半分、青い。129話 感想あらすじ視聴率(8/29)『鈴愛の野望~再上京』

楡野鈴愛、37歳。
離婚後は、岐阜の実家で「センキチカフェ」をオープンさせ、五平餅を焼いておりました。

そんな折、娘の花野が夢を抱きます。
浅田真央選手に憧れ、フィギュアスケートを習いたいと言うのです。

とはいえ、岐阜の田舎町から名古屋・大須のリンクまではあまりに遠い。
難しい現実が立ちはだかります。

そんなとき、現れたのが津曲という業界人。鈴愛が考えた店のマスコット犬・岐阜犬を大手おもちゃ会社に売り込みたいのだとか。
一方で律は、アメリカ赴任の打診を受け、どうすべきか悩んでおりました。

【129話の視聴率は22.6%でした】

 

半分青い笛でカンちゃん暇ならやってくる

花野ちゃん、律を呼びます。

萩尾家にあがった花野に、弥一はココアを出します。
幼児向けにはココアを出すあたり、流石です、弥一さん!

花野は「これをあげよう」とガチャガチャを差しだしました。
中身は白と青、半分ずつ塗られた笛。半分、青いですね。

「律も困った時に吹けばよいと思った!」

誰を呼べばよいのか尋ねる律に、暇だったらカンちゃんが行く、との答え。

律はちょっとずっこけます。ギャグではあるけど、律には本当に心理的助けがいるんじゃないかと心配になったりして……。

花野は、このガチャガチャで白いフィギュアスケート靴を取りたいんだそうです。

あれ、お小遣いは?
って、どうやら宇太郎が取らせているみたい。晴と鈴愛にバレたら激怒されるとは、花野もわかっているようです。

 

大須そば、時給1000円で働いてもやっていけん

鈴愛は、居間でリクルート雑誌に赤い丸をつけておりました。

名古屋では厳しい、大須そば、時給1000円で働いてもやっていけんなあ、と。

このへん、残酷物語です。
大納言の時給750円でも思いましたけど、こんなん生きていけないだろという時給をつきつけられるのが、平成の女性というもの。
しかもこれ、東京や名古屋といった都市部の時給です。地方はさらに下がる……。

鈴愛の境遇に対してこんなツッコミがあったようです。

・介護が必要な親がいない
・親が自営業なだけマシ

いやいや、それ言うならば、実家が大企業の成功マダムは?

前作なんて、史実の主人公は貧乏な家の出だったのに、ドラマの中では京都の大金持ちご令嬢にされていて、いざとなればポンッと実家からお金も引き出せた。
まるで【ボタンを押すだけでストーリーが進む】昔の携帯ゲームみたいな展開でした。

 

シングルマザーに厳しい日本

ともかく鈴愛を取り巻く現状として、こうした薄給の構造的問題があります。
女性が働くということは、夫という稼ぎ頭がいるという前提で、パートタイマーの主婦もちょっと稼ぎたいですよね?という認識があるんですね。

世の中には、鈴愛のように自分の腕で稼ぎ、家庭を支える女性が大勢おります。
しかし、ナゼかこの日本では、男だけが家庭を支えるものと見られがちです。

結果、シングルマザーの置かれる環境は、先進国でも最悪という報道もあります。

「日本のシングルマザー環境、先進国で最悪」米メディアが問題視するのは?

「やってけんなあ、きっと」
晴が苦い顔をすると、鈴愛は拍子抜けした顔で
「お母ちゃん、怒らんの?」
と続けます。

以前だったら、何考えているの!と怒られたはずなのに、晴さんは「私も老いたかな」と微笑むだけで、鈴愛としても怒られないとヤル気が出ないとのことです。

そこへ電話がかかってきました。
今日は黒ネクタイの津曲。まさかの企画が通った!とドヤ顔で登場です。

 

