わろてんか70話あらすじ感想(12/21)芸人育成を怠ったツケ

時はモダンな文化の風薫る大正時代。ところは「東洋のマンチェスター」こと大阪。
お笑い派閥争いは、今まさに戦国時代を迎えておりました。

おちゃらけ派率いる寺ギンは、落語家を多く抱える伝統派を追い詰め、上方芸能界を席巻しています。

一方で寄席「風鳥亭」を経営する「北村笑店」は、月給制度で芸人を抱え込み、寺ギン率いるおちゃらけ派に対抗する狼煙をあげました。

さぁこの激しい戦い、最後に笑うのは誰だ?

 

月給制度の恩恵は?

藤吉は電話をかけまくり、なんとか寺ギン以外の太夫元から芸人の出演を取り付けています。
ここで亀井と万丈目により月給制度の恩恵アピール。

「家賃も払えます!」
「怪我をしても安心!」
それを聞いてニコニコてんちゃんですが……ここで不思議なのは、てんが月給制度のメリットを説明してもらって喜んでいるようにも見える点。
そこは導入前に自分の頭で考え、視聴者向けにさらっとプレゼンしておくポイントちゃいます?

万丈目は月給制度になったら、集客できない芸人は解雇だろうかと焦り始めます。
ここでニコニコてんちゃん、
「しっかりしとくれやす♥」
って、女子マネとしては可愛いかもしれませんけど、今はもう大阪商人のごりょんさんなワケで……。

アメリカに行った啄子(鈴木京香さん)を思い出すと、どうにも頼りない。
まぁ、朝ドラというのは、孫娘の笑顔を愛でるような気持ちで見る層もそれなりにいるので、ニコニコてんちゃんの需要もあるのでしょう。しゃあないすね(´・ω・`)

 

栞の頭めがけて水をバシャッ!

リリコは栞の映画出演依頼を頑として断っています。

契約書をチラつかせながら、撮影が遅れてスタッフも迷惑していると迫る栞。
しかしリリコは外に出て行ってしまいます。

そして追いすがる栞の頭めがけて、天水桶(てんすいおけ ※雨水を貯めておくタンク)の水をバシャッ!

契約まで結んでおいて、逆ギレして水ぶっかけって……嗚呼、リリコがどんどん残念な人に><;

破天荒な愛らしいキャラを演出したいのかもしれませんが、これでは単なるワガママ女にしか見えません。
栞が、馬車馬のように働かせて、ギャラもほとんど払わないような悪徳芸能事務所ならまだしも……。

栞はスーツを乾かし、北村家で藤吉の着物を借りました。

ここで栞役の高橋一生さんに着物を着せて、髪の毛を濡らして、女性ウケを狙っているんだとしたら、嗚呼、もう。
心なしか栞を演じる最近の高橋さん、目が暗いように思えるのです。『おんな城主直虎』で小野政次が心を押し殺していた時とは違う、なんだか目から光が消えているような。って私の主観ですね、すみません。

 

藤吉の台詞にデレデレのリリコって……

仏頂面のリリコに対し、
「せっかく女優になれたのに、もったいないわあ」
とノンキに言うてん。

栞も、
「きみは古い女性像を打ち破る魅力がある。新時代の活動写真に必要なんだ」
と念押しします。そんな綺麗事よりも契約書をビシッと突きつけてもよいのでは? 流石に藤吉の前ならキレないだろうし……と思ったら。

「俺もそう思う。お前が小さい頃から知っている俺が言うんやから間違いない」
と藤吉が太鼓判を押すと、途端にリリコがデレデレ照れ始めます。

ここでてんが、
「うらやましいわぁ。うちはそんなに言われたことありまへん。そこまで言われたら、受けて立つしかありまへん」
と能天気に言うのでした。

なんと言いましょうか。リリコの女優としての魅力が伝わって来ませんし、ここまで嫌がっている人を無理に映画に出しても、大して魅力的とは思えず。なぜ栞は執拗にこだわるのでしょうか。

穿った見方をしちゃいますと、栞も、北村家近所のリリコをだしにして、てんの元へちょくちょく来てたり?
って、今さらそんな小細工は必要ないですよね。だとしたら、なぜ?

溢れんばかりのリリコの才能でも表現されていたら、彼女にこだわる理由もわかるのです。
が、そこが伝わって来ないので、栞の行動がフシギになっちゃうんですよね。

 

寺ギンも月給制を導入したら、それでええやないの

風鳥亭には、月給制度を知った芸人たちが雇ってくれと押し寄せてきます。
風太はその様子を見て、寺ギンに見つかったらどうする気だと怒り出します。

でもね。風太も才覚あるなら、寺ギンに「うちも月給制にしたらどないですやろ」ぐらい言えばいいと思うのです。

寺ギンだって、団吾の時は契約金を積むというまっとうな手段を使っていたのに、なぜ急に変な手ばっかり使うのでしょうか。もともと、芸の機微がわかっていて人情の機微も把握しているからこそ多くの芸人を抱えられるハズです。そんなデキる人が、突然どうしたのでしょう。
って、無理矢理、悪役にされているから、しゃあないんですよね(´・ω・`)

風太は、風鳥亭の北村夫妻に、こんなのは引き抜きだから、今すぐ月給制度をやめろと言い出します。
てんは正論で返さず、
「そんな怖い顔せんといて。笑わせる方こそ笑うてないと。おおきに、心配してくれて。これが新しい時代のうちらのやり方や」
と言います。あぁ、また女子マネ台詞で……。

それより、いつまでも風太を弟扱いしている場合なんですかね。
てんも藤吉も、風太が商売相手という意識はサラサラなく、親しみを込めているようでいて、その実、上から目線で小馬鹿にするような印象を受けてしまいます。

