大正時代の商都・大阪では、「北村笑店」が台頭していました。
寺ギンの率いていたおちゃらけ派。
文鳥師匠の伝統派。
彼ら芸人一派200名以上を傘下に加え、寄席も10軒以上経営するようになったのです。
千日前にも寄席を構え、さらには本拠地を移し、ますます絶好調!
風太とトキはいつまで高校生やっとんねん
冒頭は、島根の農村風景です。てんが泥鰌をすくう子供と交流しています。
ここで数日前に戻ります。
てんと藤吉の子・隼也は7才に。
ちなみに本作では、夭折した子はともかく、成人した吉本せいの娘の存在もカットするのでしょうかね。ちょっと気になっています。
さて、北村笑店は、本拠地を天満から南地に移し、藤吉は代表取締役に就任。
てんは経理兼取締役で、風太は大番頭ということで、スーツ姿になっています。
トキは経理助手になりました。
風太とトキは結構な歳になっているはずで、2人の仲に進展があるかと思ったら、まだ高校生みたいなノリのケンカップルですね。
ダメな朝ドラ名物、
「演じる役者が若いから、それに引きずられた感覚でいい歳こいた人物が高校生みたいな恋愛をいつまでも続ける」
が炸裂していて、うぅううーーーーん(´・ω・`)
風太はセクハラに近いいじりをするし、トキは相変わらず粗暴だし。
せっかく面白い役者さんが演じているのに、ストーリーが痛々しくて、あまり笑いに繋がってない気がしてなりません。
何と申しましょうか。漫画やアニメの感覚をそのまんま実写に持って来て、寒くなるパターンの掛け合いと言いましょうか。ほんと、もったいない。
万丈目夫妻に救われる
万丈目夫妻は、どうやら「夫婦万歳」で受けているようです。
この二人の掛け合いは非常にイイですよね。
藤井隆さんは元々の実力があり、その上、万丈目歌子を演じる枝元萌さんがバツグンです。このドラマの救いです。
と、極めて経営順調な風鳥亭に、高橋一生さんの伊能栞がまたまたふらっとやって来ます。
周囲の台詞でやたら「流石! イケメン!」と持ち上げるのですが、これ、逆に寒くなってません?
栞の宅地開発は成功したそうです。
しかしモデルとなる小林一三が手がけた鉄道事業は、影も形も出てこない。ここはスルーですかね……。
彼がやってきた目的は、活動写真のお披露目パーティにてんを招待するためでした。
そんな栞の帰り際、風太が突っかかっていきます。
なぜか風太は喧嘩腰。いったいどうしたのでしょう。かつては、藤吉よりも栞と結婚した方がまだいい、と事務所にまで押しかけていたのに。
そこで栞は、またまたよくわからん台詞を吐くのです。
「すべてを手にしたけれど、本当に欲しいものは手に入らない……」
えぇ? えぇええええ~~~~~~。
と、本気で驚いてしいまったのですが、どうやら未だにこの二人は、
「てんのハートを狙う恋のライバル」
という設定が、まだ生きてるんですか!?
てんの息子の隼也、もう7才なんですよ。ほんと、もう、何なんでしょう。時間の経過を無視した脚本としか思えません。
一応、風太が、栞と彼の活動写真に敵愾心を燃やすのは「寄席の経営が古い」と言われたから、ということにしたいようですが。
そのわりに「あの色男に思い知らせてやる!」とか言うからなんだか気色悪い。
風太はトキ。
栞も誰かとさっさと結婚しちゃえばいいのに。
なんで、てんを巡っての関係がまだ燻っているんですかね。
藤吉「俺らが安来節ブームを起こす!」
風太が新しく目を付けたのは安来節でした。
現代人からすれば『これのドコがおもろいの?』と思うのですが、当時はお神楽や祝い事の踊りをおもしろおかしく演じるものが演芸として人気を集めておりました。
それを導入すること自体は別にいいのです。ただ、ストーリーの流れが……。
一応、前段で風太が「家族連れの客が増えたから、小難しい落語よりもわかりやすいものを増やして欲しい」と言われた点には、安来節を取り入れる理屈とは一致します。
ただ、「栞に寄席の経営が古臭いと言われた」という点には反しているのです安来節なんて、それこそ古典的で素朴な、お神楽祝い事系の系統ですからね。新しい芸を探してきたことにはなりません。
この辺がモヤモヤとしますが、ともかく藤吉は島根に向かい、そしてその翌日、てんに電話をかけ、契約金を持参して来るように言うわけです。
そしてオープニングに戻ります。
藤吉に呼び出されて島根に向かったてんは、娘たちと安来節を踊る藤吉を見て驚きます。
「若い娘と楽しそうに踊って……」
多分、ここでいじらしく拗ねるてんがキュートでしょ、カップル萌えたまらないでしょ、という意図なんだとは思います。
しかし、前述の通り、隼也はもう7才ですし、そもそも以前から藤吉は団吾を口説き落とすためにお座敷で遊びまくっていたわけで(´・ω・`)
藤吉は「俺らが安来節ブームを起こす!」と宣言し、若い女性踊り手のオーディションを実施するのでした。
今回のマトメ「安来節の立ち位置がおかしいのです」
まず予言させていただきますと……今週は一週まるごと必要ない展開になる悪寒です。
ドラマの中身について記す前に、吉本がなぜ安来節に目をつけたか、簡単に箇条書きでまとめます。
・吉本は落語家を抱えすぎて、もてあましていた
・林正之助(せいの弟)は、洗練された落語をおもしろいと思うセンスに欠けており、落語家と折り合いが悪かった
・そのため、落語以外の芸を発掘して売り出そうと考えた。そのひとつに安来節がある
・安来節はあくまで過渡期に手を出した程度で、吉本の歴史においては重要ではない
・当時、若い娘の安来節は、踊るときにはだける裾を見せるセクシーなもので、お色気系の出し物であった
と、このように史実とドラマが、ほとんどかみ合っていない展開かと思います。
安来節よりも、「しゃべくり漫才」の前段階である「万歳」のほうが重要なのですが、そのへんすっとばしていきなりキースとアサリが「しゃべくり漫才」どころか「ドツキ漫才」まですっ飛んでしまいました。
万丈目夫妻もあっさりと「夫婦万歳」をやっておりましたね。
にもかかわらず、なぜ今さら安来節、しかも若い女性限定でクローズアップするかと言いますと。
私の推察ではあるのですが、
「少女がチームダンスを通して青春を繰り広げる、チアダンスものみたいな展開をやりたい!」
からじゃないか?と思うんですね。
※リリコの妹による映画『チア☆ダン!』予告編
いつまでもてんに未練たらたらな風太と栞といい、風太とトキのケンカップルといい、どこに需要があるのかと突っ込みたいところですが、視聴者の需要ではなく、脚本家さんの得意分野に近づけようとする努力かな、というのが私の推察です。
前述の通り、安来節は吉本興業の歴史において重要な意味はさほどありません。小説『花のれん』では吉本せいにあたる主人公が自ら芸人を発掘しにいく――という描写の一つになっていて、それなりのポジションではありました。
が、そもそも当時はソフトなストリップみたいなものだった演目を、朝ドラで無理矢理に青春ものにするというのも、曲解がヒドくなってしまうではないでしょうか。
そんなわけで、おこがましいとは思うのですが、今週はまるごと不要だと悪寒しているのです。
著:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
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