半分、青い。87話 感想あらすじ視聴率(7/11)もっとロマンチックになっていい

1999年(平成11年)秋。
バブルが遠くなった時代に漫画家の道を断念した楡野鈴愛は、時給750円のバイト店員として100均で働いています。

そんなある日、アーティストタイプのイケメン・森山涼次が新たなアルバイト仲間としてやってきました。

心優しく、無邪気なところもある涼次に心惹かれてゆく鈴愛。
しかし、短期バイトの彼は、明日にはこの店に来なくなってしまいます。

二人の運命は?

【87話の視聴率は22.1%でした】

 

私にも万華鏡を作ってくれるかな

運動会当日は、なんと雨です。これは延期でしょうか?
ならば翌日か、それとも翌週か。

当惑する鈴愛と涼次を遠くから見守るのは、忙しい時に女と逃げてしまった田辺です。
気まずい思いから田辺は再び店を去ってしまいますが、同時に気になるのはあの謎の美女です。そのうち正体は明らかになるんですかねぇ。

涼次は、常連客のおばあちゃん・東雲が欲しがっていた【丸くてキラキラしたもの】が万華鏡では!と思いつきます。

早速、100円キットで手作り万華鏡を作る涼次。不器用で失敗しているあたり、愛嬌がありますよね。

やっと作り終えた万華鏡を、鈴愛が覗き込みます。
綺麗!と声をあげて、それから鈴愛はこういうのです。

「私にも作ってくれるかな。今日で終わる記念に、なんて」

はー、もう、いじらしい! これは可愛らしいですよね。記念に欲しいのが100均の万華鏡です。

金融マンとのデートで高いイタ飯を食べても。
カリスマ美容師にヘアカットされていると自慢されても。
全然ときめかなかった鈴愛ですが、万華鏡にはグッと来ています。

 

岐阜では晴だけが心配していた

一方、岐阜では……。
草太が、なぜ鈴愛を連れ戻さなかったのかと晴に叱られてます。

100均なんてどこにもある!三十路手前で何をしているのか!と怒る晴。終始ノンビリ屋の宇太郎は、100均はふくろう町にはなくて隣の隣のセキレイ町まで行かないとないぞ、なんて言っております。

仙吉は、今時の結婚式はカタログギフトか、松坂牛がええなあ、と浮かれている最中。
そういえばユーコの時は、悪趣味なカップル写真の皿でしたね。時代の流れです。

この、晴だけが心配して曖昧になるという、いつもの楡野家の流れでした。

涼次は、定時刻の午後6時過ぎまで残り、リクエストに応じて万華鏡を作ることにします。
一日で4個も買った、売り上げに貢献したと笑っています

「ねえ、打ち上げやらない?」

鈴愛はそう涼次を誘います。
そして当然のように飲まれる田辺店長の買い置き酒。こういうちゃっかりしたところも鈴愛の可愛さですね。

店長の毛布とギターもあるんだとか。まあいいよね、逃げたんだし。

 

「漫画を辞めてから、明日が見えなくなった」

ギターを弾き始めた涼次と、イントロクイズを楽しむ鈴愛。

 

『ラブストーリーは突然に』は正解するのですが、そのあとのサスペンスドラマや、素敵なラブソングを当てることはできません。それが流行していたころ、漫画に夢中でそんな余裕はなかったから。

うーん。
オフィスティンカーベルの日々は輝いていて、後悔はないはず。それでも、失わなかったものがなかったわけではないんですね。

ユーコの言う通り、他人を喜ばせるためのラブストーリーを描き続け、自分の恋愛は置き去りにしていたのかも。

 

万華鏡をくるくる回す鈴愛。幻想的で、綺麗です。
でも、漫画を描かなくなってから何もないとつぶやく鈴愛。涼次は明日から沖縄ロケだけど、自分には明日、何もないのだと。

「漫画を辞めてから、明日が見えなくなった」
宙ぶらりんで、息苦しい日々。
年齢、家族、友達が子供を産んだ、そんな雑音ばっかり。あっ、雑音なんて意地悪になりそうだと鈴愛は自嘲します。

