2010年、楡野鈴愛と萩尾律は、東京におりました。
米国スタンフォード大学でトルク制御の研究をしていた律は、勤務先の菱松がロボット製造部門を閉鎖。経営企画部長として、予算カットやリストラの担当になっています。
より子との結婚生活も破綻しての東京一人暮らしでした。
一方、【おひとりさまメーカー】の起業を目指していた鈴愛は、五平餅を屋台で販売しております。
こちらの夢は一体どうなったのでしょう???
【134話の視聴率は23.9%でした】
もくじ
美魔女メイクの鈴愛に引き気味
いけるところまでいく!と気合を入れた鈴愛の美魔女メイク。
引き気味の律をチラッと見ながら正人は言います。
「幼馴染にあんな風に言われたら、頑張るよねえ」
「頑張りすぎたかもしれん」
まぁ、おばさん呼ばわりにムッとするのは当然っちゃ当然です。
ビールぶっかけもスッキリしましたけれども、この負けん気をガンガン発揮するからこそ鈴愛なんだと思います。アルカイックスマイルごまかし、ダメ、絶対!
朝ドラヒロインの加齢描写も、斬新なことに思えます。
タイムスパンが短いドラマはともかく、10代の女優さんが還暦近い設定のヒロインを演じることも少なくはありません。
実際、ヒロインがアラフォーあたりから年齢不詳の存在にされてしまう。
なんとなく衣装やメイクが変わっても、周囲から年齢には言及されないんですよね。前作はラスト間際で、不良青年から「姉ちゃん」と呼ばれていてズッコケたばかりです。
本作も、永野芽郁さんはどう見ても若いのです。
しかし、受付嬢には老けているとか、「おばさん」とか、世知辛い加齢描写があるため、年齢が把握できる。
トランプ占いとか……大丈夫か?
律宅で、向かい合って座る二人。
鈴愛は、律が岐阜弁丸出しだ、本当は梟町に潜入いたのではないか?と言い出します。
その間に正人はワインバルを予約しました。
予約は7時からで、30分ほど時間が余っているそうです。
鈴愛は、リサイクルショップで買った格安屋台を引いていると律に説明を始めました。
と、ここで花野がトランプ遊びをしたがり、正人が一緒にいこうと言い出します。
これで二人きりになるのかな?と思っていたら。
律が時折トランプ占いを一人でしていると言うと、鈴愛はこう言うのです。
「大丈夫か?」
これがねぇ、顔しかめつつも微笑み、
「大丈夫なの?」
と変に優しく言わないところがいい!
心配しているというか、その暗さに若干引いているというか。この二人の、甘ったるい恋愛とは違うやりとりがたまりません。
川べりハグのような甘い展開だけでは、ここまでグッと来ないと思います。
屋台を引きながら『ラブストーリーは突然に』
ここで、鈴愛と正人はつきあっているのか?という律のツッコミに、鈴愛はフラれたと即答。
しかし、正人はふったつもりはないのに、と戸惑います。
屋台を引きながらある日正人と再開した鈴愛の脳裏には、『ラブストーリーは突然に』のイントロが流れたそうです。
いいねえ、このバブル期に青春を過ごしたアラフォーが、ときめくとトレンディドラマに戻るこの感じ。
しかし、正人は10歳年上のバリキャリのアキコさんと熱愛中。彼女と五平餅を買いに来るのだそうです。
SNSではボクテ説もあった正人のマイラバー。
私は、もしかして伊藤清かな?と、ちょっと思っていました。
正人は、鈴愛にときめかれたのは嬉しいけれど、アキコさんしか世界にいないと言い切ります。
あー、わかる気がするなぁ。