一家揃って津曲とネゴシエイト

つくし食堂にやってきた津曲。
出迎えた草太は、姉一人では不安なのでと交渉に同席することにします。

津曲としても快諾。実際は、宇太郎や晴、そして健人も同席していました。

まず津曲、まだ企画段階なので秘密、お口にチャックで、と相変わらずの業界人な軽いノリ。
鈴愛の口は羽根より軽いけれど、皆で重石になると返事します。

ここでも津曲、自社ヒットエンドランの1+1=3をしつこく語り出します。

こういう重複台詞はしつこい!と削るのもアリなんですが、いやいや、そうじゃないんですよね。
津曲のウザしつこい業界人キャラのためには、このリピートが必要です。

トイギャラクシーと打ち合わせをして、よりかわいくキュートに、万人受けするようにした岐阜犬を見せる津曲。
ノートパソコンにサンプルが映し出されました。

トイプードル、ブルドッグバージョンがそこにはあります。

喋るシステム――津曲曰く、あの【顔の綺麗な律の開発した喋らせるシステム】は、簡略化するそうです。
発売は来年の2月、2009年の予定でした。

 

三千円か?いや三千万円か?

商品名は、岐阜犬はちょっとアレなので、【おしゃべりワンワン】にするそうです。
しかし鈴愛は、「そこは是非岐阜犬で!」と譲らない。

一方、津曲は【譲渡契約】を提案します。
先に一括して契約金を払うもので、売り上げに応じて支払う仕組みではありません。

「いかほどでしょう?」
そう鈴愛が切りだすと、津曲は三本指を立てます。

宇太郎は「三千円?」
晴は「三万円?」
草太は「三十万?」
とざわついたところで
鈴愛は「三千万!」
と超強気。

そして……
「三百万!」
の提示金額に、驚く楡野家の人々。
流石に三千万はないだろうなと言いながら、鈴愛は満面の笑みを浮かべます。

金へのこだわり、ニヤリとするところ、鈴愛らしくて好きです。
お金のことなんかどうでもいいんですとアルカイックスマイルを浮かべる朝ドラヒロインはもう要らんのだ!

いや鈴愛、きみは天下人を狙う岐阜の女。
そのくらいで満足する器じゃないよな、とちょっと言いたくなりましたよ。

 

津曲オフィスは神宮スケート場に近い!?

ここで津曲に着電。
健人も驚く最新スマートフォンです。iPhoneですな。

鈴愛は津曲の名刺をじっくりと見ます。
ん?
よく見りゃ、会社の住所が、神宮のスケート場に近い。こ、これは……。

以前、健人から名刺を渡してもらったでしょ?と突っ込まれますが、そのときはちゃんと見なかったのだとか。
あぁ、そういうことってありますよね。性格のよい慈母系朝ドラヒロインはやらんけど。

津曲の電話用件は、事務所の女性社員が妊娠してしまい、つわりが酷くて辞めるとのことでした。
子供ができるのは悪いことじゃない、国の宝だし、と津曲。

このへんもなかなか深いと思います。
少子化がさんざん言われる今日このごろ。子どもを産め、生まない女は穀潰しで無駄だ、生産性がないとさんざん罵倒されますけど、そのくせ、雇用側は妊娠出産する女性に冷たい。
こういうニュースも、ございました。

東京医大の点数操作「重大な女子差別」と指摘。内部調査委が会見

「妊娠出産するから女は戦力として二流!」という差別があるわけで、もう無茶苦茶です。

 

雇ってくれなきゃ岐阜犬も渡さない!

津曲の会社【ヒットエンドラン】は、5人で回していたところが4人になるそうです。

会社から神宮のリンクは近いのか?と詰め寄る鈴愛。

オフィスから歩いて5分。
最近は、ブームなのか子供も大勢通っていると津曲が答えます。

そして契約書を出したついでに、事務で働ける知り合いいませんか?と尋ねると、すかさず鈴愛が
「私じゃ駄目ですかッ!」
と返答するのです。

彼女の勤務経験といえば、漫画家と大納言のみ。
事務としては、パソコンが使えて、表計算もできる人を求めているようですが、そこは鈴愛、強気です。

「出来ます!」
と言い切ってしまう。嘘ですと廉子さんもナレーションで突っ込んでいます。

さらに鈴愛は、自分を雇わなければ岐阜犬もといおしゃべりワンワンを渡すことはできないと言い切るのでした。

いやぁ、いいですねえ。こういう真田昌幸みたいな策士ぽい粘りっぷり。

「本気……なんか」
老いたという晴もさすがに口あんぐり。

そうや、これも花野ちゃんの夢のためや!!