こういうセリフに、痛みがこもっていますよね。

彼氏の話。婚活の話。旦那さんの話。育児の話。そりゃあ、アラサー女子は誰も興味持っていそうな鉄板ネタじゃないですか。
家族が雑音っていうのも、心配している彼らのことを考えればあまりにひどい言い草になってしまう。

でも、こういう鈴愛、それに秋風羽織のわがまま全開ひとでなしモーメントが実は癒しなんじゃないかと。
ドラマ制作側も、鈴愛のわがままさは自覚しているそうです。インタビューを読むと、そう言っています。

ただ、それが一種のエールではあって。
もっとわがままでもいい、私たちは人の目を気にしすぎて生きているんじゃないか……という。

 

血の滴るステーキを食べたい人だっている

わかる気がします。

そういう、誰からも嫌われないいい子ちゃん、自分のなりたい理想ではなく、世間の求めるいい子ちゃんを過剰に求めた結果が、現代日本の息苦しさでもありますよね。

たとえば……何を飲んでいるか?というのを誰からも知られたくないように【透明のカフェラテ】が売れてしまうような。そういう世界へのアンチテーゼの気がします。

世間からすれば規格外の人が空気穴を開けるみたいな作品ですよね。
だから、世間に順応している人からすれば、無茶苦茶に腹が立つ、甘ったれた話ではあるのです。
そこにギャップがあります。

鈴愛みたいな、家庭生活に憧れるよりも我が道を進みたい、そういう女性にとって。
しかもアラサーが目の前にあり、周囲がまっとうな女の幸せを掴めとギリギリと圧力をかけてくる中にとって。
生きているだけで息詰まりそうな、そんな日々なのでしょう。

どこかで立ち止まって深呼吸をしなくてはいけない。けど、必死すぎてそれすらできていない。

ちなみに、こういうとき迷走しまくって、
「とりあえず結婚すればあがり! 結婚すれば全て解決!」
とゴールにしてしまう女性もいますが、必ずしもよい結末を迎えるとは限りません。

血の滴るステーキが食べたいのに、女の子ならこっちでしょとチーズケーキを無理やり食わされ、吐き出すような悲惨な話になりがちです。

毎日書いて来ているように、鈴愛は自分のことで精一杯で、視野やキャパシティが極端に狭い不器用さんです。
雑音だなんだ、ってガードを緩めて本音を話せるのも、涼次が彼女のことを元漫画家でドロップアウトしたことを知っているからこそですね。

「明日を、見つけなあかん」
「大丈夫ですよ、今まで頑張ったんだから。少し振り返り、休んでもいいんじゃないですか。大丈夫、必ず前に歩き出すはず」

やはり涼次は、鈴愛の人生に必要だし、このタイミングで出会いだからこそ、なんでしょう。突っ走っている鈴愛の前に現れても、ピンとこなかったかもしれない。

目は前にしかついていないから、視界の開けた方へと歩きだすんですよ、そう励ます涼次です。
ただ顔がいいとか。料理上手とか。性格がいいとか。そういう得点稼ぎだけではなくて。

鈴愛の必要な助言や癒す力を持っている涼次。
俺が今この人の側にいて、支えないといけないんだなあと涼次に思わせる、弱った鈴愛。

これはもう、これはもうですよ!
たとえキョーレツ三姉妹が二人の道を阻もうと、関係ないですよ!

 

「好きです、鈴愛さん」

いい感じに酔っ払った二人は、土砂降りの外へと飛び出します。

鈴愛は、左耳が聞こえないから傘にあたる雨音が半分しかわからない、両方聞こえるのはどんなだろうと好きな人に聞いた、と語ります。
その人・萩尾律は、傘に当たる雨音なんてよいものじゃないから、半分でちょうどいいと答えました。

いいことを言いますね、と微笑む涼次。
でもその人は結婚してしまった、と鈴愛が言葉をつなぐと、突然、涼次は雨の中へ飛び出してゆきます。

傘の下なら片方だけでも、雨に打たれれば両方降ります!

