言いつつ、本人も明日には札幌へ。
現代の【札幌―帯広】間をグーグルマップで計測してみると、197kmですね。
東京―静岡(約180km)なのでそんな感覚ですかね。
昭和40年代のクルマだと、なかなか大変なものがありますな。
しかも明美は、月曜にも仕事があるそうで。
それでも、やっと夏休みを取れたなつのことを心配しています。元気だな〜!
対して優はこうきた。
「ママは忙しい。優はわかっているから」
すごいな……。
再三指摘していますが、これまで朝ドラヒロインの子供たちは、母親が働くことにどれだけ文句をつけていたか。
タイマーでも仕掛けているのかと思うくらい見事に、時代も生活環境も無視して、ブーブー言っていた。
それって、子供の気持ちというよりも、作り手がマザコンというだけでは? というね。
そんな優は、きっと光子の教育のおかげだろうとなつは感謝しています。
優の周囲には、強い女がいる。
朝ドラで「鉄馬の女」だな(※『マッドマックス 怒りのデスロード』において女性を助けるカッコいい女性集団)。
柴田家の女も強いと。
まぁ、確かに全員強い。
ここで剛男が、男側が弱いふりをして立てていると言うところが、本作最高のボケでしたね。
フフフ……奴は柴田家の中でも最弱……いや、剛男は善人ですけど。
明美、圧倒的な知勇兼備よ……
明美は実際に強かった。
女子大卒業後、信哉のあとを追って放送局へ入り、後輩になりました。
信哉は、なつの運命の人と見せかけて外されて、しかも北海道へ移っておりましたが、明美のロールモデルになったんですね。
その明美が、こう言いおった。
「戦場におるとようわかるわ。男どもは猿よ……」
強烈なセリフきおったわー!
それに対して、富士子はこうだ。
「いい人いないのかねー」
あーっ、お母さん、それは禁句です。
さんざん夕見子にぶちのめされてきたじゃないですか。
「つまんない。母さんがそんなにつまんない人だと思わなかった!」
「女は結婚のために生きていないッ!」
そんな妹を見て、兄・照男はしみじみと言います。
「夕見子に似てきたな……」
ほんとうに、あの煽り顔が脳裏に浮かぶから困る。
孔明の罠ならぬ夕見子の罠だよな。こんな妹に萌えたら、罠を仕掛けられて、牛糞の中に転落しそうっすわ。
「姉上は、所詮、中途半端であったな……」
とドヤ顔の明美。こいつも軍師だ。ここで、なつはたしなめます。
「夕見は、自分の人生を生きているんだよ」
明美の言わんとすることはわかります。
リアル夕見子を何人も知っている。結婚して三角巾をかぶっている姉に、もどかしさを感じる気持ちもわかります。
私も、夕見子は研究者にでもなるのかとうっすら思っていました。
でも、これも彼女の生き方なんですよね。
夕見子を、このドラマで見ることができてよかった。
彼女たちの選択が、人生が理解できました。
明美はわからないんだ。
明美には、まだわからない。
挫折して、結婚に逃げたと思えてしまうかも。
でも、彼女らも戦っている。
北大を出たからって一流企業に勤めるばかりが人生ではない。農協を経て雪月を大きくする――自分の力をフルに発揮できて、これ以上ない幸せな職場じゃないですか。
【魔王】マコさんならば、どんな選択だって責められるものじゃないと諭してくれそうですが。
明美がマコさんにインタビューする日が、この先訪れそう。
明美は、仕事をしているとどんどん強くなると意気軒昂。
強くなったよな〜。知略も高いよな〜。
剛男がここで、そんな女に譲るレディーファースト論もどきをまた蒸し返し、照男にぶった切られます。
「説得力ねぇ……」
照男よ。
視聴者心の声を代弁しおって――。
食いつく記者魂!
泰樹は、なつが気になっています。
仕事を続けるのかと聞いてきます。
「やめようかと思ったけど。天陽くんと話して、またやりたくなった。やるってもう決めた」
明美は、これはどういうことかと気になって仕方ない。
「いつ? どこで?」
「いつでも、どこででも」
「ん? どーゆーこと?」
明美ちゃーん、空気読めな〜い。
天陽の死をふまえると、結構ズケズケと無神経に思えるんですよね。富士子も呆れています。
「それでテレビ局つとまるの……」
富士子は常識人なのでしょう。
テレビ局は感動を売りにしてナンボのもんよ。そういう空気を読まない。【情】を無視する明美に引いていると。
しかも曖昧な表現は許されない。だから視聴者目線でキッチリ理解できるかツッコむ。
この対話。
テレビ局関係者が作っていると思うと、あまりに冴えていて笑いが止まらなくなりそうです。
NHK東京さんよぉ〜〜!
砂良は、そんなパワフル義理姉妹のあしらいがうまい。鍛えられたんでしょうね。
こう言って話をそらします。
「なっちゃんは続けるべきだと思う。なっちゃんを千遥ちゃんも見ているから」
千遥はどこかで姉の名を見て、元気だと思っている。
安心している。
その意見に富士子も同意します。
このやりとりを、地平がお腹にいた時だったと振り返られます。
そうそう、地平の成長が歳月をあらわしていますね。
そんなに経ったのか。
なつぞら83話 感想あらすじ視聴率(7/5)戦災孤児の境遇を浮き彫りになつは作品を通して、千遥に呼びかけてきた。
私はここにいるからって。
また会いに来てねって。
それをやめるわけにはいかない。
「優には、頼もしい女連合軍が付いているから、大丈夫さ!」
そう締めくくられます。
総大将とよを筆頭に、みんな強いもんね。
#Metoo だって。#Kutoo だって。フラワーデモだって。
女の連合軍は、弱くないんだわ、ヒャッハー!
※続きは次ページへ
私は、「イッキュウさんのために大草原に参加、イッキュウさんのためにマコプロへ」の会話は唐突に感じました。彼らなら、そんなこと考えもしない意識レベルじゃないかなと思います。
イッキュウさんのためにマコプロへ行く、なんて自己犠牲は、マコさんもイッキュウさんも望んでないし、アニメーターとしてのなつの自我を信じていないことにつながるからです。なつの自立精神を信じない、そういう2人ではないだろうと。
だからこそ、あの会話は制作側が視聴者に、夫に尽くす嫁に読み違えるなよ、と敢えてでも入れ込んだように見えました。
話としては唐突でしたが、その意気や良し!と感じました。
また、剛男の弱いふりをしている云々は、武者さんも時折指摘される男女逆転の典型だと思いました。
従うふりして、その実ダンナは嫁の手のひらで転がされてる、嗚呼よきかな的なノスタルジーが、どれほど実のない言い草なのかがあらわになりますね