 

「あいつに消去法はない!」

場面はともしびへ。
律の隣には、健人と麗子、それにブッチャーとナオちゃんもおります。
健人と麗子は、弥一に結婚写真撮影を熱心に頼んでおります。

ブッチャーは、やっと姉が片付くとなかなか酷いことを言いつつも、うれしそう。
ナオちゃんも、結婚で楽しくなるよと喜んでいます。
この二人、よい夫婦ですね。

しかし麗子は、鈴愛に対して心を痛めている、と語ります。
センキチカフェは麗子と健人でラブラブしており、つくし食堂も里子が来ていて居場所がない。
鈴愛もこの前、そんなことを言っておりました。

そこでブッチャーはこう言うのです。

「あいつに消去法はない!」

そう、そういうことではなく、花野のスケートをやらせるという積極的な目標のために、上京するのだ。
夢を追うため、そうするのだ、と。

ここで律の携帯電話に、より子から電話が入ります。

騒がしいけど飲んでいるの?と聞かれて、もうすぐ大阪に戻るからと答える律。

この短いやりとりもなー。
やめてくれ、マジで心臓バクバクして、酒が楽しめなくなる、律の気持ちがわかりすぎる!と編集さんが嘆いておられました。

ただ、より子さんも、
・律は岐阜の方が楽しいんだ
・羽を伸ばせているんだ
と考えたらなかなか辛いですよね。

そして、彼女が言うのです。

「お話が。明日そちらに伺ってもよいかしら?」

鈴愛が野望へと動き出したその日、律に次の動きが……?

 

今日のマトメ「再上京で法螺貝よ、鳴れ!」

ブオオオーッ!(脳内SE)
法螺貝が鳴り響いております。今日は【鈴愛の野望】でしたね。

譲渡契約の金額に楡野家の皆さんは浮かれていますが、これも引っかかるところ。
そこそこのヒット作ならばともかく、メガヒットになったらば「あれだけ売れて三百万ぽっちなのか」と、怨み節の原因になっちゃいます。

そういうことを考えると、鈴愛の野望は正しいように思えるのです。

いいじゃないか、ドンドンチャンスがあれば、がむしゃらに進む鈴愛。一応、我が子の夢のためという理由はつくのですが、それだけじゃないのかもしれない。
鈴愛が東京で夢よもう一度!と野望をギラつかせてもよいと思うのです。

そんな鈴愛は、シングルマザー。
社会には確かに存在するのに、ナゼかいないことにされがちな人々。

奮闘しているのに、それを賞賛されるどころか、まっとうな家庭を築けなかったと責められることすらあるのです。鈴愛のケースのように、男が家庭をブン投げていこうが、その男を説得できなかった女のせいにすらされかねません。

自分の知る範囲での彼女らを思い出すと、悲しくなってきます。
彼女らは、いつもへりくだっていて痛々しいほどでして。
それが、叩かれないため防衛的にそうしていると気づいてからは、愕然としたものでした。

鈴愛の言動は、おとなしく縮こまっているべきとされがちな、そんなシングルマザー像を、ぶち壊しています。

気にくわない人からすれば、そもそもシングルマザーなんてものを朝ドラに出すな、となるのでしょう。

そういう層に風穴を開けよう――シングルマザーでも、野望を追いかけてよいし、鈴愛くらい堂々とありのままに振る舞ってもよい。
人間ですよ、当たり前じゃないですか。

本作はシングルマザーの鈴愛が野望全開です。
一方、世間から見れば百点満点の成功者、妻子もいて大手企業で出世している律が、何か縮こまっているように見えます。

しかし、そういう人がいてもよいわけです。
成功者の男ばかりが堂々と胸を張って、そうじゃない女は縮こまって社会の隅っこでコソコソ生きろと?
そんなものが常識なら、むしろ壊すべきではありませんか。

何が正しいのか。
何があるべき姿か。
何が成功なのか。

本作は、平成最後の年に、平成の今ゆらぐ価値観にガッツリと斬り込んでいます。
だからこそ、好きな人はうなずくほかないのです。

この鈴愛の野望も、あと一ヶ月です。
あと一ヶ月となれば、毎回どこか風呂敷を畳みにかかるはず。

しかし本作は、むしろ鈴愛の野望がドンドン広がるような、そんな気配すらあります。

見届けたいゾ、野望の行く先!!