昔からモテモテだった正人が落ち着くならば、性格や相性、知性を重視して彼女を選んだのでしょう。部下の若い女に手を出す嫌なおっさんになっていなくてよかったぁ。
麗子やアキコのような年上女性との恋愛設定が本作で多いことから、「願望ですか」というゲス意見を見かけたのですが、成人同士が十歳の年齢差を越えてつきあうことが、ありえないと言いたいの? フツーにあるじゃん。
麗子の時に思いツッコミましたが、
【男は女の若さと美しさだけに惚れるもの!】
っていう思い込みのほうが、よほど男性をバカにしていると思いますけどね。世の男性だって、中身や人柄で交際相手を選ぶことはあるでしょ。
年上男が、恋したピュアな若い女に救われるフィクションがあふれているとお思いですか。そっちのほうこそ願望じゃないんですかね。
それを言うならば前作の、
【史実ガン無視、ヒロインとつきあえるわけでもないのに、自宅に入り浸る、一生老けない高橋一生さん】
のほうが、よほど五代様&小野政次二号狙いの数字と、話題性狙いが丸出しで、いたたまれなかったです。
ホームランを狙ってあえなく倒産
話を戻しまして。
「ちがう! 仕事や、仕事の話!」
ここから、怒涛の鈴愛の仕事話へ。
20万個という大ヒットとなった岐阜犬。
【ヒットエンドラン】の津曲は、次にホームランを狙って土佐猫という第二弾を販売しました。
次は40万個という大量生産を進め、結果、これが売れなかったのです。
津曲は夜逃げし、鈴愛は毎日のように「どうなってんだ!」と押し寄せる相手に土下座しまくる日々となりました。
【ヒットエンドラン】、あえなく倒産って……。
「そこ、感動するところなのか?」
そう突っ込む律。
しかしシングルマザーの鈴愛は、へこたれるわけにはいきません。
シェアオフィスのおこぼれ(【グリーングリーングリーン】のブラシ置き場)を借りて起業しました。
微妙なれど結構売れた発明グッズの数々
こうして鈴愛は、いろいろな発明グッズを売ることになります。
結構、売れたという【カメレオン蛇口】。
カメレオンのシリコンぽいマスコットを蛇口にはめると、先についた管から水が流れて、背の低い子供でも洗いやすくなるというもの。
「これで手洗いたくねえ」
そうぶっちゃける律です。この二人、やっぱいい関係だなぁ。
「土下座大変だったよね、これもいいアイデアだと思う」
とか、そういう正人みたいな台詞を、律には求めていません!
次は【まぁあかん袋】。
この袋に向けて叫ぶと、声が少し小さくなります。さらに叩くとふぎょぎょという声が出るのだとか。意外と売れたようです。
次に取り出した縦ロールの髪型で囲まれた手鏡は、喋ります
「綺麗だね」
イケメンの声でこうささやくのです。
って、しょうもねえ! けど、結構楽しいことは認めますし、小道具さんがノリノリで造ったであろうことが想像できます。
次は【チヤホヤ粉】。
浴びただけでチヤホヤされた気持ちになるという、キラキラした粉です。
「鈴愛、それは詐欺や」
容赦ないツッコミに対しても、鈴愛はめげず、美意識が高くて収入もある菱松電機の女子社員に売ってくれんか! と頼み込みます。
「美意識たかいOLは買わんと思う」
律、やはり容赦ない!
「シングルマザーなのに頑張ったね、鈴愛」
とか、変に優しく言わないんだよね。
鈴愛の性格の異色さ、容赦なさ、気の強さは結構指摘されますけど、律もなかなかのキャラ。
イケメンゆるふわで、いつも優しいことばかりヒロインに語りかけて、ロマンチックな演出でこの人を王子様と思ってくださいと言うような感じ……は一切しません。
イケメンボイスで喋る手鏡のほうが優しいぞ!