「ぼくと一緒に、雨に打たれませんか? 暗くて顔が見えないな。引いてますか?」
「この酔っ払い! でも私も酔っ払いだ!」
鈴愛も雨に打たれて、踊り出します。

『雨に唄えば』を思い出すなあ、と言い出す涼次。
楽しい、両方に雨が降っている! そう叫ぶ鈴愛。

そして涼次は鈴愛を抱き寄せ、言うのです。

「好きです、鈴愛さん」

 

今日のマトメ「もっとロマンチックになっていい」

とりあえず、今日の展開を「唐突だ」という声は聞かなくていいと思います。
15分間で歩みよる気持ちを詰め込むというミッション、ちゃんとクリアできています。

100円の万華鏡ひとつで、ときめいてしまう鈴愛。そういうものを可愛らしくねだる鈴愛にドキドキする涼次。

イントロクイズで、自分がいかに突っ走って来たか気づいてしまった鈴愛。そんな彼女を励ます涼次。

そして、雨音が左半分だという律との思い出にも縛られた鈴愛を、振り切ってきた涼次。律は鈴愛の分身かもしれないけれど、傘の下を飛び出して雨に打たれる、鈴愛にとって不完全な聴覚以外で雨を味わう、感じる方法を見出すことはなかったわけです。

傘の下だけではなくて、律との思い出からも、鈴愛はやっと飛び出すことができました。
よかったね、鈴愛。少しさみしいけれど……。

これが、鈴愛みたいなタイプにできる、理想というより唯一の恋愛なのでしょう。

いくらおめかしして高いイタ飯屋でご飯を食べようと、相手に心のガードを緩めて自分をわかってもらえないと無駄なのです。
反対に、心さえわかりあえれば、勝手にガメた酒で酔っ払い、雨の中で踊ってても最高にロマンチックな体験ができる。

リアルに置き換えるのは難しいかも知れません。
しかし、私達も考えるべき事柄かもしれません。

婚活サイトで容姿、年齢、年収欄ばかりを気にするんではなく、自分の感性を大切にする。

ひいては、あなたも、もっとロマンチックになっていいんですよ――と今日この展開は教えてくれた気がします。

◆著者の連載が一冊の電子書籍となりました。
ご覧いただければ幸いです。

この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

6 Comments

清えんどう

朝ドラと言うより民放の連ドラっぽい画なんだけど、二人が好意を寄せ合う流れが自然でホントに良くできた脚本かと。
鈴愛も、こりゃ好きになるわ、と。
涼ちゃんは、スキマスイッチだね。

匿名

ちょっといいなぁ、とお互いに思い合っている男女が、たまたまの悪天候も手伝って二人きりで数時間を過ごして急速に近づくのは、派手でドラマチックではないかもしれませんが、唐突かというとそうではないと思いました
鈴愛の心にスキマが出来て、涼ちゃんがそこにハマる子なのは月曜から描かれてますし、そういう意味では普通のドラマ1話分くらいは時間を割いてますしね

しおしお改め、七歳上

涼ちゃんは、血の通った、体温のある男の子ですね。
律くんは体温が感じられなかったな。表情も薄い、人づきあいの苦手な男の子でしたね。

ぬぬ

>血の滴るステーキが食べたいのに、女の子ならこっちでしょとチーズケーキを無理やり食わされ、吐き出すような悲惨な話になりがちです。

ホントそれ!!!!!!!!!!!!
100万回イイねを押したいです!!!!!!!!!!!!!!!!

どっくん

私は、このドラマの主人公スズメを「片耳に障碍がある」ではなく、「発達障害」の一類型の人だと思って見ています。
秋風先生も、律くんや正人くんも、それぞれ違う、情緒障害系の登場人物です。
ゆーこちゃんもボクテくんも、アダルトチルドレン的な人達です。
みなさん毎日、そういう人達とどのように向き合っていますか?を試されているドラマなんだと思います。
それが理解出来ない人には、苛立つことの多い話かもしれませんね。
私は「半分、青い。」、良いドラマだと思います。

なお

今日の雨の展開、良かったですよね。

たまたま居合わせた、毎日見ていない家族は、「なんじゃこの話は。」って言ってましたけど。

確かに不自然な展開だったかもしれません。が、これまでのスズメちゃんの苦労や葛藤を見てきた側としては、良かったね〜‼︎と素直に嬉しかったです。

先週末の時点で、次週予告で2人がくっつくことは分かっていましたが、まさかこんな流れで急接近するなんて。
よめませんでした。
さすが北川先生の脚本です。
朝から嬉しかったです。
ありがとうございました。

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