スカーレット71話あらすじ感想(12/20)喜美子のコーヒーカップにも……

いつ子は理想の小姑

喜美子にも、挨拶をすべき方がおります。
両親代わりに八郎を育てたお姉さんが大阪からやって来ました。

「カフェサニー」に、スーツで風呂敷包みを抱えて、十代田いつ子さん、ついにご登場です。

ジョーが毒づいたように、このご両親は名付けにひねりがない。
五番目だからいつ子か。ええと思う。

席に座ると、いつ子はしみじみとこう言います。

「川原八郎になるんやなあ」

婿入りに、特に反発や毒づくことはないようです。まぁ、末っ子ですし。
むしろ、ここで気になるのは、結婚式のこと。

「式はどないすんの?」

八郎はあっさり答えます。

特別なことはせん、写真は記念で撮る。きちんとした格好で家族写真を撮る。
すると、いつ子はこう返します。

「あんたには聞いてない。ほんまにそれでええの?」

弟に厳しい、かつ単刀直入。
この作品は、関西の女性にあるスピード感まで出していてすごい。

粘りつくような口調、上目遣いで言動がすっとろい――そういうヒロインは、いくら関西弁であろうとNHK大阪らしくない。昨年の放送事故のことやね。

「こんなんでええの? 優しいようで頑固なところあるでぇ」

いつ子は切り出す。
それやな。八郎は絶賛しかされないような流れだけれども、無駄な頑固さがめんどくさい。

陶芸の道へ進みたい言うて、止めても聞かんかった。
嫁さんも家庭も持てんようになるかもしれん。そう思い、飯炊きから洗濯まで仕込んだ。卵焼きが上手。

そしてこれや。

「こんなんやけどうちにとっては自慢の弟や。大事な弟や。どうぞよろしゅうお願いします」

うーん、もう申し分のないお義姉さんですね。期待していただけのことはある。
寛大で、ハキハキしていて、家事まで教えてくれて。意地悪さがない。女の敵は女ということがない。

これは理想の小姑ですわ。
八郎は小姑までセットでええという、完全に理想的な夫です。

きみちゃん、ええの獲ったわ!

いつ子は川原家にも来ます。
丁寧に頭を下げるいつ子に、一家もご挨拶。

「こちらこそ、あのわざわざ足運んでいただきまして、ありがとうございました」

「よろしゅうお願いいたします」

マツも、百合子も、そしてジョーも丁寧で所作がしっかりしているんですよね。
ジョーは丁稚奉公の時代に身につけたのでしょう。こういう当時らしさがいいと思うんだなぁ。演技指導もしっかりしているんでしょうね。

喜美子はこう言います。

「このご縁、一生大事にします。お義姉さん、今までありがとうございました」

何気ないようで、こういうところが好き。
所作が綺麗で、丁寧で、育ててくれた相手には感謝する。

ヒロイン夫がいやらしい笑みを浮かべ、義理の母を小馬鹿にするような。
そんな昨年の放送事故はやはり何かの間違いやな。

【悲報】直子のパーマネント、強烈だった

そして春――父が作った増築新居に誰かが来ました。

本作はびっくりするようなことをする。
川原家の経済事情、増築だけで手一杯なところを考えますと、結婚はなるべくお金をかけられないとは思う。

それでも、ドラマの見せ場として結婚披露宴は欠かせないとも思える。

『なつぞら』のなつと夕見子の姉妹結婚式は素晴らしかった。
それを敢えてやらない。あのキスで代替? それはそれですごいけど。

はい、そんな新居にいるのは直子です。

「ええ〜! うわ〜うわ〜! すごいな〜気持ちええわ〜新しい畳や〜!」

「寝たらあかん! ほらこの頭、ぐちゃぐちゃにするで!」

新居ではしゃぐ直子と、それを抑えたい妹。
ここで、視聴者はこう言いたかったのでは?

「すごいのはむしろあんたのパーマネントや! 百合子が乱すまでもなくぐちゃぐちゃやろ……」

これはもう、マリリン・モンローではない何かや。
なんやろな。信作から去ったよし子さん程度かと思っとったのに。

公式サイトの人物紹介画像と落差がありすぎやろ!