「地球がおうちだから、花野と翼くんは一緒!」
かくして鈴愛は【おひとりさまメーカー】では食っていけず、五平餅屋台を引くことになりました。
しかし五平餅は、ボリュームがあるためか、イマイチ屋台に向いていないのです。
客足も途絶えたところ、やってきたのが正人。
正人が常連になったからなんとかなったのだと。
「お前の人生、大丈夫?」
またもツッコミまくる律。
「うちはジリ貧や」
そこで口を挟んできたのが花野でした。鈴愛に聞かされた言葉だそうで。
律は鈴愛を見て、俺の人生はマシかも、と思い始めます。
大学から続けてきた、鈴愛の七夕短冊に励まされて得たロボットの研究は無駄になりました。鈴愛のおかげで得た夢が消えたとも言えるわけです。
そして妻・より子にも逃げられております。
「ご愁傷様でした」
そう言われてしまうほど、律もどん底なはず。
そりゃトランプ占いもしたくなるわー。と、こうした前情報は、正人から鈴愛に伝えてあったそうです。
花野は、翼が大阪にいると知って残念そうです。
それでも、
「地球がおうちだから、花野と翼くんは一緒!」
と明るく言うのです。
そういえば、監督になると言って涼次が家を出ていったときも彼女は終始タフでしたね。
気が強いようで弱気なカンちゃん
四人は、トランプタワーを作り始めました。
松たか子の旦那が『ラブストーリーは突然に』のイントロを作ったとか、そんな他愛のないことを話す鈴愛。
終わった後で花野がもう一回やろうと言い出すと、鈴愛は100回くらいやりたがると渋ります。
「カンちゃんスケートどうなったの? 神宮通ってる?」
と、何気ない律つの一言を聞いた花野は、突然、落ち込み、膝を抱えてしまいました。
どうやらスケートのレベルチェックでバックジャンプが出来ず、進級できなかったのだとか。後ろ向きに滑ることが苦手なのですね。
気が強いようで弱気だと、娘の性格を語る鈴愛です。そういうところは、母親に似たのかも。
「カンちゃんくやしい。がんばったのに。すごく頑張って練習したのに」
悔しさを漏らす花野。
律は頑張ったのは神様が見ているし、翼も応援していると励まします。
律〜、その言葉を鈴愛には言えないあたりが、いいよなあ。
花野は、浅田真央選手のようなスケーターになったら、大地が撮影するプロカメラマンになると約束してくれた、と言います。運命がつながっているみたいですね。
ゴキゲンを取り戻した花野ちゃん、アクセルジャンプを披露!
しかし、着地した時、棚が倒れてきてしまい、咄嗟に律がかばいます。
棚は律に当たってしまい、もしかしたらケガをしているような状況です。
「病院行こう!」
鈴愛が心配してそう言うと。
「ワインバルは?」
と正人。そこかよ!と突っ込まれます。
でも実際、こういうことがあると、この手のしょうもない心配する奴いるよなあ、とニヤリとします。
それにしても、鈴愛と律。
鈴愛が梟会でジャンプした時も律がガード体制を取っておりました。
今回も、彼が花野をキャッチ。鈴愛も、即座に病院に行こうと言い出します。
会話でベタベタと甘くラブラブにしないけれども、細かい言動には互いの気持ちがあふれていて、こういうところがうまいんだよなあ。
今朝もニヤリとしてしまいました。
今日のマトメ「そりゃあトランプ占いしてしまうわな……」
まずはグッドニュースから。
◆岐阜)北川悦吏子さん、出身地で坪内逍遥大賞授賞式:朝日新聞デジタル
◆「半分、青い。」永野芽郁の大ブレイクで民放・映画界が来春争奪戦か?
故郷に錦を飾った北川先生、とても嬉しそうですね。おめでとうございます!
永野芽郁さんは『真田丸』の千姫もよかったですし、本作の鈴愛はまさに真骨頂。
うれしいニュースです!!
さて、本日は鈴愛の挫折告白編でした。
昨日は、やり直すと言っていたより子とあっさり離婚したことが、盛り上がったようですが。
それよりもむしろ大学からのロボット断念のほうがある意味厳しいんだな、と思いました。
思えば鈴愛の七夕の短冊を盗み、見つけた夢です。
夏虫駅の場面でもそう宣言した夢が、折れてしまったのですから、そりゃ風の音も聞こえないし、トランプ占いもしてしまうでしょう……。
そんな律すら、俺より酷いと言う鈴愛の夢。
こちらは【おひとりさまメーカー】を起業するという夢を追いかけているのにどん底です。
救いといえば、ジリ貧シングルマザーでありながら、花野のフィギュアスケートを続けられる程度の収入はあるということでしょうか。
なんとなく今週で思い出したのが『真田丸』における関ヶ原合戦です。
上田で徳川秀忠をさんざん苦しめた真田一族。
それを祝っている宴に、忍びの佐助がやって来て、関ヶ原で石田三成が負けましたと告げるのです。
