日清食品の広告は時代を切り取ってきた
と、ここまでが前置きです。
これからが本番だ。
何がダメか?って、そりゃ、広告宣伝ですよ。
ツッコミどころしかありません。
本当に安藤百福氏夫妻がこんなくだらない広告を使ったかどうか、そこはどうでもいいんです。
こんなプロとしてありえない、くだらなすぎることを描いてどうしますか?
日清は広告に強いんですよ。
その時代を切り取って象徴するような、うまい広告を出すものです。
そういえばカップヌードルのCMって面白いよなあ、話題さらっていたよなあ、って思う人も多いでしょ?
これは同じ関西の企業であるサントリーもそうです。
『マッサン』では、このあたりが実にうまく映像化されました。
当時話題をさらった、日本の広告の歴史に残る「赤玉ポートワイン」ポスター制作を、忠実に再現したものです。
そういう歴史的な一ページを再現するという、伝記物のお約束を本作はわかっていないようです。
加地谷のチンドン屋と同じで、
「きゃー! くいだおれ太郎みたいな萬平さんかわいい!」
「あんな格好でもセクシーなハセヒロさーん!」
ってSNSで言わせて、それをネットニュースで拾って欲しいだけですね。
はいはい。志も何もあったもんじゃない。
関西名物「くいだおれ人形」にしか見えない萬平(まんぷくモデル→安藤百福)。
キンキン声の福子ナレーション。
考えつく中でも最悪の、悪魔合体めいた広告ができあがりました。
あのですね、そもそも「くいだおれ人形」って、日清傘下でもない食堂の広告ですよね?
他者の広告をパクっていることになりませんか?
現在じゃあ大阪名物になっておりますが、元を辿ればあれは広告なんですよ?
また盗むのか!
電気に続いて盗むのかー!!
なんでこんなパクリが大受けなんですかねえ。浅ましさにげんなりさせられるばかりです。
ともかくウケ狙いできればエエ?
本作は、ストーリーの奥深さ、提示する価値観、そういうものはどうでもよい。
ともかくウケ狙いできればエエ、そんな手抜きそのもののようです。
それにこういう社長夫妻が出てきて、クリエイター不在の広告って、センス最低のものばかりなんですわ。
笑顔の社長がどどーんと看板をつとめている某広告にはウンザリさせられたものです。モデルとナレーターくらい雇用しましょうよ。
しかも、ブラック経営者であることすら多いから、ある意味リアリティがあるというか。
これはとある企業の話ですが。
社長こそ出演していないものの、クリエイターの正気を疑うほどダサいうえに、ハラスメント的な広告がありまして。その広告を真似てハラスメントを面白がって試す上司が増えて、ゲンナリしている部下が多いとか。
なんじゃこりゃ、と思っておりましたら、納得できるインタビューを読むことができました。
クリエイターは好き勝手やるからけしからんと、社長が出しゃばっていたんですね。どうやら本人にとっては武勇伝らしい。
本物のバカ。あー、こりゃ、こんな社長の下につく社員は大変だと同情したもんです。
『まんぷく』の広告作りから伝わってくるのは、そんなダサさの極みと立花夫妻の傲慢さです。
過去のNHK大阪にあった財産が失われたとハッキリ確認できてしまいました。
史実のきらめきも、登場人物の才知も
「女だって学問をしたい!」
「仕事をやりたい!」
そんな知的好奇心は『カーネーション』にせよ『あさが来た』にせよ、テーマとして貫かれていたものです。
モデルとなった人物の、経営者としての有能さやこだわり、センスの良さを描くこと。
『マッサン』でそれが出来ていたことは、広告制作描写からも明らかになりました。
仕事上大切なブランドを守ること、デパート進出までの苦労。『カーネーション』で糸子がデパート進出を果たすまで、どれだけ苦労したことか。
それこそ一週間使ってもよいくらい、大変なことなのです。
決して高評価を得たとはいえない『べっぴんさん』ですら、デパート進出時にこの攻防が描かれたものです。
ヒロインのすみれは、本作の萬平の様に浮かれてホイホイ承知しておりません。
どうしてこういう盛り上げポイントを、セリフだけでちゃちゃっと済ませますか? 作っていて虚しくなりませんかね?