喜美子はいつ子に日本髪を結ってもらっております。
着付けもできると聞いて、いつ子は感心して八郎にも教えて欲しいと言っています。美容師さんですから、気になりますわな。

こういうさりげない会話で、姉として弟の妻をチェックしているわけです。
大久保さん直伝ですから、いつ子としても「ええの獲ったわ!」となりましょう。

「これどないすんのもう」
と、ここで紋付けの着付けができずにジョーが出てくる。

「もう恥ずかしいわもう!」
マツが慌てる。

おう、いきなりいつ子にも下着見せかねん状態ですから。

「仲ええなぁ」

そういつ子は流します。

『なつぞら』の泰樹は、ピシッと孫娘の写真に紋付けでいるところだけだったのに。

NHK東京・柴田泰樹とNHK大阪・川原常治、どこで差がついたのか……て、わざとやろ、わざとやな!
北村一輝さんがピシッと紋付けを着こなすとなると、ある意味、仁侠ぽさに期待をしたくなりますが。

そして姉妹は、ついに義兄の八郎と顔を合わせます。
末っ子からいきなり二人妹ができるわけです。

「ほな、喜美子姉ちゃんのことよろしくお願いします」

そう言ってから、百合子にも言えと言いますが、妹はもう言ってあるそうです。

「こちらこそよろしくお願いします」」

なぁ、なんて呼ぶ?
直子はそう言い出します。

「そら兄貴ィや!」

「気持ち悪いわ!」

首を傾げつつそう言う姉が気持ち悪い。そう主張する百合子。

「お兄様や」

「気持ち悪いわ! 兄貴ィで決まりや。姉ちゃんの言うこときけっ!」

うーん、直子は東京でそういうかっこ付け仲間とつるんでんのかな? パーマネントもそのせいかな?
ヘアメイク担当者さんがええ仕事してはる。

ここで電話が鳴って、喜美子が大丈夫だと言って出ます。

喜美子の婚礼衣装がこの時代のものらしくていいですね。
駆け落ちだったマツは持っていないでしょうから、陽子あたりから借りたのかな。

はい、電話は陽子から。

「きみちゃん。今ちょっと窯業研究所の橘さんいう人が来はってな。ええお話、持ってきてくれたんや」

「えっ?」

なんやそのええ話て……あのコーヒー茶碗で飲んだ人やな。
続きは次回!

【ネタバレ注意】どっちが王座に座るんや!

はい、ここからネタバレ注意で。
嫌な方はここでサヨナラお願いします。では……。

本作の喜美子は「モデル」はおらず、「モチーフ」がおります。

神山清子さんです。

そこまでピッタリと重なるわけでもなく、特に父親はかなり下方修正されていると思える。

とはいえ、インタビューを読んでいるうちに不安になってきました。
先を知りたくなかったのですが、ついうっかり読んでしまいまして。

モデル通りの結婚生活だとちょっとギスギスするので、八郎は天陽退場ルートかと思ったのですが。
この電話といい、これから喜美子がグイグイ伸びていく出世ルートに突入していくんですよね。

2019年といえば『ゲーム・オブ・スローンズ』。
あれはデナーリスとジョンという二人が、王位継承権をめぐりギスギスしてゆきました。

「結局、王座はどっちのものなんや!」

「ええやん、王座にこだわらんでも……」

「そんなわけあるかっ!」

こういうことになって、悲惨な結末に向かうわけです。

きみちゃんは、秀吉系ヒロインで知勇兼備、センス抜群です。

それを夫の顔色を窺うようにぼかしたら、女性を描く作品としては問題でして。物語としては綺麗でも、それはちょっとどうかということになる。『あさが来た』はその典型例です。

デナーリスが王座を求めて炎上させる2019年、ここをぼかしてええんか?
本作スタッフはそこは考えているはずでして。

『なつぞら』は、ジェンダー格差を踏まえつつ、穏当な未来像を示してきた。

それに対して本作は不穏当さ上等で、苦いものがある。
本作には理想の夫が揃っているという記事がありましたが、むしろ全員どこか地雷を持った難あり夫だと思えます。

照子も夫が変わっていくと愚痴っていたっけ……。

「『なつぞら』はええと思います。100作目、流石や、バトン受け取りましたわ。せやけど、ここはNHK大阪の違いと覚悟見せな(アカン)」
ってことかな?

『ゲーム・オブ・スローンズ』レベルの地獄を、朝ドラでやるつもりやろか。

きみちゃんが八郎をアレして、デナーリスの仇討ちか?……期待しとるで!

※デナーリスの攻撃も緋色や!(閲覧注意)

◆‪朝ドラ『スカーレット』の原点。「境遇なんぞに負けてたまるか!」〈神山清子の半生・前編〉

◆‪朝ドラ『スカーレット』の原点。「白血病と告げられ震えが止まらなかった」〈神山清子の半生・後編〉

◆‪新朝ドラヒロイン“モデル”陶芸家・神山清子さんの壮絶半生

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
スカーレット/公式サイト

 

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