現代人は「関ヶ原の戦い」はたった一日で終わることを知ってはいますが、当時の人からすれば、相当ショックです。
もっと盛り上げろよ、伏線とかあったんじゃないのか、感動できる話にしろ、ってなもんか。
イヤイヤそれ以前に、もっと長引かないと西軍としての俺の夢潰れるじゃん、ってなもんよ。
ドラマのお約束では盛り上げたがるんですけど、現実は結構ショボい終わり方をすることがありますよね。
本作と『真田丸』は、そこをうまくやってくれたのう、とニヤリとしてしまいます。
岐阜犬は、和子さんがらみで散々感動的な演出をしました。
まるで和子の魂が、東京を目指す鈴愛の背中を押していたかのようです。
そういう和子さんの魂へのリスペクトはないのか、とイライラする人もいるんでしょうけれども、世の中は得てしてそういうもんだったりしますよね。あんなに真田が頑張ったのに関ヶ原で西軍が瞬殺されるとか、ありえなくない?みたいなモンでして。
亡き人へ捧げる商品が大ヒットするお話がお望みであれば、再放送中の『マッサン』。
亡き妻に捧げたウイスキーが大ヒットする名酒になりますので、そちらでどうぞ、というと感じ。
本作はこういう美談を容赦なくぶっ壊すから、いろいろ言われるのでしょう。
私はこの期に及んで更にワクワクしてきました。
いや、正直ウンザリしていたんですよ。出来の悪い朝ドラで、さして創意工夫もなければ、全然欲しくもないような商品が、ヒロイン夫妻が手がけたというご都合主義で大ヒットする展開に。主に前作でのことですが。
だから、たまに本作のような作品があると心臓バクバクなんです。
鈴愛も、律も、お互い大事な夢が破壊されております。
残り一ヶ月を切ったのに、このどん底からどうジャンプするのか?
やっぱり、目が離せない!
この歴史映画が熱い!正統派からトンデモ作品まで歴史マニアの徹底レビュー
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
【参考】
NHK公式サイト
連投すみません。どうしても気になる箇所がありましたが、長くなるので分けました。
かんちゃんの性格のことで
>気が強いようで弱気だと
とは言っていないような…。「カンが強くて極端なとこあって困る」と言っていませんか?あんまりドラマでは聞かない、ママ友の会話そのもので、へぇーっと思いました。さらっと言うめいちゃんも、ウマイ!
この会は見応えありました!律と鈴愛の会話、脱線の仕方がすごくリアルで、楽しかったです。
アキコさんですが、まさかとは思いますが、佐藤健さん出演中の『義母と娘のブルース』の、綾瀬はるかさん演じるバリキャリのアキコさんとか…?『義母~』では佐藤さんより十歳くらい上の設定のようですし。あの驚きっぷりは、ドラマと局を超えた脚本家の遊びなのでは?と想像してしまいました(笑)。
夜のNHKの
うたこんという番組で、
弥一さんと源さんとスズメちゃんのスリーショットに感激しました。
課長でしょ。
いつもありがとうございます。
本日も気になったことを書きますが、武者様の思うように編集くださいませ。
>経営企画部長として、予算カットやリストラの担当になっています。
昨日のレビューのコメント欄にありましたように、私も律は部長ではなかったと思います。正しい役職名はメモもしていませんのでわかりませんが(笑)。
>鈴愛は、律が岐阜弁丸出しだ、本当は梟町に潜入いたのではないか?と言い出します。
>花野は、浅田真央選手のようなスケーターになったら、大地が撮影するプロカメラマンになると約束してくれた、と言います。
「大地」君でなく、「翼」クンですね。
あと、全く関係ありませんが、マアくんの相手の名前、放送の中で「アキコ」と本当に言っていたのですか?教えて下さい。私にはわかりませんでした。
それから、私事ですが本日の台風でテレビを全く見ることができなくなりました。元々録画もできないし、こちらのレビューを読んで見た気になる予定です。
今後とも、楽しみにしております。どうぞ宜しくお願い致します。
失礼します。
私も人生の挫折やコロコロ方向が変わってしまうことをリアルに描いた本作に引かれます。自分の人生もそうですが、早くから目標決めてまっしぐら、挫折を乗り越えて成功!みたいな人生は、ありえませんから。。。ただ、40歳くらいのはずのすずめの肌がツルッツルなのが、まあめいちゃん18歳だから仕方ないかーって。
正人くんの再登場が、ドロドロしたものを引きずることなく、トレンディドラマ的な展開をあえて超越している形だったことに、本当に救われた気分になりました。年齢もシビアな現実も受け入れて、それでもエネルギッシュで自分らしさを大切に生きるヒロインに、毎朝元気をもらえて嬉しいです。すでに忘れがたい作品になっています。