◆著者の連載が一冊の電子書籍となっています。

この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー

文:武者震之助
絵:小久ヒロ

【参考】
NHK公式サイト

 

6 Comments

Zai-Chen

表計算できます!と鈴愛がハッタリかますとこ。
ああ、また、一部の視聴者さんから批難轟轟やぞ~と思いながら
でも、頼もしく観ておりました。
秋風先生の原稿を人質にとって労使交渉に持ち込んだエピソードを思い出しました。
こういうところ、本当に真田昌幸的ですね~

ビーチボーイ

そら来たーっ! です、まさに。

ツマガリとやらの怪しい男の突然の出現が何を意味するのか、と私もここ数日、あれこれ想像をめぐらしました。もしかしてスズメの再婚相手に!?(その可能性だってまだ消えてませんけどね)と推測もしたけど、とりあえずはこの展開で来たか、なるほど。この、視聴者と脚本さんの間でのゲーム感覚な向き合い。こういう楽しさは、ワロテンカではただの一度も味わえませんでした。
とにかく、求職者は自分から仕事探しに出るのがごく基本的な世の習い。それを、自分の家に向こうから飛び込んで来た商売人に「私を雇ってちょ!」とアピールしてしまう、この半分青い流のきてれつなノリ、本当に好きだわ。たまらん

starfish

毎日拝読させていただいております。

細かいツッコミで申し訳ありませんが、平成最後の年じゃないですよ。もちろん、平成最後の作品でもないです。

ご確認いただけましたら、このコメントは削除していただいて構いません。

これからも楽しみな展開ですね。

田舎者

ここに来てまた上京の流れになるとは思わなかったです!確かに今までの朝ドラには無かった気がしますね。
本作が嫌いな人からしたら「ハァ?この期に及んでアホちゃう?どうせ失敗やろ」となる所でしょうが、私はわくわくしながら毎日見ています。別に夢が叶わなくたっていいんです。見届けられれば。何でも結果ありきの世の中って、本当につまらないと思います。
朝ドラヒロインが無茶な事に挑戦して、盛大にコケたっていいんじゃないでしょうか。私は毎回お決まりのとんでもなく美化された大事業創業者パターンに辟易していたので、そんな展開も大歓迎です(笑)
私自身は姉が離婚経験者で草太の立場に近い人間ですが、多様な生き方を肯定する本作は今までで最も感情移入できた朝ドラです。姉の奔放さに呆れつつ、甥っ子、姪っ子の面倒を見たり、子供の何かの大会があると一緒に見に行ったり…色々ありました。
姉の家族はそこいらの家庭より、さらに言えば自分よりずっと幸せそうにしていますし、結局のところ何が成功で何が失敗だったかなんて当人にも分からないですし、ましてや他人がとやかく言えるものでもないですよね。

匿名

初めてコメントします。
揺らぐ価値観、まさに今は何が正しいのか答えが見えない時代だと思います。
世間や他人の価値観に引きずられず、自分が心に願うことに率直に生きるヒロインの姿は今を生きるヒントだなと頷きながら毎朝視聴しています。子どもがいても、主婦でも、女でも、今からでも何か出きる!っていう可能性に視てる側もポジティブになってきます。

匿名

実はなぜ、鈴愛たちの町が梟町とされたのか、ずっと不思議に思ってました。
どうせ創作された町名なのだから、もう少しかわいい名前でも良さそうなのにって。
例えば小鹿町とか?それこそ美味しい美味しい兎町とか。
でも、最近やっぱり梟とされた理由が何となく分かったというか、それしかなかったのだろうと勝手に思い込んでいます。
梟といえば、梟雄、斎藤道三。
梟属性の野心家の鈴愛、良いですね。ぞくぞくします。

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