最初から勝つことがわかっているから、寺ギンを怖がっているようで、本心からは怖がっていない。もしも風太が寺ギンの代理だと本気で思っていれば、こんな対応にはならないでしょう。

 

「俺はまだ一人前の席主やない」でヽ(・ω・)/ズコー

寺ギンは太夫元に手回しして、ついにどこの芸人も風鳥亭に立たなくなります。
そこまで想定せず、「まあ何とかなるやろ」と高をくくっていた藤吉は大慌て。

寄席を増やすだけ増やして、専属芸人が団吾と四銃士だけだった、というのも迂闊な話です。
寺ギンに売り上げを持って行かれることにも困っていましたし、手元で育てようという気はなかったのでしょうか。
太夫元と決別したら破滅なのは明白じゃないですか。

喩えがゲームで申し訳ないのですが、コーエーのシミュレーションゲームで武将登用をやらず、城だけ取っていったような状況だと思いました。

慌てたてんは伝統派の文鳥を呼ぼうとします。が、藤吉は断ります。出演は一度きりと言われた、そのあとは味を付けてからと言われた、と(第7週)。
「俺はまだ一人前の席主やない。筋を通したい」
ズコーッ!
ここで深刻な藤吉の言い分に盛大にずっこけてしまいました><;
あれだけ言われた「味つけ」を全く考えず、ただ適当に事業拡張してきたことを認めてしまったのですか!?

確かにそうですよね。
闇雲に寄席を増やすとか、金を積んで団吾をともかく引っ張るとか、思いつきで商売していて、とても計画性があるようには思えませんでしたもん。

「もうこうなったらつぶし合いや! 上方のお笑い界のためにも、俺らが寺ギンを倒さななあかん!」
「その通りです!」
藤吉のちょっと吹っ飛びすぎてついていけない理屈の飛躍を、全面肯定するてん……。

な、何を言っているんだ……。
なにゆえ突然、ちょっと昔の大河における『川中島の戦い』の前の上杉謙信みたいなノリになっているのでしょう。
大河の使い回し映像まで出して、寺ギンの横にわざとらしく女を侍らせて、潰すか潰されるみたいになっています。

そもそも今回の争いは、そんな「義戦」みたいなものでしょうか?
好きで寄席を運営しているのは自分たちのはずです。

一方で寺ギンもまた、風鳥亭を潰すと言い張っています。
見かねた風太が、「潰したらこちらも稼げなくなる」とツッコミしてますが、その通りですよね。
寺ギンも風鳥亭に芸人を貸し出すことで売り上げを確保しているわけで。そこを潰したら実害が及ぶと思います。

席主と太夫元の関係って、戦国大名同士のような対立関係ではなくて、大名と国衆のような、共存共栄関係ではないでしょうか。

まぁ、百歩譲って寺ギンが、一度は画策して諦めた寄席運営に乗り出す気があるなら、風鳥亭を潰す理屈もあるかもしれません。ただ、そういった描写がないので、兵糧攻めをしているようで、自分の首も絞めているだけのような気が……。

 

いきなり風太をビンタ! トキってこんな人!?

ここでトキに呼び出された風太は、弁解の余地なく、いきなり二発ビンタをかまされます。

トキとしては、寺ギンのやり方に賛同している風太を許せない様子。
ツンデレのつもりもあるかもしれまでんが、往来でいきなり人の頰を二発殴りつけるような人間はただの暴力体質です。本当にトキってそんな人なのでしょうか?

団真がお夕を殴った時は深刻な扱いをしていたのになぁ(第10週)。

他にも、刀や斧をふりかざす(第5週)、ハリセンでのどつきあい、ツンデレビンタと、こういった暴力沙汰がことごとくスベッているのが、見ていて辛いのです><;

結局は、寺ギンの行動も“結果ありき”なんですよね。
前述の通り、以前の彼なら給与面での囲い込み作戦を、風鳥亭の2人より上手に実行していたと思います。

彼は、もうダメになった芸人を冷酷に辞めさせるようでいて、実は新しい道を早めに歩むように促していたり、有能な方でした。
それが今はどうでしょう。悲しいです!(´・ω・`)

 

今回のマトメ「芸人の発掘&育成を怠ったツケが」

史実については言うだけ野暮なのですが、吉本は寺ギンのモデルとなった一派を吸収合併しています。
対立はしていません。

吉本興業の強みとしては、
・月給制度
・寄席の発展
・芸人の発掘と育成(と、使えないとなったら容赦なく切り捨てる判断力)
といったところでした。

が、本作では「芸人の発掘と育成」をやっておりません。
これをおろそかにしたばかりに、太夫元に締められて倒れそうになっている。だから、育成もやっておけよ!と、複雑な気分です。

それに今は「風鳥亭VS寺ギン」の描写だけにしておけばよいのでは?

中途半端にリリコやトキの話まで入れるから時間も足りなくなっている気がします。
頭から水をぶっかけたり、逆ギレビンタを連発したり。いずれも役者さんは好演しているだけに、それが残念でなりません。

それと今週あたりから、全体的に何かがおかしいと感じています。
気のせいかもしれませんが、葵わかなさんが鼻声気味だし、もともと長くはなかった台詞が、かなりカットされて不自然に短くなっているようにも思えます。

「しっかりしとくれやす」
「その通りです」
といった相槌程度ばかりで、長い台詞がほとんどないのです。
役者さんの雰囲気も暗いというか、どうにも顔から疲労感がにじみ出ているようで……。

長丁場の朝ドラです。
いろいろとありますが心配になってきました。ご無理はなさらないでください。

著:武者震之助
絵:小久ヒロ

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吉本せい 吉本興業の歴史

【参考】
NHK公式サイト

 

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