企業としてのこだわりも、史実のきらめきも、登場人物の才知もそこにはない。
ヘラヘラガードゆるい女が好きな層。
セクシー描写やおもしろおかしい場面が出てきたら、反射的にSNSに書き込む層。
そんなあたりを狙い薄っぺらいドラマを垂れ流して、恥ずかしくなって来ないんですかね。
今のNHK大阪は、良いものを作ることすら諦めています。
できることはウケ狙いだけ。そんなスタッフに、良いものを作ろうと日々頑張っていた人物の伝記ドラマなんか、作れるわけがないんですよ。
見当違いな罵声は何だったんだ
最後に。
これは重要かつ、前作にも関わるニュースです。
◆「プレス機に挟まれ…」外国人技能実習生の死亡事案、174人分が明らかに
東日本大震災で津波に巻き込まれて溺死した(中国28歳、24歳男性2人、牡蠣養殖)
このように、あの震災では勤労中に逃げ遅れ、亡くなった方がおられます。
『半分、青い。』で、同じ亡くなり方をしたユーコに対して、どんな批判がぶつけられましたっけ?
「津波てんでんこなのに、逃げずに死んだ人物を出すとは何事か」
「医療関係者を侮辱している」
「津波をドラマで描くな」
思い出すだけでも、怒りがふつふつと湧いて来ます。
あのユーコの描写は、荒唐無稽でも、死者を過度に美化したわけでもない。事実に基づいたものです。
ついでに書いておくと、脚本家の北川先生がはじめから意図したわけではないのです。
制作チームが、2011年を描くならば避けて通れないと、覚悟を持って挑んだうえでのあの表現となったものなのです。
ああいう亡くなり方をした人を描いてこそ、得られるもの、伝えられる教訓、風化されないことがあったはずです。
それなのに、ワケのわからない批判があったわけですね。
いや批判というまでもない、ただのいいちゃもんでしょう。
あれは一体は何だったんでしょうね。
そういうことを言っておきながら、まさか本作の「被災死した連中は不運で間抜けでしたw 生き延びた俺らは勝ち組やでw」と言いたげなふざけた戦争描写、史実歪曲捏造、危険行行為描写は見逃しておりませんよね?
ユーコの死について見当違いな罵声を浴びせた方。
万が一、本記事をお読みになられることがありましたら、もう一度、妥当であったかご再考ください。
※スマホで『半分、青い。』や『八重の桜』
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↓
文:武者震之助
絵:小久ヒロ
※レビューの過去記事は『まんぷく感想』からお選びください
※まんぷくモデルである安藤百福の記事、ならびにラーメンの歴史もリンク先からどうぞ!
ハラスメント広告ってハズ○キルーペですかね。おっと文字がはみでた。
「クリエイター不在の広告はセンス最悪」とおっしゃいますが、このドラマの場合はちょっと違います。
立花夫妻はクリエイターではありませんが、あくまでも架空のキャラクター。
あの食い倒れ衣装の最悪広告を生み出したのは、このテレビドラマの制作者陣。れっきとしたクリエイターです。
公共放送のクリエイターたちが集まってあの体たらくなのです。つまりは、まったく救いようがないということですね。
当時自分の作った製品を百貨店に納めることは大変ステータスがあり、どれだけの努力をして採用に至るかを表現した歴代の朝ドラは「カーネーション」「べっぴんさん」等ありました。たとえ偶然だったり、強引だったり、幸運だったりとしてもその過程は描かれ、採用となれば視聴している我々も納得のいくストーリーとして腑に落ちます。しかし、今日の場面は唐突でした。なぜダネイホンが百貨店に採用されたのか全く説明なし。朝ドラでヒロインが活躍できる肝心な部分をいとも簡単に飛ばしてしまいました。
当初、「王道の朝ドラが帰ってきた」とか無意味に評価していた方。もう一度王道とは何かを考えるきっかけになっているでしょうか。上っ面だけのストーリー展開では歴代の朝ドラに顔向けができなくなりますよ。
ダネイホンの価格設定は今の相場で2,000円位にしたんだと思います。家賃設定を間違えたのかもしれませんね。いずれにせよ甘いです。
タカ「婚期が遅れるから大学に行きたくない。」
いやいやいや、あの時代の父親が(今でも?)経済的な理由や、それこそ婚期の遅れを理由に大学に行くなと言うのはわかりますが、逆は無いでしょう。
むしろダーリンの為に学問を納めて助けになる!位は言うのがお約束では?
製作陣の「女は大学になんか行かずにさっさと家庭に入れよ!」的な意識が透けて見えて、腹が立ってきます。